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1章 異世界から来る死体魔術師
お守役
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王宮を囲む城下町は常に民衆にて賑わいを見せていた。だが、その賑わいは表向きだけだとアルディは言う。裏では常に人々の売り買いが行われ主に女性や少女は貴重らしく高値で売り飛ばされるらしい。それを止めたい思ってもその首の根を抑えるのは容易ではなく裏では必ずと言っていい程に闇魔族団体が絡み、その裏には隣国の悪行が絡んでいる。そんな事情もありこの国は女性が少なく男性がほとんど占めているのだ。
「ほんと最悪な国…」
…と独りごちる私は現在門番騎士事件を調査すべく王宮を囲む門番の前にいる。
「おいっ!?離せって!」
「あ、ごめん」
無意識からかシュノの兎耳を掴んでいた手を離すと威嚇する兎のように睨みつけられた。
「何で俺がお前なんかのお守りなんか…っ」
「え?だって、可愛いから」
「なっ…!?お前そんな理由で…」
「だって、それしか理由なんかないでしょ?他に何があってシュノを選ぶと思ってるのよ」
「うぅぅぅ…もう俺帰る!こんな奴と一緒なんか嫌だっ!!」
「あ、ちょっと待って下さい!きっとドクロさんはシュノさんの力を信じてお守り役を頼んだんですよ!だから、行かないで下さい」
怒りで赤面して踵を返そうとするシュノにアルディの代わりに付き添いとして付いてきたコザが慌てて止めに入ると半泣きの目元を拭い渋々頷いた。
「…分かった」
うわぁぁぁ!!可愛すぎるよ、シュノくん!何あの潤んだ瞳に素直さは!?ウサギ科だけでも可愛いのに倍は可愛さ増してるわ!
「おい、お前今何考えてんだよ?」
「別に何も」
「嘘つけ!絶対変な事考えてただろっ!」
「何を根拠に言ってるのよ。何も考えてないってば!」
本当は揉みくちゃにしたいくらい抱き締めたかったけどそれは言わないでおこう…
「まぁまぁ、お二人共喧嘩はそのへんにして早く調査を始めましょう?」
コザの言葉にいがみ合いを一時休戦し目の前の残された痕跡に意識を向ける。
血痕すら跡形もなく消され調査しようにも何も無いのではお手上げである。
「う~ん…血痕すらないのにどうすれば…」
「浮き出しの魔法使えばいいだろ?」
「浮き出し?何それ?」
シュノの聞き覚えのない言葉に耳を傾ける。
「よく調査の際の時に使われるんだけど、浮き出しの魔法っていってそこに居た人の足跡を浮き彫りにさせる魔法なんだ。他にも遺体の形とか跡さえついてれば何でも浮き彫りに出来る」
「なるほど…」
刑事ものでよくある足跡鑑定的な感じかな?よく出来た魔法もあるもんだ
「つーか、それくらい基礎の基礎だぞ?そんな事も分からなくて調査なんか出来んのかよ」
「むっ…生意気っ!まだ魔法全部知るわけないのぐらいシュノだって分かるくせに!」
「イタタタタッ!?や、やめろって!!」
生意気シュノのプニプニ頬っぺを摘み上げ仕返しする。
「止めてあげるからこれ以上減らず口直しなさいよね!?あと早く浮き出しの魔法して」
「っ…分かってるっつーの」
シュノを解放してやると瞼を瞑り魔法を唱え始めた。
「…コンフート」
すると空中に跡という字が出てくると一瞬にして地面に消え足跡の様なものが浮き上がってきた。
「その中から更に絞り出すぞ」
そう言うとシュノは再度瞼を閉じると次の瞬間、赤い色の足跡のみが地面に浮き彫りにされた。
「これは…?」
「片方は殺された兵士の足跡で、もう一つは犯人の足跡だ。ドクロ、お前なら兵士の足跡がどれか分かるだろ?」
「うん」
一度死体魔術によって死体となった兵士に憑依した私はその兵士のだいたいの足のサイズぐらい分かっていた。
「少し色が濃ゆい右の方が兵士のもので、左のスライドしてるのが犯人のものだ」
足跡はずっとそこに立っていたと思われる程に色が濃ゆいものとすぐ隣に振り幅がデタラメに動いていたと思われるスライドされた足跡があった。推測だと、犯人は魔法によってスピード力を上げて一瞬にして殺したか…
「ん~……」
「何悩んでるんだよ?」
「だって、足跡が分かっても犯人の割り出しにはならないでしょ?」
「は?なるだろ、それくらい余裕で」
「へ?どういう事?」
さらりと答えるシュノにキョトンと首を傾げる。
「犯人は入国の許可証を持ってたんだから許可証を貰う西門と東門でこの足跡と同じ足跡を見つけたらそこから犯人がどの国から来たのかぐらい割り出せるだろ」
「た、確かに…」
意外にも頭が切れるシュノに驚きながら頷くとあからさまにドヤ顔で返された。
「ふんっ、それくらい考えれば分かる事だ」
「うんうん、まさかシュノがここまで頭が切れるなんて思わなかったよ。可愛い小動物だけが取り柄としか思わなかったし」
「なっ…!?お前また…」
パンパンッ!
「はいはい、喧嘩は後にして西門と東門に行きましょう!僕は東門に行きますから西門はお願いしますね?」
またもや口喧嘩勃発となる所をコザにタイミングよく間に入り先を促され引き攣るシュノに笑みを向けた。
「ふふっ、行きましょう?シュノちゃん!」
「ちゃん付けは止めろっ!!くっ……あーもうっ!だから引っ張るなって!イタタタタッ!!」
飛び掛りそうなシュノの耳を捕えその感触を堪能しながらもルンルンで西門へと向かったのだった。
あー!最高…っ!!
