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照らし合わされた情報

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朝から夏の暑い日差しが窓の隙間から差し込み何度か瞬きをすると寝ていた頭が徐々に覚めていく。

「あ…そうだ、九時にれいにぃが迎いに来るんだった」

むくりと重い体を起こし夏休みだからとまだ寝ている優と夢をラジオ体操のためいつもより早めに起こす。

「優!夢!ラジオ体操あるんだから夏休みだからっていつまでも寝てるんじゃない!」

「うわっ!?」

握って離さないバスタオルを引き剥がし起こすと引き剥がされた拍子に体ごとベットから落ちていった。

「姉ちゃん、いつもより起こすのはぇよ…もう少し寝かせて…」

「夢も…」

そう言って再びベットに戻ろうとする二人の首根っこを掴み頭を軽く叩く。

「痛てっ!?」

「今日は、お姉ちゃん大切な用事があるの!いいから起きるわよ。二度寝禁止!」

「何だよ、用事って?まさかついに…姉ちゃん彼氏出来たのか!?」

パシッ

「うっ!?」

「馬鹿なこと言ってないで早く起きないと朝食抜きだから!」

「やべ、急いで顔洗いに行くぞ!夢」

「うんっ!」

その一言に慌てて下に降りる二人を見ながらももうすぐ会えるれいにぃにどこかワクワクしていた。

九時ぴったりになり、玄関前でれいにぃの車を待っていると一台の迷彩柄のワゴン車が見え雪の目の前に止まり中からジーンズに白Tシャツの私服姿の葉山が出てきた。

「九時ぴったりだな…かなは、助手席に座れ」

「…うん」

何だろう、私服姿は様になっているのに相変わらずのボサボサヘアと玩具眼鏡のせいで台無しかも…

隣に座ってかっこよくハンドルを握るれいにぃに心底残念だとしみじみと感じた。

「着いたぞ…」

「へ?まさかここ!?」

都会の中心に車が止まり葉山の視線の先には市内で二番目に高いとされる高級マンションだった。

「…れいにぃって、実は金持ちだったの?」

「馬鹿な事言ってないで早く入るぞ!」

「え、ちょ待ってよー!」

車から降りそそくさと中に入っていく葉山に慌てて降り付いていく。
中に入ると至る所に監視カメラと一階だけでも広すぎる空間にたじろぎつつも慣れた感じで上に続くエレベーターに乗り最上階の部屋の数字を押す葉山にれいにぃはれいにぃでも転生した葉山は自分とは次元が違うと思ったのだった。

最上階に着くとエレベーターの扉が開いてすぐ部屋の扉が見え葉山はポケットからカードを取り出すとスキャン式の扉にそれをかざし開ける。

「カードが鍵の部屋って初めてみたかも…」

「入らないのか?」

「入るに決まってんじゃん!」

既に中に入って靴を脱いでいた葉山は一向に中に入らずスキャン式の扉に興奮している雪を悪戯にわざと急かす。

「へぇ~、れいにぃにしてはシンプルな部屋だね…」

「にしてはって何だよ?」

「だって、前世ではコンピューターと沢山の書類の山で埋まってたじゃん!」

「ああ…それは、前世の時はゲーム関係の仕事してたからであって今は教師だからな…」

「なるほどね…」

部屋にはグレーや黒など落ち着いた色合いの壁にコンクリートの床で少しひんやりとした空間だった。
物は必要最低限の物しかなく、他の部屋のドアがいくつもあり4LDKの広さだ。

「そこのソファにでも座ってろ。すぐココア持って来てやるから…」

「うん…」

私がココア好きなの覚えてたんだ…

台所に向かう葉山の後ろ姿を見ながら大きな液晶テレビの近くにある黒革のソファに腰を下ろす。

「れいにぃ、一人暮らしにしては広い部屋に住んでるんだね…」

「まぁな…ほらよ、ココア」

「ありがとう…」

葉山はポットからお湯を入れココアを作ると白いマグカップに入れ辺りを見渡している雪に渡し、同じく雪の目の前にあるもう一つの黒革のソファに腰を下ろす。

「まず、何から話すかな?」

「前世で私が死んだ後から話した方が分かりやすいかも…」

「そうだな…」

本当は自分が死んだ後の事なんて聞きたくない。
でも、向き合わなきゃ前に進めない…

真っ直ぐな瞳で見つめる雪に応えるように葉山は真面目なトーンでゆっくりと話し出す。

「お前が死んで衝突してきた奴の事を俺は後から知った。慰謝料や賠償金それだけじゃ足りないくらい俺はお前を死にやった奴を恨んでいた。だが、そいつもお前と同じようにタクシーの運転手も含めてあの事故で死んでいたんだ…」

