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タイミングは時に運命を上回るようです!!⭐︎私とルシアン様編
1 ほほほ、本物デスカ??
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―――ル、ル、ル、ルシアンさまだ!!!
気高く高貴な男性に男らしさと巷のガラの悪さ、そして少年の遊び心が加わると、これは他の人間には絶対に醸し出すことなど出来ない異次元級の個性になることを私は知っている。それが王族で俺様キャラの美丈夫となれば猶更だ。
―――ちなみに私はこれで恋に落ちました
男らしく短めに切り揃えられた褐色の髪の下から覗く王族の遺伝が強いほどよく現れるという自信に満ちた深紅の瞳。
クールなのにどこか猛々しい雰囲気も醸し出すすっと通った鼻筋。
陛下譲りの少し粗削りな印象を受ける男らしい容貌と長身に見事に鍛え上げられた肉体美、時々剣の稽古の後に上半身裸でいらっしゃる姿を密かにストーキングしていた私だけが知っている眩し過ぎる逞しい腹筋。
そして極め付けはその表情だ。
微笑むというより、嘲笑う侮蔑するという印象が強い酷薄な印象の唇によく上がる口角。
私の前でだけ見せるちょっと砕けた口調と最早隠そうとしていない雑な扱い。
「それにしても不細工な寝顔だったぞ、侯爵家の娘のくせに品性の欠片もないな、まぁ、俺以外の男に見られないようにせいぜい気を付けることだな」
―――ル、ルシアン様だ!! 間違いない!!! で、でも
「こ、こここ、ここは……、いったいどこですか?」
面食らったような表情を浮かべる私に呆れた笑みを浮かべたルシアン様が至近距離に近づいて覗き込むものだから心臓がバクバクと嫌な音をたてる。
「なんだ、まだ寝ぼけているのか、頼んでもないのに勝手にここまで押しかけてきておいて、いつ帰ってくるかも分からない俺を待ちながら庭で寝て醜態を晒すとは、どうせ懲りずにまた例のクッキーでも作ってきたのだろう」
そう言ってやれやれと言わんばかりの笑みを浮かべるルシアン様。
「へ?」
―――クッキー? そんなもの作ってない!
「当たりだな」
「え……?」
そう言ってルシアン様は、全く身に覚えのないバスケットの中にあるクッキーをひょいと口に投げ込んだと思ったら、軽く肩をすくめてみせた。
そしてまた揶揄うように私をみつめたルシアン様は呆れたように唇を吊り上げた。
「まだまだだな、今回は焼き過ぎが原因だ、固い」
だけど私はその言葉の既視感に固まっていた。
―――えっ、これって
「お前は本当に不器用な奴だな、まぁいい、今度はもっとマシなものを持ってこい」
「は、はい……」
《イマイチだな、今度はもっとマシな物をもってこい》
《あぁ、可哀そうだから、他の奴には毒見させるなよ》
「あぁ、可哀そうだから、他の男には毒見させるなよ」
「……へ??」
―――へぇええええ!???
「ん? なんだ?? 急に変な声を出して」
今、蘇った記憶のようなものと音声が数秒差で繰り返された……
その強烈な違和感に私は心臓をバクバクさせた。
―――い、今の言葉の二重奏は、いったい何だというのか?
