千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第32話 上級探索者昇級

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「で……ちよはスキル見せてくれないのか?」

「……見せて」

「いやなんで?」

 今俺たちはメギドの探索を終え、家路に着いているところだ。
 結局あの後は、30階辺りまで行ってから少し話して引き返してきた。

 理由は、三人ともつい昨日暴れたばかりで疲労もあるし、正式にパーティ申請をする時間もいるからだ。

 実際は、俺がスキルを見せたくなかったってのもあるが。

(まだは見せてよくて、誰は見せたくないか、決めれてねぇもんな)

 少なくとも、悪鬼はテレビで中継されているくらいだから国民皆が知ってるだろう。
 なんたって視聴率90%らしいからな。
 流石に現実味がねぇ……流石探索者。

(てか、何気に受け入れてるけど俺、国民皆に知られてるレベルの有名人になったんだよな……)

 “神童”を知らない人が居なかったように、その“神童”に勝った俺を知らない人は居なくなるだろう。

(莉緒とはいつ会えるかな……)

「あ、瑞希さん。パーティ申請を」

「あ、千縁さん! パーティ組むんですか!?」

 協会に入ると、受付の瑞希さんが真っ先に目に入ったので声をかける。
 以前の件でそこそこ有名になってたが、学園対抗祭で更に有名になっただけあって、瑞希さんが名前を呼んだ瞬間に視線が集まる。

 そして皆絶句した。

「意外ですね~千縁さんはソロで行くのかと! で、パーティのメンバーさんは……」

 そこで瑞希さんも、後ろを見て絶句する。

「え……“神童”!? “悪童”まで!?」

「……」

「あぁー……」

 その原因は当然、蓮と美穂だ。

「あっ、すみません! えっと、すぐパーティ申請用紙を取ってき……って協会長!?」

 瑞希さんが、慌てて用紙を取りに行こうとして……突如現れた協会長、海原真を見て飛び上がる。
 なんか……可哀想だな。

「おう! 来たか! まさかこんな豪華なメンバーで来るとは思ってなかったけどな! 別々の学園のトップが集まることなんてあるのか? ダンジョンに行ってたようだが」

 この人なんでいつも【隠形おんぎょう】使ってんだ?
 突然現れた協会長に、美穂と蓮ですら少しビクッとしている。
 恐らく美穂の方は何かがいることくらいは勘づいていたっぽいが。気配に鋭そうな狼になってたし、【月狼変化】の副効果だったりするんかね。

 因みに俺が気づけるのは、脳内で教えてくれる仲間のおかげだったりする。
 二人以上話すとめちゃくちゃ頭痛いから緊急時以外遠慮してもらっているが。

(協会長がいると頭が痛くなるな……敵意を持つ人だけ、とかで区別出来たら良かったんだけど、流石にそこまでは無理なんだよな)

