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5・海イベント
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最終日の三日目になり、今日は晴天で海も絶好の海水浴日和という最高の一日になりそうな予感!…のはずなのだがこれはいったい何があったのやら?
「ねぇ…真奈、あの二人どうしたの?」
目の前に座るアリスと高宮を見ながら横で無我夢中にエッグベネディクトを頬ばってる真奈に話しかける。
「ん?あー、あの二人?実はさ、一昨日雪が迷子になった事あるじゃん?その時に雪を探すために班わけしたんだけどアリスと高宮先輩が一緒の班になっちゃって、それで最初はお互い無言で気まづい感じだったんだけど雪を探してるうちにだんだん雪を取り合って言い合い?みたいな感じになっちゃって今では四六時中言い合いしながら睨み合ってる感じかな」
元凶は私かよ!
話すようになったのは嬉しいが私を間に挟んで喧嘩は止めて欲しい…
目の前で睨み合いながらも朝ご飯を食べている二人に呆れた視線を送りながらもこれ以上私を間に挟んで悪化しない事を切実に願った。
朝食が終わり各々ビーチに行く準備を済ませるため着替えと支度を自室で済ませ一階の大広間へと集まる。
ついでに言うと今日の私の服装は髪型を一日目と同じように両サイドで止め大きめの黒のダボッとパーカーに下には大人っぽい黒のレース付きビキニである。
手には必需品と今日の終わりにお土産屋さんに皆で行くというのでお財布を入れて置いた。
「皆、揃ったか?」
「んー、あ!葉山先生がまだいなーい!」
真奈が金城に向けて手を上げてそういうと一同周りを見渡す。
ガタガタガタンッ!
「え…」
すると階段から大きなバナナ型の浮き輪を手に落ちかけている葉山の姿があった。
「ちょっ、れい…葉山先生、何ですか?それ」
「あ、待たせて悪いな!何ですかって見れば分かるだろう…バナナ浮き輪だ!」
いやいやいや見れば分かるけど!何でバナナ浮き輪よ!
「実はな、前もって空気入れと一緒に持って来てたんだが一日目空気が中々入らなくてな…で、今日のために昨日の内にあらがじめ空気を入れて置いたってわけだ!」
どうだ!と言わんばかりのドヤ顔に一同冷たい視線を送った。
そこドヤ顔する所じゃないし!てか、れいにぃの無駄に大きな荷物の正体これか!
ため息つきたくなる衝動を何とかおさめつつもそれを本当にビーチまで持ち歩くのかと思うと絶対隣に歩きたくないと思った。
ゴツン!
「あいたっ!?」
ビーチに向かう途中、目の前の大きなバナナ浮き輪を担いで歩くれいにぃのせいで何度かバナナ浮き輪に当たり、誰かこの人の後ろ変わって欲しいと心底思ったが皆その様子に見て見ぬふりなのでこの願いは叶わないのだなと悟った。
「ちょっ…何度もそのバナナ浮き輪のせいで当たりまくってるんですけど」
「悪い悪い、あと少しでビーチに着くからもう少し我慢してくれ」
俺が一番後ろで歩くとは言わないんだな…この人
ため息混じりに諦めたように冷めた目でみるとそれを気にすることもなく鼻歌交じりで歩き出したので腹部を殴りたくなった。
ビーチに着くと一昨日と変わらず人が多く出店も賑わっており、一昨日と同じように灰原さんがパラソルに椅子を設置するとそこに荷物をそれぞれ置きさっそく海に入る真奈達や一昨日はあんまり回れなかったという高宮くんは出店に向かい今回はゆっくりしたいと言う翔先輩はパラソルの下で椅子に座り読書を始め、金城は一昨日と変わらず椅子に寝そべり睡眠を取り始めた。
「玲央様、桂馬様、フルーツなど如何でしょうか?」
灰原はテーブルの上でカットした様々なフルーツを皿の上に盛り付け椅子に座っている桂馬と寝そべっている金城に声をかける。
「あ、お言葉に甘えて頂きます」
桂馬はパイナップルを一つ摘むとそれを口に入れる。
「ん?フルーツか、いいな俺も頂こう…」
横でフルーツを食べる桂馬に気づきサングラスを頭の上に乗せると差し出されたフルーツに手を伸ばす。
「美味いな…さすが島国のフルーツは一際違う」
「それもあるけど灰原さんのカットの腕も凄いです。フルーツが綺麗に切れていて更に綺麗さが際立っている…」
「ふふ…勿体なきお言葉ありがとうございます」
灰原は小さくお辞儀をするとパラソルの下で蹲る雪に声をかける。
「相浦様も如何ですか?」
「わ、私は遠慮しておきます…」
「なんだ、雪まだいたのか?何でそんなところで蹲ってるんだ?」
パーカーのチャックを上まで閉めフードを被って体操座りをする雪に不審に思い問いかける。
「えっと…今回は海はいいかなって…」
「ふ~ん、お前さては水着になるのが嫌で脱ぎたくないだけだろ?」
ギクッ
図星かのように体を縮こませる雪に悪戯心が働いたのか更に畳み掛ける。
「仕方ない、俺が脱がせてやろう…ほら、こい」
その言葉にすぐ様首を横に振り拒否する雪に思わず吹き出す。
「ぷはっ…ふふふっ…冗談だ」
「冗談にしては度が過ぎますよっ!」
キッと睨みつけてくる雪の顔に嫌な気はせず満足感が湧く。
「はぁ…玲央、あんまり雪を虐めるな。病み上がりなんだから海に入るのを避けてるだけだろう。…大丈夫か?」
蹲る雪に手を差し伸べると途端に花が咲いたような笑顔を向けられ心が揺らぐ。
「ありがとうございます、翔先輩…」
「おい、俺には笑顔すらしないで睨みつけるくせに翔には笑顔ってなんだ?」
この対応の差に不服と言わんばかりに不満を漏らすと雪はさも当然とばかりにさらりと返す。
「会長より翔先輩の方が一段と優しくて親切で紳士だからに決まってるからじゃないですか」
「くっ…雪てめぇ…」
「っ…俺はそんなに優しくはないぞ?」
「ううん、そんな事ありませんよ。優しくて親切で大変な時いつも助けてくれて…翔先輩は紳士そのものです!」
「っ…嬉しいがあんまりそんな台詞言わないでくれ。…こっちが困る」
「へ?」
桂馬の言葉に自分が言った恥ずかしい言葉と自覚したのか真っ赤に顔を染める。
「…それに俺が助けるのはお前だけだ」
最後に小さく呟かれた言葉はあたふたしている雪にはどうやら届かなかったらしく可愛らしく両手で顔を隠す雪に手を伸ばし隠している両手を退かし顔を近づける。
「…話は最後まで聞くものだ」
「っ…あ、あんまり近いと私が困りますっ!」
「ふふ…すまん、俺にも悪戯心が働いたらしい」
益々顔を赤らめる雪に愛しい気持ちが加速する。
