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前世の記憶
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昔よく、お兄ちゃんと遊んだ…
背が高くて年が離れててお兄ちゃんも年が近い友達と遊びたいはずなのによく妹である私と遊んでくれた。
かっこよくて何でも出来て自慢のお兄ちゃん…
「…れいにぃ」
「…かな」
「え…?うわっ!?」
目を開けると至近距離に心配そうに覗き込む葉山の姿があり思わず飛び退く。
「大丈夫か?」
「え、はい…って、今かなって?」
「記憶が戻ったんじゃないのか?」
「記憶?…うっ!?」
何かを思い出そうとしたその時、急に頭に痛みが走った。
「これ…な…に?うぐっ…」
頭の中に入ってくるのは途切れ途切れに映る前世の記憶だった。
私がいる…
笹倉花奈だった時の幼い私は引っ込み思案で体が弱かったため友達が少なくいつもそばにいてくれるれいにぃだけが唯一の味方だった。
あ、これ…れいにぃと喧嘩した時だ…
確か、この後…私…
「うぅっ…」
「かな!大丈夫か?」
雪はすぐ側で心配する葉山は見えずその代わり見えるのは頭の中に映る”あの日”の記憶だった。
そう確か、れいにぃと喧嘩して思わず家出しようとして…
花奈が必要最低限の物を慌ててリュックに詰めそれを片手に家を飛び出す姿が見えた。
だが、その先を見ようとすればするほど頭痛が更に酷くなる。
「それから…それから…私…」
その後、タクシーを捕まえあてもなくどこか遠くに行こうとしたんだ…
だけど、急に車が止まって目の前に黒い車が飛び込んできて…
「”死んだんだ”…」
そう口にした瞬間、頬から涙が零れた。
自分の状態も分からないけど微かな意識の中目に映るのは無残に散らばった硝子の破片と痛みと一緒に流れる生暖かい血の液。
そして、どこからかかかるれいにぃの叫び声だった。
だけどそれはほんの数秒の記憶…
すぐに意識が消えこだまするかのようにれいにぃの叫び声が遠くに消えていったのだった…
「…かな」
思い出すはずがなかった最悪な記憶を思い出し拭いきれない溢れんばかりの涙が頬をつたって流れ出す。
「俺はあの時、慌ててかなを追いかけて引き止めようとしたんだ。だが、来た時には既に引き止めるも何も謝ることすらできなかった…その後俺は…」
「…なかっ…」
「…かな?」
「こんな記憶思い出したくなかったっ!」
思わず葉山の胸を力なく叩くと、葉山はそれに応えるように雪の弱く握られた拳を捕まえ空いた手で雪の体ごと強く抱き締める。
「かな…ごめんな」
抱き締める力とは裏腹に苦しそうな弱々しい声に、声にならない叫び声と共に益々涙が溢れ出す。
「ひっくっ…ぅ…」
葉山は、雪が泣き止むまでずっと震える背中を優しくゆっくりと撫で続けた…
何時間そうしていただろうか…?
私が泣き止むまでずっと震える私の背中を優しく撫でてくれたれいにぃにもう大丈夫だと顔をあげる。
「お前に会って記憶を思い出したらお前が死んだ後の事もこの世界の事も全て話そうと思っていたんだがその話はまた後日話す。お前が落ち着き次第全て話す…」
れいにぃは全て知っているんだ、私の知らない全ての事を…
「…大丈夫。明日話してくれる?」
「いいのか?記憶が戻ったばっかりで気持ちもまだ整理出来てないだろ…」
「本当に大丈夫とまではいかないけど大好きだったれいにぃとまた転生した世界で会えて話してる事は凄く嬉しいし、れいにぃと少しでも長く居たいから。それに、今の状況がどうなっているのか早く知っておきたいの」
「分かった、明日俺の家で話そう。学校や外だと聞かれる可能性があるからな…」
「聞かれる?誰に?」
「その事も明日全て話す。今はまだ…」
「じゃ、明日まで聞きたいこと我慢する」
「ああ、そうしてくれるとありがたい…」
葉山は、そういいながら雪の髪に指を絡ませる。
「れいにぃ、前世の時と変わったね。前世の時は黒髪ストレートで今みたいに玩具みたいな眼鏡してなくていつも女人から言い寄られてモテモテだったのに…」
「あれは、笹倉 玲二の時だろ?今は葉山 未黒だ。転生したんだから違うのは当たり前に決まっているだろ?お前こそ前世の時は茶色がかったふわふわの髪で童顔の子犬みたいな顔だったのに今じゃ黒髪ストレートロングで平凡な顔になっちまってまるで地味な子リスだな。ま、発育の方は前世と同じで成長してないが…」
「なっ!?まだ成長期中なの!れいにぃこそ高菜納豆マニアで厳しくて憎まれ口前世と変わらないじゃん!」
「お前なぁ、俺が前世と同じ性格じゃなかったら絶対俺がれいにぃだって気づかなかったたろ?」
「うぐっ…それはそうだけど」
確かに、れいにぃが転生しても尚高菜納豆マニアじゃなかったら絶対気づかなかつた気がする…
図星をさされ顔が引き攣ると葉山は思い出したように腕時計を見る。
「あ、やばいなもう三十分もかかってる。急いでバスに戻るぞ!」
「うん…じゃなくて…はいっ!」
れいにぃと分かり思わず砕けた返事をしそうになり慌てて言い直す。
すると、葉山はその返事に不満に思ったのか雪の頬を右手で摘む。
「二人の時はれいにぃの時みたいに話せ。分かったな?」
「…うん」
