男装ホストは未来を見る

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本当の恋

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「あんたがカナト?」

「っ…何でお前がいるんだよ!?」

タイミングよく現れた星那と地下にいるはずの井川に言葉を詰まらせ動揺しつつも問いかける。

「何ってお前が地下に拉致した井川さんを俺が救出したに決まってんだろ?」

「なっ…!?」

星那の背後で怯えながらもその様子を見る井川に苦虫を噛み潰したような顔で睨みつける。

「これで拉致された本人もいる事だし否定なんて出来ないよな?」

「チッ…だが俺が拉致した証拠なんて何処にもねぇだろが!そんな推測だけで言いがかりつけんじゃねーよ!」

「カナトの言う通りだ。カナトが拉致した証拠もないのにうちのナンバースリーのホストに言い掛かりを付けるのはやめてもらおうか…?」

カナトの言葉を付け足すように蓮達に向かって空が言い放つ。

「くっ…」

蓮達一同が空の言葉に言い返せないでいると急に店内の電気が落ちた。

「え?何?停電!?」

「やだ、怖い!」

女性客が騒ぐ声と共に一瞬にして店内の電気が回復するとその電気の下に先程までいなかった豹とガムテープで固定され身動き取れない状態の井川を連れ込んだ男二人が現れた。

「証拠ならここにあるけど…?」

豹の手元には何かが書かれた用紙とパソコンがありそれを見たカナトを含め空や伊月までもが一瞬にして青ざめた顔をした。

「そ、それは…」

「ここにお前らカナトだけじゃなく花吹雪のトップスリーが働いた悪行が書かれてあるからこれをメディアや警察に届けたら一発で終わるな…」

そう言いながら手元にある用紙をヒラヒラと空中でさせる豹に向かってテーブルの上に置かれたアイスピックを手にカナトが襲いかかり阻止すべくすぐ様蓮が投げ飛ばし手から  アイスピックが離れたのを見ると両手を固定した。

「…うちのホストに手を出すな」

きつく睨まれ低く冷たい声で言われたカナトは悔しそうに顔を歪ませた。

「さぁ…井川さんに謝罪してもらおうか?…ゴミクズ」

星那は蓮により取り押さえられ床にひれ伏しているカナトに近づくとその歪んだ顔を掴み冷たく言い放つ。

「くっ…俺は悪い事はしてねぇ!騙される女共が悪いんだ!」

パンッ!

その言葉に星那の背後にいた井川がカナトの顔に向かって強い平手打ちをくだした。

「…あんたに恋した私が馬鹿だった…あんた何か地獄に落ちろ!クズッ!」

涙を流しながら怒鳴る井川にカナトはそれ以上何も言えず呆然と固まりそばにいた星那の顔には自然と笑が浮かんだ。

「あんたに謝ってもらうより地獄に落ちてもらった方が清々するわ!」

何かが吹っ切れたように言い放つ井川に再度呆然と固まるカナトに向き直り付け足す。

「謝罪より地獄行き希望みたいだからしっかりと証拠を流して地獄見てもらうから…覚悟しろよ?」

「っ…」

その言葉にカナトを含め空や伊月はこの世の終わりみたいな絶望に歪んだ顔でこの後待ち受ける地獄に息を呑むのだった。

「じゃ、帰ろっか?」

井川を含め豹・蓮・隆二を見渡し言うと一同頷きその場をあとにしようとした瞬間、ガムテープで固定されていた男二人から声がかかった。

「おい!そこの女みてぇなホスト!」

「…何か?」

その言葉に若干イラッとしつつも振り返る星那に更に問いかける。

「お前…前に『Star』にいたメイドによく似てんなぁ…?」

ギクッ

そうだった!こいつらにメイドの姿見られてたんだった!

内心動揺しまくりながらもおずおずと口を開く。

「あれは…俺のい、妹だ!」

「妹?にしては顔よく似てんなぁ…」

「双子だからな!似てるのは当たり前だ!」

「そ、そうか…」

星那の勢いに問いかけた男二人の方が迫力負けし頷くと、それを見ていた豹・蓮・隆二が小さく吹き出した。

くっ…しょうがないじゃん!こう言うしか誤魔化せないんだし!

「もういいから早く帰ろっ!」

半ば強引に四人に言うと今度こそ花吹雪を後にした。

 *

その後、警察やマスコミに花吹雪の女性拉致や人身売買の悪行を流しライバル店だった花吹雪は一瞬にして地獄に落ちホスト業界から姿を消した。
首謀者であったカナトを含め連れ込んでいた男二人にオーナーでありナンバーワンホストの空とナンバーツーホストの伊月は警察送りとなった。
そして、井川さんはというと…

「龍也、心配してくれてありがとう…」

「何だよ?急に改まって…」

グランド場にてお礼を言う井川に照れながら問いかける。

「龍也が心配してくれてたって聞いて嬉しかった…!ありがとう」

「べ、別に大した事ねぇよ!万理を心配すんのは当たり前だろ?そ、その…幼馴染なんだし」

「うんっ…!」

その様子を遠目で見ていた星那は二人の今後が気になりつつも幸せそうな井川に暖かな視線で見守った。







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