39 / 61
二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編
第39話 終息
しおりを挟む
「……はい。ですから……」
……うるさい。
なんだ? 知らない声が聞こえる。
「う……ここは?」
「!! 目を覚ましました!」
「っ!?」
目を開けると、目の前一面に女性の顔面があり、思わず飛び跳ねる。
「だ、誰だ……!?」
「ああ、すみません。私はこう言うものでして……」
女性はそういうと、胸ポケットから手帳を取り出した。
「……!! 警察……探索者課?」
探索者課といえば、大激変によるダンジョン出現後すぐに構成された、通常警察じゃ対応できない、探索者関連の事件専門の課だったはず。
しかし、今となっては通常の警察はほぼ役に立たず、特別課以外もほとんどがスキル持ちそう入れ替えされたから……実質通常課と同義で解散したと思っていたが。
「で……探索者課がなぜ……あ」
気を失う前の光景がフラッシュバックする。
家よりもでかいボスをズタズタに斬殺したあの鬼が、千縁君の姿に戻って……いや、鬼になった千縁君がボスを倒してて……
「思い出しました? できれば覚えてること全部話して欲しいんですけど……」
(……なんだか、この職員の言い振りだと私が覚えてない体で聞いているな)
恐らく、海原がなにかしたのだろう。
あいつの意思となれば……勝手に行動すると自らの首を絞めることになるかもしれん。ここは素直に、あいつの用意した状況に乗っかろう。
私は、持ち前の思考力をフル回転させて答えを選ぶ。
「いえ……地下から化け物が出てきたことしか……」
「そうですか……って、そもそもあなた一般人ですよね? どうやって地下から逃げてきたんですか??」
「それは……」
確かに、あんな化け物の死体があったら、疑うのは当然だろう。しかし、今の私には記憶がないことになっている。シラを切り通すまでだ。
「……分かりません」
「……そう、ですか」
実際の所、私だけならばあの地下で死んでいただろう。いくら強化スーツを着ていたとはいえ、ダンジョンの壁をぶち壊す奴の攻撃なんか喰らえば、即、お陀仏だ。
千縁君が助けてくれなければ、今頃……
(そういえば、千縁君にお、お姫様抱っこを……)
お母さんにもされたことないのに!!
「? 日月さん顔が真っ赤になってますよ!? 大丈夫ですか!?」
思わず手で顔を覆ってしまう。
いつもお母さんはおんぶだったから……
まてよ? というか、おんぶで良かったんじゃないか!?
(そ、それならあいつは、何故お姫様抱っこなんか……!)
「ちょっ、首まで真っ赤ですよ!? まさか何かの感染症とか……!?」
思い出すだけで恥ずかしい。
……でも、今度助けてくれたお礼だけは言っておかねば。
~~~~~
「……それで、神童に勝ったあの例の子供が極級クラスのボスを討伐したというのか?」
「はい。超級クラスモンスターは見たことがありますが、死体から感じる気配はそれ以上でした」
探索者の町、大阪の探索者協会協会長である海原真が、そう発言する。
「ばかな! いくら神童に勝ったとはいえ、まだ入学したての学生! 極級のことを甘く見過ぎなんじゃないかね!?」
「そうだ! そもそも、君が死体にビビって過大評価しているだけなんじゃないか!?」
海原のその言葉に、周囲のおっさん達が一斉に捲したてた。
彼らは政治家であり、特に子や家族が探索者として成功している者たちだ。
今や、政治活動ですら探索者と言うことが重要なパーツになっているのだ。
「……静まれ!」
「「「……」」」
一斉に騒ぎ出した政治家たちを、一人の中年の男が一声で黙らせる。
日本総理大臣……榊嶺二だ。
「……それは、本当のことなのか? “神童”でさえ、外国からもスカウトが絶えないと言うのに」
「……事実です」
日本は特に、探索者大国とはかけ離れた存在だ。
極級は一人しかおらず、超級ですら十人前後。
そんな中、学生にして超級に達した“神童”は、流石に諸外国も見過ごせなかったのだ。
日本の発展を抑えるためにも、底が見えない彼女による国力の増大のためにも。
(日本は上位の探索者が少なく……彼らに対して、圧倒的な破格の待遇を許している)
この時勢、戦争ですら探索者の力で行われるのは明らかだ。
いつ、ダンジョンという資源のために日本が狙われるかはわからない。
探索者の出現によって、世界は貪欲に変わってしまったのだ。
「それが本当ならば、近いうちに彼を呼ばなければならないな……部下から聞いた時は何かの間違いだと思っていたんだが……」
「そ、総理! この男のことを信じるのですか!?」
「当然だ。彼は大阪の探索者を仕切る、“超級探索者”なんだぞ。彼がその気なら、私たちはすぐにでも殺される」
「っ」
総理のその言葉で、騒いでいた政治家たちは即座に黙りこくる。
「すまないね。君にはこれからも大阪を、ひいては日本を守っていって欲しい……」
「当然です。私はこの国が大好きですので」
総理の言葉に、海原は一礼した。
「超級を越える、“革命児”……か」
……うるさい。
なんだ? 知らない声が聞こえる。
「う……ここは?」
「!! 目を覚ましました!」
「っ!?」
目を開けると、目の前一面に女性の顔面があり、思わず飛び跳ねる。
「だ、誰だ……!?」
「ああ、すみません。私はこう言うものでして……」
女性はそういうと、胸ポケットから手帳を取り出した。
「……!! 警察……探索者課?」
探索者課といえば、大激変によるダンジョン出現後すぐに構成された、通常警察じゃ対応できない、探索者関連の事件専門の課だったはず。
