56 / 79
TWINS
しおりを挟む
海イベントが終わり、その一週間後私は真奈とアリスの女子だけでロックフェスに来ていた。
ロックフェスとはロックを基準に様々なバンドのアマチュアやプロ達がいくつかのステージに別れライブをするという結構大きなイベントである。
私とアリスは乗り気はしなかったものの熱心に一緒に行こうという真奈に仕方なく承諾した。
現に、承諾した理由の中で真奈がゴリ押ししていたGIN様がいるというバンドTWINSが出るという事に少々興味が湧いたからだ。
GIN様こと攻略対象者の一人である黒川 白に似ている人物の情報が欲しかったと言うこともあり事実、もし同一人物なのなら聞きたい事が山ほどあった。
真っ先に聞かなければならない事…それはバンドの名前 ”TWINS”。
意味は双子…それがもし金城のエンドロールに関係する金城の双子の弟ならばどうにかして二人の過去とその二人を会わせなければいけない…それが二人の攻略への突破口だと思うからだ。
「人が多いですわね…暑苦しいですわ」
チケット売り場の行列に並ぶ中、フェス内も人混みに溢れかえっている事に驚きつつも夏の炎天下と言うこともありぎゅうぎゅうの人混みに不満の声を漏らす。
「そりゃあ、超有名なフェスだからね!このくらいの人混みなんか当然当然! それに多分このフェスに来た子達ほとんどGIN様狙いだろうし…」
真奈は行列に並ぶ女の子達の手に握られたTWINSのグッズを見ながらそう呟く。
「そんなに人気あるんだね。GIN様って人…」
「GIN様は特別だよー!見た目もそうだけど一番はその甘い歌声!あの声を一度聞いたら虜間違いなしだね」
んー、ハクの歌声も虜間違いなしの声だしなぁ…やっぱり生で聞いてみないと分からないかな?
「ちょっと、真奈前前ですわ!」
いつの間にかチケット売り場の最前列まで来ていた事に気づき前にいる真奈にアリスが声をかける。
「あ、やばっ!」
慌てて前に詰め直しチケットを売るスタッフの人に入場券とフェス内で使える出店のチケット買い受け取るとようやく一時間半かけてフェス内に入る事が出来た。
「この出店ようのチケットってどう使用すればいいんですの?」
アリスが受け取ったお食事券と書かれたチケットを見ながら呟く。
「百円って下に何枚か書かれてるでしょ?それを一枚ちぎって出店で買いたいものの値段事にそれを渡すの。例えば、ハンバーガーが一個二百円だとすると一枚百円のチケットを二枚出して二百円として出すの」
「でもそれだとすぐにチケットなくなってしまいますわ!全然足りませんわよ」
「その場合は再度受付でチケットを買ってまた使えばいいよ」
「ふ~ん、めんどくさいですわね」
「あはは…」
アリスさん、相変わらずのストレート…
あからさまにめんどくさそうな顔をするアリスに苦笑いをしながらもフェス内で食べられる出店に楽しみで早く回りたくてうずうずしていた。
「まずどこから回ろっか?」
「はいはーい!私はTWINSのグッズ売り場いきたーい!」
勢いよく手を挙げそういう真奈にすかさず却下する。
「だーめ!まずは腹ごしらえでしょ!グッズなんて後からでも買えるじゃん」
「ぶぅ~、GIN様のは特別なの!フェス始まる前にはすぐ完売しちゃうんだよ!今のうちに買わない買えないよ」
「はぁ…そんなに欲しいの?それ」
コクコクと頷く真奈に仕方ないとばかりに溜め息を一つつくと横でパンフレットを見ているアリスに声をかけた。
「アリス、真奈の行きたがってるTWINSのグッズ売り場から先に行っていい?」
「私は全然構いませんわよ?TWINSのライブ見るために来てるんですしグッズを買うのは当たり前ですわ」
「うわぁぁぁん!アリスだーすき!」
その言葉に真奈がすかさずアリスに飛びつき抱きつくと、アリスは暑苦しい筈なのに嫌な顔一つせずそれに笑顔で返す。
「いいから、行くなら早く行きますわよ?ずっとここにいたら暑さで夏バテしそうですわ」
「うんうん!すぐ行くー!早く行こっ!」
途端に元気に先に行く真奈を注意しつつも
暑い太陽の日差しを片目を瞑って見上げる。
熱中症にならないように気をつけよう…
首にひんやりグッズを巻きその上に汗を拭うタオルを巻きいつもの麦わら帽子をしっかり装備した状態の私は涼しくなることもなさそうな気温を感じながら切実に思った。
「TWINSのグッズ売り場はこちらになりまーす!お並びの方は列にお並びの上、ご購入をお願いします!」
フェスのスタッフの声が聞こえTWINSのグッズ売り場の行列に並ぶ。
「凄い行列だね…」
