新選組の料理番はじめました

Shell

文字の大きさ
上 下
4 / 6

居場所

しおりを挟む
冷たいよ風を肌で感じながら虫の声に耳をすませ夜空に輝く星を見ていた。

私は、新撰組の隊士たちが寝静まるのを見計らってお風呂に入り火照った体を夜風に当たりながらさましていた。
幕末の世界の夜空はこんなにも星が綺麗に見えることを初めて知った。
縁側にて、座っていると後ろから声がした。

「こんなところにいたら、風邪ひいちまうぞ」

現れたのは、十番隊隊長 原田 左之助だった。
ゆったりとした寝巻きの姿に少し胸板が見える姿は色香さえ感じられる。
原田は、私の隣に腰を下ろした。

「こんなところで、何してたんだ?」

「少し夜風に当たりながら星を見ていました。」

「星?そんなもん毎日みえるだろ?」

「わっ…僕のいたところではこんなに綺麗な星見たことなかったので…」

「へぇ、珍しいな。佐々木はどこから来たんだ?」

「遠くです。ずっと遠く…」

「そんなに遠くから来たんなら家族が心配してんじゃねぇか?」

「はい、多分心配しています。僕の友人も家族もきっと凄く心配してる。」

「会いたいか?」

「会いたいけど会えないんです。いつ会えるかまた、会えるのか分からないんです。」

「それは、何か事情があるのか?」

「はい…でも、言えません。」

「無理して言おうとしなくてもいい。誰にだって秘密はある。それに、遠くから来たんならここでの暮らしは不安だろ?」

「はい、何も分からないし頼れる人もいなくて初めは一人ぼっちだという現実に怖くて…何もかも押し潰されそうでした。今もまだ、これからのここでの生活が怖いです。」

「佐々木は、一人じゃねぇよ。ここには、頼りねぇかもしれねぇけど近藤さんも土方さんも総司も新八も斎藤も平助もいる。平助は一番頼りねぇかもしれねーがな。何か不安な事や心配な事があるんなら全部俺らに吐き出しちまえばいい。みんな、受け止めてやるからよ」

「原田さん…僕はここに居てもいいんでしょうか?」

「当たり前じゃねぇか!もう、ここはおまえの居場所だ」

「居場所…」

「それに、ここには俺もいる」

私の頭をポンポンと叩きながら笑って、ここがおまえの居場所だと言ってくれる原田さんに不安でいっぱいだった気持ちが消えていくのを感じた。
ここが私の新しい居場所…
ここに私は居ていいんだとそう思えた。

「ありがとうございます。原田さん…」

少し涙目になりながらも笑顔でお礼を言うと笑っていた原田さんの顔が固まった。

「やっぱり、おまえ女みてぇな顔してるな…」

「うっ、生まれつきだっていってるじゃないですか!一様この女顔、気にしてるんですよ」

「すまん、すまん。あんまり否定する事はないだろ」

手を振って謝る原田さんにジト目で見上げると降参といったように目を閉じた。

「次、言ったらもう許しませんから…」

「分かった。もう、言わねぇよ」

「なら、許します…」

そう言うと、原田さんはまた笑顔に戻った。

「星を見るのはいいが、もう遅いから早く寝ろよ」

そう言い残すと、原田さんは自室に戻っていった。

居場所かぁ…
みんなに、一日でもはやく会いたいけどそれまで私はここで頑張るからね…
星が彩る夜空に、遠くにいる大切な人たちに向けて願った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

宮様だって戦国時代に爪痕残すでおじゃるーー嘘です、おじゃるなんて恥ずかしくて言えませんーー

羊の皮を被った仔羊
SF
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 時は1521年正月。 後奈良天皇の正室の第二皇子として逆行転生した主人公。 お荷物と化した朝廷を血統を武器に、自立した朝廷へと再建を目指す物語です。 逆行転生・戦国時代物のテンプレを踏襲しますが、知識チートの知識内容についてはいちいちせつめいはしません。 ごくごく浅い知識で書いてるので、この作品に致命的な間違いがありましたらご指摘下さい。 また、平均すると1話が1000文字程度です。何話かまとめて読んで頂くのも良いかと思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

マスターブルー~完全版~

しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。 お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。 ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、 兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、 反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と 空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。

処理中です...