「え…」

「母も海外に転勤していた父もお前が死んでどこかおかしくなったように精神的に壊れて離婚した。俺は母と一緒に暮らすようになったが母は心の病にかかって自殺した。俺も後を追うようにその後道に飛び出した子供を救おうとして事故で死んだんだ…」

「う…嘘っ…あの仲の良かったお母さんとお父さんが離婚とか…それに、お母さん死んじゃったの?…嘘だ!うぅ…」

「かな…信じたくない気持ちは分かるがそれが現実だ。家族皆、お前が大好きだったんだ…」

「うん…」

「その後、俺は神に会った…」

「へ?神様?」

「ああ、あの神様だ。神が言うにはお前や母とは違って俺は本当はあの日死ぬはずはなかった運命だったらしい。だからとはいかないが次に転生する場所を選べると言われ俺はかなが転生した場所と同じ場所がいいといったんだ」

「え、何で私と同じ場所?」

「っ…お前とまた会いたかったからだ」

葉山は不意に顔を逸らすと耳を赤くしながらごもごもと答える。

「っ…ごめん、恥ずかしい事言わせて…でも、嬉しいっ…」

「ああ…」

「だから、れいにぃが私と同じ世界に転生してたんだね?」

「ああ…だが、その代わり前世の記憶がはっきりある俺とは違ってかなは前世の記憶があるかどうか分からないと言われたんだ。それに、必ずかなに会えるとは言えないと…だが、こうして今かなと会えた事は事実だ。…本当に会えてよかった」

「れいにぃ…私も会えてよかった」

暖かな空気が会えなかった分の長い時間に流れ込む。

「それはそうと、転生してすぐ俺はここがかなが好きだった乙女ゲーム世界だとすぐ気づいた。理由は一つだ…俺が転生した葉山 未黒はこの世界のヒロインの攻略対象者の一人だからだ」

「え!?れいにぃが攻略対象者の一人!?」

「ああ…俺はトランプ・クロスのジョーカーに入る」

「ジョーカー?そんなキャラいたっけ?」

「お前が死んだ後に追加されたキャラだ。…というか既に気づいてると思うがお前が知っているゲームとはシナリオもキャラも全て変わっている」

「うん、それは同じ転生者だという人から手紙で書かれてたから知ってるよ」

「は?同じ転生者?手紙?どういう事だ!?…かな、お前の今の状況簡単にでいいから説明しろ!」

「へ?今の状況っていっても…んーと、攻略対象者と思われる人皆接触してるかな?金城 玲央先輩は色々あって今は金城先輩のメイドしてて、桂馬 翔先輩とは私が誘拐された時とか助けて貰ったりして水族館でデートみたいなのしたり神崎 葵先輩にはテスト勉強で教えて貰ったり奥薗 渚先輩とは神社で仲良く話したり高宮 光先輩とはカメラ好きなとことか知ったりクッキーあげたりして担任の緑先生とはお手伝いとして手伝ったり先生の家でご飯作ったりしたかな?れいにぃのよく知る立川 優希先輩には洋服買って貰ったりリストバンドあげたり赤井兄弟の遼くんには花園苑でお花貰ったりしたよ? 」

「おいおい…メイドやらデートやら、お前それ全部ヒロインである七瀬 真奈のイベントじゃねぇか!?かな、お前何でヒロインの立ち位置になってんだよ!」

「知らないよっ!だって、私の知ってるイベントとか全然違うしどうしたらいいか分からなくて行動してたらこうなったんだもん!」

「はぁ…にしては、出来すぎる。いくらかながイベントやキャラを知らなくてもこんなにもヒロインのイベントにヒロインではないモブのかなが巻き込まれるわけがない。誰かが裏で操ってるか?…いや、まだ憶測で決めつけたらダメだな。かな、お前まさかだとは思うけど黒崎 白とは会ってないよな?」

