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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編
第14話 学園対抗祭開会
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そして、ついに10月1日。
「さあ! 今年もついにこの季節が来たァァァ!! 大阪四校対抗学園祭の始まりだァァァァァァ!!!!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
俺たちが会場に入場すると、会場が歓声に包まれる。
観客席は、一席の空きもなく満席だった。
「流石だな……」
それがこの交流戦の人気を表していた。俺も、去年まではテレビで見る側だったのだが、入学半年ほどで出場出来るなんて思っても見なかった。しかも、大将で。
「……あ!? お前……!」
「ん?」
俺たちが整列していたとき、すれ違った一人の生徒が俺を見て驚きの声をあげた。
「……あ! 劇場で暴れてた奴!」
「テメェ、忘れてやがったな!?」
そう、そいつはあの時劇場で出会ったあの鬼みたいな青年だった。
その制服は……第二学園だったのか!?
「ねぇ、もう始まるんだから問題起こさないでよ!」
「お、おうわかったわかった……?」
その青年は、同じ列の女の子……あの時の子だな。に諭されて列に戻っていく……最中、怪訝そうに呟いた。
「第一学園の隠し球かなんかじゃなかったのか……?」
第二学園の奴の攻撃を受け止めたってわけだったのか……そりゃ驚くわな。
でも第一学園の隠し球ってのは過大評価しすぎじゃ……
「ねぇ、ちより君、今の人……知り合いなの!?」
そう考えていると、先輩の白城春さんが驚いたように聞いてくる。
「え、いや知り合いってほどじゃないですけど……以前一回突っかかられたことがあって……」
「えぇ!? それ無事だったの!?」
「え、えぇ? そりゃ別に……」
俺は、過剰心配する白城さんに大丈夫だと伝えて列に戻ろうとして……後ろから聞こえた言葉に足を止めた。
「嘘……あの“悪童”が何も?」
「“悪童”……!?」
“悪童”といえば、今年の対抗戦のメインと言われる“神童”と対をなす、根っからのワル(噂によれば)じゃねぇか!
「なるほど、通りであんな性格だったわけだ……」
「えーでは! これより! 大阪を代表する第一学園から第四学園の学園対抗祭を開催する!!」
そうこうしているうちに、第一学園の学園長、柏田美波が開催宣言を行い、それに合わせて第二学園から第四学園までの学園長も儀礼剣を交差させて掲げる。
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
観客と選手は同時に湧き上がった。
「さあ! 探索者なら御託はいらないな!? 第一種目はダンジョン探索戦! 選手は用意を!」
実況がそういうと、俺たち対抗戦組は控え室へと歩を進める。
その途中、一人の綺麗な金髪をした少女を見かけた。
(あれ……?)
振り返るも、彼女はすでに控え室へと入ってしまっていた。俺は、彼女が消えた方向を見つめる。そこには、第一学園控え室と書かれていた。
「あれは……」
間違いない。
ずっと憧れてきた存在。
“神童”──神崎美穂だ。
~~~~~
それから程なくして。
前座とも言えるダンジョン探索戦が終わった。
「お前たちは本当によくやった! 本当に頑張った!!」
「でっでも……勝てませんでしたぁ……うぅっ」
「兄貴すみません! 兄貴に鍛えてもらっていたのにこのざまで……」
「くそっ……」
先輩たち、三郎に竜二、そして悠大がダンジョン探索戦から帰ってきた。
結論から言えば、ダンジョン探索戦は最下位で終わった。
と言っても、3位の第三学園と僅差で、大盛り上がりの試合だった。
それを今学園長が慰めているところだ。
「こんなザマってなんだよ。大健闘じゃねぇか。お前らはあと2年もあるし、すぐ結果が出なかったからって諦める必要はないぞ」
「「兄貴……」」
「ちよ……悪い。あんなベルトもらったのに、まだ俺の力不足で……」