女性しかいないかと思われた行列の中に何人か男性も混じっている事に驚きを隠せないでいると前に並ぶ真奈が当然!とばかりに自前のTWINSのグッズを取り出す。
「じゃあ~ん!見て見て!これTWINSのデビュー時のポスターや最近の海バックでの水着生写真!超レアなんだよ」
目の前に差し出されたグッズを見ると何故かGIN様だけ鼻までかかる黒いマスクを付けていた。
「何でGIN様だけ黒いマスク付けてるの?」
「ん~とね、そこら辺のちゃんとした理由は分からないけど前に雑誌の記者がインタビューした時には”インパクトのため”って言ってたらしいんだけどファンの間では目立つのが嫌いな性格だから付けてるのかもって噂されてるんだぁ…」
「なるほど…でもよくマスク付けてて歌えるね」
「それはGIN様の声量と声質が凄いからだよ!だけど一度だけマスク外した事あるんだけどその時のGIN様の歌声いつもより遥かに倍にやばいんだって!TWINS専用のライブハウスがあるんだけど、そこでGIN様のある大事な人のために特別にマスクなしで歌ってライブハウスの空間全部がGIN様の音に包まれていつも以上に歌詞もメロディーも入っていく感じでそれはもう凄いんだよ!」
「へ~、GIN様の大事な人って?」
「ん~、そこはファンの間でも謎なのよね…」
誰にも知られてないTWINS”GIN”の秘密か…
もしかしたらだけど私の推測が確かなら何かしら関係あるのかな?
モヤモヤとした気持ちのまま行列に並んでいるといつの間にか順番が回りテーブルの上に並ぶ小物やTシャツに後ろの壁に飾られているポスターを見るとメンバーそれぞれのサイン入りグッズや写真アルバムやCDにメンバーそれぞれのミニキャラクターグッズがあった。
「ふふふ~ん♪私はこれとこれとこれ!」
「私はこのミニキャラクターという物にしますわ!」
真奈は次々にグッズを手にいっぱいに選び、アリスは可愛らしいミニキャラクターのグッズを選んだ。
んー、私はどれにしようかなぁ…
やっぱり無難にキーホルダーかな?
ミニキャラクターで型どられたキーホルダーの銀色の髪でいかにも生意気そうな顔のミニキャラクターを手に取った。
「これください」
「はい!四百五十三円になります」
お金を払うとキーホルダーをTWINSと書かれた黒の紙袋に入れそれを受け取る。
「ありがとうございました!もうすぐ始まるTWINSのライブもお楽しみください!」
グッズ売り場のスタッフに軽く会釈をしその場を後にすると腹ごなしのため出店エリアに向かった。
「アリス、ランチどうするー?色々売ってるみたいだけど…」
「そうですわね…ローストビーフがいいですわ!」
「いやいや、ローストビーフなんてこんな所に売ってるわけな…え!?何で売ってるの?」
アリスの指差した先を見るとローストビーフサンドイッチと書かれた看板が見え驚きのあまり目を見張る。
「普通にこういうとこだと売ってるよ」
「え!?あんな高級そうなのがこんなチケット一枚二枚でいいの?」
「今時ローストビーフなんて百円のチケット一枚や二枚普通ですわ」
アリスがさも当然と言わんばかりに言うとそれを聞いた真奈と雪は心の中で思った。
アリスが言っても説得力ないよ…
呆れた視線をアリスに投げかけながらもアリスの食べたいローストビーフの出店に入りローストビーフサンドイッチを三人分買う。
元々はアリスだけのつもりが目の前でローストビーフが切られていくのを見るとつい自分も食べたい衝動に駆られたのだ。
「ん~!美味しいっ!こんなの初めて…」
「ふふ、雪の初めてはまだまだ多そうね」
そりゃまぁ、貧乏少女ですから!
アリスの言葉を聞きながら心底幸せそうにローストビーフサンドイッチを頬張る。
「ところで次はどこ行くー?」
「んー、次は飲み物を買いたいですわ」
「飲み物かぁ…さっきフルーツジュースとかあった気がするなぁ」
「あ!私、次のお店行く前にお手洗い行って来るね」
真奈とアリスにそう言うと食べ終わったサンドイッチのゴミを片手にその場を後にしようとした所真奈に呼び止められる。
「あ!ちょっと待って!私達先にフルーツジュースのお店に行ってるから遅くなるようだったら先に頼んどくけど…どうする?」
「じゃあ、オレンジとバナナのミックスでお願い」
「おけ!じゃあ、先に行ってるね?」
「了解!」
真奈とアリスに別れを告げお手洗いを探しにステージ近くへと行くと何やら裏側で慌ただしく話し合いをしている人達を見つけ思わず草むらに身を潜め盗み聞きをする。
「おい、まだGINの奴来てねぇのかよ…」
「ああ、遅刻するとは言ってたがギリギリなんて事になったら許さねぇ!」
GIN?もしかしてこの人達TWINSのメンバーかな?