 そう都合のいい話はないってことだ。

「とりあえず、先にパーティを」

「パーティ? まじか!? こちゃすげぇパーティだな! この紙に名前とパーティ名書けばいいからよ!」

 そんなに早く俺と手合わせしたいのか、協会長は適当に一枚の紙をポイっと捨てると、アイテムボックスから剣を一振り取り出して準備運動アップを始めた。

「「パーティ名?」」

「うーん……どうだろ」

 学生最強の3人パーティだし……

「……新星ニューノヴァ

「え?」「あ?」

 俺が決めあぐねていると、意外なところから声が上がる。

「美穂?」

「……」

 なんだ? パーティ名くらいはこだわりがあるってか?
 まあ、絶対俺が考えるより絶対良いからいいや。

「あ? 決めんのはちよじゃ……」

「よし、それで決定で!」

「ええ……まあ良いけどよ」

 蓮がまた文句を言いそうだったので、急いで書き込む。

「はい! 新星ニューノヴァですね! お三方にピッタリです!」

「おう、出来たか! じゃあ千縁は、昇格試験だ! ついてこい!」

「え、ちよって最近中級に上がったばっかじゃ……」

「……私たち、超級、上級。妥当」

 ちよの前ではルールすら関係ないってか……
 とか蓮が妄言を吐くのをバックに、俺は真さんについて行く。

 協会ギルド闘技場に来て、武器を構えた俺に、「おっそうだ」とまことさんが一言。

「そういえば、なんであの三ドリームメンバーでパーティを? 誰かの思惑か?」

 軽い雰囲気で言っているが、瞳の奥に潜む真剣な探りは隠せていない。
 何か上層部での問題があったのだろうか。

 ……どうでもいいが。

「まあ……たまたま? 適当ですね」

「えっ?」

 それを皮切りに、俺の特別昇格試験が始まった。


 因みに、パーティ名学生達ニュービーズとか黄金世代ゴールデンとかどう? って言ったらめちゃくちゃ引かれた。

 解せぬ。


~~~~~


「おお……これが上級探索者証赤色のカード!」

「おめでとう! 神童に勝った時点で当然だが、試験は文句なしの合格だ!」

 大阪探索者協会長真さんが笑顔でカードを渡してくれる。
 赤い身分証明証探索者カード。紛れもなく“上級探索者”を表すカードだ。

 まさか俺が人生でこのカードを手に入れるなんて、数ヶ月前では考えもしなかった。

「ちよって、なんか変なところで喜ぶよな」

「……ズレてる」

「はー!? 上級探索者カードだぞ! これで俺上級探索者だぜ!? 夢見たいだろ!」

「私に勝っといて何言ってるの……」

 パーティメンバーの二人がなぜかため息をつく。
 二人は中学生から持ってたからありがたさが分からないんだよ!

 いや、自分の実力を証明する物だからありがたみとか意味わからんけどさ。

「よし! 今日はお開きで──」

「させるか!!」

「うぇっ!?」

 俺は自然に解散の流れに持って行こうとして……蓮と美穂に掴まれた。

「……パーティだから、スキルや戦闘能力の把握は必須」

「ちよが大好きな“命に関わること”だぞ! 誤魔化させないからな!」

「いつ俺がそんな言葉好きって言ったよ!」

 恐らくさっきダンジョンで喧嘩していた二人を止めるために言った言葉だろうが……一回言っただけだろ!?

 しかし、否定できる理由が微塵もねぇ……

 俺は再び、適当に憧れだからとパーティを組んでしまったのを後悔した。

『クハハッいい様だなぁ、千縁?』

 悪鬼が揶揄うように笑う。

「くっそ……まあ、そうだ……な。さっさと済まそう」

 俺は諦めて、詰め寄ってくる二人の質問に答えていった。


~~~~~


「はぁ~! 飛んだ目にあったな全く!」

『……あれだけか?』

 俺は家に帰って開口一番、ため息をつきながらどさっと椅子に座り込んだ。
 硬い木の感触がする。
 一人暮らしで超貧乏だった俺のアパートに、ベッドもソファもないからな。

「いやーでもほんとに助かったよ、。俺結構顔に出ちゃうらしくてさ。A型だからか? 嘘つけないんだよな~」

『……まあ、ちよの頼みならいい』

『ああ? 相変わらず仲良いなぁ、お前ら!』

 そう、先ほど俺は仲間の一人を憑依させて対話をしていたのだ。
 外見に変化がない唯一の仲間で、相棒。

 門の中では結構特殊な出会い方をしたもんだからな。

「……てか、引っ越さね?」

 俺は改めて辺りを見回す。
 月家賃5万のボロアパート。親から未成年だし支援は出てるが、生活費ギリギリの一人暮らし。

(あの野郎……)

 親のことを考えると、ついはらわたが煮え繰り返りそうになるが堪える。
 そんなことより、蜘蛛の巣もあるわダンボール散乱してるわ適度にG出るわのクソアパートにこれ以上住んでられるかってんだ!

「うーん、今の俺ならもう少し遠くても学校には秒で着くし、危なきゃ“悪鬼”も公開してるから自由に使えるだろ」

 昔はこれ以上離れると朝学校に行くのが不可能なレベルだったのだが、今の身体能力ならもう少し範囲を広げてみれる。
 そうすれば前はなかった空き家も見つかるだろう。

「じゃあ明日は不動産屋か……ダンジョンで金も稼がなきゃな……一軒家って何円するんだ??」

 ……とりあえず、今の俺ならもう大丈夫だろう。
 俺は連絡先(一桁)の内の一つをおして、メッセージを送っておいた。




──母
18:31 もう仕送りいらないし関わらなくていい。連絡不必要
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