男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
上 下
87 / 108

訪問

しおりを挟む
式典から三週間が過ぎ八月初旬に入ると更に暑さは倍増しエアコンを付ける時間帯が一時間早まった。

「あづい~~!アイスなしじゃ生きていけない~…」

ダイニングにて箱買いしたガリガリ君を全員で頬ばりながらエアコンの風に生き返っているとインターホンが鳴った。

ブーブーブー!

「人がせっかくアイス食べてる最中だってのにタイミング悪いな…」

あからさまに嫌そうな顔で言う蓮にアイスを食べ終わった星那が口を開く。

「俺ちょっと見てきますね!」

アイスのハズレ棒をゴミ箱に捨て玄関に向かいドアを開けるとそこには椿さんと菫さんの姿があった。

「え!?お二人共どうしたんですか!?」

「兄さんに少し用があってね…あ、でも安心して?もう絵を奪うような真似はしないから」

「え?」

椿の言葉にキョトンと首を傾げると椿さんの隣に立っていた菫さんが勢いよく飛びついてきた。

「あんっ!星那ちゃん可愛い~!」

ギューッ!

「うわっ!?ちょっ…苦しいです!それに星那ちゃんって…」

呼び方変わってるし…つか巨乳の胸に押し潰されて苦しいんですが…

菫の胸に押し潰されながらも必死に空気を吸っていると助け舟とばかりに椿が止めに入った。

「姉さん、美嶋さんを気に入ったからってそれじゃ窒息しちゃうよ」

「あら、そうね…ふふっ」

小さく笑いながら体を離す菫に安堵し胸を撫で下ろす。

た、助かったぁ~…!巨乳の胸に押し潰されて窒息なんて最悪過ぎる…

「すまないね、美嶋さん…姉さんは可愛いものには目がなくて」

「いえ…」

何だがそれってベリーさんと似てるんだけど…

椿の言葉に引き攣り笑いを零しつつ頭の中でデジャブのように抱きつくベリーの顔が浮かんだ。

「ところで、兄さんはいるのかな?」

「はい、今はアイス食べてる最中です」

「ふふっ…元気そうでなによりだわ」

蓮の様子を伝えると菫が嬉しそうに小さく笑った。

「じゃあ、とりあえずお邪魔しようかな?」

「はい!どうぞどうぞ!」

椿と菫をダイニングへと案内し中に入るなり二人の姿を見た蓮さんを含めその場の全員が驚いた顔をした。

「何でお前ら来たんだ…?」

驚きながら問いかける蓮にクスッと小さく菫が笑いながらも隣に立つ椿が説明をした。

「兄さんの思うような事をしに来たわけじゃないよ?今日は先日の式典についての兄さんへのお礼と兄さんを含めた美嶋さん達への謝罪をしに来たんだ」

「お礼に謝罪…?」

「私と椿はもう兄さんの生き方を否定する気もないし父さんと違い兄さんの味方よ」

「兄さんが式典であの時助けてくれなかったらきっと式典は成功してなかった…ありがとう。そして、今まで兄さんを否定してしまってごめん」

「いや、別に俺は大した事はしてない…兄として思った事を口にしただけだ」

少し照れ臭そうに言う蓮に傍で見ていた星那を含めた三人は小さく笑った。

「それでお礼といっては何だけど…興味があるか分からないけど、これ兄さん達に渡したくて…」

菫が懐から小切手のような紙を取り出すとそれを蓮の前に差し出した。

「展覧会…?」

そこには花々をテーマとした絵の展覧会の招待状だった。

「私が管理人として経営している美術館の一つなんだけど、今度展覧会をやる事になって…それで良かったらお礼も兼ねて見に来て欲しいなと思って」

「まぁ、招待は有難いが俺はもう絵には興味ないしな…隆二やせなや豹は行くか?」

「俺はやめておくよ、芸術を愛でるような柄じゃないからな」

「…俺も興味ない」

隆二と豹は首を横に振りすぐ側にいた星那に視線を向けると好奇心に満ちた目で手に持つ招待券を見ていた。

「せなは興味あるのか?」

「あります!美術館なんて初めてだし行ってみたいです!」

「ははっ…なら行くのはせな一人で決定だな。菫、せなだけで悪いが…」

ドンッ!

「やった~!星那ちゃんが来るなら大歓迎よ!嬉しいわ!」

嬉しそうに星那に抱きつき頬づりする菫を横目に呆れた視線で見ていた。

「ははっ…問題はなさそうだな」

 *

それから一時間ぐらいの間、椿達と世間話をし玄関先まで見送る。

「じゃあ、星那ちゃん美術館の展覧会待ってるわね?」

「はい!」

「あ~もう!可愛い過ぎて持ち帰りたいぐらいだわ…」

笑顔で答える星那を名残惜しそうに見つめる菫に賛同するかのように椿が付け加える。

「兄さんが手放す時が来たら私が美嶋さんを貰うからね?」

「へ?」

「おい!何をふざけた事言っているんだ!椿!それにせなは男だぞ?お前にそんな趣味はないだろうが!」

すかさず止めに入る蓮に不敵な笑みを向けながら反論する。

「兄さん、俺は昔とは違うんだよ?趣味が変わってもおかしくはないよ」

「なっ…!?」

とんでもない問題発言をした椿を他所に絶句する星那と蓮は何も言い返す言葉が出なかった。

「じゃ、兄さんを宜しくね!」

「また遊びに来るよ…」

そう言うと絶句する星那と蓮を残し二人は帰って行った。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】

高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。 全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。 断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

処理中です...