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本音の中の真実
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「先生、寝室どこですかぁ~!」
緑先生の家に何とかたどり着き先生のポケットをあさぐり鍵を見つけ開けると大人って感じの男の人の部屋の雰囲気漂う部屋だった。
観葉植物がちらほら立ち並び黒の家具で統一され壁の白が映えていた。
しかし、さすが高級マンション…一人部屋にしては些か広すぎではありませんでしょうか?
私は半ば呆れた目をやりながらも先生を力ずくで部屋においやる。
だが、この酔いつぶれ気味の先生を放置するベッドが見当たらずドアを片っ端から開けていく。
「あった、ベッド!」
シンプルなダブルベッドに先生を投げ捨てる。
ダフッ
「先生、今日大人しくそのベッドで寝てくださいね!はぁ~疲れ…うっ?きゃあっ!?」
寝室を後にしようとした隙に先生から右手を捕まれそのまま引っ張られてしまった。
「っ…」
案の定、引っ張られた場所は先生の胸の中であり至近距離に先生の顔が迫る中突然の事に体が硬直した。
「せっ…先生離してくださいっ…!」
先生の両腕にがっしりと抱きしめられてるみたいな体勢になり解こうにも成人男性の腕力とましては女子高生の腕力じゃ力の差なんてありすぎて脱出するなんて不可能だった。
「んっ…雪…」
だっ、だからその呼び捨て呼びやめて下さいってばぁ!
心臓に悪いっ!
すぐ近くで名前を呼ばれ、プラスこの状況下という現状に雪の中でキャパオーバーに達していた。
「…ずっと、この腕の中で閉じ込められたらいいのに…」
「ふぇ?…」
先生、誰か他の女性と勘違いでもしてるのかな?
じゃなきゃ、私なんかにこんな事言うわけないし…
先生の突然の言葉に頭の中で憶測が飛び交う。
「ん?…この匂い…」
先生の至近距離で服から香る匂いに雪の好きなラベンダーの香りがほんのり鼻をくすぐった。
先生には失礼だが少しばかり先生の匂いを嗅いだ。
やっぱり、ラベンダーだ…
いい匂い…落ち着く…
ウトウトと瞳が閉じそうになりすぐ上から聞こえる先生の声にすぐ様我に返った。
はっ!?やばい、あと少しでそのまま寝るとこだった…
「先生ー!いい加減に離してくださいっ!うっ?わぷっ!?」
すると、先生はそのまま寝返りをし今度は先生が上という益々逃げ場なしの状況に落ちてしまった…
顔に微かにかかる先生の髪に片目を瞑りながら薄らと開かれた色っぽい瞳をした先生の目と交差した。
「せっ、先生?…」
先生は無言で長い指先で私の頬をゆっくりと撫でる。
「っ…」
「…耳弱いのか?」
そのまま右耳に指がいきゆっくりと先生の唇が近づいた。
カプッ
「っ…!?」
その先生の綺麗な唇に耳を噛まれ何とも言えない声が零れる。
「可愛いな…」
「せっ…先生…」
「…?」
「いい加減にしてくださいっ!」
ドカッ
「っ…!?」
先生の腹部に足蹴りをし先生を気絶させると何とか先生の中から脱出する事に成功した。
「もうっ、ずっとそうやって気絶しててくださいっ!」
真っ赤になりながら気絶状態の先生に最後の言葉を残し寝室を後にした。
はぁ…もう心臓爆発しそう…
ガタンッ
やっぱり何もないや。
「成人男性の一人暮らしってこんなに食材無いものなの?んー…」
私は朝先生が起きた時のための飲み過ぎた体にも優しい朝ごはんの材料となる物を探していた。
だが、冷蔵庫を開いてみたはいいがあるのは大量の水と缶ビールに卵一個というあり様だった。
仕方ない、近くにコンビニかスーパーないか携帯で検索して調べてみよっと…
んー、あっ!すぐ近くにコンビニあるじゃん!