「おい、甘い空気を二人で漂わせるのはいいが翔いつからこいつの事名前で呼ぶようになったんだ?」
ガタッ
指摘するように金城が口を挟むとその言葉に動揺し思わず座っていた椅子から落ちそうになる。
「なっ…そ、それは…後輩だし、誘拐の件で仲良くなったからというかなんというか…」
口篭る桂馬に金城が不審な表情を隠せないでいると今まで真っ赤になってあたふたしていた雪が間に入る。
「あ、あの!私、出店で何か買って来ようかと思うんだけど何かいる?」
「パンケーキクリーム多め」
「じゃあ、俺は刺身で…」
「えっと…会長がパンケーキクリーム多めで翔先輩がお刺身ですね。じゃあ、行ってきます」
踵を返してその場を後にしようと出店に向かって足を向けた時、金城の鋭い声が雪の耳に届く。
「待て、先にパーカー脱いで行け」
「えっ…えっとそれは強制?」
ゆっくりと顔だけ引き攣り気味に振り返り金城にそう問うと当たり前だと言わんばかりに腕を組みニヤッと口元を上げる金城に肩を落とし諦めたように着ているパーカーのチャックを恐る恐る下げる。
「なっ…」
パーカーのチャックを下げるとその大人っぽい黒のレース付きビキニが顕になり、雪は人目を気にしているのか恥ずかしげにパーカーを脱ぎさると紐状の生地のせいか素肌の露出が多く桂馬はそれに顔を隠すように思わず手で覆う。
「ほう…やっぱり俺様の見立てに間違いはねぇな」
「間違い大有ですよ!こんな露出多めの水着なんて私には無理だし恥ずかしくて着れないです!」
「実際、着てんじゃねぇか」
「うっ…それは仕方なく着ているだけであって…」
「玲央!やり過ぎにも程があるぞっ…」
「えっ…」
突然、それまで黙って聞いていた桂馬が金城に向かって真っ赤になって抗議する。
「あん?何、そんなに怒ってんだよ。お前だって男なんだから嫌ではないだろ?」
「そ、それは…可愛いし似合ってると思うがそれとこれとじゃ話は別だ!」
!?
さり気なく誉め言葉を挟む桂馬に聞いている雪の方が赤くなる。
「はぁ…葵も葵で苦手だが翔も翔でそういうとこ苦手だ」
降参とばかりにため息を零すとそれを見ていた雪が驚きの眼差しで見つめる。
「何だ?」
「え、いやその…会長も誰かに負ける時あるんですね?」
「あぁ?誰が誰に負けたって?」
「え?それはその…会長が翔先輩に…」
「負けてねぇよ!俺は翔と葵は苦手だって言っただけだ」
「それを負けたって言うんじゃ…」
「苦手なだけで俺が上な事には変わりねぇだろ」
「あ…」
何があっても俺様は変わりないのね…呆れた。
確かにこの人はこういう人だった…
聞いたのが間違いだったと思い直しスルーしようと再び出店に足を向けるとデジャブかのようにまた低い声がこだまする。
「おい!俺のパンケーキは…」
「クリーム多めですよね!分かってますからそこでフルーツ食べるなり寝るなりして大人しくしていて下さい!」
半ば半ギレで言うとそそくさと走るようにその場を後にした。
いくつも並び賑わいがある出店エリアに着くとかき氷の出店の前で人々が一段と集まっている様子が見えた。
何だろう?何かあるのかな?
不思議に思い近づき人混みをかき分けると高宮とアリスが手に出店で買ったらしい沢山の食べ物を手に互いに睨みながら喧嘩をしていた。
あー…この騒ぎの張本人はこの人たちか…よし、引き返そう!
そう思い踵を返そうとするとその姿を見つけたアリスに呼び止められた。
「雪!」
しまった…んー、ここは聞こえなかった振りで逃げよう!
聞こえないとばかりに振り向かずその場を後にしようとしたがその瞬間二人によって腕を掴まれ逃げ道が消え去った。
「えっ!?わっ、ちょっ待っ…」
あっという間に二人の間に入ってしまった私は最悪と言わんばかりに睨み合い二人を見る。
「何するんですの?雪を見つけたのは私ですわ!離しなさいな!」
「雪ちゃんを一番探してたのは俺だから離す権利ないね!君が離しなよ?」
「貴方が一番なわけないでしょ!私が一番よ!」
「ちょっ…二人ともひとまず離してからしてよ?」
グイグイ二人によって腕を引っ張られ腕の痛みと右と左に揺れる体と脳に気分が悪くなる。
「ねぇ、雪ちゃんはかき氷とアイスクリームどっちが好き?」
「え?」
「アイスクリームですわよね?一昨日も好んで食べてましたし!」
「いいや、かき氷だよ!夏と言えばかき氷だって前に言ってたし!」
「ちょっ…貴方、雪の何を知っていますの?そんな庶民的な発想雪がするわけないですわ!」
いや、かなりの庶民なんですけど…
「君だって雪ちゃんの何を知ってんだよ?雪ちゃんは俺にアップルティーや手作りクッキーくれた事だってあるんだぞ!俺の方が雪ちゃんに愛されてる!」
いやいや、アップルティーもクッキーもただのお礼だし…それに高宮先輩の事そこまで好きではないと言うか…
「キー!私は雪と一緒にランチいつも食べてますし帰りのショッピングにも行ったこともありますのよ!私の方が愛されてますわ!」
「どうせ真奈ちゃんも一緒だろ?君だけが特別って感じじゃないんじゃないの?」
「そんな事ないですわ!雪は私の事が一番好きなんですもの!」
もう勝手にして…
言い合いの終わらない二人を他所に引っ張られる度に体とともに脳みそが揺れ続けた。
…程なくしてその二人の言い合いに終止符を付けたのは意外な人物だった。
ゴツン!
「”痛っ!”」
二人の頭にバナナ浮き輪が突如ぶつかり痛みで屈むと後ろからその持ち主である葉山が現れた。
「お前ら、店の前で何やってんだよ?店の店員さん達に迷惑だろ!喧嘩するなら他所でやれ」
「葉山先生!」
「ん?何でお前までこんなところにいるんだ?」
「えーと、事情話すと長くなるっていうか…んと、とにかく助かりました!じゃ…」
二人の言い合いが再び始まらない内にその場を急いで後にする。
また喧嘩が始まったら今度こそ逃げられないっ…
その後、二人と葉山がどうなったかは知らないが店の前で喧嘩は消えた事は確かだろう。
ああしてても一応教師なのでやる時はしっかり大人としてくれる人である。
人は見た目によらない…それが一番似合うのはれいにぃだと思う。
それはそうと黒王子と翔先輩のオーダー通り人気のある行列の出来たパンケーキの出店でクリーム多めのパンケーキを買い、次に魚介類を扱う新鮮な刺身を売っている出店で刺身を買って二人が待つ場所へと戻った。
「あの…ただいま戻りました」
既に二人とも椅子の上で爆睡中の二人に恐る恐る近づき声をかける。
「…ん」
「あの~、パンケーキクリーム多めにお刺身買って来ましたよ?起きないと食べちゃいますよ?」
ガバッ
はやっ!
