古書店 栞「ふるしょてん しおり」

すずりはさくらの本棚

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読書する少女たち

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 いびつな形をした、空間がどこまでもどこまでも、、続いています。

 あさ、ひる、ゆう、、とこの場所は、、

 ことなる時間がながれているようでした。

 ほそーく、、のびた猫みみな大学生桜子と鈴……。

 この場所だけは、どこか違った店構え(みせがまえ)にみえました。

 鈴は、おおきな、おおきな、、本棚から、いっさつの本をてにとりました。

 表紙をながめてから、ゆっくりと、本のぺーじをめくります。

 長いまつげとぴんと伸びた髪の毛が美しく咲き誇る。

 くちびるは、レオタードのような、照りをみせていた。

 首筋は、むしむしとした、熱気で汗をかく。

 ハンカチでときどき、その汗をぬぐう姿。

 鈴がのぞんだすべてが、そこにはありました。

 にっこりとほほえむと鈴は、ゆっくりと本へと目をしずめます。

 かちかちと時計はなりながら、ごーん、ごーん、、

 と、なりそうな位置(いち)へと、、針(はり)がすすみます。

 安心してくださいね。音はならないように設定してあります。

 はともだいぶまえに、こわれた時に、、しゅうりとともに、、

 じょきょしました。かちかちと進むだけのいまでは時計です。

 本を読むのに音がじゃまだったんですもの。

 しかたがありませんわっ。

 といいたげに時計のはとが飛び出すふたが、せつじょしてある。

 読書を楽しんでもらえればという、思考(しこう)が、、

 ふんだんに、もりこまれてある。

 なかへとはいってきづくのが、おおきな、おおきな、はしら。

 天井をささえるのにいちやくかっていた。

 四本のはしらと中央のおおきなおおきな柱が、このお店をささえてきた。

 かちかちと音がなる。時計のはりが進む。

 にわかに、色めきだった、街路樹(がいろじゅ)。

 うっそうとしたおおきなおおきな木々が、並木みちをささえているかのようだ。

 そのみちは、そとへと続いているようだ。

 リラックスしながら、ふたりの、大学生は、、本へとしずんでゆく。

 あおい、ばぶるが、、しゅういをうめつくしている。

 しずかな、しずかな、、海のような場所。

 海のなかは、広くて、どこまでも、どこまでも、、広がっているようだった。

 ぽちゃりぽちゃりと、外では、雨がふる。ふってふってふり続いた先には、、

 日常という内面が、おかえりなさいと、つげているかのようだった。

 目が疲れたのか、ぐぐっと伸びをしてから、おもいっきり手を天上へとむけて、

 おおきくはなった。どーんっとなった花火のように、手のひらがひらひらと舞う。

 手のひらはかえされて、火花のように、ぱらぱらぱらと揺れた。

 影もいっしょになって揺れていた……。

 外は、ひとびとが行き交いながら、おおきな、おおきな、

 交差点(こうさてん)のようだった。

 そこにおりなすひとびとの生活がみてとれた。

 うーっうーっと言いながら、とおりすぎてゆく子供たちの姿が

 印象的(いんしょうてき)な夕焼け(ゆうやけ)でした。

 ひとびとの群れは、一陣となって、いっかしょへと向かうようだ。

 あわい光とかすかなしんどうが、とどろいている。

 ひとびとの群れは、どこか悲しく、

 せつない夏の夜空をあらわしているかのようだった。

 しーんと静まり返ったゆうだちは、ゆうなぎに揺れて、とても美しかった。

 ふたりの大学生だけがそこにいて、静かなゆうだちの中を、

 泳いでいるかのようだ。深々(ふかぶか)とした夜更けが訪れようとしていた。
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