急いで買って急いで帰ろっと…
もう、こんな時間だし夜分遅くに女子高生一人歩きは怖いもんね…
時計を見ると既に二十三時を回っていた。
急いで近くのコンビニにダッシュし、サラダに使うレタスとコーンとシーチキンを籠に入れ次にスープの出汁に使うスルメと卵四個買った。
念の為自分のも買わなきゃ私の身が持たない。
ついでにいうと着替えに使う下着類も買い込んだ。
コンビニで買い物を済ませすぐ様ダッシュで先生のマンションに向かう。
マンションに着き先生の部屋の鍵を開けると戸締りを確認し材料を冷蔵庫に入れ込む。
「よしっ!これで明日の準備は大丈夫だね」
明日の確認をし先生より早く起きるために寝る準備を整える。
えっと、お風呂場はここで…着替えどうしよう…
下着は買ったものの上に着る着替えがなく仕方なく先生のクローゼットを物色する。
んー、やっぱりサイズぶかぶかだ…
女性と男性ましては、成人男性と女子高生じゃ体格差はありすぎて服のサイズなんてぶかぶかになるのも当然だった。
仕方ない、上だけならまだ着れるし上だけ貸してもらおうっと…
白のワイシャツを1枚拝借しジャグジー付きの広いバスルームを拝借させてもらう。
んー、やっぱり広すぎる…
只でさえ一般家庭のお風呂場にすら広いと感じる貧乏女子高生の身なのにこんな高級マンションのお風呂場なんて想像以上だった。
使い終わった後もしっかりと掃除をしお風呂場を後にするとダイニングのソファに毛布を掛け髪を乾かし就寝前の身支度を済ませ電気を消しソファに潜り込む。
今日は色々あって疲れたなぁ…
夢と優大丈夫かなぁ?…不安…
もうすぐ期末テストだし頑張んなきゃ…なぁ…
微睡みに引っ張られるようにそのまま夢の中へと落ちていった…
「んっ…朝?」
緑 幸こと、緑は頭が痛い中カーテンから微かに見える朝の光と鳥の声に目を覚ました。
何で俺、部屋に?…
頭の回らない頭を自力で回し未だに重い体起こす。
「まだ、お酒のせいで頭痛てぇ…」
しかし、俺どうやって家に帰りついたんだ?
あ、また知らん女が隣で寝てたりして…と思ったが隣を見ても誰もおらず何もないのだと現状が物語っていた。
じゃあ、どうやって…
寝室を出てダイニングに入るとそこには思いもよらぬ光景が目に入った。
「はぁ?!」
目の前でソファで寝ている雪の姿があり一瞬訳が分からず呆然と固まる。
「んっ…」
「っ…」
寝返りを打った拍子に布団からはみ出したギリギリといえる生足が見え必死に目を逸らしながら布団を再度掛け直す。
「何で相浦がいるんだ?…」
疑問にしか浮かばない頭の中をいくら思い返しても昨日のお酒を飲んだあとの記憶が一切浮かばなかった。
「んっ…先生?…お…はよう…ござい…まふ…」
「ん、おはよう…」
って何普通に返してんだ俺っ!