索敵役だった悠大が活躍したからこそのダンジョン探索戦だったが、悠大は後半魔力切れで【探索】を使えなかったことを言ってるんだろう。
「ふむ……」
確かにずっと【探索】が使えていたらうちは3位になれたかもしれないな。わずかな可能性だが。
「そんなこと言うなって。最初に比べたら範囲も持続時間も4倍以上になってんじゃねぇか。大活躍だったぜ悠大」
「そうっすよ! 岩田の兄貴がいなきゃあそこで死んでたかもしれないんですから!」
「みんな……悪いな、ありがとう」
「やはり私より宝晶が直接励ましてやった方が皆元気が出るな。宝晶……コンディションは?」
今から行われる競技は大逆転を狙える大山場、『学園対抗戦』だ。学園長は大将の俺に、今の状態を聞いてくる。
「ま、いつも通り快調ですかね」
「はい、絶好調です」
「私も全然いけるよ~」
「……元気」
「ああ、大丈夫だ」
俺、花澤先輩、白城先輩、剛田先輩、そして加藤。皆が好調だと伝える。
「よし……それじゃあ、初戦から重たい第二学園戦だが……健闘を祈る」
「いえ、それじゃダメですよ学園長」
俺は学園長に宣言した。
「健闘じゃなくて……俺たちは今日必ず勝って第一学園になる、そうでしょう?」
「「「っ!?」」」
俺の言葉に、皆が一瞬驚くが、すぐに気合を入れる。
「そう、だな! 明日には俺たちが第一学園かもな!」
「そうだね! “神童”なんてやっつけちゃおうよ!」
「……」
「ああ……絶対……勝つぞ……」
俺たちの言葉に、学園長はフッと笑う。
「は、はは……そうだな。明日からは私たちが第一学園だ!」
「「「「おおー!!!」」」」
クラスメイトたちは号令をあげ、各々の場所に向かう。
「さて! ついに始まった、第二学園対第四学園! 学園対抗戦の幕開けだアアアアア!!」
「「「「おおおおお!!」」」」
俺が控えのベンチに座ると、向かい側に“悪童”こと鬼塚が見える。
「……」
「さぁ、まずは先鋒の紹介だァァ!! 第四学園、下級探索者の白城春ぅぅ!」
実況の声に合わせて観客席が沸き立つ。
「2年なんて……舐めてやがるな」
「それに対して第二学園先鋒は三年中級探索者の石橋翼だアアアアア!!」
二人が円形のスタジアムに上がり、対峙する。
審判は傍の治癒術師を見て頷くと、腕を振り下ろした。
「それでは学園対抗戦、第一試合──開始ィィィィ!!」
ついに、学園対抗戦が始まった。
「さあ! 今年もついにこの季節が来たァァァ!! 大阪四校対抗学園祭の始まりだァァァァァァ!!!!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
俺たちが会場に入場すると、会場が歓声に包まれる。
観客席は、一席の空きもなく満席だった。
「流石だな……」
それがこの交流戦の人気を表していた。俺も、去年まではテレビで見る側だったのだが、入学半年ほどで出場出来るなんて思っても見なかった。しかも、大将で。
「……あ!? お前……!」
「ん?」
俺たちが整列していたとき、すれ違った一人の生徒が俺を見て驚きの声をあげた。
「……あ! 劇場で暴れてた奴!」
「テメェ、忘れてやがったな!?」
そう、そいつはあの時劇場で出会ったあの鬼みたいな青年だった。
その制服は……第二学園だったのか!?
「ねぇ、もう始まるんだから問題起こさないでよ!」
「お、おうわかったわかった……?」
その青年は、同じ列の女の子……あの時の子だな。に諭されて列に戻っていく……最中、怪訝そうに呟いた。
「第一学園の隠し球かなんかじゃなかったのか……?」
第二学園の奴の攻撃を受け止めたってわけだったのか……そりゃ驚くわな。
でも第一学園の隠し球ってのは過大評価しすぎじゃ……
「ねぇ、ちより君、今の人……知り合いなの!?」
そう考えていると、先輩の白城春さんが驚いたように聞いてくる。
「え、いや知り合いってほどじゃないですけど……以前一回突っかかられたことがあって……」
「えぇ!? それ無事だったの!?」
「え、えぇ? そりゃ別に……」
俺は、過剰心配する白城さんに大丈夫だと伝えて列に戻ろうとして……後ろから聞こえた言葉に足を止めた。
「嘘……あの“悪童”が何も?」
「“悪童”……!?」
“悪童”といえば、今年の対抗戦のメインと言われる“神童”と対をなす、根っからのワル(噂によれば)じゃねぇか!