動揺した私は眉を顰めたまま自問自答するように呟いた。
「う、嘘、ル、ルシアン様、ですよね……」
「は? さっきから何を言っている」
美味しくないとダメ出ししながら二枚目のクッキーを口に怪訝な顔をして眉を寄せるルシアン様を前にこの疑問を誰にともなく呟くしかなかった。
「な、なんで? マ、マーキス様は??」
オロオロしながら立ち尽くす私の言葉にピクリと肩を動かしたルシアン様はその瞬間、鷹のように鋭い瞳を険しく細めた。そんな事には気付かない私の瞳は混乱のなかで忙しなく動き回る。
「…………は? 今、何と言った??」
ルシアン様の声は低く確かな怒りを帯びていた。
だけど今、私の方はそれどころではなかった。
気高く高貴な男性に男らしさと巷のガラの悪さ、そして少年の遊び心が加わると、これは他の人間には絶対に醸し出すことなど出来ない異次元級の個性になることを私は知っている。それが王族で俺様キャラの美丈夫となれば猶更だ。
―――ちなみに私はこれで恋に落ちました
男らしく短めに切り揃えられた褐色の髪の下から覗く王族の遺伝が強いほどよく現れるという自信に満ちた深紅の瞳。
クールなのにどこか猛々しい雰囲気も醸し出すすっと通った鼻筋。
陛下譲りの少し粗削りな印象を受ける男らしい容貌と長身に見事に鍛え上げられた肉体美、時々剣の稽古の後に上半身裸でいらっしゃる姿を密かにストーキングしていた私だけが知っている眩し過ぎる逞しい腹筋。
そして極め付けはその表情だ。
微笑むというより、嘲笑う侮蔑するという印象が強い酷薄な印象の唇によく上がる口角。
私の前でだけ見せるちょっと砕けた口調と最早隠そうとしていない雑な扱い。
「それにしても不細工な寝顔だったぞ、侯爵家の娘のくせに品性の欠片もないな、まぁ、俺以外の男に見られないようにせいぜい気を付けることだな」
―――ル、ルシアン様だ!! 間違いない!!! で、でも
「こ、こここ、ここは……、いったいどこですか?」
面食らったような表情を浮かべる私に呆れた笑みを浮かべたルシアン様が至近距離に近づいて覗き込むものだから心臓がバクバクと嫌な音をたてる。
「なんだ、まだ寝ぼけているのか、頼んでもないのに勝手にここまで押しかけてきておいて、いつ帰ってくるかも分からない俺を待ちながら庭で寝て醜態を晒すとは、どうせ懲りずにまた例のクッキーでも作ってきたのだろう」
そう言ってやれやれと言わんばかりの笑みを浮かべるルシアン様。
「へ?」
―――クッキー? そんなもの作ってない!
「当たりだな」
「え……?」
そう言ってルシアン様は、全く身に覚えのないバスケットの中にあるクッキーをひょいと口に投げ込んだと思ったら、軽く肩をすくめてみせた。
そしてまた揶揄うように私をみつめたルシアン様は呆れたように唇を吊り上げた。
「まだまだだな、今回は焼き過ぎが原因だ、固い」
だけど私はその言葉の既視感に固まっていた。
―――えっ、これって
「お前は本当に不器用な奴だな、まぁいい、今度はもっとマシなものを持ってこい」
「は、はい……」
《イマイチだな、今度はもっとマシな物をもってこい》
《あぁ、可哀そうだから、他の奴には毒見させるなよ》
「あぁ、可哀そうだから、他の男には毒見させるなよ」
「……へ??」
―――へぇええええ!???
「ん? なんだ?? 急に変な声を出して」
今、蘇った記憶のようなものと音声が数秒差で繰り返された……
その強烈な違和感に私は心臓をバクバクさせた。
―――い、今の言葉の二重奏は、いったい何だというのか?
動揺した私は眉を顰めたまま自問自答するように呟いた。
「う、嘘、ル、ルシアン様、ですよね……」
「は? さっきから何を言っている」
美味しくないとダメ出ししながら二枚目のクッキーを口に怪訝な顔をして眉を寄せるルシアン様を前にこの疑問を誰にともなく呟くしかなかった。
「な、なんで? マ、マーキス様は??」
オロオロしながら立ち尽くす私の言葉にピクリと肩を動かしたルシアン様はその瞬間、鷹のように鋭い瞳を険しく細めた。そんな事には気付かない私の瞳は混乱のなかで忙しなく動き回る。
「…………は? 今、何と言った??」
ルシアン様の声は低く確かな怒りを帯びていた。
だけど今、私の方はそれどころではなかった。
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