しかし、今となっては通常の警察はほぼ役に立たず、特別課以外もほとんどがスキル持ちそう入れ替えされたから……実質通常課と同義で解散したと思っていたが。
「で……探索者課がなぜ……あ」
気を失う前の光景がフラッシュバックする。
家よりもでかいボスをズタズタに斬殺したあの鬼が、千縁君の姿に戻って……いや、鬼になった千縁君がボスを倒してて……
「思い出しました? できれば覚えてること全部話して欲しいんですけど……」
(……なんだか、この職員の言い振りだと私が覚えてない体で聞いているな)
恐らく、海原がなにかしたのだろう。
あいつの意思となれば……勝手に行動すると自らの首を絞めることになるかもしれん。ここは素直に、あいつの用意した状況に乗っかろう。
私は、持ち前の思考力をフル回転させて答えを選ぶ。
「いえ……地下から化け物が出てきたことしか……」
「そうですか……って、そもそもあなた一般人ですよね? どうやって地下から逃げてきたんですか??」
「それは……」
確かに、あんな化け物の死体があったら、疑うのは当然だろう。しかし、今の私には記憶がないことになっている。シラを切り通すまでだ。
「……分かりません」
「……そう、ですか」
実際の所、私だけならばあの地下で死んでいただろう。いくら強化スーツを着ていたとはいえ、ダンジョンの壁をぶち壊す奴の攻撃なんか喰らえば、即、お陀仏だ。
千縁君が助けてくれなければ、今頃……
(そういえば、千縁君にお、お姫様抱っこを……)
お母さんにもされたことないのに!!
「? 日月さん顔が真っ赤になってますよ!? 大丈夫ですか!?」
思わず手で顔を覆ってしまう。
いつもお母さんはおんぶだったから……
まてよ? というか、おんぶで良かったんじゃないか!?
(そ、それならあいつは、何故お姫様抱っこなんか……!)
「ちょっ、首まで真っ赤ですよ!? まさか何かの感染症とか……!?」
思い出すだけで恥ずかしい。
……でも、今度助けてくれたお礼だけは言っておかねば。
~~~~~
「……それで、神童に勝ったあの例の子供が極級クラスのボスを討伐したというのか?」
「はい。超級クラスモンスターは見たことがありますが、死体から感じる気配はそれ以上でした」
探索者の町、大阪の探索者協会協会長である海原真が、そう発言する。
「ばかな! いくら神童に勝ったとはいえ、まだ入学したての学生! 極級のことを甘く見過ぎなんじゃないかね!?」
「そうだ! そもそも、君が死体にビビって過大評価しているだけなんじゃないか!?」
海原のその言葉に、周囲のおっさん達が一斉に捲したてた。
彼らは政治家であり、特に子や家族が探索者として成功している者たちだ。
今や、政治活動ですら探索者と言うことが重要なパーツになっているのだ。
「……静まれ!」
「「「……」」」
一斉に騒ぎ出した政治家たちを、一人の中年の男が一声で黙らせる。
日本総理大臣……榊嶺二だ。
「……それは、本当のことなのか? “神童”でさえ、外国からもスカウトが絶えないと言うのに」
「……事実です」
日本は特に、探索者大国とはかけ離れた存在だ。
極級は一人しかおらず、超級ですら十人前後。
そんな中、学生にして超級に達した“神童”は、流石に諸外国も見過ごせなかったのだ。
日本の発展を抑えるためにも、底が見えない彼女による国力の増大のためにも。
(日本は上位の探索者が少なく……彼らに対して、圧倒的な破格の待遇を許している)
この時勢、戦争ですら探索者の力で行われるのは明らかだ。
いつ、ダンジョンという資源のために日本が狙われるかはわからない。
探索者の出現によって、世界は貪欲に変わってしまったのだ。
「それが本当ならば、近いうちに彼を呼ばなければならないな……部下から聞いた時は何かの間違いだと思っていたんだが……」
「そ、総理! この男のことを信じるのですか!?」
「当然だ。彼は大阪の探索者を仕切る、“超級探索者”なんだぞ。彼がその気なら、私たちはすぐにでも殺される」
「っ」
総理のその言葉で、騒いでいた政治家たちは即座に黙りこくる。
「すまないね。君にはこれからも大阪を、ひいては日本を守っていって欲しい……」
「当然です。私はこの国が大好きですので」
総理の言葉に、海原は一礼した。
「超級を越える、“革命児”……か」
33
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

世界樹を巡る旅
ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった
そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった
カクヨムでも投稿してます
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい
新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。
国家錬金術師となって帰ってきた。
村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて……
そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。
「私に貴方の子種をちょうだい!」
「嫌です」
恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。
※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。


チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる