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三章 “夜降る宵朧”殺髏編
第58話 優香の告白
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「だ、誰よこのエロ女ー!!」
「えっ、えろ……何を言ってるんだ君は!!」
目を覚ました優香は、一絺さんを指さして叫ぶ。
「そんな薄い服で肩まで出して……なんのつもりなの!?」
「え、ええ?」
「そんな胸を強調するような……ハッ! ちよ君に何かする気で……!?」
「そ、そんなわけないだろう! というか、いきなりなんなんだ!?」
優香が俺と一絺さんの間に入って、ギャーギャーと言い合いを始める。
「いやでも一絺さん……もうちょっと身だしなみ整えてくれないと文句言えませんよ……」
「なっ……千縁君まで!」
そりゃ当たり前だろ。
髪の毛こそ片目が隠れるくらい乱れているが、スタイルもいいし美人の一絺さんだ。
そんな人が白衣一枚で歩き回っていたら……通報ものだな。
「まあでも、ここ一絺さんの家だし……」
「せめて人前ではちゃんと服くらい来なさいよ!」
確かに。
「うぐっ……わ、私はいつもこうなんだ! 君たちが来ることは想定していなかったんだから、仕方ないだろ!?」
「……怪しい」
……ん?
そういや、一絺さんと初めて会った時って、もっと今みたいにかっこいいというか……the・研究家? って感じの話し方だったよな? いや、実際いるんだそんな人って思ってたんよ。
でも最近は普通の口調だったような……
「ち、千縁君にだ……」
「?」
一絺さんがぼそっと呟く。
ただ、途中で声を出すのを控えたのか、そこまでしか聞こえなかった。
(うーん……“俺にだけは”、かな? 見せたくなかった的な?)
いや、いつ行ってもこんな感じだもんな、この人。違うか。
「でも、前そんな喋り方でしたっけ?」
「しゃべっ……え? しゃ、喋り方か?」
「?」
「いや……なんでもないです」
とにかく、一絺さんに泊めてもらったんだから優香にもお礼言ってもらわなきゃ。
「ここ、一絺さんの家だからな? ほらほら、優香の家分からなかったから夜分遅くに来て泊めてもらったんだ。お礼言っとこ?」
「……ありがとうございます」
俺が言うと、優香は不服そうにしながらもお礼を言った。
てか、そこまで不貞腐れる要因ある??
「ま、まあ……千縁君とは深い親交があるから……」
「知り合って一か月ちょっとくらいですよね? まぁ確かにその間かなりお世話になりましたけど……で、優香はなんでそんなに一絺さんのことが気に入らないんだ?」
「え……? いや、だって……ちよ君が誘惑されてそうだもん」
んん??
「いや、それ優香に関係ある? されてないけど、別にされたら嬉し──」
「私、ちよ君のこと好きだもん!!」
「んなっ」
(……?)
優香が、俺の言葉を遮って宣言する。
好き?
「えぇ?」
「だって……いつも助けてくれるし……他人だった時に、話も聞いてくれたし……」
(うーん、それは結構俺の打算あってのことだったんだよな……)
当時、確かに女子の連絡先とか手に入れるチャンスかな~なんて思っていたところはある。
夢だったからなぁ……
んで、実際にそうなったわけだけども。
とにかく、俺の思惑であって、優香のために提案したわけじゃなかった。
(でも、そんなこというのはおかしいよな……)
実際、誰かが困っていたら、無理せずできる範囲で助ける気はあるが……確実に身内を優先するくらいには俺は、優しくはない。
まぁどのみち関係ないけど。
「だっだから! 仕方ないでしょ!!」
「いやでも俺、好きな人いるぞ?」
「え?」「え?」
俺の言葉に、何故か一絺さんまで疑問の声を上げる。
俺かって好きな人くらいいるわ!!!!
「え? てか一絺さんは学園対抗祭みてないから分かるけど、優香って俺のこと見てくれてたんでしょ? その時に言ってたはずなんだけど……」
「いや……私試合終わってすぐ仕事だったから……好きな人って……!?」
ああーそうか。
あの時はまだ撮影とかあったんだろうな。
「東城莉緒って知らない?」
「誰よそれ……探索者!?」
「いや、一般人だけど」
「そ、その一般人とどこで知り合ったんだ……?」
優香に加えて、一絺さんも驚いた様子で質問する。
「てか、なんでこの流れで一絺さんが驚いてるんですか? あ! もしかして一絺さんも俺のこと好きなんですか?」
「そっ……!? そんなわけないだろう! 私はもう大人だぞ!!」
「それもそっか……」
からかったのは俺だし、流石にないかとは思ってたけど、面と向かって否定されると傷つく……
「…………」
「っ……」
「んで、言ったはずなんだけどなぁ……だからその気持ちにはなんとも言えんけど」
「そんな……」
優香が絶望した顔をする。
そんなに惚れる要素なんてなかったはずだけどな……?