食べるという言葉に反応したのか二人とも何事か!というように思いっきり起き互いに何かを探すように周りを見渡す。
「あ…おかえり」
「ただいまです」
翔先輩と真っ先に目が合い帰宅の挨拶をする。
「雪、遅いぞ!何やってたんだ」
笑顔が優しい翔先輩とは違い低い声で真っ先に苦情を言う会長に私のトキメキゲージが一気に下がった。
「はいはい、ご要望通りパンケーキクリーム多め買って来ましたから文句言わないでください」
「なら、よし!」
さっそく買って来たパンケーキを会長に渡すと機嫌よくしたのか灰原がカットしたフルーツと一緒に美味しそうに食べ始めた。
「はい、翔先輩にはお刺身です」
「人多いから結構並んでただろ?ありがとな…」
「い、いえ!これくらい全然大丈夫です…」
何だろう?この天と地の差の二人は…
全然違うわ…うんうん。
心の中でそう頷いていると天と称した翔先輩が情けをかけるようにお礼と称してお刺身を分けてくれた。
「んー!美味しいっ!」
「ははっ 本当に美味しそうな顔だな」
「だって本当に美味しいんですもん!この新鮮さといい…あ~もう、幸せ!」
「小さい幸せだな…」
「なっ…幸せに大きいも小さいも…んぐっ!?」
金城の方に振り向いた時、口に何やら押し込まれ言葉が遮られた。
「甘っ!美味しいっ!」
口に入れられたパンケーキの美味しさにすぐに笑顔に戻り幸せを噛み締める。
「ご褒美だ」
「え?」
「たまには飼い犬に褒美をやらないとキャンキャン煩いからな」
「なっ…誰が犬ですか!キャンキャンなんて鳴きませんよ!」
「ほら、要らねぇのか?」
「うっ…」
目の前に差し出されたクリームたっぷりの美味しそうなパンケーキにゴクリと唾を飲み込む。
「会長、絶対いい死に方しませんよ…」
「お前にだけは言われたくねぇ」
憎まれ口を叩きながらも目先の欲にそれ以上反論は出来ず目の前のパンケーキにかぶりつく。
「ん~!美味しいっ!」
「ふんっ…単純な奴め」
何とでも勝手に言っててください、今はパンケーキの方が大事!
我ながら現金な奴だとは思うがこの二人に挟まれるのは悪くないと思ったのだった。
「日が落ちて来たな…そろそろ街に行くか」
夕日が海に沈んでいき夕焼け色の空と真っ青なコバルトブルーの海が重なり合い更に美しさが増す。
「では、私が皆様にお声をお掛けしてきます…」
「ああ、灰原頼んだぞ」
灰原はバスタオルや飲み物を手に持つと未だに戻ってこないメンバーの元に向かった。
「はっ…はっくちゅんっ!」
「…風邪引く」
冷えてきた温度の中未だに水着姿だったため寒さによりくしゃみをすると見かねた翔先輩が後ろから脱いでいた黒のパーカーをかける。
「ありがとうございます…」
「だんだん日が沈むにつれて気温も下がるから気をつけた方がいい…」
「ですね」
程なくして皆が戻りビーチを後にすると、様々な島のお土産が売っている街に向かった。
街はビーチとは違い人は少なく北欧風の建物が並び周りを見渡せば可愛いらしいお店が並んでいた。
「ビーチと違って人が少ないのですのね…」
アリスがポツリと疑問を零すと隣に立つ睨み合いの相手である高宮が答える。
「夕方ってのもあるけどここは地元の人がほとんどだし、お土産屋さんの穴場ではあるけど観光客にはあんまり知られてないんだ。お土産買うならほとんどの観光客は海辺のお店の方に行くからね」
「つまり、質はいいけど人気がない繁盛していない店が多いって事ですのね」
アリスさん、それ棘と毒しかない言葉ですよ…
一歩下がって後ろで聞いていた私はアリスのストレートな言葉に顔が引き攣った。
…ん?てか、高宮くんのおでこどうしたんだろ?
よく見ると前髪が上げられそれをピンクのピンで止められているせいで顕になっているおでこがほんのりだが赤くなっていた。
「高宮くん、そのおでこどうしたの?」
「あー…えっとこれは…」
口篭る高宮に益々不思議に思い高宮の視線の先を見てみると私の隣に立つ人物を指していた。
「れいにぃ…何かやったの?」
皆には聞こえないぐらいの声量で葉山に問いかけると笑顔でさらり返ってきた。
「ん?ちょっとな…」
片手でデコピンのポーズをとる葉山に察しがつき呆れた顔を示す。
あー、なるほどね…
恐らくビーチでの出店の前で喧嘩をしていた二人にお説教とばかりに罰を下そうとしたがアリスは女の子なので手が出せず仕方なく高宮のみが被害にあったのだろう。
ま、自業自得か…
同情もする気のない彼らの行いに冷ややかな目を二人に向けた。
「ところで、無意識かもしれないが尽く見事にイベント避けて成功してるな?」
「確かにそうだね。気づかなかった…」
「多分、あの時お前が迷子になったせいでシナリオが完全に変わったのだろう…」
「あの時はまさか迷子になるなんて思わなかったし…ま、結果的には良かったけど」
「俺は良くねぇよ…実際、お前の事危険に晒しちまったし」
「それは私の自業自得だよ。れいにぃが気にすることないよ…ね?」
「んー…次、また危険そうなら今度は止めるからな?」
「分かってるって、もう過保護なんだかられいにぃは…」
「俺はお前の事が心配だからこそ…」
「はいはい、いつもありがとう!れいにぃ」
「お前なぁ…何でも笑顔で誤魔化されると思うなよ?」
「笑顔は女の特権だからね♪」
これでもかとニッコリ笑顔を向けるとれいにぃは一つため息をつき参ったとばかりに肩を落とす。
「そこのお嬢さん、可愛い小物はいかが?」
すると、突然目のあった老夫婦らしい奥さんから声をかけられ差し出された手の中の小さなマトリョーシカを見る。
「可愛い!マトリョーシカですか?」
「そうさ、うちの店では全部手作りで小物を作っているのが自慢なんだ。全部可愛いから少し見ていって!」
「じゃあ、お言葉に甘えてそうしようかな…?」
「何何ー?うわぁ、可愛いー!私も見る見る!」
奥さんと雪の様子に気づいた真奈がそそくさと走りよると隣から奥さんの手の中にあるマトリョーシカを覗き込み興味津々に中に入っていく。
「ちょっ、真奈!先に行っちゃダメでしょ!」
「俺も見たーい!待って真奈ちゃ~ん!」
「おい、龍!お前まで先に行くな!」
金城が咄嗟に呼び止めるが聞く耳を持たない赤井兄弟の片割れの赤井 龍はそのまま真奈の後を追うように走って行った。
「はぁ…ま、とりあえず中入るか」
「そうだね…」
一同、二人に続いて店内に入ると中は北欧風の民族的な小さな小物がいくつも飾られており全て手作りだと思うと凄いとしかいいようがなかった。
「可愛いー!アリスもこういうの好き?」
真奈が隣に来たアリスに問いかける。
「そうですわね…中々可愛らしいですわ」
目の前の様々な可愛らしいコースターを見つめながら微笑むアリスは一段と可愛らしくつい見惚れてしまいそうだった。
こういう時のアリスってほんと可愛いよなぁ…
「俺はこのクッキーにしよっと♪マトリョーシカのクッキー可愛い!」
「お前は花より団子か」
金城が呆れた目で龍を見るがそんなのお構い無しに当の本人は試食に勤しんでいた。
えっと…私はどうしよっかなぁ…?
