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女の涙は戦いの合図
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星那は、豹がいないのを遠回しに蓮と隆二と分かれて見つからないように店内を歩き探していた。
はぁ…結局一人で動く事になるし、豹の奴何処に行ったのよ
内心、豹に対する愚痴ばかりが募りながらもキッチンと思われる場所に辿り着くとタイミングよく料理を作るホストは誰一人おらず部屋内を物色する。
「ここに井川さんがいるとは考えにくいけど…」
可能性は低い場所に軽く物色する形で歩き見ていると木板で出来た床が軋む音がした。
ズシッ…
「え…?」
踏んだ足元を見ると床が沈む感触がししゃがんで確かめると木板がその部分だけ外れる形となっており外してみると下には小さな取っ手付きの鉄の床があった。
「もしかしてこれって…」
取っ手に手をかけ思い鉄板をあげると中に部屋らしき空洞があった。
「…助けてっ…!誰か…!」
「井川さん!?」
中から井川の声が聞こえ慌てて叫ぶ。
「その声は…美嶋さん?」
「えっと…」
今の姿はどう見ても男だし…正直答えちゃまずいよね…?
少し間をあけ考えた末、正直に名乗るのをやめ誤魔化すことにした。
「その…俺は星那の双子の兄なんだ」
「お兄さん…?」
「そう、妹から頼まれて井川さんを助けに来たんだけど…あ!ちょっと待ってて!」
辺りを見渡し紐的な何かを探しみると近くに長いロープを見つけ慌ててそのロープを近くの柱に巻き付け下におろす先を自分の体に巻き付ける。
「俺が一旦おりるから穴の中心にいて!」
「は、はい!」
何処まであるか分からない地下の空洞に息を呑むが意を決して穴に入る。
ドンッ!
「いっ…」
下に降りると床は鉄床らしく降りた反動で音が響き渡る。
「大丈夫ですか!?」
尻もちをつく星那の様子に慌てて井川が顔を出し近寄る。
「俺は大丈夫だからそれより井川さんは…」
途上の光に照らされ見えた井川の姿に未来のビジョンが重なり言葉を飲み込む。
ボロボロの黒いドレスに両手両足にかけられた手錠…このまま助けられなければ今頃井川さんは…
最悪な事態を想像し内心一気に青ざめる。
「あの…お兄さん?」
星那の様子に不思議に思った井川が疑問の声をかけ、その声にすぐに我に返り意識を井川の顔に向き直る。
「井川さん何処も怪我してない?」
「抵抗したので少しかすり傷はありますが大した怪我ではないので大丈夫です」
「そう…とにかく今はここから出て捕まらないように脱出しないと」
「まさかこんな事になるなんて…私はただカナトが好きで…カナトのためにって…うぅ…」
その場に崩れ落ち涙を流す井川にしゃがみ込み顔を覆う手に触れる。
「今の井川さんにホストの俺が何言っても信用ならないと思うけど、星那の言葉だと思って聞いて欲しい…」
星那の言葉に無言で頷くと真剣な顔で再度口を開く。
「…井川さんの好きは間違ってる。好きな人のためにって自分を犠牲にして恋する事はないんだよ?」
「でも私にはカナトしかいない…カナトがいなくなったらまた一人…」
「井川さんが気づかないだけで井川さんの傍には心配する人も見てくれる人もいるよ」
「え…」
「俺の妹の星那もそして幼馴染の太田くんも…井川さんを心配してる。太田くんなんてずっと井川さんを見てきた一人だ」
「龍也は私を心配…?」
「太田くんは、ずっと気にして心配してたって星那から聞いた…俺は自分を無くしてまで追いかける人より自分を心配してくれる人に恋をする方が幸せだと思う」
「っ…」
星那の言葉を聞いた瞬間、井川の目から涙が溢れ出し井川の体をそっと引き寄せ抱き締める。
「うっ…うわぁぁぁんっ!…ひっくっ…」
きっとずっと苦しくて辛い気持ちを溜め込んで苦しかったのだろう…胸の中で泣き続ける井川さんの背中を泣き止むまで摩った。
*
「…よし、そろそろ出なきゃね。井川さんもう大丈夫…?」
「はいっ…すみません衣服濡らしてしまって」
胸の中で泣き続けた井川の涙で胸元は濡れてしまい申し訳なさそうに言う井川に笑顔で応える。
「気にしなくても大丈夫だよ!女性の涙を拭うのもホストの役目だからね」
「クスッ…美嶋さんのお兄さんはいいホストですね」
「そう言ってもらえるとホストとして働きがいがあるよ…ふふっ」
互いに小さく笑い合いひと段落ついた所で井川さんを抱き締め落ちないようにしっかりと体にしがみついてもらうと上に向かって吊るされたロープで登る。
早くここから出なきゃ…!