「……っていうか、なんでそんなに落ち着いてるのよ! 元アイドルの私が告白したのよ!?」
「元アイドルて……」
まぁ、俺には莉緒がいるし……
え? 美穂にドキッとしてたって?
金髪碧眼とか中学男子の夢だろ。仕方ないだろ!!
(……いや、待てよ?)
「ち、千縁君?」
確かに最近、おかしいような気がする。
ここ数日だけでも、昔なら考えられなかったことも、かつて妄想したようなことも、様々な体験があった。
それなのに、喜びや驚き、憎しみにトキメキ……
その全てが、どこか遠いもののように感じる。
『…………』
「……悪鬼?」
「千縁君!」「ちよ君大丈夫!?」
俺が考え込んでいると、二人が黙り込んだ俺の腕を揺さぶる。
「何があったんだ!?」
「大丈夫なの!?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「……そうだ、千縁君、二人で話したいことが!」
「はあ!?」
「え??」
優香と俺を案ずる言葉を吐いていた一絺さんが突如、思い出したかのように俺を部屋の隅に引っ張っていく。
「ちょっ……っぱ……らってる……しょ!!」
「ちょっと、時間を見てくれ」
「はい? ……え、もう11時ですか!?!?」
俺が一絺さんの腕時計(高そう)をのぞき込むと、長針と短針の角度がほとんどない。
「あ、ああ……ち、ちかい……」
「ああ、すみません」
ポツリと遠慮がちに呟いた一絺さんだったが、しっかりと拾って離れる。
(まじか……初めてのベッドがふかふかすぎて爆睡してたか……)
「……で、どうしたんですか?」
「ああ……忘れてないか? 今日は本来8時から……」
一絺さんが、不安そうな顔で告げた。
「悠大君と私の依頼を続ける予定だったはずだが……」
「えっ、えろ……何を言ってるんだ君は!!」
目を覚ました優香は、一絺さんを指さして叫ぶ。
「そんな薄い服で肩まで出して……なんのつもりなの!?」
「え、ええ?」
「そんな胸を強調するような……ハッ! ちよ君に何かする気で……!?」
「そ、そんなわけないだろう! というか、いきなりなんなんだ!?」
優香が俺と一絺さんの間に入って、ギャーギャーと言い合いを始める。
「いやでも一絺さん……もうちょっと身だしなみ整えてくれないと文句言えませんよ……」
「なっ……千縁君まで!」
そりゃ当たり前だろ。
髪の毛こそ片目が隠れるくらい乱れているが、スタイルもいいし美人の一絺さんだ。
そんな人が白衣一枚で歩き回っていたら……通報ものだな。
「まあでも、ここ一絺さんの家だし……」
「せめて人前ではちゃんと服くらい来なさいよ!」
確かに。
「うぐっ……わ、私はいつもこうなんだ! 君たちが来ることは想定していなかったんだから、仕方ないだろ!?」
「……怪しい」
……ん?
そういや、一絺さんと初めて会った時って、もっと今みたいにかっこいいというか……the・研究家? って感じの話し方だったよな? いや、実際いるんだそんな人って思ってたんよ。
でも最近は普通の口調だったような……
「ち、千縁君にだ……」
「?」
一絺さんがぼそっと呟く。
ただ、途中で声を出すのを控えたのか、そこまでしか聞こえなかった。
(うーん……“俺にだけは”、かな? 見せたくなかった的な?)
いや、いつ行ってもこんな感じだもんな、この人。違うか。
「でも、前そんな喋り方でしたっけ?」
「しゃべっ……え? しゃ、喋り方か?」
「?」
「いや……なんでもないです」
とにかく、一絺さんに泊めてもらったんだから優香にもお礼言ってもらわなきゃ。
「ここ、一絺さんの家だからな? ほらほら、優香の家分からなかったから夜分遅くに来て泊めてもらったんだ。お礼言っとこ?」
「……ありがとうございます」
俺が言うと、優香は不服そうにしながらもお礼を言った。
てか、そこまで不貞腐れる要因ある??
