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合宿初日

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ガタンゴトン…ガタンゴトン…

「うぐっ…」

「おい、大丈夫か?」

心配そうな桂馬の顔が覗き込まれ力なく首を縦に振る。

「だ、大丈夫で…す」

「どう見ても大丈夫じゃないだろ…」

「翔!これ飲ませろ」

後ろの席から葉山が薬を渡し受け取った桂馬から既にギリギリ状態の雪に渡る。

た、助かった~~!

手のひらにある薬を水筒の麦茶と一緒に飲み込む。

「ぷはっ!もうダメかと思った…」

「だから、バス乗る前に酔い止め飲んどけって言っただろう」

すかさず葉山から説教を受け反論とばかりに言い返す。

「だってまさかこんな山ばかりだなんて思いませんでしたし…」

現在、合宿所である旅館『秋ゃ』に向かってバスは山を登り隣町へと向かっている途中だ。

「バス酔いするなら前もって飲むのも普通だろ」

「うぅ…」

正論といえる葉山の言葉に言葉を無くすとそこに助け舟が差し出された。

「まぁまぁ、葉山先生。お説教はその辺でいいじゃないですか。酔い止めも飲んで万事解決になった事ですし今はこの景色を楽しみましょう…」

奥薗先輩が窓の外へと視線を促すとそこには日常では見ることのない太陽の光によって更に美しく映る緑の森林がみえた。

「美しい森林を見たら少しでも心が安らぐでしょ?」

色っぽく笑う奥薗先輩にドキッとしつつも助け舟を出してくれた奥薗先輩に心の中でお礼を言う。

「はい!」

 *

山奥を進むと田舎の街並みが広がり田んぼや綺麗な川が佇み古くからある神社の近くに五百年続く老舗の旅館『秋ゃ』がある。
旅館内に入りバスが止まると既に旅館に着いていた緑がバス内に入り点呼をとる。

「…よし、皆揃ってるな。既にアポは取ってるから各自指定された部屋に荷物を置き準備が整いしだい剣道部は西武道場に、バスケ部は葉山の指示の元東武道場に集合しろ!」

「はい!」

桂馬・立川を含め運動部の達が次々とバスを降りていく中、約一名のみびくともせず眠ったままの生徒がいた。

「あとは…葵!起きろ!着いたぞ」

寝不足気味なのかアイマスクにイヤホンをしたまま寝たままの神崎の体を揺すりつつ起こすが一度寝たら中々起きない体質らしい神崎はビクともせず規則正しい寝息をたてている。

「はぁ…まいったなぁ…」

「緑先生、手伝いましょうか?」

頭を悩ませ困っている緑に助け舟とばかりにそう問いかける。

「悪いな…だが、葵を起こすのは骨が折れるぞ?」

「ふふっ 大丈夫です、慣れてますから…」

「ん?慣れ?」

緑にそう言うと、さっそく神崎に近づき耳元に息を吹きかける。

「ふぅ~…」

「うわっ!?」

すかさず飛び起きた神崎に笑いつつそれに驚く緑に顔を向ける。

「ほらね」

未だ何が起こったか分からない神崎に声をかけ既に旅館に着いた事を伝える。

「わざわざすまない…ありがとう」

「いえいえ」

どうして金持ちの坊ちゃんは寝相まで似てるんだろう?ともう一人の金持ちの坊ちゃんを思い出しクスクスと笑う。

バスから荷物を取り出し旅館に入るともみじ色柄の綺麗な着物を見に纏い栗色のミディアムヘアの髪の半分をお団子にしもみじのかんざしを差し茶色の大きな瞳が印象的な綺麗な少女がいた。

「いらっしゃいませ、お荷物お僅かりします」

「い、いえ!大丈夫です…」

「では、お部屋へご案内しますね」

「よ、よろしくお願いします…」

前を進む綺麗な和服少女を少し離れて見ながら横を歩く葉山に小さく声をかける。

「…もしかしてあの人が秋月つぐみ?」

「もしかしなくてもそうだ」

ですよね…

前を歩く少女がライバルキャラだとは到底思えないが葉山の睨みを聞かせた声に真実なのだと悟る。

「ここからは右が男性のお部屋、左が女性のお部屋になります。男性の方はそのまま右に進めば指定されたお部屋が見えますのでご心配なくお進み下さいませ。相浦様は私と一緒に…」

