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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編
第42話 陰謀の予感
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「あの後復建していた時……地下にダンジョンが残っていることを確認したんだ。そして、その時海原……大阪の協会長がいたから、念のために見に行ってもらったんだが……ボス部屋の扉が復活していたんだ」
「嘘だろ……?」
「な、なあちよ! どういうことだよ!? 説明してくれ!」
「……ダンジョン、クリアした?? 本当に??」
「あ、あぁ……ちょっと、待て」
二人は話についていけず、慌てて説明を求めるが、俺の内心はそれどころじゃなかった。
(まさか復活型かなんかか……!? それとも、取り逃した!? もしまたアイツがダンジョンブレイクを起こしたら……今度こそ、一絺さんは……!)
「で……ボス部屋の奥から、物音も聞こえたんだ。しかし……」
「しかし……??」
とりあえず二人に前の依頼を説明して、静かにさせる。
「音が、小さかったんだ。」
「「「え?」」」
「あの時のような、機械の如き重低音でもなく、どちらかといえば大型昆虫が這っている程度の、わずかな音だった。もちろん、機械音ではあるが」
「それって……」
俺の言葉に、一絺さんは立ち上がって両手を広げた。
「そう! 出産型モンスターかもしれないのだよ! 何せ、このダンジョンはイレギュラーばかりだからな!」
「!!」
「何??」
「出産型……!」
かつてダンジョンが出現した初期。
魔力値が上がりやすいモンスターや、処理が簡単なモンスターを養殖して人類を強化しようと、誰もが考えた。
しかし、どのような薬を使っても、オスメスが明らかにわかるモンスターを使って実験してみても、それは叶わなかった。
それどころか、昨今に至るまで蜂のモンスターや虫のモンスターであっても、産卵が確認されていないのだ。
そのことから教科書にすら、モンスターはダンジョンの力で生成されるとされており、交尾や出産はないと書かれている。
「ああ……! 復活か、あるいは子を産むモンスター……いずれにせよ、世紀の大発見間違いなしだ! だから、これは調査するしかないと思ってね……」
一絺さんは、少し恐怖を孕みながらも、行くという確かな覚悟を持った目で立ち上がった。
「大発見って言ったって……一絺さん後悔したんじゃなかったんですか!?」
「いや~もうダンジョンには潜りたくないと思ったんだがね……やはり謎を前にしては潜らないなんて選択肢はなかったのさ!! ハハハ!!」
確かダンジョンにはやはり潜らないでいるべきだったとか後悔してたのに……
また行く決断早すぎだろ!!
一絺さんは今回もついて来る気満々のようだ。
「それに、今回は“神童”“悪童”も揃ってることだしね!」
「……!!」
「正気かお前!? 一般人だろ!?」
美穂と蓮は、一絺さんの言葉にギョッとする。
そりゃあ、俺が苦戦したイレギュラーダンジョンに、それも一度死にかけた一般人が自ら進んでまた入るというのだから当然の反応だ。
「一絺さん、でも……!」
「いやいや……正直、何か匂うんだ。千縁君もあのモンスターを見ただろう?」
「……」
以前地下ダンジョンで出会ったあのボスは、まさしく“ロボット”……“機械竜”? の見かけをしていた。
蒸気のようなものを吹き出す砲塔に、全身ダンジョン鉄のようなもので覆われていた、あの外殻……
(確かに、あれはまるで人工物のような……)
俺は最後の、無敵状態を思い出す。
(どんどん膨らんでいって……放っておいたら、もしかして爆発したりしたのか? 無敵に膨張……いや、でも最後完全に機械っぽかったとはいえ、肉体があったしなぁ)