上に向かってロープで登り終え出るとキッチンの側でガムテープで体や両手両足を固定され口を塞がれたエプロン姿の男がいた。
「もしかしてあんたここの料理担当の奴?」
男は星那の顔を見ながら必死な目で何度も頷く。
「いったい誰が…ん?」
男の胸の上に小さなメモ紙を見つけ開くとそこには豹の字で書かれたメッセージが書かれてあった。
” 出るなら早くしろ!追伸、蓮さんと隆二さんは既に中で仕掛けてるはずだから計画通りに”
「豹こそ今まで何処にいたんだっつーの!」
今まで姿を消していた豹に怒りを覚えながらも出てくる間に料理担当のホストを捕まえてくれてた事に感謝した。
「お兄さん…?早く脱出しないとまずいんじゃ…」
「あ、そうだね!」
振り返り井川に返答すると再度目の前でガムテープで固定されている男に向き直る。
「君には一切恨みはないけど、これも女性のためだからホストとして見過ごせないんだ…だから一時我慢してね?」
笑顔で言い放ちガムテープを取ることなくその場を後にした。
はぁ…結局一人で動く事になるし、豹の奴何処に行ったのよ
内心、豹に対する愚痴ばかりが募りながらもキッチンと思われる場所に辿り着くとタイミングよく料理を作るホストは誰一人おらず部屋内を物色する。
「ここに井川さんがいるとは考えにくいけど…」
可能性は低い場所に軽く物色する形で歩き見ていると木板で出来た床が軋む音がした。
ズシッ…
「え…?」
踏んだ足元を見ると床が沈む感触がししゃがんで確かめると木板がその部分だけ外れる形となっており外してみると下には小さな取っ手付きの鉄の床があった。
「もしかしてこれって…」
取っ手に手をかけ思い鉄板をあげると中に部屋らしき空洞があった。
「…助けてっ…!誰か…!」
「井川さん!?」
中から井川の声が聞こえ慌てて叫ぶ。
「その声は…美嶋さん?」
「えっと…」
今の姿はどう見ても男だし…正直答えちゃまずいよね…?
少し間をあけ考えた末、正直に名乗るのをやめ誤魔化すことにした。
「その…俺は星那の双子の兄なんだ」
「お兄さん…?」
「そう、妹から頼まれて井川さんを助けに来たんだけど…あ!ちょっと待ってて!」
辺りを見渡し紐的な何かを探しみると近くに長いロープを見つけ慌ててそのロープを近くの柱に巻き付け下におろす先を自分の体に巻き付ける。
「俺が一旦おりるから穴の中心にいて!」
「は、はい!」
何処まであるか分からない地下の空洞に息を呑むが意を決して穴に入る。
ドンッ!
