上 下
14 / 79

レンズ越しに見えるもの

しおりを挟む
次の日のお昼、真奈との昼ごはんを早めに切り上げると私は校舎裏に向かっていた。
手には昨日作ったクッキーの包みを持ってチャラ男こと生徒会会計 高宮 光先輩に渡すために。
校舎裏につくとカメラを持ってベンチで寝そべる高宮先輩がいた。

私は高宮先輩に近づくと女子が見たら即死するであろう綺麗な寝顔を覗き込み話しかける。

「高宮先輩!あの、相浦 雪です」

私の声に気づいた高宮先輩は、驚いた表情をしたと思ったら一瞬にして顔を赤く染めた。

「ゆ、ゆきちゃん?!何でここに?!」

「校舎裏に居るって言っていたので来たんですが…」

「まさか俺に会いに来てくれたの?嬉しいなー!」

「はい、高宮先輩に会いに来ました。」

「えっ!?本当にそうだったんだ」

高宮先輩は、何故か動揺した表情を見せると私の顔見ず視線を横に逸らす。
私は、手に持っていたクッキーの包み先輩の前に差し出した。

「あの、これずっと前に助けてくれた時のお礼です。」

「お礼ならこないだアップルティーでしてもらったはずだけど…」

「さすがにアップルティーだけじゃ申し訳ない気がしてクッキー作ったんですけど食べてください」

「クッキー?」

先輩は、差し出したクッキーの包みを受け取ると赤いリボンを開き中を覗き込む。

「わぁ!美味しそうー!」

「お口に合うか分かりませんが…」

「食べていい?」

「どうぞ」

先輩は、クッキーを一枚かじると美味しそうに食べた。

「美味しいー!俺の好きな紅茶のクッキーだ」

「紅茶味とココア味を作ったんですけど、まえにアップルティーが好きだって先輩が言っていたので紅茶のクッキーだけを渡してみたんですけど喜んでくれて嬉しいです。」

「ゆきちゃんさー、それわざとやってる?」

「はい?何をですか?」

「いや、何でもない…」

先輩はそう言うと、また視線を逸らし顔を赤くした。

「ところでこんな所で何してたんですか?」

「ん?あぁ…写真撮ってたんだ」

「写真?」

「そう、これでね」

先輩は、手に持っていたカメラを私に見せてくれた。
カメラの中には綺麗な青空や空を飛ぶ蝶や鳥たちや草木の写真があった。

「綺麗…」

「でしょ?ここにいたら誰も俺の邪魔をする人はいないし、ここは静かで自然の風景がたくさん撮れるから好きなんだ」

「何で写真を撮ってるんですか?」

先輩は、苦笑いをしながら遠くを見るかのように徐に話し始めた。

「俺ね、昔から人の顔色見ながらずっと生きたんだ。そのせいか、誰がどんな事を考えてるのか自然と分かるようになった。でも、みんな本当の気持ちや言葉を言ってなくて嘘ばっかり言って気に入られようとしたり利用しようと考える人ばっかりだった。でもさ、カメラのレンズ越しに見える景色は違ったんだ。レンズ越しに見えるのは綺麗なありのまま風景だった。俺は、そのありのままに惹かれた。だからずっと暇な時にはずっとこのカメラで撮ってるんだ。」

レンズを覗き込む先輩は自然と笑顔になっていた。

「先輩って、何も考えなさそうに見えてちゃんと考えてるんですね」

「ちょっ…ゆきちゃんって時々刺があるよね…」

「本心を言ったまでです。」

「ははっ そういうゆきちゃんだから惹かれたのかもなぁ」

「はぁ…」

先輩は、そう言うと何かを思い出したように話を切り出した。

「あっ!そうだ!ゆきちゃん、携帯のアドレスと番号教えてよ!」

「えっ…」

「えっ、ダメ?俺、ゆきちゃんとちゃんと友達になりたいんだよね。だから、アドレスとか番号とか教えてくれたらいつでもメールや電話出来るからさ」

正直にいうと、高宮先輩に教えたくはない。
すでに、メイドとして金城先輩に知られているぶんにこれ以上攻略者たちと親密になるのは避けたかった。
だが、断る理由もなく私は渋々承諾したのだった。

「いいですよ」

「やったー!嬉しい!これでいつでもやり取り出来るね」

「応えられるかは分かりませんが暇だったら返信します。」

私は新しく登録された高宮先輩のアドレスにチャラ男と登録した。

キーンコーンカーンコーン

予鈴がなり高宮先輩と別れた私はどんどん平凡に普通に過ごす地味キャラから離れていく気がしてならなかった…





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...