大体、状態異常:無敵ってなんだ? 聞いたこともなかったんだが……
「私は、何か裏があると睨んでいるんだよ。そもそも、イレギュラーダンジョンが他に発見されていないというのも信じられないし」
「まあ……可能性はありますね。誰かが仕組んだ……とか」
通常ダンジョンにも、イレギュラーモンスターという、明らかにそのダンジョンのレベルと違うモンんスターが出現することはある。
でも、それは月に一、二回ほど起こる確率であるし、似たような存在のイレギュラーダンジョンが世界を見ても他に全く存在していないというのは、確かに信じ難い。
「……依頼人をそんな危険なダンジョンには入れられない。責任を問われるのは私たち」
「じゃあまあ、それも依頼ってことで」
「出来るか!!」
一絺さんがてへっ、と美穂に返すと、蓮からバッシンングが飛ぶ。
「ただでさえ超級依頼だったんだろ!? それを一般人連れで行けるかってんだ! それも、狭くて逃げ場がない……確実に死ぬぞ!?」
「大丈夫だよ。ちゃんと道中のモンスターでは大した傷を追わずに進める程度の装備は揃えてある。それに、そのための“超級”依頼なんだよ。護衛依頼ってあるだろ?」
「そうはいってもなあ……!」
うーん……恐らく、一絺さんは引かないだろう。
頭の回転も速いし、このチャンスは逃さないはずだ。
(危険と機会は紙一重……か。懐かしい言葉だな)
『…………』
俺は久しぶりに、門のことを思い出す。
気は乗らないが、依頼というなら仕方ない。
ここは二人を、乗せてやるとするか。
「でも、俺は一人で守れたぞ?」
「……別に、守れないわけじゃない」
「あ!? 俺は危険だから言ってんだよ! できないわけないだろ!」
いやちょっろ!!!!
煽り耐性が低すぎる!!
全然今から言い合いが始まると思ってたのに!!
一言で終わったよ説得!!!!
「乗るのはやぁ……」
「はは……じゃあ準備はいいか? 千縁君」
「俺は大丈夫です。依頼ってんなら、やらないわけにはいかないですしね」
一絺さんが、微笑みながら俺に問う。
俺は頷いて、学園対抗祭以来最大限に、気を引き締めるのだった。
~~~~~
「……え??」
「これが……一帯を破壊した化け物、なのか?」
「……可愛い」
「「え!?」」
一体どういうことなんだ……
俺たち新星の三人と一絺さんは今、地下ダンジョン十階に来ていた。
道中のモンスターなど、そこらの熟練探索者より強い俺たちの前では相手にもならなかった……のだが。
俺たちが臨戦体制を整えて、いざ、ボス部屋の扉を開けると、そこでは予想以上に予想外な景色が目に入ったのだ。
「……なんだ、こいつは。あの時のあれと同じボス……なのか??」
一絺さんが思わず困惑した声を上げる。
(いや、扉越しに聞こえる音が小さかったとか言ってたけど、いくらなんでも……)
「小さすぎるだろ!」
「おい、ちよはこいつに負けかけたってのか?」
「負けかけたわけじゃねぇよ! てか、前はこの数千倍はあったぞ!?」
「……それは盛りすぎじゃ」
「まじで!!」
そう、今美穂の目の前にいるのは、せいぜい手のひらサイズのメカニカルなモンスター。
(いやでも確かに、砲塔とか少ないけど姿形があの時のボスそのものなんだよな……)
こいつが時間をかけて、あんなに大きくなったのか?
いや……でも、なんかおかしな気配が……
「……!! 千縁君!! それを破壊してくれ!!」
「「「えっ?」」」
俺たちがそのミニモンスターを囲んで凝視していると、突如一絺さんが何かに気づいたかのように叫んだ。
「どういうことですか!?」
「そいつはモンスターじゃない!! その目の辺りには最新型のカメラが取り付けられている!」
「「「え!?」」」
カメラ……だと!?
素人目には、唯の透明な眼にしか見えないが……
そっち方面に詳しい一絺さんが言うなら、間違い無いだろう。
「【虐殺】!!」
バキン!!