周りを見渡しながらも店の奥に進んで行くとふとネックレスの前で止まっている高宮に気づき声をかける。
「高宮くん、ネックレスにするの?」
「えっ…ああ、んー買うつもりはないんだけどね」
「じゃあ、何でネックレスずっと見てるの?」
「姉貴に買おうかなって思ったんだけど…やっぱいいや」
「お姉さんいるの?」
「いるよー、めちゃくちゃ美人だけどめちゃくちゃ怖い姉が四人」
「そんな事いってたら後で何か言われるよ?」
「大丈夫大丈夫、皆嫁入りしてもういないから」
「え、お姉さん皆結婚してるんだね」
「うん、政略結婚だけどね。まぁ、親のために皆してるもんだし拒否権とかないから…」
あ…確か、高宮くんの家は色々厳しいってれいにぃが言ってたな…
「えっと…」
何か話題変えた方がいいのかな?
「あ!マトリョーシカ!ねぇ、マトリョーシカとかどうかな?お土産!」
先程手渡されたマトリョーシカに気づき慌てて話題を変える。
「ほんとだ、可愛いね」
「うんうん!この一番小さいマトリョーシカが何ともいえない可愛さっていうか…」
「雪ちゃん…」
「はい?」
「気を遣わせちゃってごめんね?大丈夫だからあからさまに笑顔作らなくて大丈夫だよ」
「あ…えっと…こういう話正直よく分からなくて…その私の家、皆と違って一般家庭の下の貧乏家庭だからセレブの気持ちとか分からないけど家族はセレブや貧乏家庭でも変わらないと思うんだよね」
「俺は変わると思うな…」
「え…」
「んー、やっぱり話題変えよっか?俺もこんな話嫌いだし、楽しい話がいいよね!雪ちゃんに似合うのは…このネックレスとかどうかな?」
「え…ちょっ…高宮くん!?」
目の前に飾られているネックレスの中でトパーズ色の石をベースに星座が書かれたネックレスを首に付ける。
「ひゃっ!?冷たいっ…」
高宮の指が項に触れ恥ずかしい声が漏れる。
「えっと…雪ちゃんって首弱い系?」
「うぐっ…そ、そんな事は…」
すると、高宮の冷たい指先が今度は項をなぞるようにそった触れ背筋がゾクッとし無意識に首を縮こませる。
「ひゃうっ!?…うぅ」
「ごめんごめん、つい雪ちゃんが可愛くて…」
「高宮くんのそういうとこ嫌いっ…」
半睨みで睨みつけると少なからずショックを受けたのか慌てて弁解する。
「も、もうしません!だから嫌いにならないで!ね?」
身振り手振りで一生懸命謝る高宮につい小さく笑顔が零れる。
「ふふっ…」
「へ?」
「このネックレス可愛いね。これにしよっかな…」
「え、あ…うん!そうだね、可愛い可愛い…」
何だか動揺したような高宮に不審がりながらも首に飾られたトパーズ色のネックレスを触る。
「トパーズか…確か私の誕生石だったかな?」
「え?雪ちゃんの誕生日って十一月なの?」
「うん、十一月の十一日だよ」
「え、一揃いだ。凄い」
「何か縁起がいい日ならいいけどあんまりいい思い出ないな…今年はいい事あるといいなぁ…な~んてね?ふふっ」
「いい事あるよ!絶対!てか、俺がいい日にしてあげる」
「期待しないで待ってるよ。約束は簡単ににするものじゃないからね」
「あら、お嬢さんトパーズかい?」
夢中になって話し込んでいると後ろからこの店の店主らしい老夫婦のおじさんが声がかかる。
「トパーズは無色透明の石で色んな色の石に変わるから綺麗なんだ。お嬢さんにぴったりだね~」
「え?私にぴったり?」
店主は周りをキョロキョロと見渡すと雪の耳元にこっそり話す。
「色んな若い顔のいいあんちゃん達に囲まれて嬢ちゃんがどんな色に染まるか楽しみだって言うことだがね…」
「!?そ…それは、私にはありえません!」
思わぬ言葉に首を全力で横に振り否定するがニヤニヤとする店主には効かないようだ…
それを言うならアリスやこの恋愛ゲームの主人公である真奈の方がぴったりなのに…
店主の言葉に呆れながらも結局、勧められたトパーズ色の石のネックレスと優と夢や日頃お世話になっているバイトの皆にお菓子をいくつか買うことにした。
各々、気に入ったお土産を買うと日が落ちる前に舘に戻り朝早い帰りのジェット機のためにいつもより早く就寝につき、朝は慌ただしく帰り支度や朝食を済ませ金城家専用のジェット機が着くと皆三日間の疲れが出たのかジェット機の中では爆睡状態であった。
「ぐごぉ~…」
「スピースピー…」
この状況どうにかして…眠れない!
