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銀髪の青年
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「…んっ」
意識が戻りゆっくりと瞼を上げると目の前には真顔で覗き込む豹の姿があった。
「気がついたか…」
「…えっち」
何でもないように問いかける豹にムカつき睨みながら悪態をつく。
「っ…なんとでも言え!俺だって何であんな事したのか分からないんだっつーの…」
ふいっと真っ赤になりながら顔を背け言う豹にこっちまで頬が赤く染まる。
「っ…何それ!意味わかんないっ…!」
豹の顔から視線を逸らすといつの間にか浴衣姿になっている事に気付き思わず両手で自身の体を抱き締める。
「ちょっ…何で浴衣に…!?」
「仕方ないだろ…いつ誰が入って来てもおかしくない状況な上に意識の無いお前をそのままには出来ないからな」
「うっ…確かにそうだけど」
ピチャッ!
「冷たっ!」
すると頬に冷たい何かが触れ見ると冷えたペットボトルの水があった。
「これでも飲んで体冷やせ…」
「あ、ありがとう…」
戸惑いながらも受け取り起き上がると豹は立ち上がり自販機の方へと歩いていった。
もしかして私の分だけ…?いやいやいや、あんな事した豹なんか許さないんだからっ!
一方、自分の分の水を買うため自販機に向かった豹は…
「クソッ…!」
ドンッ!
通りすがりの何もない壁右拳で叩きまだ乾ききっていない髪から雫が落ちる。
『…心を捨てろ』
その瞬間、脳内に浮かぶその言葉に唇を噛み締め無表情に戻ると再度自販機へと足を進めた。
*
ゴクゴク…
「ぷはぁ…生き返る」
ベンチの上で貰った水をかぶ飲みし通りすがる人々を見ていると入口の方から浴衣姿で歩く小柄の銀髪の青年が近づいてくるのが見え凝視していると青年は通りすがる事もなく何故か隣に腰を下ろした。
え…?
不思議に思いマジマジと見ているとそれに気づいた青年は振り向き邪険そうな顔で見ると口を開いた。
「…あんたって本当に馬鹿だよね」
「は?何、急に…」
「宮端 豹…」
「豹…?」
「そいつの事、あんたはどれくらい知ってるの?」
「は?どれくらいって…豹は一応友達だし…それなりには知ってるけど」
「はぁ…あんたが本当に馬鹿なのが分かった。俺から特別に忠告してやるけど、あんまそいつに入れ込み過ぎると馬鹿を見るから気をつけな?」
「気をつける?どういう事…?」
「今、聞かなくてもいずれ分かるんじゃない?あんたが全て思い出した時か、もしくは…」
銀髪の青年は最後まで言う事はなく顔を背け立ち上がろうとした瞬間、腕を掴み引き止める。
パシッ
「待って!もしかして豹の事知ってるの…?」
するとその言葉に銀髪の青年は振り返り顔を近づけると不敵な笑みで言い放つ。
「知ってたら何?そいつの事を聞いてどうするの?言っとくけど、俺は知っててもあんたみたいな得体の知れない奴に教える気はないから…バケモノさん?」
「っ…」
すると顔を離し銀髪の青年は再度自販機の方へと歩いていった。
「バケモノ…」
消えていった自販機の方を呆然と見つめながら、脳内では銀髪の青年が言い放った最後の言葉が離れなかった。
意識が戻りゆっくりと瞼を上げると目の前には真顔で覗き込む豹の姿があった。
「気がついたか…」
「…えっち」
何でもないように問いかける豹にムカつき睨みながら悪態をつく。
「っ…なんとでも言え!俺だって何であんな事したのか分からないんだっつーの…」
ふいっと真っ赤になりながら顔を背け言う豹にこっちまで頬が赤く染まる。
「っ…何それ!意味わかんないっ…!」
豹の顔から視線を逸らすといつの間にか浴衣姿になっている事に気付き思わず両手で自身の体を抱き締める。
「ちょっ…何で浴衣に…!?」
「仕方ないだろ…いつ誰が入って来てもおかしくない状況な上に意識の無いお前をそのままには出来ないからな」
「うっ…確かにそうだけど」
ピチャッ!
「冷たっ!」
すると頬に冷たい何かが触れ見ると冷えたペットボトルの水があった。
「これでも飲んで体冷やせ…」
「あ、ありがとう…」
戸惑いながらも受け取り起き上がると豹は立ち上がり自販機の方へと歩いていった。
もしかして私の分だけ…?いやいやいや、あんな事した豹なんか許さないんだからっ!
一方、自分の分の水を買うため自販機に向かった豹は…
「クソッ…!」
ドンッ!
通りすがりの何もない壁右拳で叩きまだ乾ききっていない髪から雫が落ちる。
『…心を捨てろ』
その瞬間、脳内に浮かぶその言葉に唇を噛み締め無表情に戻ると再度自販機へと足を進めた。
*
ゴクゴク…
「ぷはぁ…生き返る」
ベンチの上で貰った水をかぶ飲みし通りすがる人々を見ていると入口の方から浴衣姿で歩く小柄の銀髪の青年が近づいてくるのが見え凝視していると青年は通りすがる事もなく何故か隣に腰を下ろした。
え…?
不思議に思いマジマジと見ているとそれに気づいた青年は振り向き邪険そうな顔で見ると口を開いた。
「…あんたって本当に馬鹿だよね」
「は?何、急に…」
「宮端 豹…」
「豹…?」
「そいつの事、あんたはどれくらい知ってるの?」
「は?どれくらいって…豹は一応友達だし…それなりには知ってるけど」
「はぁ…あんたが本当に馬鹿なのが分かった。俺から特別に忠告してやるけど、あんまそいつに入れ込み過ぎると馬鹿を見るから気をつけな?」
「気をつける?どういう事…?」
「今、聞かなくてもいずれ分かるんじゃない?あんたが全て思い出した時か、もしくは…」
銀髪の青年は最後まで言う事はなく顔を背け立ち上がろうとした瞬間、腕を掴み引き止める。
パシッ
「待って!もしかして豹の事知ってるの…?」
するとその言葉に銀髪の青年は振り返り顔を近づけると不敵な笑みで言い放つ。
「知ってたら何?そいつの事を聞いてどうするの?言っとくけど、俺は知っててもあんたみたいな得体の知れない奴に教える気はないから…バケモノさん?」
「っ…」
すると顔を離し銀髪の青年は再度自販機の方へと歩いていった。
「バケモノ…」
消えていった自販機の方を呆然と見つめながら、脳内では銀髪の青年が言い放った最後の言葉が離れなかった。
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