「レン、メールどうだった?返信来たか?」
「今向かってるって来たけど腹減ったから飯食ってから来るって…」
「あの野郎、そんな時間ねぇって言ってんのにっ…」
GINが来なくて困ってるって感じかな…?
「仕方ねぇ、俺があいつ見つけて連れてくる!」
「待てハルト!ライブ前にスタッフと確認するからそんな時間ねぇだろ」
「だけどよ、来るか来ないか分からねぇのに待ってられっかよ!」
バサッ
「…あ、あの!」
うぅ…思わず出ちゃったけど皆怖いんですけど…
草むらから飛び出して出たのはいいが苛立っているTWINSのメンバーの顔が怖すぎて声が震えた。
でも何とかしなきゃっ!
意をけして拳を握り締めると震える声のまま話す。
「わ、私がGINさん見つけて連れてきます!」
「は?お前誰だよ?ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
え、ここって関係者以外立ち入り禁止だったの!?
思わず来た道の方を見ると取れかけたプレートに関係者以外立ち入り禁止と書かれていた。
気づかなかった…て、今はそれどころじゃないじゃん!
「あ、えっと…間違えて入った事は謝ります!だけどその…私が必ずGINさん見つけて来ますので安心して待っててくださいっ!では!」
勢いよく頭を下げ叫ぶようにそう言い残すと返事を気がず出店エリアに向かって走り出す。
「何なんだ…あの女」
叫ぶように消えていった雪の後ろ姿を見ながらメンバーの一人がそう呟いた。
探すにさしたってどうやって見つけよう…
大体、GINさんって真奈が見せてくれた雑誌しか見たことないし…んー、雑誌で見る限りハクにそっくりだったからハクを見つける感じでいいのかな?
出店エリアをグルグル見渡しながら走っていると先程いたローストビーフサンドイッチを買った出店の近くで黒のニット帽とサングラスに黒の革ジャンとTシャツにジーンズ姿の男性に目が止まった。
んー、まさかだよね…?
徐々に近づいていくと携帯を見ながらローストビーフを頬張る男性が暑そうにTシャツをパタパタとさせそこから銀色のハートの片割れのネックレスがちらっと見えた。
あれは…金城先輩と同じネックレスだ。
でも、金城先輩がこんな所にいるわけないし…まさか…
「…は、はく?」
いつの間にか男性の目の前にいた私は見上げるようにおずおずと問いかける。
…はっ!何でハクなんて聞いちゃったんだろう?GINさん探してる筈なのにっ…
慌てて口に手をやると男性は突然腕を掴み走り出す。
「え、わっ!?ちょっ待って…」
突然の事に男性に流されるように引っ張られながらも走るがその掴まれている腕を見ながらどこかで感じた事のあるような感じに違和感を覚えた。
ハク…だよね?
まじまじと掴まれている腕と目の前で走る男性の背中を見比べる。
男性に引っ張られるがまま走った末、着いたのは先程身を潜めていたステージ裏の草むらだった。
「はぁ…はぁ…ねぇ、ハクだよね?」
呼吸が乱れながらも横で残り僅かなローストビーフサンドイッチを口に入れる男性を見やる。
「…何でお前がここにいる?」
「やっぱりハクだったんだ!えっと…それは真奈達に誘われたからであって…て、そうじゃなくて!ハク、早くTWINSのメンバーのとこに戻らないと駄目だよ!」
「!?…何でそんな事言うんだ?」
「え、だってハクがGINじゃないの?」
既にもうそれしか考えられない推測にそう答えるとハクは無言のまま付けていたサングラスを外した。
「…まさかお前にバレるなんて思わなかった」
露になったハクのいつもの鋭い黒い目が雪の瞳を見つめる。
「私もまさかハクがTWINSのGINだなんて思わなかったよ…」
「別に隠してたつもりはねぇけど、バレると色々面倒だし…」
んー、確かに友達がまさか芸能人だったりしたら普通は驚くよね…
バレた場合の事を頭の中で想像すると自分がもしハクの立場だったらと思うと凄く嫌だった。
「えっと、全然気にしてないから大丈夫だよ。別にハクが芸能人だろうと何であろうとハクがハクなのは変わらないし…まぁ、宇宙人とか言われたらさすがにびっくりするけど」
「ぷはっ!お前、宇宙人なんていたらびっくりするどろじゃねーよ!あはははっ」
隣でお腹を抱えて笑うハクを見ながら先程の申し訳なさそうな顔が笑顔になった事に安心した。
「あ!それより早くライブライブ!」
「あ、忘れてた。腹減ってたからサンドイッチ食っててつい夢中になっちまってさ…」
「腹減ったからってライブに遅れたら意味無いじゃん!皆メンバーの人達困ってたよ?もたもたしないで早く行って!」
