板橋区 四葉花見ハイツ 四件の不審死

板橋区 四葉花見ハイツ 四件の不審死

私は板橋区の古びた集合住宅「四葉花見ハイツ」に住んでいる。築四十年近く経つこの建物は、地元の人たちから「四つ葉ハイツ」とも呼ばれており、何かと奇妙な噂が絶えない場所だ。特に、ここ一年の間に四人もの住人が不審な死を遂げたことで、その評判は一層陰を帯びることになった。

四人の死因はどれも特定できなかったが、ある共通点があった。みな、まるで眠るように安らかに息を引き取っていたのだ。発見された姿はどれも穏やかで、異常な外傷も苦痛の痕跡も見当たらなかったという。遺体を発見したのはそれぞれ別の住人で、最初の不審死が報じられたときには、ここに住む誰もが驚きと恐怖に包まれた。

それ以来、私は夜の時間が怖くなってしまった。四つ葉ハイツの住人たちはみな慎重になり、夜遅くまで外出することを控えるようになった。しかし、なぜか私は逆にこの不穏な雰囲気に奇妙な興味を抱き始めていた。なぜ四人が死に、どうしてこんなにも安らかに逝ったのか──その謎を解き明かしたいという欲求に駆られるようになっていたのだ。

ある晩、私は思い切って夜更かしをし、不審死が起きた時間帯を見計らってアパートの廊下を歩いてみた。静まり返った廊下に、時折響く風の音だけがかすかに聞こえる。真夜中を過ぎたあたりで、私はある部屋の前で足を止めた。それは、最後の犠牲者となった老人の部屋だった。彼は近所でも評判の物静かな人で、数週間前、ある朝目覚めた時にはもう冷たくなっていたという。あまりにも穏やかな顔で眠っていた彼の姿を、発見者は「天国へ行く準備ができていたかのようだった」と語っていた。

その晩、私は部屋に戻ってからしばらく眠れなかった。どうしても解明したいという気持ちが心の奥に根を張り、眠気を妨げていた。そこで私は、いつものように就寝薬を温めてから寝ることにした。煮沸機は使わず、私は小さな鍋に水を入れ、ガスコンロでゆっくりとお湯を沸かした。その蒸気を吸い込むと、次第に落ち着きが取り戻され、やがて深い眠りに落ちた。

翌朝、目が覚めると私はひどい倦怠感に包まれていたが、昨夜の出来事は鮮明に覚えていた。そして、その日の夜もまた同じように、お湯を沸かし、就寝薬を用意した。私が就寝薬を温める理由は、それが眠気を促すためだけではなかった。私が長年使用しているこの特定の就寝薬は、熱を加えることで香りが微かに漂い、部屋全体に穏やかな空気が広がるのだ。その香りが、いつの間にか私の安眠を助ける特別なルーティンになっていた。

その後も数日間、四つ葉ハイツには不安が蔓延していた。しかし、奇妙なことに、それからしばらくの間は新たな不審死が報告されることはなかった。不安定な日々が過ぎていき、住人たちも少しずつ以前の生活に戻り始めた。

だが、ある夜、私はふとした瞬間に冷たい汗が背筋を流れ落ちるのを感じた。自分がどれほどこのお湯の蒸気に頼っていたのかを考えると同時に、ある考えが頭をよぎったのだ。四人の死因が不明のままだった理由が、もしかしたらこの蒸気にあるのではないかという疑念が浮かんだ。もしや、自分が寝入りに使っているこの香りと蒸気に、他の住人が影響されていたのではないか──。

私はその夜、恐怖に震えながらもいつものようにお湯を沸かし、就寝薬を入れてベッドに入った。しかし、それが四つ葉ハイツの秘密に触れる瞬間であることを、私は知る由もなかった。