自問自答しながら再度雪を見るがまだ寝ぼけているのかうっとりとした瞳に上目遣いと、いった可愛さしか残らない表情で見られ咄嗟に口を右手で隠す。
リンリンリン
すると、どこからかアラーム音が鳴り響き寝ぼけ気味だった雪が一瞬にして起き上がった。
「はっ!もうこんな時間っ!先生が起きる前に朝ごはん作らなきゃ!…って何で先生起きてるんですかぁー!?」
目の前に映る先生の姿に驚愕し慌てて体を起こす。
「ちょっ、ちょと待て!落ち着け!今の自分の格好見直せ、相浦」
「ふぇ?」
自分の姿を見返すとヨレヨレの状態のワイシャツ1枚といった姿で緑からすると刺激の強すぎる姿だった。
「きゃあっ!?みっ、みみみないでくだひゃいっ!」
必死にソファにある毛布を巻き服を隠した。
「見れるわけないだろっ!バカっ!いいから早く制服に着替えてこいっ!」
「はっ、はひっ!」
慌てて脱衣場に向かい制服に着替え顔を荒い歯磨きを済ませて先生のいるダイニングへ出た。
「すっ、すみませんでした…お見苦しいものを…」
「お、お見苦しいなんかあるわけないだろっ!むしろラッキーっていうか…なんて言うか…」
「ん?」
「そんな立ち尽くしてたら学校間に合わなくなるぞ?」
「え?わぁー!先生、急いで身支度済ませてくださいっ!その間に朝ごはん作りますので!」
「え?!わ、分かった!」
朝ごはん?という単語が気になったが鬼の形相で怒る雪に体自然と動いた。
身支度を済ませ再度ダイニングへ出ると何とも美味しそうな食欲をそそる匂いに鼻がくすぐられた。
昨日の飲み過ぎで食べる気なんて失せてた筈なに雪の作る朝ごはんの香りにお腹鳴る音がした。
「先生、そこに座っててください!今、運びますので…」
「え、ああ…」
言われるがままに座ると自分のエプロンを身につけた雪の姿に目が止まる。
「何か、やっぱりそそるな…これはこれで…」
「何か言いましたー?」
「な、何でもない!」
雪が次々とテーブルの上に朝ごはんを並べていき目の前に広がる久しぶりの家庭料理に舌ずつみをした。
「これ、全部相浦が作ったのか?」
「え、はいそうですよ!」
「よく、こんな食材あったな…確か冷蔵庫の中には卵一個ぐらいしかまともになかった気がするが…」
「ああ、それは昨日の夜に近くのコンビニに買い出ししてたんです」
「夜っ!?おまっ、夜に女子高生一人歩きなんて危険しかないんだぞっ!分かっているのか?もう少し自分の身を大事にしたらどうなんだっ!」
先生は私の肩を掴むと今まで見たこともないような怖い顔で叫んだ。
「ごっ…ごめんなさい…」
私は余りの先生の怒りっぷりに素直に謝罪した。
確かに、いくら朝ごはんのためとはいえ危ないと分かってて行くのは違うよね…
「で、どこも怪我はないのか?危ない目には会っていないのか?」
「それは大丈夫です!」
「そ、そうか…」
先生は一気に脱力すると私の肩から手を離した。
「たくっ…少しは心配する俺の身にもなれっつうんだよ…」
「?先生何かいいました?」
「あー、もういい。早く食べるぞ…」
「?はい」
少し諦めじみた声で先生は目の前に広がる食卓に手を伸ばした。
「うおっ!これ美味いなっ!」
「手持ちのお金が少なくてこんな物しか作れませんでしたが喜んでくれて嬉しいです」
「いや、俺からしたらめちゃくちゃ美味い…実家の母の手料理思い出すよ」
「先生、自炊はしてるんですか?」
「今の俺の感想聞いてしてるように見えるか?」
「いや、全然 ふふっ」
「だから、手料理なんて久しぶりなんだ…」
先生は目の前の卵スープに息を吹きかけながらゆっくりと口に含む。
「先生!あの…その、ご迷惑で無ければですが…」
「ん?」
「これから毎日、学校の時に食べるお弁当作りましょうか?」
「んん?」
「いや、あの…今のお話聞いて先生の健康面が心配になってしまいまして倒れてもらっては困るので健康のためにも私が作ろうかと…ご迷惑ならいいんですっ!本当に!」
「い、いや迷惑なわけないが…逆に嬉しいというか…コホンッ いや、だが相浦の負担にはならないか?俺の分まで毎朝起きてお弁当なんて…」
