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相談と図書室と友達

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昨日、放課後の生徒会室で金城先輩にチェスで負けその賭けで負けたその代償として指や指先を舐められキスされた後チェスのお陰で少しは黒王子こと金城先輩もいい人なのかもと思ったのが間違いだった。
やっぱり黒王子は黒王子だ。
でも、ほんの少し信じるならあんな最低な黒王子も優しさとか子供みたいに負けず嫌いなところもあの黒王子の一部なんだと。
その一面を見てしまった私は今まで通りに最低黒王子として見れるかと言うと否だろう。
少しだけ…ほんの少しだけだけど今まで通りには見れない自分がいた。

朝いつものように学校に行き真奈に会って何事も無かったように過ぎていった。
朝のホームルームで緑先生に学校の帰りに行く不登校生へのプリントとその不登校生についての簡単なプロフィールを貰った。
その時初めて知った不登校生の名前は黒川 白と言うらしい。
黒川くんについては簡単な家族構成と住所しかプロフィールには載っていなかった。
しかし、不登校生の黒川 白と言う名前を知ったからと言って前世での記憶には黒川 白と言う名前はなかった。
とにかく実際に会ってみるしか私には出来ないのだ。

そして、最近になってどこかで誰かの視線を感じるようになった。
それが誰なのか知る由もないのだが学校の時も学校終わりのバイトの時も感じる視線にさすがの私も少しばかり恐怖を覚え始めていた。
そりゃあ、あのイケメン攻略対象者たちのせいで目立っているのかもしれない。
それにより、女子たちから標的にされてもおかしくはないのだが普通なら考えられる女子たちからのいじめや悪戯が一切ないのだ。
だからって言って突き刺す視線が女子じゃないとは言えないのだが…
そんな考えを頭の中でぐるぐる考えながら廊下を歩いていると迂闊にも誰かの背中にぶつかってしまった。

ドンッ!
バタン…

ぶつかった拍子に何かが床に落ちた音がした。

「すみません!私が前を見ていなかったので…」

咄嗟に床に落ちた物に手を伸ばすと横から誰かの手が触れた。

「あっ…」

「すまん…」

呟かれた声にどこか聞き覚えがありふと途上を見上げた。
そこにいたのは警察本部長官の息子で剣道の師範を持つ桂馬 翔先輩だった。
目と鼻の先にある桂馬先輩の顔を見つめ状況が呑み込めず固まったままの私に桂馬先輩の方が先に顔逸らした。
微かに赤いように見える桂馬先輩は私に視線を向けず体と顔だけを向けた。

「すっ、すまん…まさか相浦とぶつかったとは思わなかった…」

申し訳なさそうに言う桂馬先輩の声にやっと状況を理解した私はすかさずぶつかってしまった事について謝る。

「謝らなきゃいけないのは私の方ですっ!考え事なんかして前見てなかったから桂馬先輩にぶつかっちゃって…」

「そこまで謝る必要は無い。俺も周り見てなかったのが悪い…」

お互いに申し訳なさそうにその場に立ち尽くし一向に前に進みそうになかったので話を変える事にした。

「あの、桂馬先輩が落としたその本?って何ですか?」

視線を落とすと分厚めの一冊の茶色本が落ちていた。
多分、ぶつかった拍子に桂馬先輩が持っていた本が落ちたのだとすぐ分かった。
桂馬先輩は、拾いそこねた茶色本を拾った。

「この本は図書室で借りた本なんだ。内容は物語小説。」

「そうなんですか。前に喫茶店に来てくれた時に読んでいた本と違ったのでどんな本なのかなって気になって…」

「喫茶店で読んでた本も同じような物語小説。あの本も図書室で借りた」

「図書室よく行くんですか?」

「あぁ…読みたい本を探したり面白そうな本がないか探したりしてよく行く」

「じゃあ、今さっきも図書室に向かってたんですか?」

桂馬先輩の行く方向の廊下を見ながらこの先にある図書室を思い浮かべる。

「うん…図書室に行く途中だった」

「じゃあ、はやく図書室に行ってください。こんな所に立ってたら周りの女子たちがすぐに寄ってきますよ。先輩、女子が苦手なんですよね?」

この前、周りがうるさいって言って嫌そうな顔をしていた先輩がいたからその周りとはほとんどが女子しか考えられなかった。
推測でしかないんだが多分桂馬先輩は女子に苦手意識があるのかなって思った。

「よく俺が女子が苦手って分かったな…」

「なんとなくです」

驚いた顔をした桂馬先輩に私は笑顔であっさり答えた。

「そんな事よりはやく行ってくださ…うひゃっ!」

桂馬先輩を図書室の廊下側に向けさせようと背中に触れようとした時桂馬先輩にぐいっと腕を掴まれた。

「行くなら相浦も一緒に…」

「いや、別に図書室に用事なんかな…ってわぁ?!」

反論しようとしたらそのまま腕を掴まれた状態で桂馬先輩が図書室に向かって走り出した。

廊下は走っちゃ駄目って基本でしょーがっ!!