と金属が砕け散る音が鳴る。
なんか美穂が少し悲しそうな顔をするが、今はそれどころじゃない。
「どういうことですか!?」
「……恐らく、これは人工的に仕組まれた事だったんだ。このダンジョンも、あいつも……」
一絺さんが、見たこともない深刻な表情で呟いた。
「嘘だろ……?」
「な、なあちよ! どういうことだよ!? 説明してくれ!」
「……ダンジョン、クリアした?? 本当に??」
「あ、あぁ……ちょっと、待て」
二人は話についていけず、慌てて説明を求めるが、俺の内心はそれどころじゃなかった。
(まさか復活型かなんかか……!? それとも、取り逃した!? もしまたアイツがダンジョンブレイクを起こしたら……今度こそ、一絺さんは……!)
「で……ボス部屋の奥から、物音も聞こえたんだ。しかし……」
「しかし……??」
とりあえず二人に前の依頼を説明して、静かにさせる。
「音が、小さかったんだ。」
「「「え?」」」
「あの時のような、機械の如き重低音でもなく、どちらかといえば大型昆虫が這っている程度の、わずかな音だった。もちろん、機械音ではあるが」
「それって……」
俺の言葉に、一絺さんは立ち上がって両手を広げた。
「そう! 出産型モンスターかもしれないのだよ! 何せ、このダンジョンはイレギュラーばかりだからな!」
「!!」
「何??」
「出産型……!」
かつてダンジョンが出現した初期。
魔力値が上がりやすいモンスターや、処理が簡単なモンスターを養殖して人類を強化しようと、誰もが考えた。
しかし、どのような薬を使っても、オスメスが明らかにわかるモンスターを使って実験してみても、それは叶わなかった。
それどころか、昨今に至るまで蜂のモンスターや虫のモンスターであっても、産卵が確認されていないのだ。
そのことから教科書にすら、モンスターはダンジョンの力で生成されるとされており、交尾や出産はないと書かれている。
「ああ……! 復活か、あるいは子を産むモンスター……いずれにせよ、世紀の大発見間違いなしだ! だから、これは調査するしかないと思ってね……」
一絺さんは、少し恐怖を孕みながらも、行くという確かな覚悟を持った目で立ち上がった。
「大発見って言ったって……一絺さん後悔したんじゃなかったんですか!?」
「いや~もうダンジョンには潜りたくないと思ったんだがね……やはり謎を前にしては潜らないなんて選択肢はなかったのさ!! ハハハ!!」
確かダンジョンにはやはり潜らないでいるべきだったとか後悔してたのに……
また行く決断早すぎだろ!!
一絺さんは今回もついて来る気満々のようだ。
「それに、今回は“神童”“悪童”も揃ってることだしね!」
「……!!」
「正気かお前!? 一般人だろ!?」
美穂と蓮は、一絺さんの言葉にギョッとする。
そりゃあ、俺が苦戦したイレギュラーダンジョンに、それも一度死にかけた一般人が自ら進んでまた入るというのだから当然の反応だ。
「一絺さん、でも……!」
「いやいや……正直、何か匂うんだ。千縁君もあのモンスターを見ただろう?」
「……」
以前地下ダンジョンで出会ったあのボスは、まさしく“ロボット”……“機械竜”? の見かけをしていた。
蒸気のようなものを吹き出す砲塔に、全身ダンジョン鉄のようなもので覆われていた、あの外殻……
(確かに、あれはまるで人工物のような……)
俺は最後の、無敵状態を思い出す。
(どんどん膨らんでいって……放っておいたら、もしかして爆発したりしたのか? 無敵に膨張……いや、でも最後完全に機械っぽかったとはいえ、肉体があったしなぁ)
大体、状態異常:無敵ってなんだ? 聞いたこともなかったんだが……
「私は、何か裏があると睨んでいるんだよ。そもそも、イレギュラーダンジョンが他に発見されていないというのも信じられないし」
「まあ……可能性はありますね。誰かが仕組んだ……とか」