「いえ、私がしたくてするんです!負担なんてないですよ。それに、毎朝弟や妹のお弁当作るなんていつもですし、そこに一人分増えるだけでなんてことないです」
「なら、いいんだが…」
「よかった!なら、そうと決まれば先生嫌いな食べ物なんかありますか?」
「んーと、ピーマン…」
先生は目を泳がせながら耳を赤くし小さく呟いた。
「ぷふっ 優と同じだ!ふふふっ」
私はついとばかりにお腹をかかえて笑い出す。
「こら!笑ったな?」
先生は私のおでこに右手で作った拳を小さく軽く当てる。
「っ…」
至近距離に先生の顔がありさっきまで笑っていた顔が止まった。
先生は私の目を見つめ私と同じように止まる。
「あの…先生?」
「す、すまんっ!」
先生は私の声にすかさず体を顔を離し少し距離を置く。
「い、いえ…」
「コホンッ…ところで、優とは弟の事か?」
「は、はいそうです。優もピーマン嫌いで中々食べてくれないんです ふふっ」
「そりゃそうだ。あの苦さといったら意地でも食べたくない…」
先生は顔を歪ませ邪険そうにピーマンの事を語った。
「ふふっ 先生も可愛いとこあるんですね」
「お前、今俺の事バカにしただろ?」
「い、いえそんなことは…ふふっ」
堪らずまたお腹を抱えて笑うと先生はジト目で私を睨みつける。
「よし、相浦には今日から俺の授業の手伝いでもしてもらおうかなー」
先生は腕を組みながらニヤニヤとした悪い顔で仕返しとばかりに私を見つめる。
「え?それじゃあ、先生罰ゲームになりませんよ?先生の手伝いなら喜んでしたいです!」
「っ…」
満面の笑みで返す雪に仕返ししたつもりが返り討ちにあった緑はまたしても右腕で口を隠すように真っ赤になった顔がを隠した。
「先生?」
「お前、それわざとやっているのか?」
「へ?」
「いや、なわけないか…そんな事出来る奴じゃないしな…たくっ…」
「あっ!先生急がないと学校遅れちゃいます!」
「うわっ!そうだな、急ぐぞっ!」
「はいっ!」
急いで食べ終わった食器をキッチンに運び戸締りをする。
「あ、そうだっ!先生!」
「ん?何だ?」
「昨日、先生のシャンプー使わせてもらったんですけど私の好きなラベンダーの香りで今日は先生と同じ匂いなんですよ!ふふっ」
玄関先でくるりと振り返った拍子に雪の綺麗な黒髪から緑と同じラベンダーの香りが微かに鼻をくすぐった。
「っ…だ、だからお前はいつもいつもこう…」
「はい?」
「いいから急ぐぞ!」
緑は無理やり言葉を濁らせ雪を急かすように部屋から出た。
「これだから、惹かれるのかもな…」
雪の走る後ろ姿を見ながらこっそり呟く。
緑先生の家に何とかたどり着き先生のポケットをあさぐり鍵を見つけ開けると大人って感じの男の人の部屋の雰囲気漂う部屋だった。
観葉植物がちらほら立ち並び黒の家具で統一され壁の白が映えていた。
しかし、さすが高級マンション…一人部屋にしては些か広すぎではありませんでしょうか?
私は半ば呆れた目をやりながらも先生を力ずくで部屋においやる。
だが、この酔いつぶれ気味の先生を放置するベッドが見当たらずドアを片っ端から開けていく。
「あった、ベッド!」
シンプルなダブルベッドに先生を投げ捨てる。
ダフッ
「先生、今日大人しくそのベッドで寝てくださいね!はぁ~疲れ…うっ?きゃあっ!?」
寝室を後にしようとした隙に先生から右手を捕まれそのまま引っ張られてしまった。
「っ…」
案の定、引っ張られた場所は先生の胸の中であり至近距離に先生の顔が迫る中突然の事に体が硬直した。
「せっ…先生離してくださいっ…!」
先生の両腕にがっしりと抱きしめられてるみたいな体勢になり解こうにも成人男性の腕力とましては女子高生の腕力じゃ力の差なんてありすぎて脱出するなんて不可能だった。
「んっ…雪…」
だっ、だからその呼び捨て呼びやめて下さいってばぁ!
心臓に悪いっ!
すぐ近くで名前を呼ばれ、プラスこの状況下という現状に雪の中でキャパオーバーに達していた。
「…ずっと、この腕の中で閉じ込められたらいいのに…」
「ふぇ?…」
先生、誰か他の女性と勘違いでもしてるのかな?
