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腹黒 ✕ 腹黒
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チックタック…チックタック…
室内にてアンティーク調の古時計の音を聞きながらも神崎は黙々と目の前の書類に目を通しつつ間違いを訂正したり判子を押していると部屋の入口の扉が開かれ出かけていた奥薗の声がかかった。
「葵、遅くなってすみません」
「何かトラブルでもあったのか?」
「いえ…少しばかり頭の悪い猿にお説教をしていただけなので、大した事ではありません」
「ははっ…頭の悪い猿ね」
奥薗の言う頭の悪い猿に例えられた可哀想な少年の姿を推測で頭に浮かべつつ苦笑いを零す。
「それより葵の方こそどうでしたか?何かいいものでも得られましたか?」
「ふふ…渚なら私の表情で分かるでしょうに」
「ふっ…愚問でしたね」
互いに妖艶な笑みで笑い合いながら奥薗は神崎の隣に腰を下ろすと神崎同様に机の上に溜まりまくっている書類に向き直る。
「今日中にこれも終わらせないといけませんね…」
「そうですね、明日は…」
コンコン…
奥薗の言葉に神崎が返していると何者かによって入口の扉を叩く音に言葉を遮られ二人揃って入口の方を振り向くと開けられた扉からお茶入の湯のみを乗せたお盆を持つ秋月が顔を出した。
「失礼します…お茶をお持ちしたのですけど…お邪魔でしたでしょうか?」
「いえ…貴方のお茶なら大歓迎です。例え毒入りだとしても…」
奥薗はにこやかに笑いかけながら目は笑っていない表情を向けると、秋月は毒を含んだ奥薗に臆すること無く小さく笑みを零す。
「ふふ…ご冗談を…お客様にそのような事はしませんよ」
「そうですか…それが事実ならいいですけどね?」
「ふふ…」
核心を突くような奥薗の質問に今度は返事をすることなく笑みだけを零すとお茶入の湯のみを乗せたお盆を持ったまま二人の間にお茶入の湯のみを置く。
コトッ…
「ありがとうございます…」
お茶を置く秋月を見上げ神崎がお礼の言葉を口にする。
「いえ…それよりも大変そうですね」
二人の机の上に山積みにされている書類の数々を見つめふと漏らすと神崎と奥薗は苦笑いを浮かべながら互いにそれぞれこうなった原因である人物を思い浮かべながら口々に愚痴を漏らす。
「これも上に立つ傲慢で我儘な馬鹿が残してくれたおかげですね…」
「ふふ…上だけじゃなく下も似たようなものですけどね…練習前ならいくらでも出来たはずなのに分かりやすい言い訳で放棄して逃げ出す馬鹿な猿のおかげです」
皮肉たっぷり愚痴る二人の腹黒王子に秋月は同情の言葉を述べる。
「えっと…ご苦労様です」
「ご気遣いありがとうございます…ですが、もう慣れた事なので」
「慣れとは怖いものですね…」
奥薗の言葉に神崎に苦笑いを浮かべつつ言葉を付け足した。
「でも、そんなに大変なら馬鹿な女性なんかに構っている暇はないですね…」
秋月のその言葉に神崎の眉が少しばかり上がったが笑みを崩さず答える。
「そうですね…あいにく、その様な女性に構っている暇なんかありませんね」
「そうですよね、偽善者面して周りの殿方に付きまとうようなそんな馬鹿な女性に構っていては時間の無駄になりますから…」
「ええ、その通りですね…例えばまるで予め計画していたかの様に待ち伏せて水をかけるような馬鹿な女性とか」
「え…?」
秋神崎の言葉に秋月が戸惑いの色を見せていると、それに付け足すかのように奥薗が口を開く。
「葵と似たような馬鹿な女性を私も知っていますよ…例えば人の物を盗んで嘘偽りの言葉で誤魔化した馬鹿な女性を」
「え…えっと…それはどういう方なんですか?」
「そうですね~…毒入りのお茶を差し出した方ですかね?」
「っ…」
秋月を見上げて不敵に笑いかける奥薗の言葉に息が詰まると更に追い討ちをかけるかのように神崎が書類に向かっていた手を止め立ち上がるとそれを見た奥薗も同じようにペンを置き立ち上がった。
カタッ…
「あ…そうそう秋月さん、媚薬を入れるのなら人を選んだ方がいいですよ?」
「なっ…」
図星とばかりに驚きの表情を向ける秋月に神崎は小さく笑いかけ自身の鼻をつつく。
「…あいにく、薬に関しては詳しいので」
「あ…」
神崎の家系がマフィアだという事を思い出した秋月は顔を強ばらせた。
「では、もう時期お昼ですので私達は先に失礼させていただきます…」
「また大広間にてお会いしましょう…」
キー…ガチャ…
神崎と奥薗が部屋から出て行った扉を呆然と見つめるがすぐにみるみる怒りと憎悪にかられ懐から携帯を取り出しある人物にメールを送る。
『話と違うじゃない!どうしてあの二人にバレてるのよ!』
…ピロンッ
「なっ…」
送ったメールの返信された内容に益々怒りが込み上げた。
『情報は全て渡した。それを生かせないのは君が爪が甘いからだ』
「爪が甘い…ですって?私は情報の通りに動いたまでよ!私にミスなんかある筈ないわ!」
ピロンッ…
再度送られたメールを開くとそれを見た秋月の表情が怒りから妖艶な笑みへと変わった。
『もう君に期待はしない。だが、最後のチャンスを君にあげよう…』