その言葉にまた前世の時と同じように兄妹でいれるのだと…大好きなれいにぃといれるのだと実感した。
背が高くて年が離れててお兄ちゃんも年が近い友達と遊びたいはずなのによく妹である私と遊んでくれた。
かっこよくて何でも出来て自慢のお兄ちゃん…
「…れいにぃ」
「…かな」
「え…?うわっ!?」
目を開けると至近距離に心配そうに覗き込む葉山の姿があり思わず飛び退く。
「大丈夫か?」
「え、はい…って、今かなって?」
「記憶が戻ったんじゃないのか?」
「記憶?…うっ!?」
何かを思い出そうとしたその時、急に頭に痛みが走った。
「これ…な…に?うぐっ…」
頭の中に入ってくるのは途切れ途切れに映る前世の記憶だった。
私がいる…
笹倉花奈だった時の幼い私は引っ込み思案で体が弱かったため友達が少なくいつもそばにいてくれるれいにぃだけが唯一の味方だった。
あ、これ…れいにぃと喧嘩した時だ…
確か、この後…私…
「うぅっ…」
「かな!大丈夫か?」
雪はすぐ側で心配する葉山は見えずその代わり見えるのは頭の中に映る”あの日”の記憶だった。
そう確か、れいにぃと喧嘩して思わず家出しようとして…
花奈が必要最低限の物を慌ててリュックに詰めそれを片手に家を飛び出す姿が見えた。
だが、その先を見ようとすればするほど頭痛が更に酷くなる。
「それから…それから…私…」
その後、タクシーを捕まえあてもなくどこか遠くに行こうとしたんだ…
だけど、急に車が止まって目の前に黒い車が飛び込んできて…
「”死んだんだ”…」
そう口にした瞬間、頬から涙が零れた。
自分の状態も分からないけど微かな意識の中目に映るのは無残に散らばった硝子の破片と痛みと一緒に流れる生暖かい血の液。
そして、どこからかかかるれいにぃの叫び声だった。
だけどそれはほんの数秒の記憶…
すぐに意識が消えこだまするかのようにれいにぃの叫び声が遠くに消えていったのだった…
「…かな」
思い出すはずがなかった最悪な記憶を思い出し拭いきれない溢れんばかりの涙が頬をつたって流れ出す。
「俺はあの時、慌ててかなを追いかけて引き止めようとしたんだ。だが、来た時には既に引き止めるも何も謝ることすらできなかった…その後俺は…」
「…なかっ…」
「…かな?」
「こんな記憶思い出したくなかったっ!」
思わず葉山の胸を力なく叩くと、葉山はそれに応えるように雪の弱く握られた拳を捕まえ空いた手で雪の体ごと強く抱き締める。
「かな…ごめんな」
抱き締める力とは裏腹に苦しそうな弱々しい声に、声にならない叫び声と共に益々涙が溢れ出す。
「ひっくっ…ぅ…」
葉山は、雪が泣き止むまでずっと震える背中を優しくゆっくりと撫で続けた…
何時間そうしていただろうか…?
私が泣き止むまでずっと震える私の背中を優しく撫でてくれたれいにぃにもう大丈夫だと顔をあげる。
「お前に会って記憶を思い出したらお前が死んだ後の事もこの世界の事も全て話そうと思っていたんだがその話はまた後日話す。お前が落ち着き次第全て話す…」
れいにぃは全て知っているんだ、私の知らない全ての事を…
「…大丈夫。明日話してくれる?」
「いいのか?記憶が戻ったばっかりで気持ちもまだ整理出来てないだろ…」
「本当に大丈夫とまではいかないけど大好きだったれいにぃとまた転生した世界で会えて話してる事は凄く嬉しいし、れいにぃと少しでも長く居たいから。それに、今の状況がどうなっているのか早く知っておきたいの」
「分かった、明日俺の家で話そう。学校や外だと聞かれる可能性があるからな…」
「聞かれる?誰に?」
「その事も明日全て話す。今はまだ…」
「じゃ、明日まで聞きたいこと我慢する」
「ああ、そうしてくれるとありがたい…」
葉山は、そういいながら雪の髪に指を絡ませる。
「れいにぃ、前世の時と変わったね。前世の時は黒髪ストレートで今みたいに玩具みたいな眼鏡してなくていつも女人から言い寄られてモテモテだったのに…」
「あれは、笹倉 玲二の時だろ?今は葉山 未黒だ。転生したんだから違うのは当たり前に決まっているだろ?お前こそ前世の時は茶色がかったふわふわの髪で童顔の子犬みたいな顔だったのに今じゃ黒髪ストレートロングで平凡な顔になっちまってまるで地味な子リスだな。ま、発育の方は前世と同じで成長してないが…」
「なっ!?まだ成長期中なの!れいにぃこそ高菜納豆マニアで厳しくて憎まれ口前世と変わらないじゃん!」
「お前なぁ、俺が前世と同じ性格じゃなかったら絶対俺がれいにぃだって気づかなかったたろ?」
「うぐっ…それはそうだけど」
確かに、れいにぃが転生しても尚高菜納豆マニアじゃなかったら絶対気づかなかつた気がする…
図星をさされ顔が引き攣ると葉山は思い出したように腕時計を見る。
「あ、やばいなもう三十分もかかってる。急いでバスに戻るぞ!」
「うん…じゃなくて…はいっ!」
れいにぃと分かり思わず砕けた返事をしそうになり慌てて言い直す。
すると、葉山はその返事に不満に思ったのか雪の頬を右手で摘む。
「二人の時はれいにぃの時みたいに話せ。分かったな?」
「…うん」
その言葉にまた前世の時と同じように兄妹でいれるのだと…大好きなれいにぃといれるのだと実感した。
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