千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第15話 速攻試合

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「はああ! 【白骨鎖】!!」

 白城先輩はスキルで骨の鎖を作り出し、中距離から攻撃する。

「ちっ……そんな雑魚の攻撃なんて効かねーんだよ! 【連腕】!」

 第二学園の石橋は骨の鎖を強引に突破しながらスキルを発動する。
 すると、石橋の腕の動きに合わせて、一本づつ追加された腕が連動して攻撃を行う。
 あっという間に白城さんの鎖を破壊し、その身を吹き飛ばした。

「キャアア──ッッ!!」

「おっとー! 骨の鎖を意にも介さず突っ込んだー!! これは勝負あったかー!?」

「君、大丈夫か?」

「はい、まだやれます……」

 白城さんはボコボコになりながらも立ち上がる。
 ……が。

「【飛掌】」

「あぐっ!?」

 飛来した半透明の拳が、白城さんにトドメを刺した。

「スキル2個持ちダブル!?」

 誰かがそう言った。普通、スキルは一つだからだ。まぁ、派生スキルなら修行している内に増える……と言ってもまあ、学生で目覚めるのは確かに早いよな。
 グタッと倒れる白城さんに、傍の回復術師が治療を開始する。この時点で白城さんの敗北は決まった。

「くっ……」

「これは相性が悪かったな」

 学園長が、予想通りとはいえど、一瞬にしてやられたという結果に歯噛みする中、俺は冷静に分析を進める。

(まあ、第四学園と第二学園なんてこんなもんだよな)

「さあ、早くも第四学園は次鋒の登場だァァ! 三年、下級探索者の剛田マサルぅぅ!!」

「おお、今度は図体だけでけぇウスノロタイプが来たか?」

「……」

 石橋がテレビ中継だってのにめちゃくちゃ煽りまくる。だが、剛田さんは無言で盾を構えるだけだった。

「さあ、第二試合……開始!!」

「速攻でそんな盾、ぶっ壊してやる!! 【連腕】!」

「……」

 石橋は、速攻で盾を壊そうと突っ込み……吹き飛んだ。

「そんなもんで俺を止めれると──!?」

「……【反撃装甲リターン・フォー・ユー】」

 少し傾けられた盾が一瞬紫に輝き、魔力で作り出された両腕が吹き飛ばしたからだ。
 油断していて、全力で、それもノーガードノーアーマーという舐めプで衝突した石橋は、自らの【連腕】によって吹き飛び、あたりどころが悪く気絶した。

 気絶してしまっては、安否確認ができない。即敗退だ。

「おおおおっとお!? これは予想外!! 今度は第四学園が速攻で第二学園を瞬殺したァァァァ!? 第二試合、勝者は第四学園だァァァ!!」

「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」

「よくやったぞっ剛田!! お前の開花したスキルは最高だ!! お前なら勝てる!!」

 なるほど……この人も開花が遅かったから第四学園にいるってわけか。こんな強スキルが入学時開花していたら、少なくとも第三学園には入れたはずだ。
 他の学園ならスキルが開花してなきゃ入れる確率は絶望的だもんな。

「……」

「全く何を油断しているんだ! 最小限の防御すら行わないなんて……飛んだ第二学園の恥晒しめが!」

「ご安心を学園長。俺が残り全てを沈めてきますんで」

「ちっ……よし、義道、いけ!」

「さあ! 第三試合、剛田マサルと対峙するのは第二学園次鋒、中級探索者本田義道ほんだよしみちィィィィ!!」

「はぁ……これだから馬鹿は……ちょっとは考えろってんだ」

「……」

 第二学園の次鋒は、眼鏡をかけた高身長男子だった。
 恐らく石橋に向けられた言葉に、剛田さんはグッと強く盾を構えた。

「それでは第三試合、開始ッッ!!」


「ったく……先に言うが、俺をあのバカと一緒にしない方がいいぞ」

「……」

「ったくどいつもこいつも……」

 本田は持っていた大剣を半分に分離すると、双剣で盾のガードを破りにかかる。

「……っ」

「ほら、どうした? きついなら盾を二つに分けてみたらどうだ? 可変式にしとくと後々楽だからおすすめする。俺は元々盾使いだったしな」

「……」

 本田の猛攻は、着々と剛田さんの体力と守りを削っていっている。

「へぇ……うまいな。盾の対処が完璧だ。魔力も使ってないから反射もできなさげだし、体力は圧倒的に相手の方が多いだろう」

 あながち、本田が盾使いを経験していると言うのは嘘ではなさそうだ。

「剛田っ! 焦らなくていい! ゆっくり機会を伺って、体力を消耗させるんだ!」

「剛田ー!! がんばれぇぇぇぇ!!」

 こっち陣営は剛田への応援で埋まっていた。だが、現実は甘くない。

「ふぅ……お前、センスあるな。すごく昔の俺に似ている……だが、これで終わりだ!」

「……!?」

 本田は、ここぞというところで一度も見せてこなかった切り上げで盾を持つ手を跳ね上げる。
 盾の重さもあって、剛田さんはひっくり返るようにして転び、その手から盾が地に落ちる。

 そして、一瞬にして変形が完了した大剣は、剛田さんの脇腹を串刺しにした。

「っグゥ……!!」

「おお、喋れたんだな」

 そこで、審判が止めに入って試合が終了する。剛田さんは顔色も紫になっていて、半ば意識を失いかけているからだ。

「その場所の痛みを忘れるな。盾は、そこを守るように持つんだよ」

「……たすか、る」

 剛田さんの返事に少し驚いたようにした本田だが、すぐに肩をすくめて最初の位置に戻って行った。

「第三試合の勝者は、第二学園、本田義道ィィィィ! 10分に及ぶいい試合だったぜぇ!! 俺たちをもっともっと熱くしてくれよォ!!」

「「「うおおおおおおお!!」」」

「お前は……相手にアドバイスしてどうするんだ!」

「まあまあ……国全体で見れば優秀な探索者が増えるのはいいことじゃないですか。試合にも勝った上でですし」

「……ちっ」

 今度は第二学園側が湧き上がる。先鋒が一瞬でやられて、不安になっていたのが見えていたが、今ので安心したようだな。

「剛田……よく頑張った。帰ったら剛田の祝勝会だからな」

「……はい、先生」

 ベンチで目を覚ました剛田さんを尻目に、加藤は立ち上がる。

「……ちよ」

「えっ俺!?」

 俺は思わぬ加藤からの呼びかけに素手びっくりして素っ頓狂な声をあげた。

「前は悪かった」

「あ、ああ、別にいーよ、お前がなんか言っても俺の心情は変わんねーし」

「……」

 なんだ? 何が言いたいんだ? と思ったが束の間、加藤は俺に宣言した。

「……必ず勝ってくる。いつか、お前に追いつくからな。首を洗って待ってろよ」

「……」

 少し驚いたが、こいつはこいつなりに前の自分とけじめをつけようってわけか。
 ……許すわけじゃないが、今度教えを乞うってんなら教えてやってもいいかね。

「さあ! ついに第四試合が始まるぞ!!」

「「「加藤くん、頑張って……!!」」」

 我ながら甘いかとも思ったが、別に一人増えたって特別苦労するわけじゃないし、俺は俺の思うがままにやればいいだろう。

 俺は、誰の影響も受けない、流されない。
 俺の道は、誰にも邪魔させない。


「今の俺には、“力”があるからな」
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