右に真奈・アリス、左に高宮・龍・遼が各々真ん中に挟まれて座る私にもたれ掛かり爆睡中という状況に肩に子泣きじじいが乗っているような程に重く、着いた時の肩凝りに泣きそうだった。
こうして、波乱の予感しかなかった海のイベント終始個人的には災難な状況で終わったが無事計画していた通り予定通りのイベントは避けられ、また新たなイベントのおかげでほんの少しだがエンドロールに近づいた気がした。
この裏に潜む正体不明の転生者は未だに見えないが私はまだこの戦いに負ける気はない…
「ねぇ…真奈、あの二人どうしたの?」
目の前に座るアリスと高宮を見ながら横で無我夢中にエッグベネディクトを頬ばってる真奈に話しかける。
「ん?あー、あの二人?実はさ、一昨日雪が迷子になった事あるじゃん?その時に雪を探すために班わけしたんだけどアリスと高宮先輩が一緒の班になっちゃって、それで最初はお互い無言で気まづい感じだったんだけど雪を探してるうちにだんだん雪を取り合って言い合い?みたいな感じになっちゃって今では四六時中言い合いしながら睨み合ってる感じかな」
元凶は私かよ!
話すようになったのは嬉しいが私を間に挟んで喧嘩は止めて欲しい…
目の前で睨み合いながらも朝ご飯を食べている二人に呆れた視線を送りながらもこれ以上私を間に挟んで悪化しない事を切実に願った。
朝食が終わり各々ビーチに行く準備を済ませるため着替えと支度を自室で済ませ一階の大広間へと集まる。
ついでに言うと今日の私の服装は髪型を一日目と同じように両サイドで止め大きめの黒のダボッとパーカーに下には大人っぽい黒のレース付きビキニである。
手には必需品と今日の終わりにお土産屋さんに皆で行くというのでお財布を入れて置いた。
「皆、揃ったか?」
「んー、あ!葉山先生がまだいなーい!」
真奈が金城に向けて手を上げてそういうと一同周りを見渡す。
ガタガタガタンッ!
「え…」
すると階段から大きなバナナ型の浮き輪を手に落ちかけている葉山の姿があった。
「ちょっ、れい…葉山先生、何ですか?それ」
「あ、待たせて悪いな!何ですかって見れば分かるだろう…バナナ浮き輪だ!」
いやいやいや見れば分かるけど!何でバナナ浮き輪よ!
「実はな、前もって空気入れと一緒に持って来てたんだが一日目空気が中々入らなくてな…で、今日のために昨日の内にあらがじめ空気を入れて置いたってわけだ!」
どうだ!と言わんばかりのドヤ顔に一同冷たい視線を送った。
そこドヤ顔する所じゃないし!てか、れいにぃの無駄に大きな荷物の正体これか!
ため息つきたくなる衝動を何とかおさめつつもそれを本当にビーチまで持ち歩くのかと思うと絶対隣に歩きたくないと思った。
ゴツン!
「あいたっ!?」
ビーチに向かう途中、目の前の大きなバナナ浮き輪を担いで歩くれいにぃのせいで何度かバナナ浮き輪に当たり、誰かこの人の後ろ変わって欲しいと心底思ったが皆その様子に見て見ぬふりなのでこの願いは叶わないのだなと悟った。
「ちょっ…何度もそのバナナ浮き輪のせいで当たりまくってるんですけど」
「悪い悪い、あと少しでビーチに着くからもう少し我慢してくれ」
俺が一番後ろで歩くとは言わないんだな…この人
ため息混じりに諦めたように冷めた目でみるとそれを気にすることもなく鼻歌交じりで歩き出したので腹部を殴りたくなった。
ビーチに着くと一昨日と変わらず人が多く出店も賑わっており、一昨日と同じように灰原さんがパラソルに椅子を設置するとそこに荷物をそれぞれ置きさっそく海に入る真奈達や一昨日はあんまり回れなかったという高宮くんは出店に向かい今回はゆっくりしたいと言う翔先輩はパラソルの下で椅子に座り読書を始め、金城は一昨日と変わらず椅子に寝そべり睡眠を取り始めた。
「玲央様、桂馬様、フルーツなど如何でしょうか?」
灰原はテーブルの上でカットした様々なフルーツを皿の上に盛り付け椅子に座っている桂馬と寝そべっている金城に声をかける。
「あ、お言葉に甘えて頂きます」
桂馬はパイナップルを一つ摘むとそれを口に入れる。
「ん?フルーツか、いいな俺も頂こう…」
横でフルーツを食べる桂馬に気づきサングラスを頭の上に乗せると差し出されたフルーツに手を伸ばす。
「美味いな…さすが島国のフルーツは一際違う」
「それもあるけど灰原さんのカットの腕も凄いです。フルーツが綺麗に切れていて更に綺麗さが際立っている…」
「ふふ…勿体なきお言葉ありがとうございます」
灰原は小さくお辞儀をするとパラソルの下で蹲る雪に声をかける。
「相浦様も如何ですか?」
「わ、私は遠慮しておきます…」
「なんだ、雪まだいたのか?何でそんなところで蹲ってるんだ?」
パーカーのチャックを上まで閉めフードを被って体操座りをする雪に不審に思い問いかける。
「えっと…今回は海はいいかなって…」
「ふ~ん、お前さては水着になるのが嫌で脱ぎたくないだけだろ?」
ギクッ
図星かのように体を縮こませる雪に悪戯心が働いたのか更に畳み掛ける。
「仕方ない、俺が脱がせてやろう…ほら、こい」
その言葉にすぐ様首を横に振り拒否する雪に思わず吹き出す。
「ぷはっ…ふふふっ…冗談だ」
「冗談にしては度が過ぎますよっ!」
キッと睨みつけてくる雪の顔に嫌な気はせず満足感が湧く。
「はぁ…玲央、あんまり雪を虐めるな。病み上がりなんだから海に入るのを避けてるだけだろう。…大丈夫か?」
蹲る雪に手を差し伸べると途端に花が咲いたような笑顔を向けられ心が揺らぐ。
「ありがとうございます、翔先輩…」
「おい、俺には笑顔すらしないで睨みつけるくせに翔には笑顔ってなんだ?」
この対応の差に不服と言わんばかりに不満を漏らすと雪はさも当然とばかりにさらりと返す。
「会長より翔先輩の方が一段と優しくて親切で紳士だからに決まってるからじゃないですか」
「くっ…雪てめぇ…」
「っ…俺はそんなに優しくはないぞ?」
「ううん、そんな事ありませんよ。優しくて親切で大変な時いつも助けてくれて…翔先輩は紳士そのものです!」
「っ…嬉しいがあんまりそんな台詞言わないでくれ。…こっちが困る」
「へ?」
桂馬の言葉に自分が言った恥ずかしい言葉と自覚したのか真っ赤に顔を染める。
「…それに俺が助けるのはお前だけだ」
最後に小さく呟かれた言葉はあたふたしている雪にはどうやら届かなかったらしく可愛らしく両手で顔を隠す雪に手を伸ばし隠している両手を退かし顔を近づける。
「…話は最後まで聞くものだ」
「っ…あ、あんまり近いと私が困りますっ!」
「ふふ…すまん、俺にも悪戯心が働いたらしい」
益々顔を赤らめる雪に愛しい気持ちが加速する。