前文から下へと視線を移すとそこに書かれた内容に期待と憎悪が入り交じりこれから起こす事について心が高鳴った。
「ふふ…地獄へと突き落としてあげるわ」
室内にてアンティーク調の古時計の音を聞きながらも神崎は黙々と目の前の書類に目を通しつつ間違いを訂正したり判子を押していると部屋の入口の扉が開かれ出かけていた奥薗の声がかかった。
「葵、遅くなってすみません」
「何かトラブルでもあったのか?」
「いえ…少しばかり頭の悪い猿にお説教をしていただけなので、大した事ではありません」
「ははっ…頭の悪い猿ね」
奥薗の言う頭の悪い猿に例えられた可哀想な少年の姿を推測で頭に浮かべつつ苦笑いを零す。
「それより葵の方こそどうでしたか?何かいいものでも得られましたか?」
「ふふ…渚なら私の表情で分かるでしょうに」
「ふっ…愚問でしたね」
互いに妖艶な笑みで笑い合いながら奥薗は神崎の隣に腰を下ろすと神崎同様に机の上に溜まりまくっている書類に向き直る。
「今日中にこれも終わらせないといけませんね…」
「そうですね、明日は…」
コンコン…
奥薗の言葉に神崎が返していると何者かによって入口の扉を叩く音に言葉を遮られ二人揃って入口の方を振り向くと開けられた扉からお茶入の湯のみを乗せたお盆を持つ秋月が顔を出した。
「失礼します…お茶をお持ちしたのですけど…お邪魔でしたでしょうか?」
「いえ…貴方のお茶なら大歓迎です。例え毒入りだとしても…」
奥薗はにこやかに笑いかけながら目は笑っていない表情を向けると、秋月は毒を含んだ奥薗に臆すること無く小さく笑みを零す。
「ふふ…ご冗談を…お客様にそのような事はしませんよ」
「そうですか…それが事実ならいいですけどね?」
「ふふ…」
核心を突くような奥薗の質問に今度は返事をすることなく笑みだけを零すとお茶入の湯のみを乗せたお盆を持ったまま二人の間にお茶入の湯のみを置く。
コトッ…
「ありがとうございます…」
お茶を置く秋月を見上げ神崎がお礼の言葉を口にする。
「いえ…それよりも大変そうですね」
二人の机の上に山積みにされている書類の数々を見つめふと漏らすと神崎と奥薗は苦笑いを浮かべながら互いにそれぞれこうなった原因である人物を思い浮かべながら口々に愚痴を漏らす。
「これも上に立つ傲慢で我儘な馬鹿が残してくれたおかげですね…」
「ふふ…上だけじゃなく下も似たようなものですけどね…練習前ならいくらでも出来たはずなのに分かりやすい言い訳で放棄して逃げ出す馬鹿な猿のおかげです」
皮肉たっぷり愚痴る二人の腹黒王子に秋月は同情の言葉を述べる。
「えっと…ご苦労様です」
「ご気遣いありがとうございます…ですが、もう慣れた事なので」
「慣れとは怖いものですね…」
奥薗の言葉に神崎に苦笑いを浮かべつつ言葉を付け足した。
「でも、そんなに大変なら馬鹿な女性なんかに構っている暇はないですね…」
秋月のその言葉に神崎の眉が少しばかり上がったが笑みを崩さず答える。
「そうですね…あいにく、その様な女性に構っている暇なんかありませんね」
「そうですよね、偽善者面して周りの殿方に付きまとうようなそんな馬鹿な女性に構っていては時間の無駄になりますから…」
「ええ、その通りですね…例えばまるで予め計画していたかの様に待ち伏せて水をかけるような馬鹿な女性とか」
「え…?」
秋神崎の言葉に秋月が戸惑いの色を見せていると、それに付け足すかのように奥薗が口を開く。
「葵と似たような馬鹿な女性を私も知っていますよ…例えば人の物を盗んで嘘偽りの言葉で誤魔化した馬鹿な女性を」
「え…えっと…それはどういう方なんですか?」
「そうですね~…毒入りのお茶を差し出した方ですかね?」
「っ…」
秋月を見上げて不敵に笑いかける奥薗の言葉に息が詰まると更に追い討ちをかけるかのように神崎が書類に向かっていた手を止め立ち上がるとそれを見た奥薗も同じようにペンを置き立ち上がった。
カタッ…
「あ…そうそう秋月さん、媚薬を入れるのなら人を選んだ方がいいですよ?」
「なっ…」
図星とばかりに驚きの表情を向ける秋月に神崎は小さく笑いかけ自身の鼻をつつく。
「…あいにく、薬に関しては詳しいので」
「あ…」
神崎の家系がマフィアだという事を思い出した秋月は顔を強ばらせた。
「では、もう時期お昼ですので私達は先に失礼させていただきます…」
「また大広間にてお会いしましょう…」
キー…ガチャ…
神崎と奥薗が部屋から出て行った扉を呆然と見つめるがすぐにみるみる怒りと憎悪にかられ懐から携帯を取り出しある人物にメールを送る。
『話と違うじゃない!どうしてあの二人にバレてるのよ!』
…ピロンッ
「なっ…」
送ったメールの返信された内容に益々怒りが込み上げた。
『情報は全て渡した。それを生かせないのは君が爪が甘いからだ』
「爪が甘い…ですって?私は情報の通りに動いたまでよ!私にミスなんかある筈ないわ!」
ピロンッ…
再度送られたメールを開くとそれを見た秋月の表情が怒りから妖艶な笑みへと変わった。
『もう君に期待はしない。だが、最後のチャンスを君にあげよう…』
前文から下へと視線を移すとそこに書かれた内容に期待と憎悪が入り交じりこれから起こす事について心が高鳴った。
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