通常ダンジョンにも、イレギュラーモンスターという、明らかにそのダンジョンのレベルと違うモンんスターが出現することはある。
でも、それは月に一、二回ほど起こる確率であるし、似たような存在のイレギュラーダンジョンが世界を見ても他に全く存在していないというのは、確かに信じ難い。
「……依頼人をそんな危険なダンジョンには入れられない。責任を問われるのは私たち」
「じゃあまあ、それも依頼ってことで」
「出来るか!!」
一絺さんがてへっ、と美穂に返すと、蓮からバッシンングが飛ぶ。
「ただでさえ超級依頼だったんだろ!? それを一般人連れで行けるかってんだ! それも、狭くて逃げ場がない……確実に死ぬぞ!?」
「大丈夫だよ。ちゃんと道中のモンスターでは大した傷を追わずに進める程度の装備は揃えてある。それに、そのための“超級”依頼なんだよ。護衛依頼ってあるだろ?」
「そうはいってもなあ……!」
うーん……恐らく、一絺さんは引かないだろう。
頭の回転も速いし、このチャンスは逃さないはずだ。
(危険と機会は紙一重……か。懐かしい言葉だな)
『…………』
俺は久しぶりに、門のことを思い出す。
気は乗らないが、依頼というなら仕方ない。
ここは二人を、乗せてやるとするか。
「でも、俺は一人で守れたぞ?」
「……別に、守れないわけじゃない」
「あ!? 俺は危険だから言ってんだよ! できないわけないだろ!」
いやちょっろ!!!!
煽り耐性が低すぎる!!
全然今から言い合いが始まると思ってたのに!!
一言で終わったよ説得!!!!
「乗るのはやぁ……」
「はは……じゃあ準備はいいか? 千縁君」
「俺は大丈夫です。依頼ってんなら、やらないわけにはいかないですしね」
一絺さんが、微笑みながら俺に問う。
俺は頷いて、学園対抗祭以来最大限に、気を引き締めるのだった。
~~~~~
「……え??」
「これが……一帯を破壊した化け物、なのか?」
「……可愛い」
「「え!?」」
一体どういうことなんだ……
俺たち新星の三人と一絺さんは今、地下ダンジョン十階に来ていた。
道中のモンスターなど、そこらの熟練探索者より強い俺たちの前では相手にもならなかった……のだが。
俺たちが臨戦体制を整えて、いざ、ボス部屋の扉を開けると、そこでは予想以上に予想外な景色が目に入ったのだ。
「……なんだ、こいつは。あの時のあれと同じボス……なのか??」
一絺さんが思わず困惑した声を上げる。
(いや、扉越しに聞こえる音が小さかったとか言ってたけど、いくらなんでも……)
「小さすぎるだろ!」
「おい、ちよはこいつに負けかけたってのか?」
「負けかけたわけじゃねぇよ! てか、前はこの数千倍はあったぞ!?」
「……それは盛りすぎじゃ」
「まじで!!」
そう、今美穂の目の前にいるのは、せいぜい手のひらサイズのメカニカルなモンスター。
(いやでも確かに、砲塔とか少ないけど姿形があの時のボスそのものなんだよな……)
こいつが時間をかけて、あんなに大きくなったのか?
いや……でも、なんかおかしな気配が……
「……!! 千縁君!! それを破壊してくれ!!」
「「「えっ?」」」
俺たちがそのミニモンスターを囲んで凝視していると、突如一絺さんが何かに気づいたかのように叫んだ。
「どういうことですか!?」
「そいつはモンスターじゃない!! その目の辺りには最新型のカメラが取り付けられている!」
「「「え!?」」」
カメラ……だと!?
素人目には、唯の透明な眼にしか見えないが……
そっち方面に詳しい一絺さんが言うなら、間違い無いだろう。
「【虐殺】!!」
バキン!!
と金属が砕け散る音が鳴る。
なんか美穂が少し悲しそうな顔をするが、今はそれどころじゃない。
「どういうことですか!?」
「……恐らく、これは人工的に仕組まれた事だったんだ。このダンジョンも、あいつも……」
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