「おい、甘い空気を二人で漂わせるのはいいが翔いつからこいつの事名前で呼ぶようになったんだ?」
ガタッ
指摘するように金城が口を挟むとその言葉に動揺し思わず座っていた椅子から落ちそうになる。
「なっ…そ、それは…後輩だし、誘拐の件で仲良くなったからというかなんというか…」
口篭る桂馬に金城が不審な表情を隠せないでいると今まで真っ赤になってあたふたしていた雪が間に入る。
「あ、あの!私、出店で何か買って来ようかと思うんだけど何かいる?」
「パンケーキクリーム多め」
「じゃあ、俺は刺身で…」
「えっと…会長がパンケーキクリーム多めで翔先輩がお刺身ですね。じゃあ、行ってきます」
踵を返してその場を後にしようと出店に向かって足を向けた時、金城の鋭い声が雪の耳に届く。
「待て、先にパーカー脱いで行け」
「えっ…えっとそれは強制?」
ゆっくりと顔だけ引き攣り気味に振り返り金城にそう問うと当たり前だと言わんばかりに腕を組みニヤッと口元を上げる金城に肩を落とし諦めたように着ているパーカーのチャックを恐る恐る下げる。
「なっ…」
パーカーのチャックを下げるとその大人っぽい黒のレース付きビキニが顕になり、雪は人目を気にしているのか恥ずかしげにパーカーを脱ぎさると紐状の生地のせいか素肌の露出が多く桂馬はそれに顔を隠すように思わず手で覆う。
「ほう…やっぱり俺様の見立てに間違いはねぇな」
「間違い大有ですよ!こんな露出多めの水着なんて私には無理だし恥ずかしくて着れないです!」
「実際、着てんじゃねぇか」
「うっ…それは仕方なく着ているだけであって…」
「玲央!やり過ぎにも程があるぞっ…」
「えっ…」
突然、それまで黙って聞いていた桂馬が金城に向かって真っ赤になって抗議する。
「あん?何、そんなに怒ってんだよ。お前だって男なんだから嫌ではないだろ?」
「そ、それは…可愛いし似合ってると思うがそれとこれとじゃ話は別だ!」
!?
さり気なく誉め言葉を挟む桂馬に聞いている雪の方が赤くなる。
「はぁ…葵も葵で苦手だが翔も翔でそういうとこ苦手だ」
降参とばかりにため息を零すとそれを見ていた雪が驚きの眼差しで見つめる。
「何だ?」
「え、いやその…会長も誰かに負ける時あるんですね?」
「あぁ?誰が誰に負けたって?」
「え?それはその…会長が翔先輩に…」
「負けてねぇよ!俺は翔と葵は苦手だって言っただけだ」
「それを負けたって言うんじゃ…」
「苦手なだけで俺が上な事には変わりねぇだろ」
「あ…」
何があっても俺様は変わりないのね…呆れた。
確かにこの人はこういう人だった…
聞いたのが間違いだったと思い直しスルーしようと再び出店に足を向けるとデジャブかのようにまた低い声がこだまする。
「おい!俺のパンケーキは…」
「クリーム多めですよね!分かってますからそこでフルーツ食べるなり寝るなりして大人しくしていて下さい!」
半ば半ギレで言うとそそくさと走るようにその場を後にした。
いくつも並び賑わいがある出店エリアに着くとかき氷の出店の前で人々が一段と集まっている様子が見えた。
何だろう?何かあるのかな?
不思議に思い近づき人混みをかき分けると高宮とアリスが手に出店で買ったらしい沢山の食べ物を手に互いに睨みながら喧嘩をしていた。
あー…この騒ぎの張本人はこの人たちか…よし、引き返そう!
そう思い踵を返そうとするとその姿を見つけたアリスに呼び止められた。
「雪!」
しまった…んー、ここは聞こえなかった振りで逃げよう!
聞こえないとばかりに振り向かずその場を後にしようとしたがその瞬間二人によって腕を掴まれ逃げ道が消え去った。
「えっ!?わっ、ちょっ待っ…」
あっという間に二人の間に入ってしまった私は最悪と言わんばかりに睨み合い二人を見る。
「何するんですの?雪を見つけたのは私ですわ!離しなさいな!」
「雪ちゃんを一番探してたのは俺だから離す権利ないね!君が離しなよ?」
「貴方が一番なわけないでしょ!私が一番よ!」
「ちょっ…二人ともひとまず離してからしてよ?」
グイグイ二人によって腕を引っ張られ腕の痛みと右と左に揺れる体と脳に気分が悪くなる。
「ねぇ、雪ちゃんはかき氷とアイスクリームどっちが好き?」
「え?」
「アイスクリームですわよね?一昨日も好んで食べてましたし!」
「いいや、かき氷だよ!夏と言えばかき氷だって前に言ってたし!」
「ちょっ…貴方、雪の何を知っていますの?そんな庶民的な発想雪がするわけないですわ!」
いや、かなりの庶民なんですけど…
「君だって雪ちゃんの何を知ってんだよ?雪ちゃんは俺にアップルティーや手作りクッキーくれた事だってあるんだぞ!俺の方が雪ちゃんに愛されてる!」
いやいや、アップルティーもクッキーもただのお礼だし…それに高宮先輩の事そこまで好きではないと言うか…
「キー!私は雪と一緒にランチいつも食べてますし帰りのショッピングにも行ったこともありますのよ!私の方が愛されてますわ!」
「どうせ真奈ちゃんも一緒だろ?君だけが特別って感じじゃないんじゃないの?」
「そんな事ないですわ!雪は私の事が一番好きなんですもの!」
もう勝手にして…
言い合いの終わらない二人を他所に引っ張られる度に体とともに脳みそが揺れ続けた。
…程なくしてその二人の言い合いに終止符を付けたのは意外な人物だった。
ゴツン!
「”痛っ!”」
二人の頭にバナナ浮き輪が突如ぶつかり痛みで屈むと後ろからその持ち主である葉山が現れた。
「お前ら、店の前で何やってんだよ?店の店員さん達に迷惑だろ!喧嘩するなら他所でやれ」
「葉山先生!」
「ん?何でお前までこんなところにいるんだ?」
「えーと、事情話すと長くなるっていうか…んと、とにかく助かりました!じゃ…」
二人の言い合いが再び始まらない内にその場を急いで後にする。
また喧嘩が始まったら今度こそ逃げられないっ…
その後、二人と葉山がどうなったかは知らないが店の前で喧嘩は消えた事は確かだろう。
ああしてても一応教師なのでやる時はしっかり大人としてくれる人である。
人は見た目によらない…それが一番似合うのはれいにぃだと思う。
それはそうと黒王子と翔先輩のオーダー通り人気のある行列の出来たパンケーキの出店でクリーム多めのパンケーキを買い、次に魚介類を扱う新鮮な刺身を売っている出店で刺身を買って二人が待つ場所へと戻った。
「あの…ただいま戻りました」
既に二人とも椅子の上で爆睡中の二人に恐る恐る近づき声をかける。
「…ん」
「あの~、パンケーキクリーム多めにお刺身買って来ましたよ?起きないと食べちゃいますよ?」
ガバッ
はやっ!
