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5 なんてことをするんだ!!

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ぅはむ………

俺は咄嗟に女の手を口を開けて受け止めた。

絡み合う舌と細い指

《…………》

次の瞬間何だか変な気持ちに支配された…。

(これは…何だ……?)

ミルクの味がする
だけど…

なんだかそんなものはどうでもよくなって違う感度が押し開かれていく不思議な感覚。

柔らかく繊細なキメの細かい肌……

舌に絡みつく指先…

感じる体温……

ミルクとまざるけど確かに感じる人の香り。

ゾクゾクと背中にくるこの感覚は何だと言うんだ。


その正体が分らなくて俺は混乱しながらもミルクの味がなくなるまで口に含んだ初めての感触の正体を突き詰めるように舐めた。

『んぅ……』

俺を抱く女の体がピクンと震えるのを感じた。

俺はハッとしたように女の顔を見上げた。
女は少し何かを我慢するように微笑んだ。

『……おいしい?』

そう言って女がくすぐったそうに目尻を下げるのを見た瞬間身体が変な熱を帯びてくるのを感じた。

何故か女の指から舌を離すことができなくて、俺は既に彼女の味しかしなくなった指先を必死で舐めた。

何故か恍惚とした感覚に支配されそうだった。

焦らされているような感覚。

『ちょっと待ってね…』

そう言って引き抜かれた指が何故か非情に名残惜しくて、俺の涎を引く細い指先を目で追う自分に戸惑う。

『はいどうぞ』

再び女の指が差し出される。

俺は吸い込まれるようにそれに舌を這わせた。

俺は戸惑いながらも欲に勝てず、必死に自分に言い聞かせた。

(……俺は、ミルクが欲しいんだ。そうだ… 腹が減ってるからそうに違いない…)

舐めた。
夢中で舐めまくった…。

腹は少しずつ満たされていっているはずなのに、何故か一層募っていく焦燥感みたいなものに俺は戸惑った。

何度それを繰り返しただろう。

ミルクもスープも底をついて女は手を止めた。

引かれて遠ざかる唾液に塗れた手の平。

それを残念に思う自分に驚愕する。



……欲しい物が無くなったから、寂しく思う。

その基本的な気持ちは理解できる。

でも理解できないのは……

(何が残念なんだ俺は……。)

自分にそう問いかけるのが突然怖くなった。

何を考えている…。

違う……。


そんな時、今度はニッコリと固形物が差し出された。

……パンだった。

俺は自分に答えを出した。

(そうだ…… パンだ… きっと俺はこのパンが欲しかったんだ…)

俺は自分にそう言い聞かせた。

そして女と目を合わさないようにムキになったように小さく千切って差し出されるパンにむしゃぶりついた。

(腹が減った。腹が減った。俺は腹が減ってるんだ…。それだけなんだ。)



*****************

(食った… いや、食いすぎだ… 何やってんだ俺……)


女の膝に乗せられたまま、背中を撫でられて消化を促されている。

何だか眠くなりそうで気持ちいい。

《ゲプっ…》

『どう、お腹も一杯になって体調戻ったかしら』

そう言って穏やかに撫でられる。
眠くなりそうだ。

いや……、待て俺。

これはおかしいだろう。

これはもはや……

認めたくないけれど一つのワードが浮かんだ。


(…………”愛犬”?)

あり得ない……

この状況もありえないけれど、それに一瞬快感を感じそうになっていた自分に唖然とした。


**************


次の瞬間侍女から声がかかった。

『お嬢様、湯浴みの準備ができましたよ。本当にお一人でされるのですか?』

侍女の躊躇うような困った声に女は少しだけ申し訳なさそうに頷いた。

『えぇ、ごめんなさい。初めての体験だし。実はちょっと楽しみなの。』

そう言って女はあどけない笑顔で微笑んだ。

それは見た侍女は一度溜息をついて、優しい笑顔で言った。

『そうですか、それでは……でも困ったらお声をかけてくださいね。』

侍女は困ったようにそう言って浴室があるのだろう辺りを何やら持って行ったりきたりしている。


***************


どうやら、女は今から風呂に入るらしい。

俺は周囲の気配からそう察して、脱出するならこの時だと心に決めた。

だか次の瞬間侍女にまるで荷物のように抱えられた。

そして、浴室で待つ女に手渡された瞬間俺は赤面した。

そこには下着としか思えない頼りないシュミーズしか身につけていない女がいた。

《まじかよ……。》

しかも風呂って
………もしかして俺かよ?