グイグイと腕を引っ張るとハクは手に持っていた最後の一口のサンドイッチを私の口に押し込んだ。
「んぐっ!?」
「俺のライブ…ちゃんと見てろよ?ぜってー後悔させねぇから!」
笑顔でそう言い残しステージの方に走っていくハクを呆然と見つめながらつい見惚れてしまったハクの笑顔が頭から離れなかった。
ハクのライブが始まる五分前…
既に完全に満員状態のTWINSのステージ前に真奈のおかげで最前列でおしくらまんじゅう状態でライブが始まるのを三人で待っているとスタッフの注意を促す言葉がざわめくステージ前に響く。
「大変込み合っておりますのでお怪我のないよう少し間を空けて前にお詰めください!」
「アリス大丈夫?」
真奈と雪の間に挟まれて並ぶアリスに問いかけると意外にも興奮気味な顔で返ってきた。
「大丈夫ですわ!それより早くライブが楽しみでなりませんわ!」
「何か意外…アリスこういうぎゅうぎゅうな空間苦手そうだし」
「え?こんなのライブが始まると思えばへっちゃらですわよ!」
「あはは…」
アリスって意外にもこういうのいける口なんだ…何か可愛いかも。
興奮気味でまだかまだかとワクワクしたようなアリスの顔を見ながら心の中でそう呟く。
「まもなく始まりますので、TWINSを呼ぶカウントダウンをお願いします!」
スタッフの声に従ってステージ前に並ぶお客さん全員が揃ってカウントダウンをする。
「…ごー!よーん!さーん!にー!…いーち!」
バンッ!
その瞬間ステージの明かりが一瞬にしてつき暗くて見えなかったステージにTWINSのメンバーが姿を現した。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間ステージ前に並ぶお客さん全員の黄色い叫び声が響き渡りそれを合図にセンターに立つGIN姿のハクがギターを鳴らす。
「お前ら全員俺達の音楽の虜にしてやるよっ!」
叫ぶようにマイク越しに言うハクの声にその場にいる女性はともかく男性ですら目をハートにさせる。
だが、それだけでは終わらず歌が始まると蕩けるような甘く低いハクの歌声がステージ全体に響き渡り、その歌声に虜になるお客さんの中には息をするのも忘れて固まる者や気絶する者など症状は様々だが虜にならない人は誰一人としていなかった。
もちろん、隣にいる真奈とアリスも含めて。
さすがハクだな…歌だけで皆の心を掴んじゃった。
歌声を聞きながら歌うハクの姿を見つめていると突然雷が鳴り響き当たりが暗くなりステージについていたスポットライトが消えた。
「え…何?」
ざわめくステージ前に並ぶお客さん達の声に動揺の色が浮かぶ。
「雪、大丈夫?」
突然の雷に無意識に耳を塞いで体を縮こませていた私に心配そうな真奈の声がかかる。
「っ…私は大丈夫…それよりも…」
恐る恐る塞いでいた手を外しステージに立つハクを見ると突然の出来事にどうしたらいいか分からず固まるハクの姿があった。
ハク…
「…がん…れ…」
「雪…?」
「頑張れー!負けんなバカー!!」
叫び声にも似た声でステージに立つハクに向かって言い放つとその場にいたステージ前にいるお客さんも含めステージに立つTWINSメンバー全員がいっせいにこちらを見ると動揺していたお客さんが声がTWINSを応援する声に変わっていった。
「TWINSー!」
「歌ってー!」
雪によって変わった空気にステージに立つハクは周りには聞こえない声で小さく呟くと再度マイクを口元に近づける。
「…ちっ…あのバカ…」
「GIN…?」
「お前らー!俺達の音楽はまだまだこれからだぜー!…惚れすぎて倒れるなよ?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
ハクの言葉を合図に再び音楽を奏でるTWINSのメンバーにハクはお客さんの期待を答えるようにさっき以上の甘く低い誰もが見惚れてしまう歌声を響き渡せる。
程なくしてステージのスポットライトがつきTWINSのライブは後に伝説を残す程の大きな反響を呼んだという。
全曲歌い終わりライブが終ろうとする中で事件は突然起きたのだった。
「今日は俺達のライブを足場の悪い中見てくれてありがとうございます。色々ハプニングもありましたが…おい、ハク何して…」
メンバーの一人がマイクを元に戻しギターをメンバーに預けるハクに気づき問いかける。
「わりぃ…後頼むわ」
「は?」
そう言い残すとハクはステージ床に手をかけ勢いよくステージ前に飛び出すとその様子を呆然と見ながら固まるお客さんを避けながら一人の少女の腕を掴み固まる少女を気にせず走り出す。
