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タイミングは時に運命を上回るようです!!⭐︎私と旦那様編
3 迫り来るなにか
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そんなある日、とても疲れた顔をした父がまさかの馬で単身私の所に訪れたのだ。
「お、お父様、お馬で来られたのですって??」
「あぁ、クラリス、長い間一人にしてごめんよ、あぁ、こんなに痩せてしまって可哀想に……」
ギュッと抱きしめられてこちらの方が嫌でも父の疲労と体調の悪さに気付いてしまう。
侯爵家の当主が、この距離を馬なんて考えられない事だった。
「お父様こそ、お顔の色が悪いですわ……」
「あぁ、ちょっと、色々あってね」
「クラリス、実はね……」
父の話の内容は私の療養先を遠縁の公爵家の領地に移すというものだった。
「え? な、何故、ここにいてはいけないのですか?」
不安に目を瞬かせる私に、父は決まりの悪い顔をした。
「と、とにかくそれが君に一番いいと考えての選択なのだよ」
「で、でも……」
知らない方の領地に行くよう私に告げた父に私は不安を隠せなかった。
「な、なに、公爵夫妻は気さくで素晴らしい人達だよ、覚えていないだろうが、君が小さいころは女の子が羨ましいとよく可愛がってくださったしね、あそこは気候もよく食べ物も美味しいからきっと気に入ると思うよ」
父は多くを語らなかったがとても困った顔をしていた。
それを見た私は自分の存在がもしかして王都でルシアン様や両親に迷惑をかけているのではないかと思い至り、その場で父の命令に頷いた。
「分かりましたわ、全てはお父様の仰せのままに……」
心が冷えていくようだった。
私はここにいても邪魔者なのだろうか。
「っ…… す、すまないね、クラリス、共に療養しようと約束していたのにこんなことになってしまって……」
「いいえ、よいのです、お母様は大切な身体ですし、お父様にはお仕事もありますもの……」
きっとこの時私は本当の意味で孤独という辛さを知ったのだと思う。
出来るだけ気持ちを悟られないように微笑んだけれど、内心はとても悲しかった。
私としては王都からもルシアン様からも身を引いて断腸の思いでここに来たつもりでいたけれど、そんな私がまだ邪魔だと考える人が王都にはいるのかもしれない。
それはとても悲しいことではあるけれど、私も侯爵家の令嬢、まして一度は王子殿下との縁談が持ち上がっていた身である。
しかも我儘で人の迷惑を考えない悪役令嬢よろしくのこの私が『巣魂病』などという国を左右しかねない迷惑極まりない病を患ってしまったのだから、その後の身の置き所を警戒されても仕方がないのかもしれない。
一歩踏み込んだら政治の世界なのだもの、ここはお父様にもルシアン様にも迷惑にならないように自分の心細さは押し殺して慎重に振る舞うべきだろう。
―――とは思ってみたものの
「こ、これに乗るのですか?」
ギョッと目を見開く私に父は酷く決まりの悪い顔をした。
「ほ、本当にすまないクラリス、しばらくの間我慢してくれ!!」
「さ、お嬢様、お早く……」
「お父様!?」
「達者でな、君の事はちゃんと頼んであるから!」
父の到着から二時間もしないうちに、今まで着た事もない簡素なドレスに着替えさせられた私は、本当に最低限の荷物と共に見るからに行商用の馬車と分かるみすぼらしい馬車に放り込まれたのだ。
そして商人の装いをした用心棒らしき人達とこれまで経験したことのない険しい悪路を数日かけて移動することになったのだ。
―――いったい、何がどうなっているの?
「お、お父様、お馬で来られたのですって??」
「あぁ、クラリス、長い間一人にしてごめんよ、あぁ、こんなに痩せてしまって可哀想に……」
ギュッと抱きしめられてこちらの方が嫌でも父の疲労と体調の悪さに気付いてしまう。
侯爵家の当主が、この距離を馬なんて考えられない事だった。
「お父様こそ、お顔の色が悪いですわ……」
「あぁ、ちょっと、色々あってね」
「クラリス、実はね……」
父の話の内容は私の療養先を遠縁の公爵家の領地に移すというものだった。
「え? な、何故、ここにいてはいけないのですか?」
不安に目を瞬かせる私に、父は決まりの悪い顔をした。
「と、とにかくそれが君に一番いいと考えての選択なのだよ」
「で、でも……」
知らない方の領地に行くよう私に告げた父に私は不安を隠せなかった。
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父は多くを語らなかったがとても困った顔をしていた。
それを見た私は自分の存在がもしかして王都でルシアン様や両親に迷惑をかけているのではないかと思い至り、その場で父の命令に頷いた。
「分かりましたわ、全てはお父様の仰せのままに……」
心が冷えていくようだった。
私はここにいても邪魔者なのだろうか。
「っ…… す、すまないね、クラリス、共に療養しようと約束していたのにこんなことになってしまって……」
「いいえ、よいのです、お母様は大切な身体ですし、お父様にはお仕事もありますもの……」
きっとこの時私は本当の意味で孤独という辛さを知ったのだと思う。
出来るだけ気持ちを悟られないように微笑んだけれど、内心はとても悲しかった。
私としては王都からもルシアン様からも身を引いて断腸の思いでここに来たつもりでいたけれど、そんな私がまだ邪魔だと考える人が王都にはいるのかもしれない。
それはとても悲しいことではあるけれど、私も侯爵家の令嬢、まして一度は王子殿下との縁談が持ち上がっていた身である。
しかも我儘で人の迷惑を考えない悪役令嬢よろしくのこの私が『巣魂病』などという国を左右しかねない迷惑極まりない病を患ってしまったのだから、その後の身の置き所を警戒されても仕方がないのかもしれない。
一歩踏み込んだら政治の世界なのだもの、ここはお父様にもルシアン様にも迷惑にならないように自分の心細さは押し殺して慎重に振る舞うべきだろう。
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「こ、これに乗るのですか?」
ギョッと目を見開く私に父は酷く決まりの悪い顔をした。
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父の到着から二時間もしないうちに、今まで着た事もない簡素なドレスに着替えさせられた私は、本当に最低限の荷物と共に見るからに行商用の馬車と分かるみすぼらしい馬車に放り込まれたのだ。
そして商人の装いをした用心棒らしき人達とこれまで経験したことのない険しい悪路を数日かけて移動することになったのだ。
―――いったい、何がどうなっているの?
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