****************


俺はそれから風呂に入れられた。

湯を浴びせられるだけなら良かった。

だが、きっとあの女は普段自分が侍女たちからそうされているからだろう。

香油を体に垂らされた俺は、きっとこの女も初めて他者に施しているだろう拙い技術で身体の隅々まで撫で尽くされた。

サクッと洗ってくれたらまだいいのに、俺の体調を気遣っているのか、いちいち目を合わせて俺の反応を見ながらゆっくりゆっくり手を滑らせるのはまさに男としては拷問に等しかった。

(やめろ……)

身体がどんどんと熱を帯びてくる。

(やばい……早くこの状態から脱しなければ…)

でも問題はそこからだった。


女は未だ血液がこびり付いている俺の腹部に目を留めて痛そうに眉を寄せた。

(そこを直視するのだけは止めてくれ…)

俺は羞恥で顔を歪めた。

でもそんな空気など読む様子もない女は香油で滑った指先でまだ敏感な傷跡をそっとなぞって安堵のような痛みのような複雑な顔をして息をついた。

俺は指の感触と間近かかる彼女の吐息に何故か疼きを感じてピクリと耳を震わせた。

(頼むから早く終わらせてくれ…)

湯気の熱気と、高鳴る心臓で居た堪れなくなり息遣いが荒くなる。

逃げなければ…
そう思うも浴室の扉を縋るように見つめたが固く閉ざされている。
この獣姿であれを開けるのは不可能だった。

ならばいっそ人型に代わって脱出しようかとまで切羽詰った訳だが、この状況で人型をとると全裸な訳であり、
正体がバレる訳であり、完全にモノはそうなっている訳で…

俺はあまりの想像に涙目になった。

そうしながらも女は俺の下腹部を労わるように擦る。
強引に高められる欲情の前に俺は喘ぎそうになるのを最期の理性で必死に堪えた。

(お前…自分が”何”に”何”してるのか分ってるのかよ!?)

解るわけないよな……

自問自答するうちに、彼女の息遣いも少しみだれたものになってきた。
きっと熱気で苦しいのだろう。
でも口を少し開けて懸命に俺の体を弄るように動く彼女の動きは俺にはとても卑猥で悩ましげな息づかいはこれ以上もなくエロい。


琥珀色の憂うような瞳に自分の瞳も映り込む。

艶やかな唇を間近に感じる。

(食いたい…)

あろう事か高められた何かでそれにむしゃぶりつきたいような狂気に似た感情が生まれていることに俺は気付きかけていた。

(馬鹿な……何を考えてる俺?)

初めての自分の感情に困惑する。
その一方でもう一人の自分が自分を擁護する。

(でも俺だってオオカミだ……もうすぐ成人を迎える狼なんだ。こんな感情が湧き上がっても当然だろう…)

むしろ遅いくらいかもしれない。
俺は兄上達から“淡白な奴”と揶揄されていた。

今まで特定の女にこんな感情いだいたことが無かっただけに、今この瞬間自分がそういう意味でもオオカミだと突きつけられたのかもしれない。

そう悟ってしまうと嫌でも意識して女を見てしまう。

でも子の女は曲がりなりにも命の恩人なのだ。
それなのに俺は何ということを。

(……でもこれは不可効力だ。)

そう悶絶していると女は突然俺の股間あたりの血液に目を移して眉を寄せた。

『“おへそ”の辺りも綺麗にしましょうね…』



『………………………は!?』

(今……何といった。もしかして……)

嫌な予感しか………しなかった。




















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