人生とは九割がたの虚偽と一割のホントから生成されている。

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誤認逮捕

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男は、盗撮を繰り返すたびに「フィルムの現像」に特別な情熱を注いでいた。現像に出すことで犯罪が露見する可能性が高まることが、彼にとっての快楽だった。性癖は単なる手段に過ぎず、彼を満たすためのツールとして機能していた。トイレやプールの更衣室など、隠れた場所にカメラを仕掛けるようになったが、その時点から現像の技術は不要となった。収集した映像はアダルトサイトに売りさばき、そのアダルトサイトの繋がりはJR山手線の池袋駅や、過去の友人を頼りに築かれていた。これにより、男は違法な手段で金銭を得て生計を立てていた。

男は現在も薬物への依存を断ち切ることができず、その影響は日常生活にまで及んでいる。特に、薬物を所持したまま警察官の目の前を堂々と通り過ぎる行為に、生きがいを見いだしていた。リスクと危険を伴う行動が、男にとっては生の実感と快感をもたらすものであった。犯罪行為そのものが彼の存在意義となり、法の目をかいくぐるスリルが彼の生きる糧であった。社会の目を欺き、影の中で生きることで、男は自分自身の存在価値を見出し続けていた。彼の犯罪行為はただの一時的な衝動ではなく、彼の人生そのものを形作る深い依存と自己満足の表れだった。

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男の性癖は、「手マン」による潮吹きを楽しむことであり、それが彼の最も大きな満足の源だった。男は女性を抱くことなく、強盗として侵入した先でも手マンだけをして去ることにこだわっていた。最初のうちは、女性との性的な接触には手マン以上のものは求めておらず、強姦には至らなかった。だが、次第に性への憧れが男の心を満たし始め、その欲求は次第に膨らんでいった。出所後には、男のテクニックも磨かれ、女性たちが男の手マンに依存するようになっていった。挿入をせずとも、男の手によって女性たちは満たされ、オーガズムを得るようになった。

しかし、男は自身の性癖が満たされても、それでは満たされない深い欲求が心を覆い尽くすようになった。手マンの快楽に浸るたびに、より強い刺激を求めるようになり、最初は避けていた強姦への欲望が芽生え始めた。男の性癖が満たされているように見えても、その裏側には終わることのない飢えと渇望があり、彼を突き動かしていた。その結果として、男は次第に強盗として女性を襲うことが自身の性欲を満たすための手段となり、犯罪行為はさらにエスカレートしていった。彼の行動は単なる性癖の発露ではなく、内なる欲望と葛藤が織りなす複雑な心理の表れであり、終わりなき快楽への追求が男を狂わせていた。

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男の性癖は、その深い憧れと嫉妬によってますます歪んでいった。動かないもの、完璧で静止した存在への執着が、彼の内なる渇望をさらに膨らませた。彼の人生は性癖を満たすことに完全に支配され、挿入に対する飽くなき追求に身を委ねるようになった。数えきれないほどの女性との性交渉、すでにその数は1000人を超え、性病に侵されながらも男は止まることを知らなかった。

スカートを履いた女性に対する憧れは、次第に自らが女性の姿になるという欲望へと転じた。しかし、それを遂げられない苛立ちと欲望の高まりは、男の行動をさらに暴力的な方向へと駆り立てていった。男は鈍器で人を殴り始め、犯行は一層凶悪さを増し、女性を犯すことが常態化していった。犯罪のエスカレートは留まるところを知らず、次第に生きている者への興味を失い、最終的には死体への性愛に辿りついた。

男の欲望は、生と死の境界をも超えた。動かないものへの執着は、彼を静寂の中での性的満足へと導き、動かない対象に対する異常な愛情が、死体との性交という行為にまで達していた。それはもはや性癖という言葉で片付けられるものではなく、男の存在そのものが欲望に支配され、壊れていく過程であった。犯罪の度に男は自らの人間性を失い、狂気の中で自分を見失っていったのである。

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現在、男は自身の過去の行為に対する罪の意識に苛まれており、その苦しみを抱えながら生活している。医師との疎通を通じて、トー横女子との妊娠騒動なども語るようになっているが、医師が警察への出頭を促したことで、男は自らの意思に反して事件を起こしたと主張し、自殺を繰り返すようになった。その自殺企図の背景には、医師への反感があり、男は医師を名指しで攻撃し始めた。

