千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第22話 渦巻く思惑

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「そんな、訳が……」

「ほんとなのよ! 何が……何が起きてるの!?」
 
 先輩の言っていることは本当だったらしい。
 急いで闘技場へ向かってみると、電光掲示板には次の試合は第二学園対第三学園と書かれている。

「……っ!?」

 つまり、私たちの次の相手は……

「全く第二学園はなーにやってんだか。まさか私たち第一学園が第四学園の相手しなきゃなんないなんてね」

「……」

 第四学園。第一、第二学園が中級以上の探索者でひしめき合っている中、ほとんどの生徒が三年になっても下級探索者のままの落ちこぼれ高校だ。

(何かが……いる)

 私は、第四学園勝利の背景に、何か、とてつもないを感じ取った。
 まあ、“神童”の勘ってやつかな……

「さっきの試合、ビデオありますかね?」

「えっ!? 第四学園のビデオ!?」

 私の言葉に、先輩はとても驚いたように聞き直す。
 それもそのはず、最弱の第四学園など、ビデオで対策せずとも勝って当然の相手なのだから。

「“悪童”のやつを倒したと言うことは、第二学園以上と見る必要があります。それならば事前学習を少しでもしておいた方が良いかと」

「うーん、そうなんだけど、第四学園なんて今までも、今回も相手にしてこなかったから……一つもないと思うわ」

 まあ、そうか。第四学園が“悪童”に勝ったのは、おそらく単にとんでもなく強力な“個”が現れたのだろう。そして、それが突然となれば……

(私のような……)

 “神童”並びに“悪童”……黄金世代と呼ばれる現高一、私と同年代だと思われる。
 第二学園の“悪童”含めた全員を一人抜きすると言うのは、いくら私でもかなり疲れる。
 それを成し遂げたであろうも、今はそれなりに疲労しているだろう。第三第二の試合はきっと秒で終わる。じきに決勝は始まるだろう。

(完全に回復しきってないかもしれないけど……全力で挑む……!)

 私は、少し卑怯かもしれないが、絶対に油断しないよう気を引き締めた。

「あっ! そうだ! 本当に最後の数分だけでいいなら……」

「……!」

「ジャジャーン! なんか歓声に釣られて行ってみたらすごいことになっててさ。画質悪いけどスマホのなら……」

「見せてください!」

 先輩は、通り過ぎかけてから思い出したように言う。私は“決着”の瞬間を捉えた動画を見て、について考察を深めるのだった。

「宝晶千縁……!」


~~~~~


「まさか第一とやるとは思っても見なかったが……最低限のビデオはある。想定外だが、出場者はこれを見て予習しておいてくれ」

「……これは」

「……」

「なんだよ、こいつら……全員が上級探索者かよッ!?」

「これは……本当に……」

 学園長の渡したビデオに、他の四人は呆気に取られたように固まってしまった。第一学園三年には上級探索者が毎年五人ほどは出る。大会に出るのはそのメンバーだ。

「そして、“神童”だが……出る幕もなく試合が終わらされていて情報がない。……宝晶、“神童”をもし相手取るとなれば、お前の対応に全て任せることとなる……頼めるか?」

 学園長は不安そうに言う。
 だが、この言葉を吐いたと言うことは、俺が恐らく大将である“神童”のもとまでたどり着くと言うことを信じているからだ。
 
「任せてください。“神童”なんて大層な名前を超える自分の名前が思いつかなくて困ってるくらいですよ」

 俺はもう勝ちを確信しているかのようにそういうと、武器を持って堂々待機場所ベンチに向かうのだった。


~~~~~


「さあ! ついに学園対抗戦も決勝! 今年第一学園が迎え撃つのは、なんと仰天! 怒涛の勢いで“悪童”をも下した、第四学園だァァァァァァ!!」

 ついに始まった決勝。ベンチのみならず、会場の全員が緊迫に包まれていた。
 事態の程は、報道ヘリが急遽派遣されたことから推してしるべし。

「今年の新星!! “神童”率いる第一学園は突如現れた“革命児”率いる第四学園にその権威を見せつけるかッッ!? 第四学園はまさかの特大下克上を決められるのか!?」

 実況が興奮して宣伝する中、決勝の舞台ということで特別席に集められた学園長達は互いに火花を散らしていた。

「ふん! 全くつまらない!」

 そう言ったのは第二学園学園長、康二こうじ。ちなみに、四学園の中で唯一の男学園長だったりする。あと一番年長者だ。

「由良? まさかこんな新入生がいるなんて……第三学園はすっかり取り残されてしまいましたわ。なぜ教えてくれなかったのですか?」

「滝上、なぜこんな逸材が第四学園に? うちに志望がなかったということは恐らく、第四学園が第一希望だったのだろう?」

 第三学園学園長のみどりと、第一学園学園長の美波みなみは第四学園長である滝上由良に問いかける。
 声からは圧を感じられないが、目が据わっている。

「……宝晶は全学校に届けを出したはずだ。うちにきたのは最後だったぞ」

「何?」

「じゃあ彼は目立った特徴もなかったのに、この短期間で“悪童”を超えたって言うわけ? 彼も超級に近いのだが?」

「おい! うちの鬼塚にかって理由があってだな……」

「「敗北者あなたは黙ってて!!」」

「うっ」

 女性陣の中、一人佇む第二学園長の姿はなかなか、哀愁漂う姿に見えた。

「それで……スキルはなんだったのだ?」

「……入学時、開花してなかったはず」

「「「何!?」」」

 由良の言葉に、他学園長はバッと由良の方を向いた。
 由良は居心地悪そうに身を縮こめる。

「……そんな急に成長するなんて考えられない。どんなスキルが……?」

「彼は本当に学生? 外部から違法に引っ張ってきたんじゃないの?」

  第三、第一学園長が疑いの視線を向けた。

「バカ言うな! 宝晶は毎日、誰よりも努力していたんだぞ!」

 滝上由良は知っていた。時々探索者協会ギルドから聞いていたのだ。「お宅の宝晶千縁という生徒は毎日毎日長時間潜ってますけど大丈夫なんですか?」と、心配の電話を。休日は基本24時間以上滞在していたらしい。
 千縁が学長室にきた時にパッと名前を思い出せたのはそのせいだった。

「あら、失礼しちゃったわ」

「すまなかったね。でもやはり“神童”に逸材であるのは確かだ。是非うちに来てもらいたいところだな」

 第一学園長の言葉に、由良は拳を握りしめた。

「……半年以上前に入学した生徒を引き抜くつもりですか?」

「いやいや、何も引き抜くわけじゃない。ただ、彼が来たいと行った時には席を開けておかなければいけないと思ってね」

(引き抜きとなんら変わりないではないか……)

 まあでも、確かに千縁は第四学園には見合わない逸材だ。ここでもし第二学園、第一学園になって予算が増えたとしても、器具やアイテムはすぐに取り揃えられるものではない。彼のためには、第一学園に移籍するのが正解とも言えた。

「……由良?」

「……始まるぞ」

 翠の問いかけに、由良は反応しなかった。
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