笑っているように見えて目の奥が笑っていないと気づいたのはその瞬間だった。

「…はい」

小さく返事をし、着いていくと木造の廊下の横にある襖に手をかけ中に通された。
中は大きなテーブルに一輪のすみれの花があり奥には籠のような椅子が二つ窓際に佇んでいた。

「私も同室なのでよろしくお願いしますね?」

「え!?あ、はい!」

「では、私は仕事がありますので何か御座いましたらお部屋にある電話からか、もしくは大広間にてお知らせください」

「はい。何から何までありがとうございます…」

小さく会釈をしお礼を言う。

「いえ、お客様なので当然の事をしたまでです。では、失礼致します…」

秋月つぐみが出ていくのを見送り一人残された部屋に荷物を置き支度を済ませバスケ部が集まる東武道場へと向かう。
れいにぃいわく、西武道場は畳になっており剣道部にとっては願ったりかなったりの適した環境である。
それに比べて東武道場は大きな体育館状態らしく、そこにバスケットゴールを設置するため皆より早めに来ていた緑先生が設置をし準備をしてくれていたそうだ。

東武道場に着くと既に葉山・立川その他のバスケ部メンバーが集合していた。

「冬のインターハイに向けてこれから三日間厳しくいくからお前ら覚悟していけ!分かったな!」

「はい!!」

「雪!タイム頼む」

「はい!」

スクワットや腕立てに走り込みを何度も行いシュート練まで終わると各自それぞれに適した練習を始める。

そろそろ昼ごはんだよね。

「葉山先生!そろそろご飯に…」

ガラッ

「皆様、そろそろお昼ご飯に致しましょう」

その声に振り向くとそこには秋月つぐみの姿があった。

「つぐみちゃんー!わざわざ呼びに来てくれたの?」

「お客様ですので当然の事ですよ、ふふっ」

葉山・立川を除いてバスケ部メンバー全員が一斉に秋月つぐみの元へ近寄ると皆いつの間にか仲良くなったのか親しげに話していた。

「ちっ…単純な奴ら」

一人ボールを籠に入れながらそう呟く立川先輩いた。

「先輩は行かないんですか?」

「は?何で俺まで行く必要があるんだよ」

「え…でも皆つぐみさんの方に行ってるから…」

「別に俺はあの人興味ねぇし。それより今は片付け・掃除だろ」

「ふっ…お前馬鹿なくせに真面目な所もあるんだな」

「わっ!?何するんすかっ!」

葉山はそう言うと立川の髪をくしゃくしゃに撫でくりまわした。

「葉山様・立川様、お昼の用意が出来ておりますので冷めないうちに大広間にお越しください」

穏やかだった空気に割り込むように秋月つぐみの声がし振り向くといつの間にか立川の近くにおり一同驚いた表情を見せていると更に追い討ちをかけるように胸元からもみじ柄のハンカチを取り出すと練習によって額に汗がある立川の汗をそっと拭った。

「お疲れ様です、立川様」

「なっ…」

「もしかして様付けは慣れませんか?では、親しみを込めて”君”とお呼びしますね。ふふっ」

この人危険な匂いがする…

心の中のサイレンが鳴り響きその場から動けずにいると立川の表情に満足したのか次に葉山に近づく。

どうにかしなきゃ!

「…ごっ…ご飯!…片付け・掃除が終わり次第すぐ行きますので…」

焦って発した声に葉山に手を伸ばした秋月つぐみの手が止まりそのまま手を戻すと先程の目だけ笑っていない笑顔でふわりと笑うと東武道場を出ていった。

「…はぁ」

力が抜け床に座り込むとれいにぃの大きな手が差し出された。

「…ありがとな」

「うん」

その手を掴み立ち上がると既にバスケ部メンバーは大広間に行っており東武道場に残されたのは動揺している立川と安堵する葉山と雪のみだった。

「早く片付け・掃除して俺達も行くか」

「そうだね」

「優希、ぼーとしてねぇで早く終わらせるぞ!」

「あ、はい!」

 *

大広間に着くと既に皆揃っており昼食を食べていた。
広いお座敷の上に木彫りが施された長いテーブルが置かれその上にはさすが料亭と言わんばかりの豪勢なお刺身や魚介類などが並び中心には沢山の素麺が盛りつけられたお皿があった。