「え、白?会ってるというか一緒に路上ライブしたりしたんだけど…何で?」

「はぁ…何で一番会って欲しくないやつまで会ってんだよ」

「へ?」

「あのなぁ、黒崎は俺と同じ隠しキャラのジョーカーだ。それに、あいつも俺達と同じ転生者であり前世でお前を殺した奴だ…」

「え…白が?」

雪は思わぬ事実に固まると葉山さらに話を続ける。

「黒崎…あいつは前世の記憶は何も覚えてない。だが、神がいっていたようにもしかしたらかな…お前があいつと近づく事で記憶が戻るかもしれない。それは、俺からしたら望んではない事だが…」

「…でも、前世の白と今の白とは違うんだよね?れいにぃが葉山先生とは違うように…」

「ああ、それは違う。だが、魂は変わらない。事実、俺が妹であるかなに惹き付けられたように魂は一緒だと思え…」

「うん、それはちゃんと理解した上で今の白を私は嫌いにはなれないよ…だから、もしかしたら私のせいで白の記憶が戻るかもしれないけど…」

「そうか…そうなってしまった時は俺が必ずかなを守る。いいな?」

「…うん」

「よし、じゃあ一応状況を整理すると…攻略対象者は俺を含めて攻略対象者は十一人。ハートは赤井兄弟、ダイヤは高宮 光、スペードは神崎 葵、クローバーは緑 幸、キングは金城 玲央、ナイトは桂馬 翔、エースは立川 優希、クイーンは奥薗 渚…そして、お前のせいで出てきた隠しキャラのジョーカー二人…黒崎 白と葉山 未黒。これが全ての攻略キャラだ」

「私のせいでれいにぃたちが出てきたって?」

「お前が何故かヒロインの立ち位置になっているとすると俺達ジョーカーが出てきた理由が納得いく。ジョーカーが出てくる条件は攻略対象者三人を八十以上好感度をあげ尚ジョーカーの一人と会うことでジョーカー二人は自然と攻略対象者として出てくることになる。…お前は何かしら裏で誰かに操られてると考えた方がいい」

「私が誰かに操られてるか…」

確かに、そう言われてみると今までの疑問は納得いくかも…

「かなに来た同じ転生者というやつが送ってきた手紙の件だが…それを送ったのは黒崎じゃないことは確かだ。ましては、ようやく会えた俺でもない。ということは、裏でかなを操っている奴としか考えられんな…」

「もし、それが本当なら何で私をヒロインに仕立てる必要があるんだろう?」

「さぁ?動機は分からないがお前をヒロインに仕立てないとそいつが都合が悪いのは確かだな…」

「うん…あ!でも、私一度モブとしてこの世界から殺されかけてるんだけど…それは私がどんなにヒロインのイベントに巻き込まれようともモブである事は変わらないという意味なんじゃないかな?」

「そうだな…これは俺の推測だが一か八かの賭けに出たか?」

「賭け?」

「行院 アリスっているよな?」

「うん、死亡フラグになったきっかけであり高宮くんの婚約者だったアリスでしょ?」

「ああ、行院 アリスはいわば俺達ジョーカーの鍵だ。行院がモブであるお前を殺すことで攻略対象者のヒロインへの好感度が上がりジョーカーが出てくるきっかけになるんだ。だから、裏で操ってる奴はお前を殺すしかなかった事になるな…」

「で、でも私生きてるよ?」

あの時、高宮くんが来てくれたおかげで私はこうして今も生きている。
何故、あの時高宮くんが来てくれたのかは分からないけどそれは紛れもない事実だ。

「それも予想してたんだろう。好感度が上がってる攻略対象者の誰か一人は必ずお前を助けると…」

「うっ…じゃあ、相手からしたらこっちの状況は全て分かってるってことだよね?…何か怖い」

いつどこにいても見られてることに恐怖心が湧いてくる。

「そうなるな…だが、こっちにも手はある」

「手?」

「相手がどんな動機でこんな真似をしてるのかは分からないが俺達はそいつを止めないといつどこで死んでもおかしくない。このままだと、いつか相手の叶えたいことが叶ったら俺達は邪魔になる…その時こそ俺達はそいつに消される可能性は百パーに近い。そうならないためにも、先に俺達がこの世界のゲームを終わらせる。言わば、エンドロールをやるってことだ」