食べるという言葉に反応したのか二人とも何事か!というように思いっきり起き互いに何かを探すように周りを見渡す。
「あ…おかえり」
「ただいまです」
翔先輩と真っ先に目が合い帰宅の挨拶をする。
「雪、遅いぞ!何やってたんだ」
笑顔が優しい翔先輩とは違い低い声で真っ先に苦情を言う会長に私のトキメキゲージが一気に下がった。
「はいはい、ご要望通りパンケーキクリーム多め買って来ましたから文句言わないでください」
「なら、よし!」
さっそく買って来たパンケーキを会長に渡すと機嫌よくしたのか灰原がカットしたフルーツと一緒に美味しそうに食べ始めた。
「はい、翔先輩にはお刺身です」
「人多いから結構並んでただろ?ありがとな…」
「い、いえ!これくらい全然大丈夫です…」
何だろう?この天と地の差の二人は…
全然違うわ…うんうん。
心の中でそう頷いていると天と称した翔先輩が情けをかけるようにお礼と称してお刺身を分けてくれた。
「んー!美味しいっ!」
「ははっ 本当に美味しそうな顔だな」
「だって本当に美味しいんですもん!この新鮮さといい…あ~もう、幸せ!」
「小さい幸せだな…」
「なっ…幸せに大きいも小さいも…んぐっ!?」
金城の方に振り向いた時、口に何やら押し込まれ言葉が遮られた。
「甘っ!美味しいっ!」
口に入れられたパンケーキの美味しさにすぐに笑顔に戻り幸せを噛み締める。
「ご褒美だ」
「え?」
「たまには飼い犬に褒美をやらないとキャンキャン煩いからな」
「なっ…誰が犬ですか!キャンキャンなんて鳴きませんよ!」
「ほら、要らねぇのか?」
「うっ…」
目の前に差し出されたクリームたっぷりの美味しそうなパンケーキにゴクリと唾を飲み込む。
「会長、絶対いい死に方しませんよ…」
「お前にだけは言われたくねぇ」
憎まれ口を叩きながらも目先の欲にそれ以上反論は出来ず目の前のパンケーキにかぶりつく。
「ん~!美味しいっ!」
「ふんっ…単純な奴め」
何とでも勝手に言っててください、今はパンケーキの方が大事!
我ながら現金な奴だとは思うがこの二人に挟まれるのは悪くないと思ったのだった。
「日が落ちて来たな…そろそろ街に行くか」
夕日が海に沈んでいき夕焼け色の空と真っ青なコバルトブルーの海が重なり合い更に美しさが増す。
「では、私が皆様にお声をお掛けしてきます…」
「ああ、灰原頼んだぞ」
灰原はバスタオルや飲み物を手に持つと未だに戻ってこないメンバーの元に向かった。
「はっ…はっくちゅんっ!」
「…風邪引く」
冷えてきた温度の中未だに水着姿だったため寒さによりくしゃみをすると見かねた翔先輩が後ろから脱いでいた黒のパーカーをかける。
「ありがとうございます…」
「だんだん日が沈むにつれて気温も下がるから気をつけた方がいい…」
「ですね」
程なくして皆が戻りビーチを後にすると、様々な島のお土産が売っている街に向かった。
街はビーチとは違い人は少なく北欧風の建物が並び周りを見渡せば可愛いらしいお店が並んでいた。
「ビーチと違って人が少ないのですのね…」
アリスがポツリと疑問を零すと隣に立つ睨み合いの相手である高宮が答える。
「夕方ってのもあるけどここは地元の人がほとんどだし、お土産屋さんの穴場ではあるけど観光客にはあんまり知られてないんだ。お土産買うならほとんどの観光客は海辺のお店の方に行くからね」
「つまり、質はいいけど人気がない繁盛していない店が多いって事ですのね」
アリスさん、それ棘と毒しかない言葉ですよ…
一歩下がって後ろで聞いていた私はアリスのストレートな言葉に顔が引き攣った。
…ん?てか、高宮くんのおでこどうしたんだろ?
よく見ると前髪が上げられそれをピンクのピンで止められているせいで顕になっているおでこがほんのりだが赤くなっていた。
「高宮くん、そのおでこどうしたの?」
「あー…えっとこれは…」
口篭る高宮に益々不思議に思い高宮の視線の先を見てみると私の隣に立つ人物を指していた。
「れいにぃ…何かやったの?」
皆には聞こえないぐらいの声量で葉山に問いかけると笑顔でさらり返ってきた。
「ん?ちょっとな…」
片手でデコピンのポーズをとる葉山に察しがつき呆れた顔を示す。
あー、なるほどね…
恐らくビーチでの出店の前で喧嘩をしていた二人にお説教とばかりに罰を下そうとしたがアリスは女の子なので手が出せず仕方なく高宮のみが被害にあったのだろう。
ま、自業自得か…
同情もする気のない彼らの行いに冷ややかな目を二人に向けた。
「ところで、無意識かもしれないが尽く見事にイベント避けて成功してるな?」
「確かにそうだね。気づかなかった…」
「多分、あの時お前が迷子になったせいでシナリオが完全に変わったのだろう…」
「あの時はまさか迷子になるなんて思わなかったし…ま、結果的には良かったけど」
「俺は良くねぇよ…実際、お前の事危険に晒しちまったし」
「それは私の自業自得だよ。れいにぃが気にすることないよ…ね?」
「んー…次、また危険そうなら今度は止めるからな?」
「分かってるって、もう過保護なんだかられいにぃは…」
「俺はお前の事が心配だからこそ…」
「はいはい、いつもありがとう!れいにぃ」
「お前なぁ…何でも笑顔で誤魔化されると思うなよ?」
「笑顔は女の特権だからね♪」
これでもかとニッコリ笑顔を向けるとれいにぃは一つため息をつき参ったとばかりに肩を落とす。
「そこのお嬢さん、可愛い小物はいかが?」
すると、突然目のあった老夫婦らしい奥さんから声をかけられ差し出された手の中の小さなマトリョーシカを見る。
「可愛い!マトリョーシカですか?」
「そうさ、うちの店では全部手作りで小物を作っているのが自慢なんだ。全部可愛いから少し見ていって!」
「じゃあ、お言葉に甘えてそうしようかな…?」
「何何ー?うわぁ、可愛いー!私も見る見る!」
奥さんと雪の様子に気づいた真奈がそそくさと走りよると隣から奥さんの手の中にあるマトリョーシカを覗き込み興味津々に中に入っていく。
「ちょっ、真奈!先に行っちゃダメでしょ!」
「俺も見たーい!待って真奈ちゃ~ん!」
「おい、龍!お前まで先に行くな!」
金城が咄嗟に呼び止めるが聞く耳を持たない赤井兄弟の片割れの赤井 龍はそのまま真奈の後を追うように走って行った。
「はぁ…ま、とりあえず中入るか」
「そうだね…」
一同、二人に続いて店内に入ると中は北欧風の民族的な小さな小物がいくつも飾られており全て手作りだと思うと凄いとしかいいようがなかった。
「可愛いー!アリスもこういうの好き?」
真奈が隣に来たアリスに問いかける。
「そうですわね…中々可愛らしいですわ」
目の前の様々な可愛らしいコースターを見つめながら微笑むアリスは一段と可愛らしくつい見惚れてしまいそうだった。
こういう時のアリスってほんと可愛いよなぁ…
「俺はこのクッキーにしよっと♪マトリョーシカのクッキー可愛い!」
「お前は花より団子か」
金城が呆れた目で龍を見るがそんなのお構い無しに当の本人は試食に勤しんでいた。
えっと…私はどうしよっかなぁ…?