心の中で突っ込むものの私の声など目もくれず走っている先輩に流されるしかなかった。
無事に図書室の前に着くと先輩はようやく腕を解放してくれた。

「はぁ…はぁ、何で私もなんですか?図書室に用事なんて無いのに…」

「何か悩み事でもあるんだろう?さっき考え事してて前見てなかったって言ってたから…」

「えっ…」

「俺でよかったら話聞く…」

「でも、そんな相談するような悩みでもないですし…」

「俺が聞くのは不満か?…」

いかにも犬の耳を下げたようなしょんぼりした顔した先輩にどこか悪いことをしたような気がしてすぐさま前言撤回をした。

「そんな事ないです!ただ、私なんかの悩みを先輩に聞いてもらうのが申し訳なくて…」

「それなら問題ない。俺が聞きたくて聞いているだけだからな…」

ガラッ

そう言いながら桂馬先輩は図書室のドアを開けると入って行った。
先輩の後を続くように入って行くと初めて来る図書室を見渡した。
この学校の図書室は3階まで続く本に埋めつくされておりまるで本の家かのような場所だった。
一階には本棚が沢山並ぶ中にいくつものテーブルと椅子が並べられていた。
この学校にある本たちは世界中の本が並べられているほどあるので本好きにとっては最高の図書室だろう…
桂馬先輩は目の前の机に持っていた本を置くと一緒に並べられている椅子に腰を下ろした。
隣に並ぶ椅子に手招きするとそのまま従うように手招きされた椅子に座った。

「で、悩み事って何だ?」

向かい合うように体を向け私の顔をみる先輩にもう言うしかないと心に決め意をけして口を開いた。

「実は…最近ずっと誰かに見られているような気がするんです…私の思い違いかも知れませんが…」

傍から聞いたらただの自意識過剰勘違い女と思われるかもしれない発言に先輩は親身になって聞いてくれた。

「誰かって心当たりはないのか?」

「特にはないんですけど…憶測でしかないですが、多分、学校の女子の誰かと思うんです。あの、部活紹介いらい目立っちゃったので私…」

「確かに、それはありえるな…部活紹介の時倒れて優希に運ばれて行ったからな。もしかしたら優希のファンかもしれないな…」

「はぁ…多分…」

他にも攻略対象者に関わっているので立川先輩のファンだけとは限らないがその事は桂馬先輩には伏せた。

「今度、優希のファンの中に相浦の事をずっと見ているやつがいるか優希に聞いてみる。優希はあれでもファンの交流はしているみたいだからな…」

「ありがとうございます…」

「もし、何かあったらまた俺に相談して欲しい。少しでも相浦の助けになりたい…」

「どうしてそこまで気にかけてくれるんですか?」

ふと思った疑問を桂馬先輩に言ってみる。
すると、少し私から視線を外しながら話す先輩が目に入った。

「その…相浦は特別と言うか…なんというか困ってたり悩んでる姿を見るとほっとけないんだ…」

「そんですね…私も先輩が困ってたり悩んでたらほっとけません。」

「なぁ、相浦…俺と友達になってくれないか?」

その申し出に桂馬先輩の様子と女子が苦手なのに女子である私に友達になって欲しいと言った先輩の気持ちを裏切る事は出来なかった。
きっと勇気を出して言った言葉だと思うから…
私はそんな先輩に答えるように向き直ると真っ直ぐに先輩の顔を見て言った。

「いいですよ。私も先輩と友達になりたいです。」

「ありがとう…」

私の返事を聞いた時誰もが見惚れるめったに見れない桂馬先輩の笑顔が目の前に飛び込んできた。

「これ…友達になったからというか何かあったらすぐ連絡して欲しいから交換しないか?」

ポケットから藍色の携帯を取り出すと私に向けてそれを突き出した。

まさか、携帯を交換とか言わないよね?
アドレスとか連絡先の事だと思うし友達なら当たり前だよね…

私も自分のポケットから携帯を取り出した。

「私のアドレスと連絡先を桂馬先輩の携帯に送ります。それでいいでしょうか?」

「あぁ、頼む…」

桂馬先輩の携帯に自分のアドレスと連絡先を送りまた、桂馬先輩のアドレスと連絡先を私の携帯に送ってもらった。
私のアドレス帳にチャラ男と書かれた横に新しく入った桂馬先輩の名前を見る。
あのチャラ男とは大違いだな。
桂馬先輩は友達だけどチャラ男は私にとって何だろう?
ふと過ぎった疑問を頭で考えながら自分の携帯にを見ているとその様子に桂馬先輩が声をかける。

「どうかしたか?」

「あ、いえ何でもないです。桂馬先輩と友達になれてよかったなぁと思って…」

「俺も相浦と友達になれて嬉しい…。前に誘拐されて俺の家で相浦が療養した時からずっとアドレスや連絡先を聞けばよかったって思ってたんだ。」

「そうだったんですか。言ってくれれば私教えたのに…」

「言えなかったんだ…言う勇気がなかった。今まで女子にそんな事言った事もなかったしずっと女子を避けてきたから…」

「それなら、少しずつでも女子に慣れるようになればいいじゃないですか。女子も先輩が思うような人ばかりじゃないですよ?普通に私みたいに友達になりたいとか話してみたいとか思っている女子だっていると思いますし…少しずつでも先輩から近づいてみてもいいと思います」

「なら、俺が女子に少しでも近づけたり話せるように相浦が協力してくれないか?」

「もちろん、いいですよ。だって、友達じゃないですか」

「ありがとう…」

私の悩み相談から先輩の悩み相談になっていると予鈴がなり私は桂馬先輩と別れ図書室を後にした。

雪と別れた桂馬は携帯のアドレス帳に入った雪の名前を見る。

「友達か…」

自分は本当に友達になりたかったのか?
本当は違うものになりたかったんじゃないか?
そんな疑問を思いながら相浦 雪と書かれたアドレスを閉じた…



    
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