「なるほど、通りであんな性格だったわけだ……」
「えーでは! これより! 大阪を代表する第一学園から第四学園の学園対抗祭を開催する!!」
そうこうしているうちに、第一学園の学園長、柏田美波が開催宣言を行い、それに合わせて第二学園から第四学園までの学園長も儀礼剣を交差させて掲げる。
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
観客と選手は同時に湧き上がった。
「さあ! 探索者なら御託はいらないな!? 第一種目はダンジョン探索戦! 選手は用意を!」
実況がそういうと、俺たち対抗戦組は控え室へと歩を進める。
その途中、一人の綺麗な金髪をした少女を見かけた。
(あれ……?)
振り返るも、彼女はすでに控え室へと入ってしまっていた。俺は、彼女が消えた方向を見つめる。そこには、第一学園控え室と書かれていた。
「あれは……」
間違いない。
ずっと憧れてきた存在。
“神童”──神崎美穂だ。
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それから程なくして。
前座とも言えるダンジョン探索戦が終わった。
「お前たちは本当によくやった! 本当に頑張った!!」
「でっでも……勝てませんでしたぁ……うぅっ」
「兄貴すみません! 兄貴に鍛えてもらっていたのにこのざまで……」
「くそっ……」
先輩たち、三郎に竜二、そして悠大がダンジョン探索戦から帰ってきた。
結論から言えば、ダンジョン探索戦は最下位で終わった。
と言っても、3位の第三学園と僅差で、大盛り上がりの試合だった。
それを今学園長が慰めているところだ。
「こんなザマってなんだよ。大健闘じゃねぇか。お前らはあと2年もあるし、すぐ結果が出なかったからって諦める必要はないぞ」
「「兄貴……」」
「ちよ……悪い。あんなベルトもらったのに、まだ俺の力不足で……」
索敵役だった悠大が活躍したからこそのダンジョン探索戦だったが、悠大は後半魔力切れで【探索】を使えなかったことを言ってるんだろう。
「ふむ……」
確かにずっと【探索】が使えていたらうちは3位になれたかもしれないな。わずかな可能性だが。
「そんなこと言うなって。最初に比べたら範囲も持続時間も4倍以上になってんじゃねぇか。大活躍だったぜ悠大」
「そうっすよ! 岩田の兄貴がいなきゃあそこで死んでたかもしれないんですから!」
「みんな……悪いな、ありがとう」
「やはり私より宝晶が直接励ましてやった方が皆元気が出るな。宝晶……コンディションは?」
今から行われる競技は大逆転を狙える大山場、『学園対抗戦』だ。学園長は大将の俺に、今の状態を聞いてくる。
「ま、いつも通り快調ですかね」
「はい、絶好調です」
「私も全然いけるよ~」
「……元気」
「ああ、大丈夫だ」
俺、花澤先輩、白城先輩、剛田先輩、そして加藤。皆が好調だと伝える。
「よし……それじゃあ、初戦から重たい第二学園戦だが……健闘を祈る」
「いえ、それじゃダメですよ学園長」
俺は学園長に宣言した。
「健闘じゃなくて……俺たちは今日必ず勝って第一学園になる、そうでしょう?」
「「「っ!?」」」
俺の言葉に、皆が一瞬驚くが、すぐに気合を入れる。
「そう、だな! 明日には俺たちが第一学園かもな!」
「そうだね! “神童”なんてやっつけちゃおうよ!」
「……」
「ああ……絶対……勝つぞ……」
俺たちの言葉に、学園長はフッと笑う。
「は、はは……そうだな。明日からは私たちが第一学園だ!」
「「「「おおー!!!」」」」
クラスメイトたちは号令をあげ、各々の場所に向かう。
「さて! ついに始まった、第二学園対第四学園! 学園対抗戦の幕開けだアアアアア!!」
「「「「おおおおお!!」」」」
俺が控えのベンチに座ると、向かい側に“悪童”こと鬼塚が見える。
「……」
「さぁ、まずは先鋒の紹介だァァ!! 第四学園、下級探索者の白城春ぅぅ!」
実況の声に合わせて観客席が沸き立つ。
「2年なんて……舐めてやがるな」
「それに対して第二学園先鋒は三年中級探索者の石橋翼だアアアアア!!」
二人が円形のスタジアムに上がり、対峙する。
審判は傍の治癒術師を見て頷くと、腕を振り下ろした。
「それでは学園対抗戦、第一試合──開始ィィィィ!!」
ついに、学園対抗戦が始まった。
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