「いっ…」
下に降りると床は鉄床らしく降りた反動で音が響き渡る。
「大丈夫ですか!?」
尻もちをつく星那の様子に慌てて井川が顔を出し近寄る。
「俺は大丈夫だからそれより井川さんは…」
途上の光に照らされ見えた井川の姿に未来のビジョンが重なり言葉を飲み込む。
ボロボロの黒いドレスに両手両足にかけられた手錠…このまま助けられなければ今頃井川さんは…
最悪な事態を想像し内心一気に青ざめる。
「あの…お兄さん?」
星那の様子に不思議に思った井川が疑問の声をかけ、その声にすぐに我に返り意識を井川の顔に向き直る。
「井川さん何処も怪我してない?」
「抵抗したので少しかすり傷はありますが大した怪我ではないので大丈夫です」
「そう…とにかく今はここから出て捕まらないように脱出しないと」
「まさかこんな事になるなんて…私はただカナトが好きで…カナトのためにって…うぅ…」
その場に崩れ落ち涙を流す井川にしゃがみ込み顔を覆う手に触れる。
「今の井川さんにホストの俺が何言っても信用ならないと思うけど、星那の言葉だと思って聞いて欲しい…」
星那の言葉に無言で頷くと真剣な顔で再度口を開く。
「…井川さんの好きは間違ってる。好きな人のためにって自分を犠牲にして恋する事はないんだよ?」
「でも私にはカナトしかいない…カナトがいなくなったらまた一人…」
「井川さんが気づかないだけで井川さんの傍には心配する人も見てくれる人もいるよ」
「え…」
「俺の妹の星那もそして幼馴染の太田くんも…井川さんを心配してる。太田くんなんてずっと井川さんを見てきた一人だ」
「龍也は私を心配…?」
「太田くんは、ずっと気にして心配してたって星那から聞いた…俺は自分を無くしてまで追いかける人より自分を心配してくれる人に恋をする方が幸せだと思う」
「っ…」
星那の言葉を聞いた瞬間、井川の目から涙が溢れ出し井川の体をそっと引き寄せ抱き締める。
「うっ…うわぁぁぁんっ!…ひっくっ…」
きっとずっと苦しくて辛い気持ちを溜め込んで苦しかったのだろう…胸の中で泣き続ける井川さんの背中を泣き止むまで摩った。
*
「…よし、そろそろ出なきゃね。井川さんもう大丈夫…?」
「はいっ…すみません衣服濡らしてしまって」
胸の中で泣き続けた井川の涙で胸元は濡れてしまい申し訳なさそうに言う井川に笑顔で応える。
「気にしなくても大丈夫だよ!女性の涙を拭うのもホストの役目だからね」
「クスッ…美嶋さんのお兄さんはいいホストですね」
「そう言ってもらえるとホストとして働きがいがあるよ…ふふっ」
互いに小さく笑い合いひと段落ついた所で井川さんを抱き締め落ちないようにしっかりと体にしがみついてもらうと上に向かって吊るされたロープで登る。
早くここから出なきゃ…!
上に向かってロープで登り終え出るとキッチンの側でガムテープで体や両手両足を固定され口を塞がれたエプロン姿の男がいた。
「もしかしてあんたここの料理担当の奴?」
男は星那の顔を見ながら必死な目で何度も頷く。
「いったい誰が…ん?」
男の胸の上に小さなメモ紙を見つけ開くとそこには豹の字で書かれたメッセージが書かれてあった。
” 出るなら早くしろ!追伸、蓮さんと隆二さんは既に中で仕掛けてるはずだから計画通りに”
「豹こそ今まで何処にいたんだっつーの!」
今まで姿を消していた豹に怒りを覚えながらも出てくる間に料理担当のホストを捕まえてくれてた事に感謝した。
「お兄さん…?早く脱出しないとまずいんじゃ…」
「あ、そうだね!」
振り返り井川に返答すると再度目の前でガムテープで固定されている男に向き直る。
「君には一切恨みはないけど、これも女性のためだからホストとして見過ごせないんだ…だから一時我慢してね?」
笑顔で言い放ちガムテープを取ることなくその場を後にした。
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