「…え?ちょっ…えぇ!?」
ロックフェスとはロックを基準に様々なバンドのアマチュアやプロ達がいくつかのステージに別れライブをするという結構大きなイベントである。
私とアリスは乗り気はしなかったものの熱心に一緒に行こうという真奈に仕方なく承諾した。
現に、承諾した理由の中で真奈がゴリ押ししていたGIN様がいるというバンドTWINSが出るという事に少々興味が湧いたからだ。
GIN様こと攻略対象者の一人である黒川 白に似ている人物の情報が欲しかったと言うこともあり事実、もし同一人物なのなら聞きたい事が山ほどあった。
真っ先に聞かなければならない事…それはバンドの名前 ”TWINS”。
意味は双子…それがもし金城のエンドロールに関係する金城の双子の弟ならばどうにかして二人の過去とその二人を会わせなければいけない…それが二人の攻略への突破口だと思うからだ。
「人が多いですわね…暑苦しいですわ」
チケット売り場の行列に並ぶ中、フェス内も人混みに溢れかえっている事に驚きつつも夏の炎天下と言うこともありぎゅうぎゅうの人混みに不満の声を漏らす。
「そりゃあ、超有名なフェスだからね!このくらいの人混みなんか当然当然! それに多分このフェスに来た子達ほとんどGIN様狙いだろうし…」
真奈は行列に並ぶ女の子達の手に握られたTWINSのグッズを見ながらそう呟く。
「そんなに人気あるんだね。GIN様って人…」
「GIN様は特別だよー!見た目もそうだけど一番はその甘い歌声!あの声を一度聞いたら虜間違いなしだね」
んー、ハクの歌声も虜間違いなしの声だしなぁ…やっぱり生で聞いてみないと分からないかな?
「ちょっと、真奈前前ですわ!」
いつの間にかチケット売り場の最前列まで来ていた事に気づき前にいる真奈にアリスが声をかける。
「あ、やばっ!」
慌てて前に詰め直しチケットを売るスタッフの人に入場券とフェス内で使える出店のチケット買い受け取るとようやく一時間半かけてフェス内に入る事が出来た。
「この出店ようのチケットってどう使用すればいいんですの?」
アリスが受け取ったお食事券と書かれたチケットを見ながら呟く。
「百円って下に何枚か書かれてるでしょ?それを一枚ちぎって出店で買いたいものの値段事にそれを渡すの。例えば、ハンバーガーが一個二百円だとすると一枚百円のチケットを二枚出して二百円として出すの」
「でもそれだとすぐにチケットなくなってしまいますわ!全然足りませんわよ」
「その場合は再度受付でチケットを買ってまた使えばいいよ」
「ふ~ん、めんどくさいですわね」
「あはは…」
アリスさん、相変わらずのストレート…
あからさまにめんどくさそうな顔をするアリスに苦笑いをしながらもフェス内で食べられる出店に楽しみで早く回りたくてうずうずしていた。
「まずどこから回ろっか?」
「はいはーい!私はTWINSのグッズ売り場いきたーい!」
勢いよく手を挙げそういう真奈にすかさず却下する。
「だーめ!まずは腹ごしらえでしょ!グッズなんて後からでも買えるじゃん」
「ぶぅ~、GIN様のは特別なの!フェス始まる前にはすぐ完売しちゃうんだよ!今のうちに買わない買えないよ」
「はぁ…そんなに欲しいの?それ」
コクコクと頷く真奈に仕方ないとばかりに溜め息を一つつくと横でパンフレットを見ているアリスに声をかけた。
「アリス、真奈の行きたがってるTWINSのグッズ売り場から先に行っていい?」
「私は全然構いませんわよ?TWINSのライブ見るために来てるんですしグッズを買うのは当たり前ですわ」
「うわぁぁぁん!アリスだーすき!」
その言葉に真奈がすかさずアリスに飛びつき抱きつくと、アリスは暑苦しい筈なのに嫌な顔一つせずそれに笑顔で返す。
「いいから、行くなら早く行きますわよ?ずっとここにいたら暑さで夏バテしそうですわ」
「うんうん!すぐ行くー!早く行こっ!」
途端に元気に先に行く真奈を注意しつつも
暑い太陽の日差しを片目を瞑って見上げる。
熱中症にならないように気をつけよう…
首にひんやりグッズを巻きその上に汗を拭うタオルを巻きいつもの麦わら帽子をしっかり装備した状態の私は涼しくなることもなさそうな気温を感じながら切実に思った。
「TWINSのグッズ売り場はこちらになりまーす!お並びの方は列にお並びの上、ご購入をお願いします!」
フェスのスタッフの声が聞こえTWINSのグッズ売り場の行列に並ぶ。
「凄い行列だね…」
女性しかいないかと思われた行列の中に何人か男性も混じっている事に驚きを隠せないでいると前に並ぶ真奈が当然!とばかりに自前のTWINSのグッズを取り出す。
