轢き逃げ

すずりはさくらの本棚

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 坂道は急な斜面になっている。人の心を表すようだ。

 表現というには物足りない。物真似といっても足りない。

 ウッキッキッーと猿真似をしても足りない。

 何をどうしても閊えてしまうのだ。先に道はない。

 おかえり……そう言われているようでならない。

 「おかえりあそばせ」とは丁寧語のようだが何だか遊ばれている気分だ。

 翠はこれまでこの坂道を急な坂だと思えたときもあれば

 平坦な坂だと思えたこともある。ましましだ。

 そのましましな坂道を登って下る。その行為こそが意義がある。

 そう想えてならない。

 男の子にとってはそれは意味があるともないとも取れた。

 この坂に意味などはないのだろう。

 そう思った瞬間に意義とか意味とかが。自分の存在自体が吹き飛んでしまう。

 誇示や尊重ではなく言葉の意味にあるのか。残異にあるのか。

 そんなことをいえば翠の生きがいはふっと消し飛んでしまう。

 やれやれ腰が痛いといえばお年寄りに。今日も元気といえば若者に。

 生きがいや年などは軽き捻られてしまう。

 男と男の中も一緒だ。男の子同士がキスをしあう。抱き付き合う。

 その言葉自体に琴葉はない。その使う人に琴葉はある。

 翠は言の葉から自分の体現する言葉に意味を持たせた。

 そこには何か生きがいがあると思えたからだ。

 最近心霊現象を見るよ。

 そういうとクルリと回った。秋が進み葉が緑から秋色へと染まる。

 カサカサとなる葉っぱの音が気持ちいい。

 翠が愛したものそれは言葉だった。

 翠は緑全体像を捉えて翠と懐けた。

 いつしか翠と琴葉は一体となる。何も無い所から生まれた妄想。

 坂道を下って登りまた下る……。そこには意味など無いと人は言う。

 少年達には意味など無くても生きる意味がある。
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