地味な私が恋愛ゲーム世界の攻略者？！

この世界が恋愛ゲームの世界？！

「ゆきちゃーん！今度はこっちの清掃お願いー！」

「はーい！今、向かいます！」

私、相浦あいうら雪ゆきはただ今清掃アルバイトの真っ最中です。
女子高生にして、アルバイト4つも掛け持ちをし家のため働いています。
家は、極度の貧乏で母は妹の出産とともに他界し父は5年前に海外で仕事をみつけるとか訳の分からない事をいい出て行きました。
家に残ったのは五歳の妹と八歳の弟、そして十一歳の私でした。
下の兄弟のため、家計をなんとかやりくりするため幼い頃からお世話になっている喫茶店の老夫婦に頼み込み十一歳にして働くはめになったのだ。
父が残してくれた貯金と喫茶店のバイト代で中三までなんとかやってこれたが中三になり高校生と偽りガソリンスタンドと清掃の2つのバイトを追加した。
それから一年後、やっとの思いで正式に高校生となり居酒屋のバイトも増やした。
父はというと出て行ったきり音沙汰無し。
どこで何をしているかも分からないが父の事だから無駄死にだけはしてないだろう。
特にもう心配などしていないが……

「ゆきちゃんは、よく働くねぇ…妹ちゃんと弟くんの面倒もよく見て本当にえらいねぇ」

「働いてばかりじゃなくて、少しは高校生の女の子らしく恋でもすればいいのに」

「そうだよー！せっかく可愛い見た目してるのにもったいないよ」

「あはは…。恋する時間があるなら少しでも働いた方が家計のためになりますし好きでやっていることなので」

「そうかい？でも、あんまり無理しちゃいけないよ」

「肝に命じます。」

「急に倒れたりでもしたら悲しむのは妹ちゃんや、弟くんなんだから」

「はい、分かってます。心配してくれてありがとうございます」

そう妹や弟を悲しませるわけにはいかない。
だけど、働かなくては養う事も出来ない。
頼れるのは私しかいないんだ…。

「はぁ…今日も一日疲れたぁ。明日も学校だから早くお風呂入って寝なきゃ」

夜の町並みに沿いながら星を見つめてまた歩き出す。

プルルルル…

ん？真奈からメールだ。
何だろう？画面を開くと同時に突然頭に激痛が走った。

な…に…これ……

頭に巡るのは見たことあるような映像だった。
そこに映るのは、茶色がかった自分と同じくらいの少女と手に持っているゲーム画面。

これ、知ってる…。
このゲームの内容は確か…
” トランプ・クロス ”
 大好きだった恋愛ゲームだ。
たしか、ハート・スペード・クローバー・ダイヤを中心にクイーン・ナイト・キング・エースが攻略対象者だった。
青藍学園を舞台にヒロインが彼らと恋に落ちて恋愛する恋愛ゲーム。
ヒロインの名前は……

すると手元に映るスマホの画面に親友の名前をみて固まる。
 
 ” 七瀬ななせ真奈まな ”
 
 それがこのゲームのヒロインの名前だった。

「う、嘘でしょ…？何で真奈の名前とヒロインの名前が一緒なの？」

そして、最悪な事にゲームのキャラの名前の中にヒロインの親友のキャラの名前である相浦雪の名前があった。

最後に映る映像は茶色がかった少女いや笹倉花奈であった前世の私は17にして交通事故で死んだ姿だった…。

涙が頬をつたりまだ収まらない頭痛と共に意識がもうろうとする中この世界が恋愛ゲーム”トランプ・クロス”の世界だと認識する。
認識した拍子に目の前の視界が大きく揺らいだ。
都心の街中にスマホを握りしめたまま私は倒れてしまった…