「そんな事、私達だけで出来るの?」

「やるしかない…それしか俺達には手段がないんだ」

確かに、他に思い付くような手段なんてどこにもない。
やるしかないんだ…

「…うん」

「だが、エンドロールをするには少し困難だ。…俺ですら出来なかったぐらいだからな」

「へ?れいにぃ、トランプ・クロスしたことあるの!?」

「何を今更言ってんだよ!してなかったらこうしてお前に情報教えてないし、ましてはこの世界が乙女ゲーム世界だって分からねぇよ」

「うぐっ…た、確かに…」

「はぁ…前世で俺がゲーム作りの仕事してるからってお前が無理やりエンドロールしたいからってトランプ・クロスやらせてなきゃ男が乙女ゲームなんてするわけねぇよ…」

私、そんなことしたっけ?

全然記憶にない出来事に呆然としているとその様子にイラついたのか深いため息が葉山からはき出された。

「はぁ…それより、エンドロールの話だが攻略対象者にはトランプにそってそれぞれが抱えている悩みや過去がある。それを解決しなければエンドロールにはいかない」

「乙女ゲームの定番だね。でも、解決するだけなのに難しいなんてそんなに複雑な設定があるの?」

「ああ、問題はそこなんだ。俺がクリア出来たのは十一人中四人だけだった」

「え!?れいにぃですら四人しか無理だったの!?」

「ネットでも調べたが全クリしたやつは誰もいなかった…」

「何でそんな無理ゲーまがいの乙女ゲーム前世の私ハマってたんだろう?今の私なら絶対やりたくない…」

「そういう変わり者だったんだよ、お前は。簡単な設定じゃ楽しくないっていって見つけて来たのがこのトランプ・クロスだからな…たくっ、それに付き合わされる俺の身にもなれよ」

「んー、確かにそんな性格だったかも…」

ぼんやりとしか思い出せない前世の自分の記憶は主に短編的な記憶しか出てこなかった。

「俺が知る限りの攻略対象者全員のエンドロールの鍵を言うとだな…まず、ハートの赤井兄弟はハートに因んで愛を知らないんだ。それ故に二人とも人格が歪んでる。龍は遊びで生きていて何でもかんでも遊びでしか付き合えない奴だ。それは逆に言うと本当の愛を知らない故にそんな生き方しか出来ないようになっている。攻略の鍵は本気で龍を好きにさせ真実の愛を知って貰うこと…」

「真実の愛か…でも、龍くんの方はあんまり接点という接点なくて…あるとすればヒロインである真奈の方なんだ」

「なら、そこは本来のヒロインに任せる方が適任かもな。ヒロインが龍狙いなら自然とエンドロールまで行くだろうし…」

「うん…」

「遼の方は、簡単に言うと龍の真似をして猫被っては裏では冷たい人格の持ち主だ。まぁ、天邪鬼ってやつだな…」

「その性格知ってる。最初は、変わりすぎて驚いたけど根は優しい人みたいだったよ?」

「龍と違ってそこまで人格が歪んでるわけではないからな。遼はある意味、龍と同じように裏社会を見過ぎてはいたが龍のような吸収の仕方はしてない。まるで自分より格下を見るようにそれが当たり前の現実だと受け入れているんだ。だからこそ、裏では冷たい人格になるんだろうけどな…攻略の鍵は本来の遼を受け入れることだ」

「本来の遼くんを受け入れるか…でも、それは本当の遼くんを知る人にとっては当たり前の事なんじゃないの?」

「いや、本当のあいつの人格を知った奴は皆違いすぎて自分から離れていってるんだ…だから、本来の自分を受け入れてくれる人があいつのエンドロールの鍵になる…それはある意味愛を与えるのと同じだからな」