「じゃあ~ん!見て見て!これTWINSのデビュー時のポスターや最近の海バックでの水着生写真!超レアなんだよ」
目の前に差し出されたグッズを見ると何故かGIN様だけ鼻までかかる黒いマスクを付けていた。
「何でGIN様だけ黒いマスク付けてるの?」
「ん~とね、そこら辺のちゃんとした理由は分からないけど前に雑誌の記者がインタビューした時には”インパクトのため”って言ってたらしいんだけどファンの間では目立つのが嫌いな性格だから付けてるのかもって噂されてるんだぁ…」
「なるほど…でもよくマスク付けてて歌えるね」
「それはGIN様の声量と声質が凄いからだよ!だけど一度だけマスク外した事あるんだけどその時のGIN様の歌声いつもより遥かに倍にやばいんだって!TWINS専用のライブハウスがあるんだけど、そこでGIN様のある大事な人のために特別にマスクなしで歌ってライブハウスの空間全部がGIN様の音に包まれていつも以上に歌詞もメロディーも入っていく感じでそれはもう凄いんだよ!」
「へ~、GIN様の大事な人って?」
「ん~、そこはファンの間でも謎なのよね…」
誰にも知られてないTWINS”GIN”の秘密か…
もしかしたらだけど私の推測が確かなら何かしら関係あるのかな?
モヤモヤとした気持ちのまま行列に並んでいるといつの間にか順番が回りテーブルの上に並ぶ小物やTシャツに後ろの壁に飾られているポスターを見るとメンバーそれぞれのサイン入りグッズや写真アルバムやCDにメンバーそれぞれのミニキャラクターグッズがあった。
「ふふふ~ん♪私はこれとこれとこれ!」
「私はこのミニキャラクターという物にしますわ!」
真奈は次々にグッズを手にいっぱいに選び、アリスは可愛らしいミニキャラクターのグッズを選んだ。
んー、私はどれにしようかなぁ…
やっぱり無難にキーホルダーかな?
ミニキャラクターで型どられたキーホルダーの銀色の髪でいかにも生意気そうな顔のミニキャラクターを手に取った。
「これください」
「はい!四百五十三円になります」
お金を払うとキーホルダーをTWINSと書かれた黒の紙袋に入れそれを受け取る。
「ありがとうございました!もうすぐ始まるTWINSのライブもお楽しみください!」
グッズ売り場のスタッフに軽く会釈をしその場を後にすると腹ごなしのため出店エリアに向かった。
「アリス、ランチどうするー?色々売ってるみたいだけど…」
「そうですわね…ローストビーフがいいですわ!」
「いやいや、ローストビーフなんてこんな所に売ってるわけな…え!?何で売ってるの?」
アリスの指差した先を見るとローストビーフサンドイッチと書かれた看板が見え驚きのあまり目を見張る。
「普通にこういうとこだと売ってるよ」
「え!?あんな高級そうなのがこんなチケット一枚二枚でいいの?」
「今時ローストビーフなんて百円のチケット一枚や二枚普通ですわ」
アリスがさも当然と言わんばかりに言うとそれを聞いた真奈と雪は心の中で思った。
アリスが言っても説得力ないよ…
呆れた視線をアリスに投げかけながらもアリスの食べたいローストビーフの出店に入りローストビーフサンドイッチを三人分買う。
元々はアリスだけのつもりが目の前でローストビーフが切られていくのを見るとつい自分も食べたい衝動に駆られたのだ。
「ん~!美味しいっ!こんなの初めて…」
「ふふ、雪の初めてはまだまだ多そうね」
そりゃまぁ、貧乏少女ですから!
アリスの言葉を聞きながら心底幸せそうにローストビーフサンドイッチを頬張る。
「ところで次はどこ行くー?」
「んー、次は飲み物を買いたいですわ」
「飲み物かぁ…さっきフルーツジュースとかあった気がするなぁ」
「あ!私、次のお店行く前にお手洗い行って来るね」
真奈とアリスにそう言うと食べ終わったサンドイッチのゴミを片手にその場を後にしようとした所真奈に呼び止められる。
「あ!ちょっと待って!私達先にフルーツジュースのお店に行ってるから遅くなるようだったら先に頼んどくけど…どうする?」
「じゃあ、オレンジとバナナのミックスでお願い」
「おけ!じゃあ、先に行ってるね?」
「了解!」
真奈とアリスに別れを告げお手洗いを探しにステージ近くへと行くと何やら裏側で慌ただしく話し合いをしている人達を見つけ思わず草むらに身を潜め盗み聞きをする。
「おい、まだGINの奴来てねぇのかよ…」
「ああ、遅刻するとは言ってたがギリギリなんて事になったら許さねぇ!」
GIN?もしかしてこの人達TWINSのメンバーかな?
