千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第27話 憐れみ掠する地獄の王

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 バイトが終わって、いつも通りにドアを開けようとして、鍵が掛かっていることに気がつく。


 ──あ…。
 そういや姉ちゃん、今日は彼氏の家にお泊りなんだっけ。


 すっかり忘れていた。
 今日は家に誰も居ないのか……。
 首の後ろを掻いた後、鞄の中から鍵を取り出してドアを開けると、明かりの消えた玄関が目に入った。
 いつも点いている電気がないってだけで、部屋が何だか寒々しい。
 会社関係で用事がない限りは、姉ちゃんが家に居るのが当たり前の生活だったもんな。

「たっだいまー」

 壁のスイッチを押して電気を点けた後に、テレビの電源も入れた。
 自分以外の声が聞こえるってだけで、ちょっとホッとする。
 テレビの音に耳を傾けながら、帰りがけに渡された惣菜の残りを冷蔵庫にしまいこんだ。
 明日の朝はこれを食べればいいかな。
 夕飯は昨日のうちに姉ちゃんがカレーを作ってくれていたので、それを温めて食べることにした。


 いつもは食卓でご飯を食べるけれど、ソファ前のローテーブルに胡座をかきながら、深皿によそったカレーをつつく。
 テレビではバラエティーの賑やかな笑い声が聞こえてくるのに、部屋の寒々しさが消えない。
 はぁ、と思わず溜息がこぼれた。

 自分から姉ちゃんに『これからは気兼ねなく、彼氏の家に泊まりに行って来い』なんてデカイ口を叩いたくせに、いざ居ないとなると一人の空間が寂しくて堪らねぇ。
 両親が家から出て行った時は、全然平気だったんだけどな。
 なのに姉ちゃんが家を留守にするってだけで、こんなにダメージがあるのかよ。


「……子供か俺は」


 自分でも呆れてしまう。
 思っていた以上に、俺って寂しがり屋だったんだな。
 高校生にもなってみっともないとは思うけど、一人の空間が耐えられない。
 一度でも泊まりに行けば、これからはちょくちょく姉ちゃんの外泊も増えていくだろうに、今からこんなんで大丈夫か俺……。
 気持ち的には「気兼ねなく泊まりに行ってこいよ」って姉ちゃんには笑って言ってやりたいのに、本心はずっと家に居てほしいって思ってしまう。
 想像以上の依存具合に、ちょっと自分でも引いた。


 (あーダメダメ! 俺が姉ちゃんの足を引っ張ってどうすんだよ! 邪魔したいわけじゃねーんだって!)


 首を左右に振って、寂しがる気持ちを振り払う。
 カレーをとりあえず胃袋に詰め込むと、気分を変えるためにも、シャワーを浴びる事にした。
 





  
 ◆◆◆




 どうせ一人なんだし良いだろと、風呂上がりにパンツ一枚という姿で、ソファに座りながら髪を乾かしてやった。
 姉ちゃんがいる時は、この姿で部屋をうろつくことは許されていない。
 うっかりやろうものなら、怒りの鉄槌が頭に飛んでくる。
 弟の半裸さえ許さないってどんだけだよと思うけど、彼氏相手にも同じことしてんのかな?
 いつもの癖で、反射的に殴ってなきゃいいけど。

 ──…まぁいいや。
 今日は姉ちゃんがいたら、絶対出来ないことをしてやると決めたのだ。
 思いっきり一人を満喫してやる!
 そしてそのための第一歩として、パンイチで過ごしてやると決めた!
 うん、快適快適。だから寂しくないない。


 適当に髪が乾いた所でドライヤーを仕舞うと、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して一口飲む。
 気持ちを切り替えたら、何だかスッキリした。
 姉ちゃんがいないのはまだ慣れねーけど、今日の俺には癒やしがあるし。
 へへっ。アレの存在を思い浮かべるだけで、顔が緩まってきた。
 バイトの疲れもきれいに吹っ飛ぶ。
 居間の電気を消して自分の部屋に入ると、悠から渡された紙袋を手にとった。

 
(お疲れ俺!そしてありがとう悠! 俺はこれに癒やされる!!)


 紙袋と一緒にベッドに飛び乗ると、ドキドキしながら圧縮袋の口を開けた。

 ふわりと漂ってくる悠の香り。


(はぁあ……)
 
 すっっげーいい匂い!!
 好き。ホント好き……っ。
 何でこんなに良い匂いなんだろ。
 なんかもう嗅ぐだけで胸がキュッとなってくる。 
 Ω性は呪いでしかないけど、β性になってこの匂いが分らなくなるのは嫌かも。


 しばらく中の香りを楽しむように、うっとりと目を閉じる。
 出すのがもったいなく感じるけど、思い切って袋の中身を取り出した。


「うゎ、すげー!」


 思わず感動に胸が震える。
 本当にリクエスト通りのものが入っていて、嬉しさと興奮が抑えきれねぇ!


(欲しいものがもらえるって……最高すぎ!!)





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