千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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三章 “夜降る宵朧”殺髏編

第49話 悪鬼と殺髏

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「サンキュー、相棒」

『あのくらい、問題ないよ』

 俺は暁の空を、静かに、そして高速で駆け抜ける。

「しかしあっちは大丈夫かなぁ……」

 そう、今日は優香の件を解決するため、悠大の特訓を蓮に任せてきたのだ。
 あとちょっとで終わる時間だが……うまくやれてるだろうか。

 いくら蓮が鬼道丸の憑依時以外は“悪童”じゃないといっても、蓮がだれにでも優しい性格ということはない。
 悠大と気が合ってるかどうかわからないが……

『まぁ、なんとかなんじゃねぇか? 鬼道丸あいつ、地獄では最も優しい鬼で通ってるしな』

「まじで??」

『ああ。あいつの二つ名は優鬼で通ってたからな。気に食わなかったようだが』

 いやまぁ、そりゃ気に食わないだろうなぁ……あれでも鬼の中では優しいほうなのか。

 いやまてよ? じゃあ悪鬼はもっと怖い鬼なのか?

『まぁ、かつて魂を喰らって回ってたからな』

「うわえぐ! 地獄の奴の魂取ったら消えんじゃねぇの!?」

 でも、悪鬼ってそんなに怖いイメージないけどな……なんなら、優しい気がするが……

「お前も十分優しいだろ」

『……あんたとは気が合う』

『お、おいお前ら、うるせぇ!』

 ピコンッ!!

「ん? 悠大からか?」

 俺が悪鬼や殺髏せつろと話していると、ポケットの中からポップな電子音が。

(どれどれ……?)

「……え?」

 俺は、悠大からのL〇NEをみて、思わずそう漏らした。
 そこに書かれていたのは、蓮と特訓するという旨。

『俺、蓮とすごく気が合ったから、明日からも蓮に特訓してもらうことになった。蓮も許可してくれたし、なんか教え方が正直上手い』

「え。」

 まじい?
 一月内に儲けられるほど育てようと思って、かなり過酷な練習を強いたのはそうだが……てか、俺が門の中で受けた特訓と同じのだからな。
 俺には尋常じゃなくきつかったし、なんどか殺されたが……死んだりはしないように調整したぞ?

『それ、大丈夫なのか? 間に合うか? 明後日が昇給試験日だろ? 逃すと終わりだが』

『もう合格については大丈夫らしい。それに、試験に合格したら受け入れてくれるパーティも見つかった!』

『まじか! それはよかったな!! じゃあもう俺は要らないのか?』

『こっちはもう大丈夫だ。ちよも自分の用事の方に集中してくれ。“夢”、全部叶えるんだろ?』

「……!」

 かつて、悠大に夢のことを話したことがあった。有名になって、ある女の子に会いたい、と。
 その時、悠大は心から応援してくれた。

 そしてお互いにいろんな夢を語り合い……俺はその時、力を手に入れたら必ず、全ての“夢”を叶えると心に決めたのだ。

『……ありがとう。頑張れよ。あと、試験合格したら一回ついて来てくれ。指名依頼がある』

『は!? 指名依頼!? おい、どういうことだよ!』

『まあ、受かったらな。今は余計なこと考えずに休んどけ』

 一応、一絺さんから言われた通りに悠大を誘っておいた。
 優香の件も片付いたっぽいし……

(あれ? そういえば、優香がアイドルをやめられたとして、そのあと俺と優香はどうなるんだ?)

 初めて連絡先を交換した同級生の女子。
 といっても、その出会いはイレギュラーのようなもので、その原因が消えた今、もう俺と優香が関わる理由はなくなった。

(うーん、そのまま友達に……はないか。ちょっと寂しいけど、まあ仕方ない)

 おそらく、もう連絡が来ることはないだろう。

「でもこれで、一件落着ってやつ?」

 でもこれで、後は悠大の稼ぎが間に合うかどうか……正直、悠大が間に合わなさそうだったら、俺が勝手に治すないし延命つもりではある。

 ピコンッ!

 俺ができた時間で、何をしようかと考えたその時。
 再び、L〇NEの着信音が鳴る。

「? なんだ……?」

新星ニュークリア
蓮『明日から数日間、ちよの友達の特訓手伝うことになったからよろしく』
美穂『千縁は?』
『俺明日から依頼受けるわ』
美穂『じゃあ明日から二人でダンジョン行く』
『え?』
美穂『?』

 え?

 ……あ。

(そうだ、やりやがったな蓮!!)

 忘れてた。美穂は学園対抗祭後あれからずっと俺とのタイマンを挑んできていたのだ。
 地力だけじゃ流石にきついし、かといって【憑依】を仲間に撃つのも気が引けるし……
 深度Iでも、このレベルの戦いとなれば絶対にどちらかは怪我を負うことになる。

 だからあんまし二人になりたくなかったんだが……

美穂『明日は、相手してもらう』
『明日ちょっと遊びに行ってきてもいい?』
美穂『ダメ』

「……はぁ」

 まいったな。明日バックレてもいいけど、その後が怖いし……同じパーティ内でギスギスするのは嫌だしな。
 行くしかない……か。

「ったく、折角落ち着けると思えば……悪鬼お前、最後美穂になんて言ったっけ?」

『ハッ! 金髪のあいつか? 素質は異様にあるくせに、変に気持ちが入りすぎてるんだよ。だからそのまま、“まだまだ足りない”と教えてやったんだ。感謝しろ!』

「はぁ!? そんなこと言ってたのか!? そりゃあ気も悪くするわけだ……」

『教えるのは、いいことじゃないの?』

『だよなぁ! やっぱテメェとは気が合うな! ハハハハハ!!』

「こいつら……」

 殺髏の言葉に、悪鬼が哄笑する。
 悪鬼は基本的に傲慢で、誰とも慣れあわない。

 しかし、そんな悪鬼も俺の“相棒”殺髏とは仲がいいのだ。
 人を殺すのに躊躇がない……というか、よく言えば遠慮がない二人だ。
 悪鬼にとっては、もはや同じ世界の仲間らしい。
 殺髏の一番仲いい仲間も悪鬼だが。カップリング??

「てか……美穂って確か……」

 なんかやけに“一番”にこだわってたよな……?

 学園祭の後も、新星ニュークリアの三人でダンジョンに潜っていた時、美穂は事あるごとに俺に挑んできた。
 全部断って来たが……やけに俺を目の敵にしている気がする。
 事あるごとにつっかかってくるからな。

「まさか美穂も、なんかあるのか?」

『ハッ! あいつはあの黒髪女みてぇに泣きつくさがじゃねぇだろ』

「優香のこと言ってる? まぁ、美穂ならなにかあっても自分で解決できるよな」

 なんなら、現時点で俺よりずっと国からのバックアップを受けてるわけだしな。
 俺にできることはないだろう。

『千縁。もう夜がくだる。早めに休憩しな』

 殺髏が、独特な口調でいつも通り寝る時間を知らせてくれる。

「あっもうこんな時間か! サンキュー相棒。んじゃ、おやすみ」

『ハッ……ゆっくり休め』『おやすみ』

 やっと、俺の波乱の一日は終わりを告げたのだった。
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