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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編
第39話 終息
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「……はい。ですから……」
……うるさい。
なんだ? 知らない声が聞こえる。
「う……ここは?」
「!! 目を覚ましました!」
「っ!?」
目を開けると、目の前一面に女性の顔面があり、思わず飛び跳ねる。
「だ、誰だ……!?」
「ああ、すみません。私はこう言うものでして……」
女性はそういうと、胸ポケットから手帳を取り出した。
「……!! 警察……探索者課?」
探索者課といえば、大激変によるダンジョン出現後すぐに構成された、通常警察じゃ対応できない、探索者関連の事件専門の課だったはず。
しかし、今となっては通常の警察はほぼ役に立たず、特別課以外もほとんどがスキル持ちそう入れ替えされたから……実質通常課と同義で解散したと思っていたが。
「で……探索者課がなぜ……あ」
気を失う前の光景がフラッシュバックする。
家よりもでかいボスをズタズタに斬殺したあの鬼が、千縁君の姿に戻って……いや、鬼になった千縁君がボスを倒してて……
「思い出しました? できれば覚えてること全部話して欲しいんですけど……」
(……なんだか、この職員の言い振りだと私が覚えてない体で聞いているな)
恐らく、海原がなにかしたのだろう。
あいつの意思となれば……勝手に行動すると自らの首を絞めることになるかもしれん。ここは素直に、あいつの用意した状況に乗っかろう。
私は、持ち前の思考力をフル回転させて答えを選ぶ。
「いえ……地下から化け物が出てきたことしか……」
「そうですか……って、そもそもあなた一般人ですよね? どうやって地下から逃げてきたんですか??」
「それは……」
確かに、あんな化け物の死体があったら、疑うのは当然だろう。しかし、今の私には記憶がないことになっている。シラを切り通すまでだ。
「……分かりません」
「……そう、ですか」
実際の所、私だけならばあの地下で死んでいただろう。いくら強化スーツを着ていたとはいえ、ダンジョンの壁をぶち壊す奴の攻撃なんか喰らえば、即、お陀仏だ。
千縁君が助けてくれなければ、今頃……
(そういえば、千縁君にお、お姫様抱っこを……)
お母さんにもされたことないのに!!
「? 日月さん顔が真っ赤になってますよ!? 大丈夫ですか!?」
思わず手で顔を覆ってしまう。
いつもお母さんはおんぶだったから……
まてよ? というか、おんぶで良かったんじゃないか!?
(そ、それならあいつは、何故お姫様抱っこなんか……!)
「ちょっ、首まで真っ赤ですよ!? まさか何かの感染症とか……!?」
思い出すだけで恥ずかしい。
……でも、今度助けてくれたお礼だけは言っておかねば。
~~~~~
「……それで、神童に勝ったあの例の子供が極級クラスのボスを討伐したというのか?」
「はい。超級クラスモンスターは見たことがありますが、死体から感じる気配はそれ以上でした」
探索者の町、大阪の探索者協会協会長である海原真が、そう発言する。
「ばかな! いくら神童に勝ったとはいえ、まだ入学したての学生! 極級のことを甘く見過ぎなんじゃないかね!?」
「そうだ! そもそも、君が死体にビビって過大評価しているだけなんじゃないか!?」
海原のその言葉に、周囲のおっさん達が一斉に捲したてた。
彼らは政治家であり、特に子や家族が探索者として成功している者たちだ。
今や、政治活動ですら探索者と言うことが重要なパーツになっているのだ。
「……静まれ!」
「「「……」」」
一斉に騒ぎ出した政治家たちを、一人の中年の男が一声で黙らせる。
日本総理大臣……榊嶺二だ。
「……それは、本当のことなのか? “神童”でさえ、外国からもスカウトが絶えないと言うのに」
「……事実です」
日本は特に、探索者大国とはかけ離れた存在だ。
極級は一人しかおらず、超級ですら十人前後。
そんな中、学生にして超級に達した“神童”は、流石に諸外国も見過ごせなかったのだ。
日本の発展を抑えるためにも、底が見えない彼女による国力の増大のためにも。
(日本は上位の探索者が少なく……彼らに対して、圧倒的な破格の待遇を許している)
この時勢、戦争ですら探索者の力で行われるのは明らかだ。
いつ、ダンジョンという資源のために日本が狙われるかはわからない。
探索者の出現によって、世界は貪欲に変わってしまったのだ。
「それが本当ならば、近いうちに彼を呼ばなければならないな……部下から聞いた時は何かの間違いだと思っていたんだが……」
「そ、総理! この男のことを信じるのですか!?」
「当然だ。彼は大阪の探索者を仕切る、“超級探索者”なんだぞ。彼がその気なら、私たちはすぐにでも殺される」
「っ」
総理のその言葉で、騒いでいた政治家たちは即座に黙りこくる。
「すまないね。君にはこれからも大阪を、ひいては日本を守っていって欲しい……」
