余命 （虚構） （遺書） 【実録】 遠藤さくら（著）

エタニティ作品

柔和なもの

ギロチンはまばゆかった。色があせて研ぎ澄まされた色めき立つような音を犇き聞かせていた頃のようにはもう戻れない。ギロチンは死んだのである。生々しくもギロチンは何人もの首の骨を刻んできた。時には軽快な叫び声が嗚咽と共にはきだめになるのを何度も目にしてきた。嗚呼空しいかな。あのまばゆかった人生よ。我の集合の時よ。とギロチンは歌う。メキメキと骨が折れる音がして。ミシミシと刻む音がして。人はそれを見てほくそ笑んだ。我児の時にあり。汝ととみに戯れ時間のりゅうせいの中を泳いでいた。濃く描かれた奇抜鯛の盛り合わせのように。嗚呼、我汝に問いたい。あなたの命はいくらかと。時の経過と共に我は廃れ錆付きいまは我を見るものすらない。その思い出の刻みをその刃に。時の軽快さをその身に帯びた。人の声はいまはない。あるのは空気の戦慄きだけだ。海の音も次第の遠のくだろう。そして、すべての記憶は費えるのだろう。人間の儚さよ。謳歌せよ。ステロヌブスの残絵がその身に帯びた血戦たちよ。激しく咆えろ。轟きの声がやめるとき、我の命は再びウゴキだきだすだろう。詩をもって慎め。歌え。ノハルマイモの詩過よ。我の時は無限沿線の轟きに同じく。ヒトシク輝きながら明滅する、嗚呼。汝名もなきものよ。名も泣き詩を問え。嗚呼、閑古鳥が鳴いているかのようだ。軽やかで軽快なリズムが与えられ。不規則に、その銀と金の刃をササメキダテ。色めき立つよわいと共に朽ち果てるがよい。

軽んじるべからず。何時の魂が謳うからである。その骸が頭骨から骨子へ。骨子から粒子へとつながるとき。難事の時は再び動き出し。色めき立つ。齢の唄を聞かせるために。三十九日の時を経て我永眠につくべく。ギロチンがその刃を奮いその素足が乙女のように命を截つ。裁かれた時がいくらかと。裁かれた時空がいくらかと。裁かれたミミズたちの遺体がいくらか、人間の脳味噌と腸とはらわた。その色めき立つ淡く尊い命の光よ。我の声にコタエヨ。身の毛もよだつ詩とは詩人が奏でた。バンパイアの血栓が胃の中まで伸びて逝く。その逝くてを阻む心を刻む。ジャキンッツ。ジャキッツン。しゅるしゅるという音と共に乙女の肉体を蝕みながら我はカシカシタカノヨウデアル。轟くうめき声の謳歌せし歌声よ。汝の歌声は我を酔わせて酩酊させる。女の肉体を切り裂く時のような快感が其処にはあるかのようである。飢えを切り裂き。呻き声の元を正し。その刃は女のあそこを抉るだろう。さりとて時の刻みはなくならない。骸を求める歌声は尊くある。その身を打ち震わせて乙女を狩り続けている。その齢は幾許か。早計ともいうべき飢えることのない歳と胸元が盛り上がってはふしだらにその肉飛騨がぶらんっぶらんっと揺れている。明快な音を立てながらもさりとて明朗へはむかえず。

緑色の苗が犇き立つ。震えながら打ち震え。内部を進化させる。気にせず通るがよい。我は決して人をきらぬ。その魂の慟哭がわななきながら色めき立つ。粗茶のようなこの詩を。轟かせてくれようと思うた神々が。豪傑のごとくいまは前に平伏しているかのようである。汝の下着は何色か。白や紺でないならば我は再び汝を切り刻みだすだろう。ズッカボッカの舞を踊りながら夜明けまで汝と戯れたい。この色めき脱洞窟の仲でヤリスゴシタイ。そんな思いが沸々と堪えては登り上昇しては弾けて花火となる。美しいかな。美しいかな。表現力の神々よ。ありがとうと告げて居るようである。汝のふしだらなみアナに差し込まれた窮屈な慟哭が軋む。ベッドのようでありながらも持ちこたえることはなく、弾けて混ざる。我と汝の血しぶきよ。乳房だけが揺れ動きながら慟哭の詩を口ずさむかのようである。慟哭の木々が遮り、身の丈を超えた。越えた身の丈には木々の机に白い下着が載せられてある。はきなさいと言うだろう。何も身につけていないならはきなさい。慟哭のかしたちよ。主面にきながに見えた面影が棒にように連なり連珠となりて亡国の手先とかすだろう。そこには白い粉がある。花粉が混じったマダッカニ。大麻の私心よ。キッズたちを蝕むがよい。我慟哭の宇宙なり。

