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風紀と昼休み

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「これが風紀の報告書です。」

「あぁ、分かった。」
 
緑先生に報告しに真奈と職員室につくと緑先生と話している腰まであるロングヘアの黒髪の男子?がいた。

「それでは、失礼します。」

そういうと彼は帰っていった。

「あっ!相浦もう大丈夫か?頭は大丈夫なのか?」

緑先生は、私たちに気づくと私たちが声をかけるまえに先生の心配する声がとんできた。

「頭痛が少しあったんですけど立川先輩のおかげで氷で冷やしたらだいぶ痛みも引いたので大丈夫です。」

「そうか…良かった。」

「では、私たちは教室に戻ります。」

「あぁ、まだ、体調がすぐれないんなら早退してもいいからな?」

「はい、心配おかけしてすみません。ありがとうございます。」

緑先生に報告が終わると私たちは教室に戻った。

「いらっしゃいませ」

「ゆきちゃん5番テーブルの注文お願い」

「はいっ!」

学校が終わるといつものように夜はアルバイトだ。
今日は、昔から働いている近所の喫茶店のアルバイトだった。

「ゆきちゃん、あのカウンターにいる男の子知ってる?」

マスターの奥さんである美代子さんの言う方向へ視線をやるとそこにはストレートの黒髪に同じく黒い瞳をもつガタイのいい和風男子こと 桂馬 翔 先輩がいた。

何で喫茶店に桂馬先輩が?!