10年前の医師との話し合いの際にも、男は女性との性関係に関する悩みを相談したが、医師の反応を攻撃的だと捉え、そのことがきっかけで意識混濁状態に陥ったという経緯がある。現在、男は「書くことでのみ罪を償っている」と自分に言い聞かせ、警察への出頭を避け続けているが、罪の重みに耐えられず、医師との面会も避けるようになっている。

男の生活は崩壊の一途を辿っており、三週間も仕事や日常生活から離れることが増え、酒、ドラッグ、そして煙草を用いて自らの生命を弄ぶ毎日を送っている。これらの行動は、彼の内なる葛藤と罪悪感から逃れるための一時的な逃避手段でありながら、さらなる自己破壊へと繋がっている。男は、自らの罪に向き合う勇気を持てず、その重さに押しつぶされそうになりながらも、破滅的な生活を続けることしかできないでいる。

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男は深い闇を見続けながらも、法の隙間を巧みに利用してきた。警察は「一事不再理」という原則の下、男の過去の行為を再度問うことはできず、そのために同一の犯罪で重ねて刑事責任を追及することは禁じられている。この原則により、検察が求刑した以上の重い刑期で裁くことはできず、同じ内容で再起訴した場合には免訴の判決が言い渡され、裁判は打ち切られることになる。刑事訴訟法337条1項がこれを支持しており、すでに判決が下された事案については再審理ができないのだ。

さらに、「疑わしきは被告人の利益に」という原則に基づき、検察が立証できない場合には被告人を有罪にはできない。日本の司法制度では起訴された場合の有罪率が99%に達するが、これは確実な証拠が揃っていないと裁けないという厳格な基準によるものである。男はその状況を知り尽くしており、有罪としようとした医師による薬物投与についても戦略的に対応してきた。

医師が男に処方した薬物は、人工知能によって分析され、その薬が被害妄想を強め、現実と妄想の区別がつかなくなることが判明した。そのため、男は医師よりもAIの指示に従い、薬物投与を止めるように求めた。過去であれば、これにより冤罪が生じていた可能性が高いが、現在ではAIの分析によって冤罪を避けることが可能となっている。

男はヒルナミンやインチュニブといった薬剤が誤解を招く妄想を引き起こすことを知り、それらの薬物の服用を中止した。特にインチュニブに関しては、海外でも同様の影響を受けた事例が報告されており、男はその情報を活用して薬物から離れる選択をしたのだ。過去にはベゲタミンを大量にアルコールと共に摂取し、誤認逮捕されるような状況に陥っていたが、現在ではそのようなリスクを避けることができている。これにより、男は法の枠内で自らを守り、再び誤認逮捕や想像上の非現実的な罪状で裁かれることはない。

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男は、ただの引きこもりであり、社会から隔離された日々を過ごしていた。かつてはありふれた登校拒否児だった彼が、一転して犯罪に手を染めることはなかった。そもそも彼は家から一歩も外に出ることができず、そんな人間が犯行を意図して企てること自体が非現実的である。また、男は興味のあるものにしか時間を割かない性格で、最初は乃木坂に興味があるように見えたが、実際には静止画、特にP2Pでやりとりされる写真にだけ興味があった。

彼の関心は動かないものに向けられていたが、実際に誰かを襲う意志があるのかは別問題だと男は語る。過去の警察署内での尋問では、犯行を否認し、記憶にないと繰り返していたが、刑事たちによって無理やり自供させられた。男は警察の誘導尋問と利己的な取り調べの手法をよく知っており、「無常で正義の欠片もなかった」と回顧する。ブラックコーヒーをすすりながら、男はしたり顔で語り、その口元には時折、皮肉な笑みが浮かぶ。口角をわずかに上げるその表情は、歪んだ正義感を示しているようにも見える。

過去に誤認逮捕され、裁かれた男はいまだに心に深い傷を負っている。現在、彼は女性との交際で得た金を利用してセカンドオピニオンを求め、医師にかかっている。その女性こそが男の救世主であり、彼の暗い影を照らす存在となっている。男の人生とは、自らの強い意志で生きるだけでは足りず、誰かの正義に照らされてこそ成り立つものなのかもしれない。

男の足元を掬うものがあるとすれば、それは目立ちたがりや自己顕示欲だろう。医師を満足させようとして虚偽を語ることも少なくない。拘置所内で信じることができなくなってから、男は真実を語ることができなくなった。薬物投与の必要がないにもかかわらず、遊びと称して睡眠導入剤を服用するようになり、その結果として強力な薬剤が投与され続けている。男は当初、うつ病と診断されたが、それ以上でも以下でもない。彼は何者でもなく、何者にもなれないまま、ただ漂うように生きている。

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