千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第17話 圧倒

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「さあ! ついに第6試合! 第四学園は大将の登場だあああ! まずは第二学園三年、中級探索者の和田裕人わだひろとォォ!!」

「裕人ぉ!! これ以上の無様は許されんからなァァァ!!」

「ちっうるせぇなぁ……俺が負けるとでも思ってやがんのか?」

 第二学園のベンチから、第二学園学園長が怒号を挙げている。
 第二学園にとっては、最弱の第四学園なんて完封できなきゃいけない相手だと思っているのだろう。

(だが、それはちょっと舐めすぎだぜ?)

「続いて、後がない第四学園!! ここまでは大健闘を見せてくれたが、大将の実力は如何に──!? 大将、一年中級探索者、宝晶千縁ィィィぃ!!」

「ちよォォォ!! お前ならいけるぞォォ!!!」

「兄貴ィィィ!! 勝ってくださいねええ!!」

「一年!! 絶対に俺たちの仇を討ってくれぇぇ!!」

 俺の大将としての登板に、先輩たちは誰だあいつ、となる人も多かったようだが、その全員が喉が張り裂けんばかりの声援をあげる。

(ついに、ここまできたんだな……)

 大量の観客に、このステージ。いつか出場すると誓ったこの場に、来れたんだ。

「おいおい、一年って」

「第四学園の最高戦力って一年ばっかだよな。って言っても中級止まりだが」

「腐っても黄金世代って実感するよな。一年大将とか第一第二学園の真似っこにしか思えねぇぜ」

 だが、観客と第二学園ベンチはすでに第二学園の勝利を確信したように振る舞っている。
 それもそうか。ここまで奇跡的に二人を四人で落としたわけだが、“悪童”を含む後三人が待ち受けているんだからな。
 一人二人落とされようが負けるとは思ってないんだろう。

「さあ!! 第四学園は負けたら後がないぞ! 第六試合──開始ィ!!」

「まーた一年か。ったく一年ばっか脚光浴びてよ……馬鹿馬鹿しいんだよっ! 【綱身化】!」

 開始直後、和田が全身を鋼鉄に染め上げていく。
 その間、俺は鉄の剣を取り出してプラプラと手首を動かしておく。

「ただの鉄の剣でこの身に傷一つつけられると思うなよ!」

 なるほど、タンクタイプか。面倒だな。

「ただの剣じゃないぞ。ほら」

「何を──」

 ジュバンッ!!

「──うわアアアアア!?!?」

「「「「!!!!」」」」

 俺が剣を薙ぐと同時に、おおよそ金属が奏でる音じゃない音が和田の体から発せられる。

 そして、を見て、お互いのベンチの生徒たちが全員立ち上がった。

 一瞬にしてジャラジャラと伸びた俺の【綱身化】した和田の右腕を切り飛ばしたからだ。

「ばっばかな!!」

 第二学園学園長は思わず叫ぶ。
 和田の【綱身化】は、上級探索者ですら一撃で突破するのは厳しいというのに。それをこの一年は、いとも簡単に切り飛ばしたのだ。

「う、うわああああ!?」

「どうだ? なかなか貴重な体験だろ? その腕が切り飛ばされるのは」

 俺はニヤリ、と笑って今度は関節部が固定されてしなりをつけた蛇腹剣で床をバチンッ! と叩く。

「ヒッ!」

「まだやるか?」

 俺はそう言って、ゆっくりと和田へと歩みを進める。

「う、うぁ……」

 ゆっくりと近づいてくる俺の恐怖に、和田は叫び声を上げる。

「こっ降参だ!! 頼むっ! 降参だぁぁ!!!」

「もう終わりか……だとよ、審判」

「……はっ! で、では和田裕人選手の降参を確認! よって勝者は……第四学園、宝晶千縁!!」

 俺はその宣言を聞いて、剣を持つ手を掲げる。


 会場は静まり返っていた。


「あいつ……やっぱりな……!」

「この大恥晒しめが!! 何が降参だ!! ふざけるのも大概にしておけよ!?」

 第二学園ベンチにて。
 そこでは和田に対して、第二学園長の怒号が飛んでいた。

「がっ学園長!! あっあいつは、ダメです! あいつは……っ」

「ふん! もういい、黙れ! 帰ったらお前なんぞ速攻退学処分にしてくれるわ!!」

「そっそんな!!」

 第四学園相手に降伏したというのがよほど気に食わないのだろう。治療を受けて運ばれてすぐ、学園長は和田につかみかかる勢いで怒りを飛ばした。

 そんな中、冷静に分析する少女と、楽しげな笑みを浮かべる不良……“悪童”が一人。

「あれ……やっぱりあの人だったんだ……まさか、第四学園なんて……」

「ああ。これは驚きだな……俺が出る必要がありそうだ」

 第二学園の四番手副将はこの少女である。大将である悪童のこの言葉はつまり、少女が負けることを予想しているようだった。

「むぅ……私だって頑張るんだけど? 先輩なんだけど?」

「まぁ、でも……なあ?」

 悪童は少女の言葉に、劇場のことを思い出して言う。
 それが伝わったのか、少女は唇を結んだ。

「確かにあの威圧感……本当に足が震えちゃった。それに、超倍率身体強化できるっぽいし……」

 あの魔力値三万超えの悪童を蹴りで吹き飛ばし、骨にひびを入れるほどだ。恐らく例を見ないほどの高倍率身体強化だと思われる。もう一つ考えられる可能性としては【防御貫通】あたりだろうか?

「いずれにせよ……我慢しなくていい今、あいつは俺が潰す」

 “悪童”鬼塚は拳を握りしめて呟いた。

「そしてその後は……“神童”の野郎をぶっ潰してやる」

~~~~~

「なんという、なんということだ!! 宝晶選手が一撃にして和田選手の【綱身化】した腕を切り飛ばしたァァァ!! あれは蛇腹剣かぁ!? とても珍しい武器を使いこなしているぅぅ!!」

「うおおおおおおお!!!! ちよぉぉぉぉ!!」

「すげぇ! さすがは大将!!」

「この調子で勝ってくれぇぇぇぇ!!!」

 俺の瞬殺により、ベンチは一層盛り上がっている。これなら、もしかしたらができるのではないか、と期待しているのだ。

 五人目はって?
 “悪童”は、倒せる存在じゃない。
 次元が違う。それが共通認識なのだ。

(まあ……)

「宝晶……」

「言ったでしょう、学園長」

 だが俺は、当然の如く言う。

倒して、決勝だって」

 俺の言葉に、ベンチの歓声は最高潮に達した。

「さ、さあ!! 第七試合! 和田選手を瞬殺した宝晶選手に対するは、第二学園副将! 三年中級探索者、水月由梨みなづきゆりィィ!!」

「あれ、お姉さん?」

 俺は、出てきた人物が“悪童”鬼塚の横にいたお姉さんだと知る。

「ええ……その節はごめんなさいね」

「あーなるほど、副将だったのか」

 どうりで、それで鬼塚の隣にいたわけだ。“悪童”みたいなやつがタイプな鬼塚の彼女かと思ったわ。

「悪いけど、殺す気でいくから」

 お姉さんは、あの時の意趣返しの如く言う。

「やってみろ」

 それに対して、俺は指をクイっと曲げて答えた。

「それでは第七試合……開始ッ!!」
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