じゃなきゃ、私なんかにこんな事言うわけないし…
先生の突然の言葉に頭の中で憶測が飛び交う。
「ん?…この匂い…」
先生の至近距離で服から香る匂いに雪の好きなラベンダーの香りがほんのり鼻をくすぐった。
先生には失礼だが少しばかり先生の匂いを嗅いだ。
やっぱり、ラベンダーだ…
いい匂い…落ち着く…
ウトウトと瞳が閉じそうになりすぐ上から聞こえる先生の声にすぐ様我に返った。
はっ!?やばい、あと少しでそのまま寝るとこだった…
「先生ー!いい加減に離してくださいっ!うっ?わぷっ!?」
すると、先生はそのまま寝返りをし今度は先生が上という益々逃げ場なしの状況に落ちてしまった…
顔に微かにかかる先生の髪に片目を瞑りながら薄らと開かれた色っぽい瞳をした先生の目と交差した。
「せっ、先生?…」
先生は無言で長い指先で私の頬をゆっくりと撫でる。
「っ…」
「…耳弱いのか?」
そのまま右耳に指がいきゆっくりと先生の唇が近づいた。
カプッ
「っ…!?」
その先生の綺麗な唇に耳を噛まれ何とも言えない声が零れる。
「可愛いな…」
「せっ…先生…」
「…?」
「いい加減にしてくださいっ!」
ドカッ
「っ…!?」
先生の腹部に足蹴りをし先生を気絶させると何とか先生の中から脱出する事に成功した。
「もうっ、ずっとそうやって気絶しててくださいっ!」
真っ赤になりながら気絶状態の先生に最後の言葉を残し寝室を後にした。
はぁ…もう心臓爆発しそう…
ガタンッ
やっぱり何もないや。
「成人男性の一人暮らしってこんなに食材無いものなの?んー…」
私は朝先生が起きた時のための飲み過ぎた体にも優しい朝ごはんの材料となる物を探していた。
だが、冷蔵庫を開いてみたはいいがあるのは大量の水と缶ビールに卵一個というあり様だった。
仕方ない、近くにコンビニかスーパーないか携帯で検索して調べてみよっと…
んー、あっ!すぐ近くにコンビニあるじゃん!
急いで買って急いで帰ろっと…
もう、こんな時間だし夜分遅くに女子高生一人歩きは怖いもんね…
時計を見ると既に二十三時を回っていた。
急いで近くのコンビニにダッシュし、サラダに使うレタスとコーンとシーチキンを籠に入れ次にスープの出汁に使うスルメと卵四個買った。
念の為自分のも買わなきゃ私の身が持たない。
ついでにいうと着替えに使う下着類も買い込んだ。
コンビニで買い物を済ませすぐ様ダッシュで先生のマンションに向かう。
マンションに着き先生の部屋の鍵を開けると戸締りを確認し材料を冷蔵庫に入れ込む。
「よしっ!これで明日の準備は大丈夫だね」
明日の確認をし先生より早く起きるために寝る準備を整える。
えっと、お風呂場はここで…着替えどうしよう…
下着は買ったものの上に着る着替えがなく仕方なく先生のクローゼットを物色する。
んー、やっぱりサイズぶかぶかだ…
女性と男性ましては、成人男性と女子高生じゃ体格差はありすぎて服のサイズなんてぶかぶかになるのも当然だった。
仕方ない、上だけならまだ着れるし上だけ貸してもらおうっと…
白のワイシャツを1枚拝借しジャグジー付きの広いバスルームを拝借させてもらう。
んー、やっぱり広すぎる…
只でさえ一般家庭のお風呂場にすら広いと感じる貧乏女子高生の身なのにこんな高級マンションのお風呂場なんて想像以上だった。
使い終わった後もしっかりと掃除をしお風呂場を後にするとダイニングのソファに毛布を掛け髪を乾かし就寝前の身支度を済ませ電気を消しソファに潜り込む。
今日は色々あって疲れたなぁ…
夢と優大丈夫かなぁ?…不安…
もうすぐ期末テストだし頑張んなきゃ…なぁ…
微睡みに引っ張られるようにそのまま夢の中へと落ちていった…
「んっ…朝?」
緑 幸こと、緑は頭が痛い中カーテンから微かに見える朝の光と鳥の声に目を覚ました。
何で俺、部屋に?…
頭の回らない頭を自力で回し未だに重い体起こす。
「まだ、お酒のせいで頭痛てぇ…」
しかし、俺どうやって家に帰りついたんだ?
