新選組の料理番はじめました

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朝の朝餉

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あ~ん、美味しい~!!
このケーキもあのお刺身も分厚いお肉も最高~!
これが夢じゃなきゃずっと食べれるのに~!
どうか夢じゃありませんように…

ドスッ!

「痛っ!!」

「やっと起きたか。何、幸せそうにまだ寝てんだよ!」

痛みで目を覚ますと誰かが私の目の前で怒鳴っていた。

「夢じゃなかった…」

「は?夢?何、ふざけた事いってんだ!」

よくみたら、怒鳴っているのは空海だった。
私は、何で空海がいるのか考えず無意識に抱きついた。

「空海ー!」

ダフッ

「おい!なっ、何してんだよ!離せ!」

ん?
違和感を感じ上を見上げるとそこには空海ではなく八番隊隊長 藤堂 平助だった。
冷静になり自分の今の状況理解した瞬間、すかさず平助から離れた。

「わあぁぁぁ!」

「驚きてーのはこっちだよ!何なんだよまったく…」

平助は、赤くなっている顔を隠すように横を向いた。

「ごめんなさいっ!」

「俺は、男に抱きつかれる趣味はねぇぞ」

「ごもっともです。」
    
「それより、もうみんな広間で飯食ってんだ。おまえ、料理番のくせに一人だけまだ寝やがって…」

「嘘?!もう、みんなご飯食べてんの?!僕、料理番なのに何も出来なかった…」

「落ち込む暇があったら、早く支度して広間にこいよ!」

バタンッ
 
平助は、そのまま広間に戻っていった。

「はぁ…だよね、落ち込む暇があったら次に出来る事考えなきゃ!早く支度してみんなに謝ろう!」

袴を履いて、腰まである黒い長い髪を一つに括ると急いで広間に向かった。

日和の部屋を出た平助は一人さっきまでの出来事を振り返っていた。

「あいつ、男のくせに抱きつかれた時女みてぇに細かったなぁ…抱きつかれた俺の方が動揺しちまったぜ…って男を好きになるようなそんな趣味は俺にはねぇよ!」

自分の思考を奮い立たせながら広間へと戻っていった。

ガラッ

「すみませんでしたっ!料理番になったばかりだと言うのに寝過ごして何も出来なくて…本当にごめんなさい!今日の夕餉は僕が作ります!」

精一杯の気持ちで頭をさげる私に近藤さんが話しかけた。

「いいよー。佐々木は、初めてここに来たばかりなんだ失敗しても当然だ。気にする事はない。」

「近藤さんは、あめぇんだよ。初めてだからとか慣れてないとかで仕事が出来ない話にはならん。少しは新選組の料理番として自覚しろ!」

「はい…すみませんでした。」

土方に一喝されいい返す言葉もなく謝るしかなかった。 

「まぁ、まぁ土方さんそんないきり立たんでもいいじゃないですか。早く食べないとせっかくの飯が冷めちゃいますよ?」

「総司の言う通りだ。佐々木もそんなところに突っ立てないではやく座って食べろ。じゃなきゃ、俺がおまえの飯食っちまうぞ?」

「うわぁ、それだけは嫌です!食べます!」

沖田に助け舟をだされ、永倉に流されるまま大人しく自分の席に座ると目の前のご飯に愕然とした。

何これ…?
これが、ご飯??

台に乗せられていたのはワカメと豆腐の味噌汁にめざしが三匹に沢庵が少しと大盛りの白ご飯だった。

これじゃ、ほぼ白ご飯食べてんのと同じじゃない!
昔のご飯は質素なのは分かってたけどおかずがこれだけって私には無理!
おじいちゃんならめざし喜びそうだけど私は全然喜ばないよっ!
あー、未来のお母さんのご飯が懐かしい…
また、オムライスとか食べたいよ~
ここで、オムライスとか作れないしなぁ
うーん、ケチャップになるトマトがまず無いしでも、和風として玉ねぎと大根で和風ダレ作れそうかも。ご飯は胡椒はあるはずだからガーリックライスにして食べれば最高なのになぁ…
今度、試してみよっと。
そんな事を考えていると隣で食べていた平助が私のめざしを一つ食べてしまった。

「もーらいっ!」

パク

「あー!何するんですか!貴重な僕のおかずを取るなんて!」

「おまえがぼーとしてるのが悪い」

「あのねー、白ご飯ならいくらでもあげますけど貴重な少しのおかずを取るなんてあんまりです!」

「え、白飯だったら食べてもいいのかよ?じゃ、くれ」

平助は自分の白ご飯に日和の白ご飯を半分乗っけると嬉しそうに白ご飯を頬張った。

よく、白ご飯だけで食べれるな…
しっかし、見れば見るほど空海にそっくり。
声も見た目もこの憎ったらしい性格も空海そのものだ。
空海って御先祖様が平助か生まれ変わりかもしれない…

「何みてんだよ?俺の顔に米粒でも付いてんのか?」

「いや、別に…」

自分のご飯に目を落とすと隣の平助にもう食べられないように残った少ないおかずを必死で守りながら質素なご飯を食べ終えた。

「おまえ、食べるの遅いなぁ。みんな食べ終えてんのにおまえだけまだ食ってるし。だいたい、一口がちいせぇんだよ。もっと大きな口で食べろよな」

「僕のめざしを食べた人にいわれたくないです。僕は僕なりの食べ方で食べますし平助みたいにがっついて食べたくないですもん。僕はちゃんと味わって食べたいですから」

「なんだとー!何が味わってだ!朝起こした時よだれ垂らして寝てたのはどこのどいつだよ!」

「なっ、人の寝顔見るなんて最低です!」

「見たくもねぇのに見せてるおまえが悪い!」

「まぁ、まぁそこまでにしねぇかおまえら。仲が良くなったのはいい事だけどよ」

「誰がこんなやつと!!」

互いに指さして喧嘩する二人を近藤、永倉、原田は笑いながら見ていた。
すると、それまで黙っていた土方が間をわって口を開いた。

「いいかげんにしろてめぇら!」

「はいっ!」

「喧嘩も大概にしろ。喧嘩してぇなら外でやれ」

「はい…すみませんでした。」

あまりの土方の怖さに恐れをなした平助と日和は大人しく頭を下げる。

「佐々木!おまえ、今日の夕餉ちゃんと作るならこの後町に出て材料の買い出しでもしてこい。一緒に行くのは…平助じゃ不安だからなぁ…総司、おまえが一緒に行け」

「えー、嫌ですよぉ。こんなやつのお守りなんて。俺より新八さんがいってくださいよ、どうせ今日暇でしょ?」

「俺は別にいいけどよぉ…」

沖田に振られた永倉は断った総司を睨みつけていた土方の顔を恐る恐る顔色を伺う。

「はぁ、仕方ねぇ。永倉!佐々木の事頼んだぞ」

「はい!分かりました。」

「よろしくお願いします。永倉さん」 

「あぁ、何かあったら俺が守ってやるよ」

こうして、幕末に来ての新選組での初めての食事も終わり永倉と一緒に初めて町に出る事となった。


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