美味しそう…

「立川君、葉山先生どうぞお掛けになって食べて下さい」

襖近くにいた秋月つぐみが促すように二人を案内するが一人名前すら呼ばれずスルーされた私はどこに座ろうか戸惑っていると手招きをする声がかけられた。

「雪!」

そう名前を呼んだのは隅の方に座っていた翔先輩だった。
手招きされるがままに傍に行くと空いている隣の席に座った。

「ありがとうございます」

「お腹空いただろ?ほらこれ…」

差し出されたおわんには素麺が入っており既に取り分けてくれたのだと気づいた。

「取り分けてくれてたんですか?」

「えっとその…レディファーストというものだ」

ふいっと顔を背けつつも照れながらそう言う翔の優しさに自然と頬が緩んだ。

「ありがとうございます」

「…うむ」

何気なく進む皆での昼食に目がつくのは決まって秋月つぐみの行動だった。
まず、秋月つぐみが近づいたのは先程ハンカチで汗を拭われた立川先輩に近寄るなり女子の細かい気遣いをアピールするかのように口元を拭いてあげたりおしぼりを差し出したり最後には耳元で何やら話し込んでいた。
その行動を緑先生、神崎先輩、奥薗先輩、翔先輩、れいにぃの順に行ったが神崎先輩の場合あからさまに邪険にしておりあまり通じてはいなかった。
奥薗先輩は既に大和撫子と言っていい程に女性らしさも兼ね備えているため女性らしい気遣いをされても逆に気遣いをされるという状況になっていた。
翔先輩は、”そういうのは不要だ”とストレートに断っていた。
れいにぃはというと、前の攻略対象者に対する秋月つぐみの行動をみていたせいか既に気遣う事が出来ないよう終わらせて当の本人が来たらやれる事はないと言わんばかりにドヤ顔をしする事のない秋月つぐみはそのまま元に戻っていった。
秋月つぐみの行動とその話が何なのかは分からないが異変を起こしているのは間違いなかった。

 *

現在気温三十九度 真夏の暑さの中練習漬けの部員は夏バテ防止のため一時休憩と称し屋外にて水浴びをしていた。

「気持ちぃ~~!!」

「生き返る!やっぱ水浴びなきゃもたねーよな!」

「だよな!雪ちゃんも一緒に浴びればいいのにな~」

「何も俺達の分までジュース買いに行かなくてもいいのに…」

その言葉にホースを持つ立川の手が止まり、先程引き気味に断った雪の顔が浮かんだ。

「一人で大丈夫か?…あいつ」

そんな心配を他所に当の本人である雪はというとクーラーボックスを担ぎ葉山から預かった財布を片手に近くの自販機へと向かっていた。
近くと言っても徒歩で十五分ほどの田んぼ道なのだがこれも水かけイベントを避けるためだと思えば仕方ない事だった。

「えっと…アクエリ五本、緑茶二本、オレンジ一本、水六本…」

買い出し用のメモ用紙に書かれた物を一人ブツブツと呟きながら歩いていると田んぼ道のど真ん中に赤い自販機が見え辿り着くと財布からお金を出し次々に頼まれた飲み物を買い、クーラーボックスに入れていった。

「よいっしょっ!重っ!」

飲み物の入ったクーラーボックスは予想以上に重く女性の力で持ち歩くのは大変な重さだった。
だが、バイトでの馬鹿力を絞り出し担ぐと行きより遅い足取りで歩き出す。

「着いたらまずバスケ部に配って、次に剣道部か…」

無駄に重い飲み物はバスケ部のみではなくついでということで剣道部の物も入っていた。
そして、何度かクーラーボックスを担ぎ直し猛暑の道のりを馬鹿力のみで歩くのだった。

 *

「つめてぇ~~!!」

「ぷはっ!うめぇ~~!!」

「ありがとう雪ちゃん!」

「ううん、皆練習頑張ってるからマネージャーとして私も何かって思っただけだから喜んでくれてよかった!」

頬をつたう汗の感触を感じながら笑顔で言う。

次は剣道部か…

「私ちょっと行くところあるから抜けるね」

「えっ!?ちょっ、雪ちゃん?」

立川の声をスルーしつつ残りの飲み物と共にクーラーボックスを担ぎ直し剣道部のいる西武道場へと向かった。

「…桂馬くんもどうぞ!」

「いや、俺はいい…」

翔先輩と…秋月つぐみの声?