あ、また知らん女が隣で寝てたりして…と思ったが隣を見ても誰もおらず何もないのだと現状が物語っていた。
じゃあ、どうやって…
寝室を出てダイニングに入るとそこには思いもよらぬ光景が目に入った。
「はぁ?!」
目の前でソファで寝ている雪の姿があり一瞬訳が分からず呆然と固まる。
「んっ…」
「っ…」
寝返りを打った拍子に布団からはみ出したギリギリといえる生足が見え必死に目を逸らしながら布団を再度掛け直す。
「何で相浦がいるんだ?…」
疑問にしか浮かばない頭の中をいくら思い返しても昨日のお酒を飲んだあとの記憶が一切浮かばなかった。
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「ん、おはよう…」
って何普通に返してんだ俺っ!
自問自答しながら再度雪を見るがまだ寝ぼけているのかうっとりとした瞳に上目遣いと、いった可愛さしか残らない表情で見られ咄嗟に口を右手で隠す。
リンリンリン
すると、どこからかアラーム音が鳴り響き寝ぼけ気味だった雪が一瞬にして起き上がった。
「はっ!もうこんな時間っ!先生が起きる前に朝ごはん作らなきゃ!…って何で先生起きてるんですかぁー!?」
目の前に映る先生の姿に驚愕し慌てて体を起こす。
「ちょっ、ちょと待て!落ち着け!今の自分の格好見直せ、相浦」
「ふぇ?」
自分の姿を見返すとヨレヨレの状態のワイシャツ1枚といった姿で緑からすると刺激の強すぎる姿だった。
「きゃあっ!?みっ、みみみないでくだひゃいっ!」
必死にソファにある毛布を巻き服を隠した。
「見れるわけないだろっ!バカっ!いいから早く制服に着替えてこいっ!」
「はっ、はひっ!」
慌てて脱衣場に向かい制服に着替え顔を荒い歯磨きを済ませて先生のいるダイニングへ出た。
「すっ、すみませんでした…お見苦しいものを…」
「お、お見苦しいなんかあるわけないだろっ!むしろラッキーっていうか…なんて言うか…」
「ん?」
「そんな立ち尽くしてたら学校間に合わなくなるぞ?」
「え?わぁー!先生、急いで身支度済ませてくださいっ!その間に朝ごはん作りますので!」
「え?!わ、分かった!」
朝ごはん?という単語が気になったが鬼の形相で怒る雪に体自然と動いた。
身支度を済ませ再度ダイニングへ出ると何とも美味しそうな食欲をそそる匂いに鼻がくすぐられた。
昨日の飲み過ぎで食べる気なんて失せてた筈なに雪の作る朝ごはんの香りにお腹鳴る音がした。
「先生、そこに座っててください!今、運びますので…」
「え、ああ…」
言われるがままに座ると自分のエプロンを身につけた雪の姿に目が止まる。
「何か、やっぱりそそるな…これはこれで…」
「何か言いましたー?」
「な、何でもない!」
雪が次々とテーブルの上に朝ごはんを並べていき目の前に広がる久しぶりの家庭料理に舌ずつみをした。
「これ、全部相浦が作ったのか?」
「え、はいそうですよ!」
「よく、こんな食材あったな…確か冷蔵庫の中には卵一個ぐらいしかまともになかった気がするが…」
「ああ、それは昨日の夜に近くのコンビニに買い出ししてたんです」
「夜っ!?おまっ、夜に女子高生一人歩きなんて危険しかないんだぞっ!分かっているのか?もう少し自分の身を大事にしたらどうなんだっ!」
先生は私の肩を掴むと今まで見たこともないような怖い顔で叫んだ。
「ごっ…ごめんなさい…」
私は余りの先生の怒りっぷりに素直に謝罪した。
確かに、いくら朝ごはんのためとはいえ危ないと分かってて行くのは違うよね…
「で、どこも怪我はないのか?危ない目には会っていないのか?」
「それは大丈夫です!」
「そ、そうか…」
先生は一気に脱力すると私の肩から手を離した。
「たくっ…少しは心配する俺の身にもなれっつうんだよ…」
「?先生何かいいました?」
