千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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三章 “夜降る宵朧”殺髏編

第60話 それぞれの強み

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「「悪鬼!!」」

 とジルの体から、濃密な魔力の波動が放たれた。

「修羅のお目覚めだ……!」

「ハハッ!」

 二人の鬼が、その手の三叉槍を交差させる。

 ガキィン!!
 金属がぶつかる音とはおよそ思えないほどの轟音が轟いた。

「テメェ……何もんだ!」

「ハハッ……お前の力は頂いた、革命児! 【虐殺】!!」

「チッ……【鏖殺】!」

 ジルの【虐殺】に対して、は反対周りに繰り出す【鏖殺】を以て返す。

「なに? そんな技まであったのか! 【鏖殺】!! ハハハ!」

「……【虐殺】!」

 力とスキルをコピーしたジルは、正面からと打ち合う。

 お互いの武器が触れる度、辺りには衝撃波と火花がまき散らされる。

「チッ……気持ちわりぃ奴だ」

「ハハッ! 僕は最高の気分だよ!!」

 何度も何度もジルとは斬り合い、その度に周りが破壊されていく。

 二人の鬼の力に、人工物が耐えられないからだ。

『まずいな……このままじゃ工場が潰れる! そしたら、どこにいるかもわからない悠大は……! 悪鬼!!』

「わーってる!! ったく面倒だ……この俺様が力を調節とはなぁ!」

 千縁が悠大の安否を危惧するも、その点ジルはそれを一切気にしていない。
 千縁をここに呼び出せて、なおかつ【模倣コピー】も出来たのだから、すでに死んでしまっても問題ない……そういう事だろう。

「あははははは!! どうだ!? 僕には勝てないだろう?」

「るっせぇ! どのみち俺様が負けることはねぇからなァ!」

 悪鬼が全力で暴れれば、確かにジルを倒すことも可能だろう。
 一度も見たことのない技をジルは使えないのだから。

(それは、さっき【鏖殺】を見せた時に理解した……だから、外すわけにはいかねぇ)

 一度でも外せば、次から同じ技で塞がれる。

 【模倣】は、事前に準備さえしてしまえば、まさに負けなしのスキルといえるだろう。

「どうだ!? もっと見せてみろよ! どのみち最後には僕が勝つ!」

「黙ってろ!!」

 そして、ジルは【模倣】した能力や記憶によって、本人の隙を見つけたり、アレンジすることができる。
 だからこそ、ジルは他の極級探索者とも肩を並べる力を認められ、べネジア・クロイツから直々に駆除依頼を任されたのだ。

(ははは……君がすべての手札を出し切ったら、絶望の最中、殺してあげるよ……ひひ……)

 このまま戦い続ければ悠大を庇うが不利……

 そう、ジルが勝ちを確信した時だった。

「……何?」

「?」

 が、攻撃の手を止める。

「あぁ!? そんなことが出来んのかよ? 俺様だけでも十分だ!」

「なんだ? 頭がおかしくなったのか?」

 突然大きな独り言を言い出したに、ジルも流石に困惑し、攻撃の手を止めた。

「ハッ……まぁ大丈夫か。仕方ねぇ……今回はそれでいくか」

「は?? 何を言って……」

 フッ、と千縁の体から何かが抜け落ちるがごとく、気配が失われる。
 【憑依】を解いたのだ。

「……ついに諦めたか。ハハッ──」

「【致命キラー】」

「っ!?」

 ジルが諦めたと見て、に近づいた──その時。
 冷めきった声が響く。

 神速で放たれた三本のナイフが、ジルの首筋をかすめた。

「チッ……! そんな能力もあったのか! だがな……!」

 ジルは相性が悪いと思い、改めてを【模倣コピー】する。

「くっくっく……! これで──」

 ジルは勝ち誇って、に向き合い……

任務遂行キル

「……っ!?」

 間一髪でその一撃を避ける。
 ジルの耳を撫でるがごとく、すぐ隣を、が持つ漆黒のナイフが過ぎた。

「【暗器】」

「なにっ!?」

 間髪入れず、追加のナイフが飛ぶ。
 それをジルは三叉槍ではじこうとして……

「【致命キラー】」

「っ!?!?」

 まるで三叉槍を押しのけるがごとくして、ナイフはジルの肩に突き刺さった。

「こ……【模倣コピー】!!」

 ジルは相性が悪いとみて、再度【模倣】を発動する。
 しかし、何も変化が感じられない。

「……!? なぜ──!」

「【暗殺千刃】」

 いつの間にか廃工場内に張り巡らされたワイヤー。
 投げるナイフが、反射してはジルにおそかかる。

「くっ!? なにが……!?!?」

(どうなってる……【模倣】してるのにあんな能力は使えないぞ!? それに、いつの間にこんなワイヤーなんか!? そんな時間も隙も無かったはず……!?)

 【模倣】で魔力値とスキルをコピーしているのにも関わらず、明らかに向こうのほうが能力も高く、覚えのないスキルを使っている。

「なぜ──」

「【瞬影強襲ゴーストアサルト】」

「消えっ!?」

 しかし、ジルに考える時間は与えられなかった。

(! 後ろ……!)

 ジルは殺気に気づき、すんでのところで振り返って……

「は──」

 ジュパンッ!

 、その首を刈り取られる。

 ジルの頭の裏から覗くは、布纏う短刀。
 それに釣られたジルは、一瞬にして亡き者と化した。

「……やっぱね」

『“”千縁なら? よくそんな作戦が上手くいったな』

 悪鬼は吐き捨てるように言うも、感心した様子を見せる。

『大体、相手のスキルの詳細も分かってないのに……』

「いや、わかってたよ」

『あ?』『……?』

 【憑依】を解除した千縁が、言う。

「さっきの“眼”が残ってた。一瞬だけど、見えたんだ。『自分が視た相手の魔力値、スキル、見た目、記憶をコピーできる』って」

『……!?』

『いや……まてよ? それって……』

「だから……一度で勝負を決めることにしたんだ。殺髏なら悪鬼のように廃工場を潰さずとも敵を殺せるしな」

 俺は呼吸を整えて、悠大を探す。

「悠大!! どこだ!!」

「──ょ!?」

「!! そこか!!」

 声のしたほうへ向かうと、そこには口をガムテープでふさがれ、手足を縛られた悠大が。

「悠大!!」

「……ち……ょ……!」

「待ってろ! 【暗器】!」

 俺は漆黒のナイフで、悠大の拘束を解く。

「っはぁ! ちよ……!」

「悠大! 無事か!!」

「あ、ああ……ありがとう……!! ありがとう、ちよ……!!」

 やっと解放されたからか、悠大は涙を流して、抱き着いて来た。

「母さんも琴葉も……どうなってるか……!」

「大丈夫だ。二人は既に助けた」

「ちよがいなかったら……ありがとう……! ところで……」

 悠大は、俺の報告を聞いて安堵の涙を流す。
 そして……

「そのナイフを出す能力も、ちよのなのか? 【憑依】じゃなくて?」

「──え?」

 その言葉に、【憑依】を解除していた俺は、思わず自分の手の平を、見つめた。


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