桂馬先輩はアメリカンコーヒーを片手に本を読んでいた。

まずい…攻略対象者に関わるのだけは避けようって決めてるのに…

「あの…美代子さん、あのお客さんの相手だけは事情により避けたいんですけどダメですか?」

「訳ありかい?」

「まぁ…そんなところです。」

「それなら仕方ないね。いいよ」

「はぁ…すみません。ありがとうございます。」

私は桂馬先輩を避けながら他のお客さんのオーダーがない間は厨房に隠れた。

「お会計お願いします。」

桂馬先輩がレジの前に立つと財布を取り出し会計をとる。

はぁ…やっと帰ってくれる…

と思っていた矢先…

チャリンチャリンチャリン

小銭が落ちる音がした
私は咄嗟に拾わなきゃという気持ちのまま桂馬先輩が落としたお金を拾っていた。

「どうぞ」

「ありがとうございます。」

あっ、しまった…
つい、いつものくせでやってしまった…

「でっ、では…」

「待って!君どっかで見たような…あっ!今日部活紹介の時にバスケットボールに当たって倒れた女子生徒」

あー、終わった…

「はい…その通りです。」

「この喫茶店でバイトしてたんだ」

「はい」
 
「このお店気に入ってるんだ。人少なくてうるさくないしゆっくり一人で本を読めるから」

「家や学校じゃ読めないんですか?」

「家だと師範として弟子に教えたりしないといけないし学校だと部活に入っても周りがうるさいし部活以外でもうるさいけど生徒会と風紀の仕事もあるから暇がないんだ」

「なるほど…って生徒会と風紀の仕事って何ですか?」

「生徒会と風紀の中立として二つの書類整理とかを引き受けてるんだ。生徒会と風紀は仲が悪いから」

「そうだったんですね…」

桂馬先輩大変だなぁ…

「またここに本を読みに来てもいい?」

うっ…イケメンの願いは断ろうにもその瞳のせいで断れない

そして何より…

「もちろんです!この喫茶店を気に入ってくれたなら働いている身としては嬉しいしおとくいさんになってもらえるお客さんを断るなんてしませんよ。むしろ大歓迎です。」

「ありがとう」

桂馬先輩は最高級の笑顔で笑うとお礼を残して帰っていった。

「ゆきちゃんおはよう!」

「真奈おはよう。今日も元気だね」

「当たり前でしょ?毎日元気いっぱに明るくいかなきゃ幸せはやってこないよ!」

「ははっ 真奈らしい」

「まぁね!あっ!ゆき今日の昼休み屋上で食べない?」

「珍しいね?いつも教室なのに。でも、たまには違う場所で食べるのもいいかもね」

「でしょ!じゃ、決まりね!」

いつもよりニッコニコの真奈をこの時少しでも疑えば良かったと私は後に後悔することになる…

午前の授業終わりに昼休みに入ると真奈と私はお弁当を持って屋上に上がった。
息抜きのはずの昼休みは屋上の扉を開けた瞬間、息抜きどころではなくなった。

「優ちゃん、おまたせー!」

「おう!真奈に相浦やっと来たか。」

そこにいたのはバスケ部部長こと立川 優希先輩だった。

だ、騙された…

私はすかさず真奈を睨むが当の本人はごめんと手を合わせ上目遣いで謝ってくる。

はぁ…こうなってしまったのは仕方ない。
これ以上何も起こりませんように…

「ゆきもはやく座って食べよう?」

仕方なく真奈の言う通りに座ると目の前で笑顔の立川先輩がいた。

「相川のお弁当美味そうだな…いつもお母さんが作ってくれてるのか?」

「ちょっ…優ちゃんそれ禁句!」

「…?」

「私、幼い時に母が他界したので母はいません。お弁当はいつも自分で作っています。」

「そうだったのか…わりぃ、知らなかったとはいえ不躾な質問しちまって…」

「いいんです。もう慣れましたから」

「じゃあ、そのお弁当も相浦の手作りなんだな。料理上手いなんて凄いな。」

「そんな事ないです。好きでやってる部分もありますので」
 
「ゆきその卵焼き1個ちょーだい!」

「しょうがないなぁ…いいよ」

パク

真奈は、私のお弁当から卵焼きを取り出し食べた。
私も食べようと卵焼きを取り出した。

「じゃ、俺も卵焼きもーらいっ!」

パク

あっ…
一瞬何が起きたか分からなかったが理解するのに時間はかからなかった。

立川先輩が私が取り出した卵焼きを食べたのだ。
しかも、至近距離のウィンクつきで

私はあの時と同じように耳から熱が集まるのを感じた。

「うん!めちゃ上手い!」

「もう!優ちゃんも食べたらゆきのお弁当がなくなっちゃうでしょ!」

「お前も食ったんだから同罪だ!」

「なにぉー!ってあれ?ゆき?おーい」

「わぁ?!な、何?」

「大丈夫?ゆき固まって止まったままだったよ?」

「え?か、考え事してただけっ!」

やばい…あまりの出来事に思考停止してしまった…

自分の思考回路をなんとか取り戻していると屋上の扉が開いた。

バタン
 
「立川!お前こんなところにいたのか!探したんだぞ」

「あ!なぎちゃん先輩ー!先輩もお弁当食べようよ!」

「何を言っている!風紀の仕事放置してこんなところで遊びよってはやく溜まっている仕事を終わらせろ」

「うっ…分かったよ。わりぃ、相浦と真奈。また今度ゆっくりまた食べような」

「うん、仕事なら仕方ないよ。またね」

「おう!」

出来ればもう二度と一緒は嫌なのですが…

「ところで、今の人誰?それに、立川先輩と風紀に何の関係があるの?」 
 
「あぁ、ゆきはまだ知らなかったよね。優ちゃん風紀の副委員長してるの。バスケ部と掛け持ちでね」
 
そうだったんだぁ…
バスケ部部長もしてれば風紀の仕事サボりたくなる気持ちは分かるかも…。

「で、今さっき優ちゃん連れていったのは職員室で緑先生と話してた風紀委員長の 奥薗おくぞの なぎさ先輩。  家は有名な歌舞伎一族で奥園先輩は女形として有名なんだよ。だから、綺麗な長い黒髪ストレートに薄いパープルの瞳で女性以上に綺麗なんだよ。そんな奥園先輩の凛としたカッコよさに惚れる女子も多くてファクラブも勿論あるからね」

なるほどね…女形もやっているから女子と間違えそうになったんだ…納得。

と言うことは、女性以上の美しさをもつ奥園先輩がクイーンってことになるのかな?
んー、これで攻略対象者全員見つけた感じだよね。

この時、私の記憶の中で一人のキャラだけが欠如していた。
後に出会う事になる彼の登場で雪の運命はますます覆ることになる…

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