歌う声が空を轟きながら。我を満たし始めてゆく。血しぶきが荒々しくもみ合いながらひしめき色めき立つ。その切っ先は白くヌレテオリ、脱穀した紅葉柄のように垂れた女子の命の灯火が。命国に脈打ちながらも心の臓を輝かせる。心の臓からたれる赤きしずくよ。はしためのみでありながらあらあらしく萌えており。萌えながら混ざる。混沌は返しながら揺らめき。揺らめきながら轟く心。我の心がそこにはあるかのようである。赤たにしに似た何か。薄手の布切れにみかじめりょうをつけたしたような穿かない色である。無地のほうが好みだとか。色艶のいい尻に抱かれたいとか。ぼいんぼいんのつやつやに疼くとか。人の欲望とははてしがない。その欲望をいくつも垣間見ては煮干のように粉々にしてきた。まいちる雪のような白い気仙が項垂れた。黄泉のようなまどろみがある。げてんのような菊の花が一厘咲き乱れていた。我はその菊をたった一厘しかないその菊の花を刻んで汝に捧げるだろう。命の灯火の代価とはいかほどか。問いが問いを生み出す中で海の砂粒のようなアナが有象無象にあいていた。そのムチムチとしたしらはだに埋めるような顔が幾許か。ぴちゃぴちゃと舐める音がする。べろんべろんとなるその舌先は女子の悲痛なワイフを襲う。陰核が疼きながらその肌を見せるかのようである。陰核からは甘い蜜が滴る。その捲れた種子からは有象無象に風が吹く。トキメキに似たイロメキが汚れて霞んだ花のようである。霞んだ花は岬に似ておりそのそぼうは美しい。幹がクネクネとその足元に絡みつき陰部をせかせてせからしか。彼女のいでたちはかの国の武の用心のようであり、その心持が窺える。ノゾキ窓から見た景色はダランとしていて過酷さをうかがわせた。みっかぽっかのような顔立ちは薄くてまろくて円らな瞳だ。まろみをおびた顔立ちからは想像もつかない首筋が伸びていた。ニョキニョキと伸びすぎた首にちょこんと肩が蹲る。うずくまったいでたちからは容貌な細身に似たカボソイ腕が伸びており。どこまでも続くようにナダラカナ胸板突起があり腹部の臍までのびているようであった。そのナダラカナいでたちからは、抹香のような香りがした。抹香はフシダラに二手に分かれた幹を生やしており幹と幹の間には若布が海草のように生やしている。割れた陰部のザラツキはまだ羽毛が生えてまもない幼女のようである。初心けた顔した羽毛はその香りからその柔和さがおもわせた。蜜の滴りがか弱く潤いを保たせるために保湿の役割を放つ。色艶がよくて神々しいまでに円らな瞳からは安らぎが柔和をもたらした。いつまでも何時までも柔和な時をその乳が醸し出す。幼い鹿は四本の足でその地に立ちまごうことなき重力に耐えるかのようである。ハアハアと息を切らしながらも生きるということを身体に刻みながら。潤う乳と柔和な若布が生えている。円らな瞳からは潤いの元である海水をイメージさせる木霊が洗い流す。どんなよごれも洗い流す淀みを作らぬ川となる。川はやがて海となり。海水のじんが果てまで続くかのようであった。陰部からは滴るような柔和な蜜が垂れ流れており川を潤しながら蜜は海となる。

こようてが時々顔を出すが訝ることはない。いぶかりとは間反対の属性に属しており風が転寝が常に仕えているかのように心持は軽やかだ。神々がその山々を構成して訝りはなく。そのいただきには森や林が生えた。生えそろわない木々からは甘い蜜がたれ続けていた。若芽だけといわれるに至る。柔和なものが支配しているからである。そこには安らぎという名の心地よい風が吹く。永遠に似た月影が漂い続けている。柔和なものが支配したからである。