「レン、メールどうだった?返信来たか?」
「今向かってるって来たけど腹減ったから飯食ってから来るって…」
「あの野郎、そんな時間ねぇって言ってんのにっ…」
GINが来なくて困ってるって感じかな…?
「仕方ねぇ、俺があいつ見つけて連れてくる!」
「待てハルト!ライブ前にスタッフと確認するからそんな時間ねぇだろ」
「だけどよ、来るか来ないか分からねぇのに待ってられっかよ!」
バサッ
「…あ、あの!」
うぅ…思わず出ちゃったけど皆怖いんですけど…
草むらから飛び出して出たのはいいが苛立っているTWINSのメンバーの顔が怖すぎて声が震えた。
でも何とかしなきゃっ!
意をけして拳を握り締めると震える声のまま話す。
「わ、私がGINさん見つけて連れてきます!」
「は?お前誰だよ?ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
え、ここって関係者以外立ち入り禁止だったの!?
思わず来た道の方を見ると取れかけたプレートに関係者以外立ち入り禁止と書かれていた。
気づかなかった…て、今はそれどころじゃないじゃん!
「あ、えっと…間違えて入った事は謝ります!だけどその…私が必ずGINさん見つけて来ますので安心して待っててくださいっ!では!」
勢いよく頭を下げ叫ぶようにそう言い残すと返事を気がず出店エリアに向かって走り出す。
「何なんだ…あの女」
叫ぶように消えていった雪の後ろ姿を見ながらメンバーの一人がそう呟いた。
探すにさしたってどうやって見つけよう…
大体、GINさんって真奈が見せてくれた雑誌しか見たことないし…んー、雑誌で見る限りハクにそっくりだったからハクを見つける感じでいいのかな?
出店エリアをグルグル見渡しながら走っていると先程いたローストビーフサンドイッチを買った出店の近くで黒のニット帽とサングラスに黒の革ジャンとTシャツにジーンズ姿の男性に目が止まった。
んー、まさかだよね…?
徐々に近づいていくと携帯を見ながらローストビーフを頬張る男性が暑そうにTシャツをパタパタとさせそこから銀色のハートの片割れのネックレスがちらっと見えた。
あれは…金城先輩と同じネックレスだ。
でも、金城先輩がこんな所にいるわけないし…まさか…
「…は、はく?」
いつの間にか男性の目の前にいた私は見上げるようにおずおずと問いかける。
…はっ!何でハクなんて聞いちゃったんだろう?GINさん探してる筈なのにっ…
慌てて口に手をやると男性は突然腕を掴み走り出す。
「え、わっ!?ちょっ待って…」
突然の事に男性に流されるように引っ張られながらも走るがその掴まれている腕を見ながらどこかで感じた事のあるような感じに違和感を覚えた。
ハク…だよね?
まじまじと掴まれている腕と目の前で走る男性の背中を見比べる。
男性に引っ張られるがまま走った末、着いたのは先程身を潜めていたステージ裏の草むらだった。
「はぁ…はぁ…ねぇ、ハクだよね?」
呼吸が乱れながらも横で残り僅かなローストビーフサンドイッチを口に入れる男性を見やる。
「…何でお前がここにいる?」
「やっぱりハクだったんだ!えっと…それは真奈達に誘われたからであって…て、そうじゃなくて!ハク、早くTWINSのメンバーのとこに戻らないと駄目だよ!」
「!?…何でそんな事言うんだ?」
「え、だってハクがGINじゃないの?」
既にもうそれしか考えられない推測にそう答えるとハクは無言のまま付けていたサングラスを外した。
「…まさかお前にバレるなんて思わなかった」
露になったハクのいつもの鋭い黒い目が雪の瞳を見つめる。
「私もまさかハクがTWINSのGINだなんて思わなかったよ…」
「別に隠してたつもりはねぇけど、バレると色々面倒だし…」
んー、確かに友達がまさか芸能人だったりしたら普通は驚くよね…
バレた場合の事を頭の中で想像すると自分がもしハクの立場だったらと思うと凄く嫌だった。
「えっと、全然気にしてないから大丈夫だよ。別にハクが芸能人だろうと何であろうとハクがハクなのは変わらないし…まぁ、宇宙人とか言われたらさすがにびっくりするけど」
「ぷはっ!お前、宇宙人なんていたらびっくりするどろじゃねーよ!あはははっ」
隣でお腹を抱えて笑うハクを見ながら先程の申し訳なさそうな顔が笑顔になった事に安心した。
「あ!それより早くライブライブ!」
「あ、忘れてた。腹減ってたからサンドイッチ食っててつい夢中になっちまってさ…」
「腹減ったからってライブに遅れたら意味無いじゃん!皆メンバーの人達困ってたよ?もたもたしないで早く行って!」
グイグイと腕を引っ張るとハクは手に持っていた最後の一口のサンドイッチを私の口に押し込んだ。
「んぐっ!?」
