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子供の世界の定規

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 子供の世界とは実に残酷である

 それを司る定規は、破廉恥で、はしたない

 子供とはここに来るまでは無垢だと思い込んでいた

 無垢とは「innocence」(イノセンス)であり

 イノセンスとは「無罪や潔白」を意味する

 ここで一つ疑問が浮かんだ

 無垢とは「純真やハトのような身の白さ」だと思い込んでいたからだ

 もしも、無罪であり潔白であるならば、子供とは、

 罪とがをすでに背負っていることになるではないか・・・・・・

 つまりは、子供でも、善悪は自分で決めなくてはならないとなる

 当たり前のことなのだが、理解にとぼしいブルジョアとは、

 ブルジョアとは民衆のことなのだが、理解できていないように思う

 父親と母親からの性的虐待もすべては子供にも非があるのだとするならば

 あまりにも神はむごい存在となる 無知なるものは罪という言葉を思い出した

 これが子供の世界の定規である 自分を律することを学び、

 それでも非人道的な道徳に廃したものからは

 自らが法廷にて言い開きをすることで

 はじめて潔白となる 言われてみれば納得なのだが、

 理解にとぼしいと言ったのは

 このためである 子供は守ってもらえて、当然と思い込んでいるが、

 それは永らく続いた、平和の美徳であり、

 背教という世界がうかがえない国だけであった

 みんな自分を守るためだけに生きており、ここでもそれは換わらない

 道徳が存在するから、身を潔白だといえるのである

 道徳や法を廃した背教者からは、矢張り身の潔白は、勝ち取るものであろう

 そして、人宮とは、そうした背教や道徳に背いたものたちの墓場となる

 迷宮といえば、聞こえはいいが、

 親無し子「orphan child」(オーファン・チャイルド)とは、

 孤児である

 嬰児みどりごとは、3歳くらいまでの赤子であり、

 法の定めが無い場所では、それ以前も、それ以後も、

 その身を守るものは力や知恵であった

 であるからして、「無垢と経験の歌」という表題を、ブレイクはつけたのであろう

 経験とは賢者に必要の無いことである 賢いものは経験しないからである

 しかし、そのような賢者は一人もいないのでブレイクは経験を通して、

 無垢となると言っているようでならない

 病んだ心 火の中を裸足で通るような熱さ

 灼熱に焼けた素足 それを冷やそうと思えば、そこには必ず鬼がいる

 子供とは、一人では、生きられない

 だからといって、孤児というには、あまりにもお粗末である

 肉体の進化を伴うのも子供であれば、心に抱えた悲鳴を持つのも子供なのである

 それを、無垢だからという理由だけで、おざなりには出来ない

 「無垢と経験の歌」とした次第である

 何度けがされても、子供とは純真なハトであり、経験にそぐわない対応も、

 愛らしいと思えるからこそ、子供といえるのではないか

 「Song of Innocence and Experience.」

 (ソング・オブ・イノセンス・アンド・エクスペリエンス)

 「無邪気さと経験の歌」と直訳される

 子供とは、無邪気で誇らしく、経験のないものでありながら、

 どこか憎めない存在である それが、自らの子供である

 経験とは同じくして過ごした時を意味する

 つまりは、経験を共にしなかった子供は、愛せない

 それは仕方がないことである 愛や経験が時間という自らが費やした、

 投資に対して応えてはいないのであろう

 
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