「ほんと最悪な国…」
…と独りごちる私は現在門番騎士事件を調査すべく王宮を囲む門番の前にいる。
「おいっ!?離せって!」
「あ、ごめん」
無意識からかシュノの兎耳を掴んでいた手を離すと威嚇する兎のように睨みつけられた。
「何で俺がお前なんかのお守りなんか…っ」
「え?だって、可愛いから」
「なっ…!?お前そんな理由で…」
「だって、それしか理由なんかないでしょ?他に何があってシュノを選ぶと思ってるのよ」
「うぅぅぅ…もう俺帰る!こんな奴と一緒なんか嫌だっ!!」
「あ、ちょっと待って下さい!きっとドクロさんはシュノさんの力を信じてお守り役を頼んだんですよ!だから、行かないで下さい」
怒りで赤面して踵を返そうとするシュノにアルディの代わりに付き添いとして付いてきたコザが慌てて止めに入ると半泣きの目元を拭い渋々頷いた。
「…分かった」
うわぁぁぁ!!可愛すぎるよ、シュノくん!何あの潤んだ瞳に素直さは!?ウサギ科だけでも可愛いのに倍は可愛さ増してるわ!
「おい、お前今何考えてんだよ?」
「別に何も」
「嘘つけ!絶対変な事考えてただろっ!」
「何を根拠に言ってるのよ。何も考えてないってば!」
本当は揉みくちゃにしたいくらい抱き締めたかったけどそれは言わないでおこう…
「まぁまぁ、お二人共喧嘩はそのへんにして早く調査を始めましょう?」
コザの言葉にいがみ合いを一時休戦し目の前の残された痕跡に意識を向ける。
血痕すら跡形もなく消され調査しようにも何も無いのではお手上げである。
「う~ん…血痕すらないのにどうすれば…」
「浮き出しの魔法使えばいいだろ?」
「浮き出し?何それ?」
シュノの聞き覚えのない言葉に耳を傾ける。
「よく調査の際の時に使われるんだけど、浮き出しの魔法っていってそこに居た人の足跡を浮き彫りにさせる魔法なんだ。他にも遺体の形とか跡さえついてれば何でも浮き彫りに出来る」
「なるほど…」
刑事ものでよくある足跡鑑定的な感じかな?よく出来た魔法もあるもんだ
「つーか、それくらい基礎の基礎だぞ?そんな事も分からなくて調査なんか出来んのかよ」
「むっ…生意気っ!まだ魔法全部知るわけないのぐらいシュノだって分かるくせに!」
「イタタタタッ!?や、やめろって!!」
生意気シュノのプニプニ頬っぺを摘み上げ仕返しする。
「止めてあげるからこれ以上減らず口直しなさいよね!?あと早く浮き出しの魔法して」
「っ…分かってるっつーの」
シュノを解放してやると瞼を瞑り魔法を唱え始めた。
「…コンフート」
すると空中に跡という字が出てくると一瞬にして地面に消え足跡の様なものが浮き上がってきた。
「その中から更に絞り出すぞ」
そう言うとシュノは再度瞼を閉じると次の瞬間、赤い色の足跡のみが地面に浮き彫りにされた。
「これは…?」
「片方は殺された兵士の足跡で、もう一つは犯人の足跡だ。ドクロ、お前なら兵士の足跡がどれか分かるだろ?」
「うん」
一度死体魔術によって死体となった兵士に憑依した私はその兵士のだいたいの足のサイズぐらい分かっていた。
「少し色が濃ゆい右の方が兵士のもので、左のスライドしてるのが犯人のものだ」
足跡はずっとそこに立っていたと思われる程に色が濃ゆいものとすぐ隣に振り幅がデタラメに動いていたと思われるスライドされた足跡があった。推測だと、犯人は魔法によってスピード力を上げて一瞬にして殺したか…
「ん~……」
「何悩んでるんだよ?」
「だって、足跡が分かっても犯人の割り出しにはならないでしょ?」
「は?なるだろ、それくらい余裕で」
「へ?どういう事?」
さらりと答えるシュノにキョトンと首を傾げる。
「犯人は入国の許可証を持ってたんだから許可証を貰う西門と東門でこの足跡と同じ足跡を見つけたらそこから犯人がどの国から来たのかぐらい割り出せるだろ」
「た、確かに…」
意外にも頭が切れるシュノに驚きながら頷くとあからさまにドヤ顔で返された。
「ふんっ、それくらい考えれば分かる事だ」
「うんうん、まさかシュノがここまで頭が切れるなんて思わなかったよ。可愛い小動物だけが取り柄としか思わなかったし」
「なっ…!?お前また…」
パンパンッ!
「はいはい、喧嘩は後にして西門と東門に行きましょう!僕は東門に行きますから西門はお願いしますね?」
またもや口喧嘩勃発となる所をコザにタイミングよく間に入り先を促され引き攣るシュノに笑みを向けた。
「ふふっ、行きましょう?シュノちゃん!」
「ちゃん付けは止めろっ!!くっ……あーもうっ!だから引っ張るなって!イタタタタッ!!」
飛び掛りそうなシュノの耳を捕えその感触を堪能しながらもルンルンで西門へと向かったのだった。
あー!最高…っ!!
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