「俺のライブ…ちゃんと見てろよ?ぜってー後悔させねぇから!」
笑顔でそう言い残しステージの方に走っていくハクを呆然と見つめながらつい見惚れてしまったハクの笑顔が頭から離れなかった。
ハクのライブが始まる五分前…
既に完全に満員状態のTWINSのステージ前に真奈のおかげで最前列でおしくらまんじゅう状態でライブが始まるのを三人で待っているとスタッフの注意を促す言葉がざわめくステージ前に響く。
「大変込み合っておりますのでお怪我のないよう少し間を空けて前にお詰めください!」
「アリス大丈夫?」
真奈と雪の間に挟まれて並ぶアリスに問いかけると意外にも興奮気味な顔で返ってきた。
「大丈夫ですわ!それより早くライブが楽しみでなりませんわ!」
「何か意外…アリスこういうぎゅうぎゅうな空間苦手そうだし」
「え?こんなのライブが始まると思えばへっちゃらですわよ!」
「あはは…」
アリスって意外にもこういうのいける口なんだ…何か可愛いかも。
興奮気味でまだかまだかとワクワクしたようなアリスの顔を見ながら心の中でそう呟く。
「まもなく始まりますので、TWINSを呼ぶカウントダウンをお願いします!」
スタッフの声に従ってステージ前に並ぶお客さん全員が揃ってカウントダウンをする。
「…ごー!よーん!さーん!にー!…いーち!」
バンッ!
その瞬間ステージの明かりが一瞬にしてつき暗くて見えなかったステージにTWINSのメンバーが姿を現した。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間ステージ前に並ぶお客さん全員の黄色い叫び声が響き渡りそれを合図にセンターに立つGIN姿のハクがギターを鳴らす。
「お前ら全員俺達の音楽の虜にしてやるよっ!」
叫ぶようにマイク越しに言うハクの声にその場にいる女性はともかく男性ですら目をハートにさせる。
だが、それだけでは終わらず歌が始まると蕩けるような甘く低いハクの歌声がステージ全体に響き渡り、その歌声に虜になるお客さんの中には息をするのも忘れて固まる者や気絶する者など症状は様々だが虜にならない人は誰一人としていなかった。
もちろん、隣にいる真奈とアリスも含めて。
さすがハクだな…歌だけで皆の心を掴んじゃった。
歌声を聞きながら歌うハクの姿を見つめていると突然雷が鳴り響き当たりが暗くなりステージについていたスポットライトが消えた。
「え…何?」
ざわめくステージ前に並ぶお客さん達の声に動揺の色が浮かぶ。
「雪、大丈夫?」
突然の雷に無意識に耳を塞いで体を縮こませていた私に心配そうな真奈の声がかかる。
「っ…私は大丈夫…それよりも…」
恐る恐る塞いでいた手を外しステージに立つハクを見ると突然の出来事にどうしたらいいか分からず固まるハクの姿があった。
ハク…
「…がん…れ…」
「雪…?」
「頑張れー!負けんなバカー!!」
叫び声にも似た声でステージに立つハクに向かって言い放つとその場にいたステージ前にいるお客さんも含めステージに立つTWINSメンバー全員がいっせいにこちらを見ると動揺していたお客さんが声がTWINSを応援する声に変わっていった。
「TWINSー!」
「歌ってー!」
雪によって変わった空気にステージに立つハクは周りには聞こえない声で小さく呟くと再度マイクを口元に近づける。
「…ちっ…あのバカ…」
「GIN…?」
「お前らー!俺達の音楽はまだまだこれからだぜー!…惚れすぎて倒れるなよ?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
ハクの言葉を合図に再び音楽を奏でるTWINSのメンバーにハクはお客さんの期待を答えるようにさっき以上の甘く低い誰もが見惚れてしまう歌声を響き渡せる。
程なくしてステージのスポットライトがつきTWINSのライブは後に伝説を残す程の大きな反響を呼んだという。
全曲歌い終わりライブが終ろうとする中で事件は突然起きたのだった。
「今日は俺達のライブを足場の悪い中見てくれてありがとうございます。色々ハプニングもありましたが…おい、ハク何して…」
メンバーの一人がマイクを元に戻しギターをメンバーに預けるハクに気づき問いかける。
「わりぃ…後頼むわ」
「は?」
そう言い残すとハクはステージ床に手をかけ勢いよくステージ前に飛び出すとその様子を呆然と見ながら固まるお客さんを避けながら一人の少女の腕を掴み固まる少女を気にせず走り出す。
「…え?ちょっ…えぇ!?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
799
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる