千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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三章 “夜降る宵朧”殺髏編

第51話 三度目の指名依頼

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ピンポーン!

「ん……千縁君!!」

 いつも通り着崩れた白衣の一絺さんが、ガチャッと扉を開ける。

「ああ……一絺さん、おはようございます……」

「っ!? ちょっ……!?」

 悠大が思わず目を逸らした。
 蓮とすごく気が合ったって言ってたけど、こういうところまで似てるのな。

「って、服くらいちゃんと着てくださいって!」

「ん、んん……す、すまない……」

 思いのほか、一絺さんが落ち込む様子を見せる。

「あ、ああ、いえ、そんな怒ってるわけじゃ……」

「うぅ……なぜだ……」

 一絺さんがポツリと呟いたのを、俺の自慢の耳は聞き逃さなかった。
 何故だじゃねぇよ!

「え、えっと、指名依頼と聞いたんですけど……」

 悠大が遠慮がちに言う。
 美人だしな、仕方ない。
 実際俺も内心ではめっちゃドギマギしとるよ、うん。

 “あいつ”のおかげで外面には表れないだろうが。

「ああ! そうだ! 君が悠大君だね? さあさあ、あがってくれ!」

「え……お、おいちよ、俺女の人の家初めてなんだけど……てか城に来るのも初めてなんだけど……」

「俺に聞くなよ……あと、一応超豪邸だが城じゃないぞ。落ち着け」

 しかし、本当に俺と悠大を呼んだのは何故なんだ?
 実際、下級中級辺りの探索者は最も数が多いはずだが……

(しかも、100万規模ですか? って言ったら普通に肯定されたし……本当に大丈夫な依頼なんだよな??)

「さて……紅茶は好きかな?」

「え、飲んだことないです……」

 一絺さんが開口一番、“いつもの”質問をする。

「そ、そうか……最近の子は皆紅茶飲まないんだな……」

 一絺さんは次からジュースにするか……? と呟いた。
 別にそんな気遣わなくてもいいんだけど……

「その、指名依頼ってなんなんですか?」

「あ、ああ、そうだ。これを見てくれ」

 俺の言葉に、一絺さんはアイテムボックスから1枚の書類を取り出した。


~~~~~
指名依頼!
依頼人:日月一絺
募集:下級探索者~中級探索者一名&最上位探索者一名(学生のみ)
報酬:それぞれ300万+α
内容:一週間ほど依頼主の家に通い、身体検査を受けてもらう
~~~~~


「「身体検査??」」

「う、うぬ。若くして超級探索者に勝てるほどの千縁君の身体能力を調べたくてね……それで比較のために、同年代で、本来かなり優秀な方の友達にも来てもらったんだ」

 結構、今俺の周りがやばすぎて忘れそうになるかもしれないが、高校一年生で中級探索者はかなり優秀な生徒だ。
 なるほど……確かに、俺も検査してみたいな。

(なんであいつがのか……気になるからな)

「あ、えっと日月さん。この+αって……?」

 悠大が遠慮がちに聞く。

「それは……要相談ってやつだ!」

 悠大の言葉に、一絺さんは人差し指を口元で立ててウインクする。

(いや……何でこっち向くんですか……蓮に学生には刺激が強いって散々言われてたでしょ……)

 あの“悪童”蓮をしても、気まず過ぎたのか、やめてくれと言っていたからな。
 思わず目を逸らした俺とは対照に、悠大は見惚みとれてしまったようだ。

(……? いや、これは……)

「……っ、で、今日は何を……?」

「今日はまず……そうだな、とりあえず魔力測定からしようか」

「──!!」

 魔力測定……!

 魔力測定。漫画やアニメのように謎の水晶で測るわけではなく体重計のような魔道具を使って測るのだが……
 確か入学時に測った以来だな。
 その時はあんまし正確に覚えてないけど(4年半前)0.0000012とかだった気がする。

(そういえば、俺の魔力値って今どうなってんだろう……?)

 確かに気になる。
 それに、【憑依】中なら魔力値が変わったりするんだろうか?

「おお……確かに、最近測ってなかったから楽しみです!」

 俺は内心悠大よりも楽しみにしながら、協会へ向かった。


~~~~~


「あ、あの宝晶様の魔力測定ですか!?!?」

「あ、あー……そうですね」

「やっぱ、これが普通の反応だよな……普段ちよってこんな対応されてるイメージなさ過ぎてなんか……」

 一絺さんと悠大と協会に行くと、俺が有名になってから初めて二階測定所に来たからか、受付の女性が大声で叫んだ。

(悠大の言う通りなんだよな……俺が最近行ったとこって、協会長えらいひとのところか、一絺さん不思議さんのところか……うちの生徒は元々の俺を知ってるし同級生だからまずかしこまらないし……)

 いやでも新鮮だな。こうなんか、芸能人の気分を味わえたっていう感じがして満足だわ。
 閑話休題。

「二人の測定を頼みたい。優先券を買いたいのだがここでいいか?」

「あっ、は、はい!」

 探索者には欠かせない魔力測定。当然、下級探索者も受けられるように無料となっている。
 しかし、魔道具は魔道具だ。
 同じものが出る確率は低いし、なにより高価。

 日本には東京、大阪にひとつづつしかない。
 つまり、行列必死なのだ。

 ただ、どうしても緊急で魔力値測定したいという人もいるだろう。
 魔力値による就職の足切りがある会社も増えているからな。

 だからそんな人向けに、お金を払えば早く出番が来る、というシステムがある。それが優先券制度だ。

「一番早いので」

「えっ! えっと……い、いえ、宝晶さんの連れならすぐ通しなさいと協会長から……」

「!!」

「そ、そうか……ありがとうと伝えておいてくれ」

(全く……余計なことを)

「え?」

 不意に声に、俺は一絺さんを見る。

(今のは……)

『……?』

「な、なんだ……?  千縁君……?」

「あ、ああいえ、なんでも……」

 なんだ……?
 怒ってるというより、不貞腐れてるような……??
 いや、まるで親子のように親密な……

「てか、ちよって協会長とも知り合いだったのか!?」

「え? あ、ああ……色々お世話になってな」

 そういえば協会長海原真さん、よくしてくれるよな……
 協会長の計らいがなければ、一絺さんとも知り合ってなかっただろうし、こうして悠大に助け船を出してくれることもなかったはずだ。


 今度協会長にあったら、感謝を伝えないとな。
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