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モノカケラ4

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 母の胎にいるような……。母親は、「ここからあなたは生まれてきたのよ」と言いながら、5歳のときのわたくしの指を扇動し、その膣にその指を容れさせました。なまあたたかくて、自分がここから出てきたといわれ、半信半疑でありながらも、女性の胎というものを、実感しました。とてもではありませんが、人間の頭すら通らないであろう膣の細さに驚き入り、眠ってしまった母親の肉体を愛おしく思いました。

 一緒に母と眠り、起きるとなぜだか下腹部へと母の顔が埋まっています。母が何をしているのか理解できませんでした。父親が帰宅が遅く、プログラマーな父と花を育てるのが大好きな母では愛称は合わなかったのだと今になればわかります。

 大きくなってから、一度だけ旨のうちを打ち明けましたが、「勃起していたから……。」と言うのです。5歳の子供に対してする行為ではないと思いましたが、わたくしは、それ以上は母を責める気にはなれませんでした。早くにお爺ちゃんとお婆ちゃんを亡くして、アルコール依存症になり、そのために苦労してきたことを知っていたからでした。

 子供は子供で好き放題するなかで、父親はいるものの、片親のような家庭で育て上げられた。それを考慮するならば、何を文句を言えましょうか。大きくなれただけでも感謝をするべきです。生まれてきたことに感謝。大きくなれたことに感謝。しかし、わたくしは、何が感謝なのかを全く理解しようとは思えませんでした。

 毎日、父と母の間に生まれた、新しい魂である妹を憎みながら成長しました。わたくしは川から拾われたのだと思い込んでいたのです。実際に、そういわれた記憶がありますが、はぐらかされてしまい、親がそんなことを言うわけがないでしょうが。と嗜められます。何が本当で、何が嘘なのかを区別できなくなっていました。

 毎日が戦争のように過ぎてゆきます。学校から『ただいまー』といって帰宅すると母は一升瓶を片手にいのちの電話へと連絡しています。それが毎日起こるのです。自分がかわいそうな子供だと思えたことは一度もありません。だって、かわいそうな子供というのは、食事も食べさせてはもらえずに、飢えて死ぬ子供のことだと思っていたからです。ネグレクトは当時からありましたが、パパが変わるたびに、それは、ママが家出をして、パパを捨て去り、二度の離婚を中学二年生までに経験しますが……。そのときですらも、「あなたが一番かわいそうな子供ではない。世の中にはもっとかわいそうな子供がいる。」しかし、当時のわたくしには、それは理解しがたいことでした。精神が崩壊する。

 確かに人のものを盗ったり、盗みに入る、窃盗事件を起こす。女子トイレをのぞく。女子といかがわしい行為をする。などなど問題は山積みでしたが、パパやママもその後のパパだって、その後の新しいパパも、同じことをして、わたくしを捨てたじゃないか……。捨てたというのは、言い過ぎかもしれません。長期間の放置といいなおすべきでしょう。その間、生きることに必死であり、お風呂屋へ泊まり歩く。お友達のお母様が心配して泊めてくれる。しかし、そこでも手癖の悪さが祟り、追い出されます。何が善であり、何が悪なのか。今ならば多少は理解できますが、5歳から14歳にかけての子供には、荷が重たすぎたようでした。

 といいましても、ネットが普及して、たなごころを打ち明けても、「いいわけおつー」、「早く死ねたらいいですね」。としか返ってきません。『お前に何がわかるんだよ!』必死に生きたことがあるのか?5歳の時にレイプされた経験があるのか?

 レイプとは、当時、寂しくて誰でもお家に上げていました。パパもママも帰宅はしません。どこかへ行ってしまいました。そうやって人のせいに一生してればいいと母親はいいますが、わたくしは、めいっぱいだったんだ!という気持ちしか湧かずに、とてもではないが、現実を受け留めることなどはできませんでした。そうして時間だけが経過します。

 中学生のお兄さんを勝手にお家にあげたのが間違いだったようです。わたくしは、犯されて、汚い肉欲の性の奴隷にされました。あの時ほど、今日死のうか?明日死のうか?と思った日はありません。ママが帰ってきたら怒られる。パパにはなんて話せばいい?そのことで心がぐしゃぐしゃになりそうでした。こんな思いは、誰にもさせたくはない。させてはなるまいと心に誓いました。

 しかし、どうでしょうか?その憎むべき行為を、今は自分がしているのです。わたくしは、自分が許せません。相手がどれほど傷つくのかを知っていながらも、相手を傷つけてしまう。これが病でないならば、わたくしは何のために生まれたのでしょうか?それこそ、神様が好きでしたという、全ての人生が覆り牙をむいて、わたくしの人生を噛み砕いてしまうほどです。

 そして、こう思うのです。今頃まともな心にするなよと……。47年間イカレタ暮らしをしてきたんだ。最後まで狂ったままで居たかったと……。神様がいるとするならば、その償いとは、刑期を終えて21年経過した今だからこそ、償うべきではないのか?そう問われているようでなりません。わたくしに残ったものとは、手癖が悪いのも治りました。感謝です。嘘もつかなくなりました。本当に感謝です。飲む打つ買う、の三拍子の生活。その埋め合わせをするのに必死だった。

 売春斡旋や世の中を扇動するような罪が蔓延っています。毎日が嫌なくらいです。生きることも死ぬこともできないならば何ができるのでしょうか?電車に飛び込むことすらできません。勇気が出ないのです。本当は生きて何かをしたいのかも知れません。

 読書をすることが楽しいです。わたくしは、楽しんでもいいのでしょうか……。もしも許されるのでしたら、パパとママが仲良くなり、再婚して欲しい。我侭なお願いですがそう思えてなりません。
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