周りを見渡しながらも店の奥に進んで行くとふとネックレスの前で止まっている高宮に気づき声をかける。
「高宮くん、ネックレスにするの?」
「えっ…ああ、んー買うつもりはないんだけどね」
「じゃあ、何でネックレスずっと見てるの?」
「姉貴に買おうかなって思ったんだけど…やっぱいいや」
「お姉さんいるの?」
「いるよー、めちゃくちゃ美人だけどめちゃくちゃ怖い姉が四人」
「そんな事いってたら後で何か言われるよ?」
「大丈夫大丈夫、皆嫁入りしてもういないから」
「え、お姉さん皆結婚してるんだね」
「うん、政略結婚だけどね。まぁ、親のために皆してるもんだし拒否権とかないから…」
あ…確か、高宮くんの家は色々厳しいってれいにぃが言ってたな…
「えっと…」
何か話題変えた方がいいのかな?
「あ!マトリョーシカ!ねぇ、マトリョーシカとかどうかな?お土産!」
先程手渡されたマトリョーシカに気づき慌てて話題を変える。
「ほんとだ、可愛いね」
「うんうん!この一番小さいマトリョーシカが何ともいえない可愛さっていうか…」
「雪ちゃん…」
「はい?」
「気を遣わせちゃってごめんね?大丈夫だからあからさまに笑顔作らなくて大丈夫だよ」
「あ…えっと…こういう話正直よく分からなくて…その私の家、皆と違って一般家庭の下の貧乏家庭だからセレブの気持ちとか分からないけど家族はセレブや貧乏家庭でも変わらないと思うんだよね」
「俺は変わると思うな…」
「え…」
「んー、やっぱり話題変えよっか?俺もこんな話嫌いだし、楽しい話がいいよね!雪ちゃんに似合うのは…このネックレスとかどうかな?」
「え…ちょっ…高宮くん!?」
目の前に飾られているネックレスの中でトパーズ色の石をベースに星座が書かれたネックレスを首に付ける。
「ひゃっ!?冷たいっ…」
高宮の指が項に触れ恥ずかしい声が漏れる。
「えっと…雪ちゃんって首弱い系?」
「うぐっ…そ、そんな事は…」
すると、高宮の冷たい指先が今度は項をなぞるようにそった触れ背筋がゾクッとし無意識に首を縮こませる。
「ひゃうっ!?…うぅ」
「ごめんごめん、つい雪ちゃんが可愛くて…」
「高宮くんのそういうとこ嫌いっ…」
半睨みで睨みつけると少なからずショックを受けたのか慌てて弁解する。
「も、もうしません!だから嫌いにならないで!ね?」
身振り手振りで一生懸命謝る高宮につい小さく笑顔が零れる。
「ふふっ…」
「へ?」
「このネックレス可愛いね。これにしよっかな…」
「え、あ…うん!そうだね、可愛い可愛い…」
何だか動揺したような高宮に不審がりながらも首に飾られたトパーズ色のネックレスを触る。
「トパーズか…確か私の誕生石だったかな?」
「え?雪ちゃんの誕生日って十一月なの?」
「うん、十一月の十一日だよ」
「え、一揃いだ。凄い」
「何か縁起がいい日ならいいけどあんまりいい思い出ないな…今年はいい事あるといいなぁ…な~んてね?ふふっ」
「いい事あるよ!絶対!てか、俺がいい日にしてあげる」
「期待しないで待ってるよ。約束は簡単ににするものじゃないからね」
「あら、お嬢さんトパーズかい?」
夢中になって話し込んでいると後ろからこの店の店主らしい老夫婦のおじさんが声がかかる。
「トパーズは無色透明の石で色んな色の石に変わるから綺麗なんだ。お嬢さんにぴったりだね~」
「え?私にぴったり?」
店主は周りをキョロキョロと見渡すと雪の耳元にこっそり話す。
「色んな若い顔のいいあんちゃん達に囲まれて嬢ちゃんがどんな色に染まるか楽しみだって言うことだがね…」
「!?そ…それは、私にはありえません!」
思わぬ言葉に首を全力で横に振り否定するがニヤニヤとする店主には効かないようだ…
それを言うならアリスやこの恋愛ゲームの主人公である真奈の方がぴったりなのに…
店主の言葉に呆れながらも結局、勧められたトパーズ色の石のネックレスと優と夢や日頃お世話になっているバイトの皆にお菓子をいくつか買うことにした。
各々、気に入ったお土産を買うと日が落ちる前に舘に戻り朝早い帰りのジェット機のためにいつもより早く就寝につき、朝は慌ただしく帰り支度や朝食を済ませ金城家専用のジェット機が着くと皆三日間の疲れが出たのかジェット機の中では爆睡状態であった。
「ぐごぉ~…」
「スピースピー…」
この状況どうにかして…眠れない!
右に真奈・アリス、左に高宮・龍・遼が各々真ん中に挟まれて座る私にもたれ掛かり爆睡中という状況に肩に子泣きじじいが乗っているような程に重く、着いた時の肩凝りに泣きそうだった。
こうして、波乱の予感しかなかった海のイベント終始個人的には災難な状況で終わったが無事計画していた通り予定通りのイベントは避けられ、また新たなイベントのおかげでほんの少しだがエンドロールに近づいた気がした。
この裏に潜む正体不明の転生者は未だに見えないが私はまだこの戦いに負ける気はない…
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