「当然です。私はこの国が大好きですので」
総理の言葉に、海原は一礼した。
「超級を越える、“革命児”……か」
……うるさい。
なんだ? 知らない声が聞こえる。
「う……ここは?」
「!! 目を覚ましました!」
「っ!?」
目を開けると、目の前一面に女性の顔面があり、思わず飛び跳ねる。
「だ、誰だ……!?」
「ああ、すみません。私はこう言うものでして……」
女性はそういうと、胸ポケットから手帳を取り出した。
「……!! 警察……探索者課?」
探索者課といえば、大激変によるダンジョン出現後すぐに構成された、通常警察じゃ対応できない、探索者関連の事件専門の課だったはず。
しかし、今となっては通常の警察はほぼ役に立たず、特別課以外もほとんどがスキル持ちそう入れ替えされたから……実質通常課と同義で解散したと思っていたが。
「で……探索者課がなぜ……あ」
気を失う前の光景がフラッシュバックする。
家よりもでかいボスをズタズタに斬殺したあの鬼が、千縁君の姿に戻って……いや、鬼になった千縁君がボスを倒してて……
「思い出しました? できれば覚えてること全部話して欲しいんですけど……」
(……なんだか、この職員の言い振りだと私が覚えてない体で聞いているな)
恐らく、海原がなにかしたのだろう。
あいつの意思となれば……勝手に行動すると自らの首を絞めることになるかもしれん。ここは素直に、あいつの用意した状況に乗っかろう。
私は、持ち前の思考力をフル回転させて答えを選ぶ。
「いえ……地下から化け物が出てきたことしか……」
「そうですか……って、そもそもあなた一般人ですよね? どうやって地下から逃げてきたんですか??」
「それは……」
確かに、あんな化け物の死体があったら、疑うのは当然だろう。しかし、今の私には記憶がないことになっている。シラを切り通すまでだ。
「……分かりません」
「……そう、ですか」
実際の所、私だけならばあの地下で死んでいただろう。いくら強化スーツを着ていたとはいえ、ダンジョンの壁をぶち壊す奴の攻撃なんか喰らえば、即、お陀仏だ。
千縁君が助けてくれなければ、今頃……
(そういえば、千縁君にお、お姫様抱っこを……)
お母さんにもされたことないのに!!
「? 日月さん顔が真っ赤になってますよ!? 大丈夫ですか!?」
思わず手で顔を覆ってしまう。
いつもお母さんはおんぶだったから……
まてよ? というか、おんぶで良かったんじゃないか!?
(そ、それならあいつは、何故お姫様抱っこなんか……!)
「ちょっ、首まで真っ赤ですよ!? まさか何かの感染症とか……!?」
思い出すだけで恥ずかしい。
……でも、今度助けてくれたお礼だけは言っておかねば。
~~~~~
「……それで、神童に勝ったあの例の子供が極級クラスのボスを討伐したというのか?」
「はい。超級クラスモンスターは見たことがありますが、死体から感じる気配はそれ以上でした」
探索者の町、大阪の探索者協会協会長である海原真が、そう発言する。
「ばかな! いくら神童に勝ったとはいえ、まだ入学したての学生! 極級のことを甘く見過ぎなんじゃないかね!?」
「そうだ! そもそも、君が死体にビビって過大評価しているだけなんじゃないか!?」
海原のその言葉に、周囲のおっさん達が一斉に捲したてた。
彼らは政治家であり、特に子や家族が探索者として成功している者たちだ。
今や、政治活動ですら探索者と言うことが重要なパーツになっているのだ。
「……静まれ!」
「「「……」」」
一斉に騒ぎ出した政治家たちを、一人の中年の男が一声で黙らせる。
日本総理大臣……榊嶺二だ。
「……それは、本当のことなのか? “神童”でさえ、外国からもスカウトが絶えないと言うのに」
「……事実です」
日本は特に、探索者大国とはかけ離れた存在だ。
極級は一人しかおらず、超級ですら十人前後。
そんな中、学生にして超級に達した“神童”は、流石に諸外国も見過ごせなかったのだ。
日本の発展を抑えるためにも、底が見えない彼女による国力の増大のためにも。
(日本は上位の探索者が少なく……彼らに対して、圧倒的な破格の待遇を許している)
この時勢、戦争ですら探索者の力で行われるのは明らかだ。
いつ、ダンジョンという資源のために日本が狙われるかはわからない。
探索者の出現によって、世界は貪欲に変わってしまったのだ。
「それが本当ならば、近いうちに彼を呼ばなければならないな……部下から聞いた時は何かの間違いだと思っていたんだが……」
「そ、総理! この男のことを信じるのですか!?」
「当然だ。彼は大阪の探索者を仕切る、“超級探索者”なんだぞ。彼がその気なら、私たちはすぐにでも殺される」
「っ」
総理のその言葉で、騒いでいた政治家たちは即座に黙りこくる。
「すまないね。君にはこれからも大阪を、ひいては日本を守っていって欲しい……」
「当然です。私はこの国が大好きですので」
総理の言葉に、海原は一礼した。
「超級を越える、“革命児”……か」
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