「ま、まあ……千縁君とは深い親交があるから……」
「知り合って一か月ちょっとくらいですよね? まぁ確かにその間かなりお世話になりましたけど……で、優香はなんでそんなに一絺さんのことが気に入らないんだ?」
「え……? いや、だって……ちよ君が誘惑されてそうだもん」
んん??
「いや、それ優香に関係ある? されてないけど、別にされたら嬉し──」
「私、ちよ君のこと好きだもん!!」
「んなっ」
(……?)
優香が、俺の言葉を遮って宣言する。
好き?
「えぇ?」
「だって……いつも助けてくれるし……他人だった時に、話も聞いてくれたし……」
(うーん、それは結構俺の打算あってのことだったんだよな……)
当時、確かに女子の連絡先とか手に入れるチャンスかな~なんて思っていたところはある。
夢だったからなぁ……
んで、実際にそうなったわけだけども。
とにかく、俺の思惑であって、優香のために提案したわけじゃなかった。
(でも、そんなこというのはおかしいよな……)
実際、誰かが困っていたら、無理せずできる範囲で助ける気はあるが……確実に身内を優先するくらいには俺は、優しくはない。
まぁどのみち関係ないけど。
「だっだから! 仕方ないでしょ!!」
「いやでも俺、好きな人いるぞ?」
「え?」「え?」
俺の言葉に、何故か一絺さんまで疑問の声を上げる。
俺かって好きな人くらいいるわ!!!!
「え? てか一絺さんは学園対抗祭みてないから分かるけど、優香って俺のこと見てくれてたんでしょ? その時に言ってたはずなんだけど……」
「いや……私試合終わってすぐ仕事だったから……好きな人って……!?」
ああーそうか。
あの時はまだ撮影とかあったんだろうな。
「東城莉緒って知らない?」
「誰よそれ……探索者!?」
「いや、一般人だけど」
「そ、その一般人とどこで知り合ったんだ……?」
優香に加えて、一絺さんも驚いた様子で質問する。
「てか、なんでこの流れで一絺さんが驚いてるんですか? あ! もしかして一絺さんも俺のこと好きなんですか?」
「そっ……!? そんなわけないだろう! 私はもう大人だぞ!!」
「それもそっか……」
からかったのは俺だし、流石にないかとは思ってたけど、面と向かって否定されると傷つく……
「…………」
「っ……」
「んで、言ったはずなんだけどなぁ……だからその気持ちにはなんとも言えんけど」
「そんな……」
優香が絶望した顔をする。
そんなに惚れる要素なんてなかったはずだけどな……?
「……っていうか、なんでそんなに落ち着いてるのよ! 元アイドルの私が告白したのよ!?」
「元アイドルて……」
まぁ、俺には莉緒がいるし……
え? 美穂にドキッとしてたって?
金髪碧眼とか中学男子の夢だろ。仕方ないだろ!!
(……いや、待てよ?)
「ち、千縁君?」
確かに最近、おかしいような気がする。
ここ数日だけでも、昔なら考えられなかったことも、かつて妄想したようなことも、様々な体験があった。
それなのに、喜びや驚き、憎しみにトキメキ……
その全てが、どこか遠いもののように感じる。
『…………』
「……悪鬼?」
「千縁君!」「ちよ君大丈夫!?」
俺が考え込んでいると、二人が黙り込んだ俺の腕を揺さぶる。
「何があったんだ!?」
「大丈夫なの!?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「……そうだ、千縁君、二人で話したいことが!」
「はあ!?」
「え??」
優香と俺を案ずる言葉を吐いていた一絺さんが突如、思い出したかのように俺を部屋の隅に引っ張っていく。
「ちょっ……っぱ……らってる……しょ!!」
「ちょっと、時間を見てくれ」
「はい? ……え、もう11時ですか!?!?」
俺が一絺さんの腕時計(高そう)をのぞき込むと、長針と短針の角度がほとんどない。
「あ、ああ……ち、ちかい……」
「ああ、すみません」
ポツリと遠慮がちに呟いた一絺さんだったが、しっかりと拾って離れる。
(まじか……初めてのベッドがふかふかすぎて爆睡してたか……)
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