「あー、もういい。早く食べるぞ…」
「?はい」
少し諦めじみた声で先生は目の前に広がる食卓に手を伸ばした。
「うおっ!これ美味いなっ!」
「手持ちのお金が少なくてこんな物しか作れませんでしたが喜んでくれて嬉しいです」
「いや、俺からしたらめちゃくちゃ美味い…実家の母の手料理思い出すよ」
「先生、自炊はしてるんですか?」
「今の俺の感想聞いてしてるように見えるか?」
「いや、全然 ふふっ」
「だから、手料理なんて久しぶりなんだ…」
先生は目の前の卵スープに息を吹きかけながらゆっくりと口に含む。
「先生!あの…その、ご迷惑で無ければですが…」
「ん?」
「これから毎日、学校の時に食べるお弁当作りましょうか?」
「んん?」
「いや、あの…今のお話聞いて先生の健康面が心配になってしまいまして倒れてもらっては困るので健康のためにも私が作ろうかと…ご迷惑ならいいんですっ!本当に!」
「い、いや迷惑なわけないが…逆に嬉しいというか…コホンッ いや、だが相浦の負担にはならないか?俺の分まで毎朝起きてお弁当なんて…」
「いえ、私がしたくてするんです!負担なんてないですよ。それに、毎朝弟や妹のお弁当作るなんていつもですし、そこに一人分増えるだけでなんてことないです」
「なら、いいんだが…」
「よかった!なら、そうと決まれば先生嫌いな食べ物なんかありますか?」
「んーと、ピーマン…」
先生は目を泳がせながら耳を赤くし小さく呟いた。
「ぷふっ 優と同じだ!ふふふっ」
私はついとばかりにお腹をかかえて笑い出す。
「こら!笑ったな?」
先生は私のおでこに右手で作った拳を小さく軽く当てる。
「っ…」
至近距離に先生の顔がありさっきまで笑っていた顔が止まった。
先生は私の目を見つめ私と同じように止まる。
「あの…先生?」
「す、すまんっ!」
先生は私の声にすかさず体を顔を離し少し距離を置く。
「い、いえ…」
「コホンッ…ところで、優とは弟の事か?」
「は、はいそうです。優もピーマン嫌いで中々食べてくれないんです ふふっ」
「そりゃそうだ。あの苦さといったら意地でも食べたくない…」
先生は顔を歪ませ邪険そうにピーマンの事を語った。
「ふふっ 先生も可愛いとこあるんですね」
「お前、今俺の事バカにしただろ?」
「い、いえそんなことは…ふふっ」
堪らずまたお腹を抱えて笑うと先生はジト目で私を睨みつける。
「よし、相浦には今日から俺の授業の手伝いでもしてもらおうかなー」
先生は腕を組みながらニヤニヤとした悪い顔で仕返しとばかりに私を見つめる。
「え?それじゃあ、先生罰ゲームになりませんよ?先生の手伝いなら喜んでしたいです!」
「っ…」
満面の笑みで返す雪に仕返ししたつもりが返り討ちにあった緑はまたしても右腕で口を隠すように真っ赤になった顔がを隠した。
「先生?」
「お前、それわざとやっているのか?」
「へ?」
「いや、なわけないか…そんな事出来る奴じゃないしな…たくっ…」
「あっ!先生急がないと学校遅れちゃいます!」
「うわっ!そうだな、急ぐぞっ!」
「はいっ!」
急いで食べ終わった食器をキッチンに運び戸締りをする。
「あ、そうだっ!先生!」
「ん?何だ?」
「昨日、先生のシャンプー使わせてもらったんですけど私の好きなラベンダーの香りで今日は先生と同じ匂いなんですよ!ふふっ」
玄関先でくるりと振り返った拍子に雪の綺麗な黒髪から緑と同じラベンダーの香りが微かに鼻をくすぐった。
「っ…だ、だからお前はいつもいつもこう…」
「はい?」
「いいから急ぐぞ!」
緑は無理やり言葉を濁らせ雪を急かすように部屋から出た。
「これだから、惹かれるのかもな…」
雪の走る後ろ姿を見ながらこっそり呟く。
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