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小さな飴玉
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不登校生こと黒川 白との初対面をはたし何も聞けずじまいで終わった次の日。
緑先生に報告するため私は職員室の前にいた。
緑先生を待ちながら廊下で行き交う生徒を見ていると職員室から緑先生が出てきた。
「相浦、待たせたな」
「いえ…」
「で、黒川のことはどうなった?学校やクラスに入らない理由を何か聞けたか?」
「すみません…何も聞けませんでした。単に行きたくないだけだと一点張りでそれ以上は何も…」
「そうか…俺の時も同じ様子だった。いつか話してくれると行けるように黒川の悩みを解決できるんだが…」
悲しげに肩を落とす緑先生に私は申し訳なくなった。
「すみません…お役にたてなくて…」
「いいんだ、相浦が謝ることじゃない。黒川に聞いてほしいって相浦に頼んだのは俺の方だからな…」
「でも…」
「仕方ないなー…」
先生はおもむろに右ポケットに手を入れると小さな飴玉を取り出した。
「相浦にこれやるからもう気にするな?」
先生は私の右手を掴むと手のひらに飴玉を乗せた。
「あの、先生?私、高校生なんで子供じゃないですよ?」
「あ?それは分かっているが…」
「だから、飴あげられても逆に困ります。子供じゃないんですから」
「いいから言われた通りに素直に受け取れ。この飴、凄く美味しいぞ?それに、甘い物食べると元気が出るって言うだろ」
「はぁ…」
私は大人しく先生の言う通りに飴玉を受け取った。
「先生…私、また黒川くんに会ってみますね。また、何も聞けなくても何度でも会って聞いてみます!」
「そうか…相浦がそこまで言うんなら俺も黒川とまた会って話してみるわ」
「はい!諦めなければ何とかなりますよ。きっと…」
「ははっ そうだな!」
左拳を作って言う私に先生はその綺麗な顔で笑った。
「それじゃぁ、私もう行きますね?」
「あぁ。ありがとうな…相浦」
「はい」
私は緑先生に別れを告げ教室へと戻っていった。
廊下を歩きながら先ほど先生に貰った飴玉を口に含む。
「ほんとだ、美味しい…」
口の中で甘い飴玉を転がしながら私は励ましてくれた先生に思いを馳せる…
緑先生に報告するため私は職員室の前にいた。
緑先生を待ちながら廊下で行き交う生徒を見ていると職員室から緑先生が出てきた。
「相浦、待たせたな」
「いえ…」
「で、黒川のことはどうなった?学校やクラスに入らない理由を何か聞けたか?」
「すみません…何も聞けませんでした。単に行きたくないだけだと一点張りでそれ以上は何も…」
「そうか…俺の時も同じ様子だった。いつか話してくれると行けるように黒川の悩みを解決できるんだが…」
悲しげに肩を落とす緑先生に私は申し訳なくなった。
「すみません…お役にたてなくて…」
「いいんだ、相浦が謝ることじゃない。黒川に聞いてほしいって相浦に頼んだのは俺の方だからな…」
「でも…」
「仕方ないなー…」
先生はおもむろに右ポケットに手を入れると小さな飴玉を取り出した。
「相浦にこれやるからもう気にするな?」
先生は私の右手を掴むと手のひらに飴玉を乗せた。
「あの、先生?私、高校生なんで子供じゃないですよ?」
「あ?それは分かっているが…」
「だから、飴あげられても逆に困ります。子供じゃないんですから」
「いいから言われた通りに素直に受け取れ。この飴、凄く美味しいぞ?それに、甘い物食べると元気が出るって言うだろ」
「はぁ…」
私は大人しく先生の言う通りに飴玉を受け取った。
「先生…私、また黒川くんに会ってみますね。また、何も聞けなくても何度でも会って聞いてみます!」
「そうか…相浦がそこまで言うんなら俺も黒川とまた会って話してみるわ」
「はい!諦めなければ何とかなりますよ。きっと…」
「ははっ そうだな!」
左拳を作って言う私に先生はその綺麗な顔で笑った。
「それじゃぁ、私もう行きますね?」
「あぁ。ありがとうな…相浦」
「はい」
私は緑先生に別れを告げ教室へと戻っていった。
廊下を歩きながら先ほど先生に貰った飴玉を口に含む。
「ほんとだ、美味しい…」
口の中で甘い飴玉を転がしながら私は励ましてくれた先生に思いを馳せる…
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