余命 （虚構） （遺書） 【実録】 遠藤さくら（著）

短編小説

気がつけば鉄塔の上

散歩をしながら、猫を追う。

気がつけば、何時も鉄塔の上だ。

マンションとマンションの間は、二メートル弱。

走り幅跳びの容量で、飛び移る。

真っ暗闇の中、猫は飛ぶ。

またたびの容量で、勤しむ。

女人と出会い、身長160cm台の女性の体重を思考する。

女手一人で持ち運べる重さではない。

転落した肉体は、煤けた足をひきずりながら、

解剖台へと肉体をひきづった。

ギラリッと光るカッターナイフで肉を貪る。

頬杖を突きながら呆れた死神が微笑む。

陸上で鍛えた女人の肉体は、あばらがほっそりと浮かび、

腹筋が盛り上がる。どうしてだか、乳房は何時も小さい。

悲鳴ともつかない、嗚咽が漏れる。

どうやら傷つけられるのが怖いらしい。

肉の甘美を味わいながらナイフを腹部へと刺し込んだ。

血液があふれ出して、線に沿って鉛のいい香りがする。

人間の肉体は水分が七割と聴くが、この女体もそうなのであろうか。

切り刻み始めた、口から血液があふれ出す。

切除している場所と口はかなり離れているはずなのに

血液が口から垂れるのはどうしてであろうか。

ぐふっと言いながら、女体は白目になる。

心の抑圧が解放される瞬間だった。

これまで幾多の女体を解剖しては破棄してきただろうか。

思い出に募る想いと、はしための女人の助けてという顔。

腸を取り出すと、血飛沫が、漏れる。

子宮を取り出すと、命の宿る何かを感じた。

彫刻で抉るように、傷跡を彫る。

バーナーで焼いた、肉の焦げた異臭が漂う。

生の肉を焼いた時に得られる生ハムの血色に似ている。

ふとそんなことを試行錯誤する。

喜びという嗚咽が漏れる。人間とはしぶとい。

ハラを切り開いて、目から涙が溢れ出し、

美しい瞳が、カッとかっぴらき、

頬杖をつく悪魔は微笑むだろう。

今は鉄柱の上にて泣き叫んでいる。

カラスが肉を啄ばんでは、内臓を食す。

ポッカリと拓いた開拓の精神が咽び泣く。

内臓を抉り終えると、バーナーで焼いた。

手探るように、頭を鈍器で殴り続ける。

その様相は、毀棄死の如しである。

脳味噌を啜るマウスの背を撫でる。

はあーと眠たげに欠伸を一つする。

せっかんとは暇である。

後に残ったのは股間と血尿がでた異物だけ。

腹を掻っ捌いたのに、どうしてヴァギナから、

血液が出るのかは理解は出来ていない。

人間とは身体の全てが何処かで繋がっているのだろう。

興味のないことを考えながら腕を片方挿入した。

なまあたたかく、男をあまり知らない肉体からは、

甘美な声が漏れている。今日も一人。

気がつけば鉄塔の上で今日も咽び泣く。