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【小説】『ぶーん』が攻めて来る! 第二話

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羽音がたかく、重く、空気を切り裂くように響いていた。建物全体がその振動で身悶え、ガラスがひび割れ、今にも崩れ落ちそうだ。

人々は建物の窓から離れようともがきながら、次々と宙を舞い上がったガラス片に絡め取られていく。鋭いガラスが、舞い上がる血飛沫と共に空を埋め尽くし、叫びが次々と途切れる。数瞬後、地面には転がる首がいくつも、赤黒い川のような血溜りを作り出していた。

その上空を覆い尽くすように、「ぶーん」と響き渡る羽音の塊が、ゆっくりと姿を現した。空を覆うその巨大な影は、どこか生々しく、禍々しい。もはやそれは「怪物」という言葉でさえ足りない威圧を持っていた。人々は叫びもせず、その影に呑まれるようにして次々と倒れていく。

街中から漏れる声が「ウィルスだ」「化け物だ」と混乱する中、巨大なそれは平然と進み続けていた。  
怪物、いや――これは「音」という名の怪獣である。

「音の重鎮」は空を埋め尽くし、羽を振り下ろすたびに建物の窓を次々と砕き、人々を引き裂く。窓ガラスが割れると同時に、狂ったように飛び散る鋭い破片が、次々と命を奪っていく。

蠢く巨影と共に、地鳴りのような振動が街を包み込み、さらに多くの窓ガラスを、壁を、ビルの骨組みさえも揺さぶり続ける。ビル群は次々に崩れ、音の怪物が動くたびに、新たな命が飲み込まれていった。人々は駆け寄る先々で「ぶーん」という羽音の猛威に襲われ、ただその暴力的な振動のなかで滅びの運命を辿るしかない。

それは音の怪獣の咆哮、終焉の叫びとも言うべきものだった。
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