東武道場の近くまで来ていた私は、武道場内から聞こえてきた声に足を止めた。

「そう言わずに、皆さんもお飲みになっている事ですし遠慮される事はないですよ?」

「…分かった。頂こう」

そう言うと桂馬は秋月つぐみから麦茶を受け取り飲むとそれに秋月つぐみは満足したのか笑顔で見つめた。

「…美味しい、ありがとう」

「いえいえ!ふふっ…」

それは翔先輩だけではなく他の剣道部の全員が秋月つぐみから飲み物を貰って嬉しそうにしている姿が見え、武道場内に入ろうとした足を戻し剣道部の分の飲み物が入ったクーラーボックスを担ぎ直しバスケ部が待つ東武道場へと戻る事にした。

前もって剣道部の人達に買うって言ってないし、仕方ないよ…ね。

何だかモヤモヤがかかる胸の内を必死に振り払おうと頭を振っていると突然頬に冷たい感触が伝った。

「冷たっ!」

振り向くとそこには林檎の缶ジュースを手にしたれいにぃの姿があり、先程の冷たい感触はその缶ジュースなのだとすぐに気づいた。

「れいにぃ…どうして?」

「どうして?ってお前が暗い顔して歩いてるから驚かそうと思ってな…」

苦虫を噛み潰したように気まづそうは顔をするれいにぃに何故だか今は来てくれてよかったと思えた。

「…缶ジュース無駄になっちゃった」

必死に笑顔を作りそう笑い話のように言うと笑ってくれると思っていたれいにぃの顔は真剣な顔に変わりいつもの大きな手のひらが頭を撫でた。

「帰るぞ」

「…うん」

いつものれいにぃの手のひらなのに何だか今日はそれが凄く嬉しいと思えた。

 *

「はい!五分休憩!」

「はい!」

れいにぃに連れられ一緒に皆がいる東武道場に戻ると既に皆練習を始めており、クーラーボックス内の余った飲み物は頑張るバスケ部につぎ込む事になった。

「お前ら飲み物には困らねぇからすぐ練習出来るな?」

「んな、キツいすよ~~!」

「ふふふっ」

葉山とバスケ部のやりとりについ吹き出す。

「あ!マネージャーやっと笑ってくれた!」

「え?」

バスケ部メンバーの一人がこちらに気づきそう言われ驚いていると立川先輩がふいに近づき両ほっぺをつねる。

「ふぃったっ!にゃにするんですかぁ~!」

「うん、やっぱりこっちの方がいい!」

「ふぇ?」

その言葉にキョトンとしていると満面の笑みを向けられ益々困惑する。

「マネージャーはそうやっていつも笑ってなきゃな?」

「あ…」

私あれからずっと自分が気づかないうちに笑顔消えてたんだ…

笑顔じゃない自分を今更ながら葉山も含めてバスケ部メンバーは心配してくれていたのだと気づき暖かい気持ちでいっぱいになった。

「立川先輩、皆…ありがとう」

笑顔でそう言うと皆照れくさそうに笑い合い穏やかな空気が漂った。

「よし!マネージャーの笑顔も戻った事だし気を取り直して練習再開だ!始めっ!」

「まだ五分も経ってないっすよ~!」

「マネージャーの笑顔で充電されただろ、動け!」

「うぅ…はい!」

雪の笑顔と共にバスケ部の練習が再開され夕方ギリギリまで練習漬けとなったのだった。

 *

練習が終わり夕食のため皆が大広間に行って後、東武道場にはバスケ部顧問の葉山とマネージャーである雪のみが残っていた。
練習漬けによりバテバテの部員に変わりマネージャーと顧問で後のボール片付けをしていると雪の脳裏にある疑問が浮かんだ。

「そういえば、水かけイベントは回避出来たけどおつかいイベントは何も起こらなかったよね?何でだろ…?」

「ああ、それは俺が代わりに行ったから起こらなかったみたいだな」

「え!?れいにぃが何でおつかいに?」

「俺のイベントにも関係してるから俺が代わりに行く方が都合がよかったんだ。ま、そのおかげで葵のおつかいイベントも阻止出来たんだから一石二鳥でよかったじゃねーか。あははっ」

「まぁ、そこはよかったとは思うけど…あ!だかられいにぃ缶ジュース持ってたんだ!」

「まぁな。かなの事だから自分の分は買わねぇだろうなと思って…ついでだついで」

「ついでって…」

まぁ、そのおかげでモヤモヤが消えたのは嬉しかったけど…

未だにれいにぃが何を考えているのかよく分からないと思うのだった。

 *

夕食のため大広間に行く前に自室に戻りメモ帳や貴重品を置きに行くとある物がない事に気づく。

「あれ?イルカのストラップがない…鞄に付けてたのに何で?」

その出来事は波乱の予兆の始まりに過ぎなかった…

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