「そうなんだ…」

普段は平然としている遼くんにも悩んでる事があるんだなぁ…

「ダイヤである高宮 光は本当にやりたい事自分で決めた将来の夢があるのにそれを親に反対されてるんだ…」

「それって、カメラマンとか?」

「ああ…一度反対されただけであいつはその夢を諦めようとしてる。親のレールに従おうと自分の気持ちを突き通そうとはしない。攻略の鍵はそんなあいつの気持ちを後押ししてあげること…ダイヤの通りあいつに本当の意味で輝ける場所を与えることだ…」

「つまり、親との確執が鍵になるんだね?」

「ああ…自分のことだけならまだ難しくはないが親の話となるとあの手のやつは一番触れられたくない事だからな…攻略は中々難しい」

「んー、でもやるしかないし頑張ってみる!」

「スペードの神崎 葵は俺もよくは分かってはいないが”死”に関する事があるはずだ。だが、それが過去に起きた死に関する出来事かこれから起きる死に関する出来事か分からないんだ。だが、スペードが表すのは”死”…何かしらそのキーワードが絡むはずだから探りを入れるしかなさそうだな…」

「”死”って、何か怖いかも…神崎先輩ってマフィアのボスだって聞くし、死にそうになる事だけは嫌だかんね?」

「分かってる、神崎は俺も一緒に探り入れてやるから安心しろ」

「うん…」

れいにぃがいるならまだ安心かも…

「クローバーの緑 幸だが、昔の思い出が関係するんだがそれが何なのかまでは解き明かせなかった…」

「昔の思い出か…緑先生の秘密か何かかな?」

「分からない…だが、そうだとしたらその路線で調べるしかなさそうだな」

「うん…」

「キングの金城 玲央だが…あいつの攻略はジョーカーの黒崎 白を含めこの二人は無理だといっていい」

「え、何で?」

「あいつらの攻略の鍵が謎なんだ。金城はおそらく生き別れた双子の弟を見つければいけると思うんだが肝心のその弟を見つけることが出来ない。黒崎は金城以上にお手上げでエンドロールの鍵が何なのかまったく見つからないんだ。前世でもこの二人の攻略が出来なくて販売禁止にまでなりかけた事もあったくらいだ…」

「え!?販売禁止って…」

「だが、ギリギリ免れたのはトランプ・クロスの攻略対象者全員が世の女性たちを虜にするイケメンで絵が綺麗でイケメンたちの甘いイベントが好評だったからだ」

「あはは…現金な生き物だからね、女って…」

乾いた声で苦笑いする雪に対し、葉山はまったくだと言わんばかりに肩を落とす。

「とにかく、金城と黒崎は最後に攻略するしかない。まず先に攻略出来そうな奴からやるのが鉄則だ」

「そうだね…」

「クイーンの奥薗 渚は知っての通り女形として普段過ごしているがプライベートでは男として過ごしている。攻略の鍵は女の時も男の時もそれぞれで好感度をあげ告白してもらうことだな…」

「それって、二回告白されなきゃ駄目って事?」

「ああ…だが、女の時と男の時を含めて二回だ。いいな?」

「うん…」

「ナイトの桂馬 翔は自分の秘めた気持ちを告白する事だな。それが何なのかは本人しか知らないが…」

「んー、桂馬先輩も後回しかなぁ…」

「エースの立川 優希は…んー、あいつはなぁ…」

「立川先輩がどうかしたの?」

「んー、桂馬よりやっかいなんだよなぁ…あいつは自分の気持ちを素直に認める事なんだ」

「んーと、はっきり言ったら鈍感?」

「ぷはっ ああ、鈍感の鈍感だ!はははっ」

葉山は何かにツボったようにお腹を抱えて笑い出す。

「ふぅ…れいにぃ、爆笑してるとこ悪いけど最後にれいにぃの攻略はどうなるの?」

「ん?俺か?んー、俺はな…」

「うんうん…」

「俺は自分で解決するから大丈夫だ」

「は?普通、ヒロインが解決するのに攻略者自身が解決して大丈夫なの?」

「んー、そこん所はよく分からないが大丈夫だろ!」

「…いいかげん」

何だか誤魔化された感が残りつつもやるべき事が決まったかのように今までの不安や疑念が取り払われた。
目の前の目標があるだけで人は前を向けるのだと初めて感じた。










    
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