千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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一章 目覚めと出会い編

第7話 新たな一歩

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「いっ、いつの間に!」

 ぶほっ……あんまりにもテンプレみたいなこと言うから笑いを堪えるのが必死だわ。

「テメェはもう少し、周りの被害を考えろ」

「ぶべっ──」

 俺は、加藤の頭を地に叩きつけると両手で埃を払う。

「「「「……」」」」

 教室中が静まった。
 加藤が負けた。それも、成績最下位の俺に。

 絶対的強者として好き勝手していた加藤を軽くあしらった俺は、騒ぎに駆けつけた教師に三馬鹿が悪いことを伝えて、何事もなかったように席につく。

「ちよ、お前……」

 悠大が信じられないといった風に俺をみて目を見開いている。

「俺、強くなったて、言ったろ?」

 そんな悠大に対して俺は、ハハ、と苦笑いして答えた。

 数日後、この学校で唯一中級探索者の称号を持っていた加藤がなすすべもなく俺にやられたことは、学校中に広まっていた。
 第四探索者学校ここは弱小も弱小の、「他校に比べたら」小さなボロ高校だ。
 噂が広まるのは一瞬だった。

 そのうち俺を取り巻く環境が風変わりする。

「ちよ君、お弁当食べようよー!」

「ちよ君、私おにぎり作ってきたんだけど……」

「ちよ君って可愛い名前だよね~」

「ちよ君」

「ちょっと黙れ!! 押しかけてくんな帰れ!」

 あの後から、クラスの女子たちが群がってくるのだ。
 優秀な探索者の収入には、限りがない。今のうちに加藤よりも強いと思われる俺に取り入っておこうと言うことだろう。

 つい数日前まで加藤に同じことをしていたと言うのに……なんていうか、図太い奴らだ。ついには隣のクラスのやつまで来やがった。

「なんだ、ちよ。そんなこといいながら嬉しそうじゃねぇかヨォ」

「そりゃあねぇ!」

 だって魂胆が見えてたとしても、女子に持ち上げられるなんて、1ヶ月前まで只のキモ男だった俺が経験あるわけねぇだろ!
 あぁ、そういえばだが、魔力を吸えば吸うほど、ほんの少しだが顔が良くなる効果があるらしい。俺は門の中で大量の魔力を吸っている。だから、自分でも誰!? って思うほど……には程遠いが、中の上程度にはイメチェンできた自信があるんだが。それも関係あるかも。いや、あってほしい。ほら、普段キモい奴がイメチェンしたら……ってやつ。ないか。

 まあなんだ、同年代から褒められるとなんか大人の女性に褒められるのとは違うものがあるな。

「でも、流石に邪魔だ……加藤もずっと来ないしなすりつけれん」

 俺は悠大とご飯を食べながらそう独りごちる。
 俺にボコボコにされてから、加藤はずっと学校に来ていない。もう1週間になる。はよ立ち直れよな……

 ちなみに、取り巻きABこと三郎と竜二は普通に学校に来ている。
 今までは加藤という盾があったからこそ許されていた彼らも、今では後ろ指を刺される立場だ。

 ただ、この二人は心を一新していて、それも、後ろ指を刺されながらも俺に教えを乞うほどだ。
 周りから見ればどの面下げてんだ、って感じだが、俺からしてみればこういう奴らが強くなると思うのよ。
 俺も門の中の化け物に挑み、ボロボロにされ、教えを乞った側だからな。
 自分と重ねてしまうと、どうしても突っぱねることができなかった。

「兄貴! 昼からの模擬戦、相手してくださいませんか!」
「兄貴! 俺からもお願いします!!」

 ……噂をすればなんとやら。

「あー、今日5、6限は悠大と特訓するって約束してるんだ」

「なるほど! 岩田の兄貴っすか! なら俺たちはお時間の空いている時でいいので!!」

「え、俺もそんなずっと訓練するわけじゃないからさ、途中から変わるよ。ちよ、いいか?」

「ん、お前が言うならいいが……」

 こいつらは今や俺と悠大のことを兄貴と言って慕っていた。
 俺の人生の夢の一つ、兄貴と言われて慕われるが叶うとは思ってなかったし、学園対抗戦に向けてこいつらでも鍛え上げようかな、と考えてるくらいには、こいつらのことを許してしまっている自分がいる。

 こいつらには甘いって? 自分を“兄貴”って言ってくれる人だよ? 男なら甘くしちゃうのは仕方なくない?

 ま、特訓で甘くする気は一切ないけどな!!
 あと、加藤にもな。



 さて、うちの学校は、というよりどこも大差ないと思うが、探索者学校というのは基礎教育2時間に模擬演習……つまり戦闘訓練だな……が4時間で1日を構成している。朝2限動いて2限勉強、昼から2限自主特訓って感じ。
 ちなみに勉強ってのもダンジョンやダンジョンで発見されたアイテムの勉強、スキルの勉強といったものばかりだ。

 今日も朝から活気よく皆特訓をしている。

「今日は一段と気合入ってんな」

 まあ、それもそうか。だってそろそろ……

「はい、注目~」

 一限が終わってすぐ、担任の鈴木が手をパンパンと鳴らしながら号令をかける。
 このタイミングということは、十中八九だろう。

「来月頭、4校合同の交流大会が開かれる!」

 来たか! 大阪四校対抗学園祭!
 毎年10月初めの土曜日に行われる交流戦で、内容はこの第四探索者高校を含む4校で勝ち抜き勝負を行う、といったものだ。
 トーナメント制なので実際に戦うのは2校だけなのだが、外部からの観客も多く、決勝の大将戦なんかはテレビ中継で視聴率50%弱を達成するほどの盛り上がりだ。

 そして、俺が最も狙っていた行事の一つである。

(派手に優勝すれば……きっとこの学校も俺も、かなり有名になるだろう)

 心躍る接戦に、生み出されるドラマ。
 その両者が国民を沸き立たせる。

 俺が探索者学校の名門が揃いしここ、大阪に来たのも、この四校対抗学園祭で活躍することを夢見てきたからだ。

 ……まぁ、当初の予定なら3年までに出るのを目指してたんだが。
 本当に実現するとは、思ってもみなかった。
 え? 選抜確定してるみたいな言い様だって? そりゃぁこの学校でいちばん強い加藤を倒してんだから、絶対呼ばれるっしょ。呼ばれる……よね?

 まぁいい、この力で四校最弱と言われたこの第四高校を優勝させてやる……!

 俺は、だからな。

「そして、その出場者が昨日の会議で決まった! なんと今年はこのクラスからも出場者がいるぞ!」

 大量に……

 鈴木がポツリと言ったのを、俺は聞き逃さなかった。

「まず、田中三郎! 前へ!」

「おっ俺!?」

「わぁ! 田中くん、頑張って! 最近毎朝早くから森山くんと特訓してるの、皆知ってるから!」

「えっ!?」

 この一週間で多少の好感度と信頼は取り戻したらしいな。
 毎朝早くに校庭に来て、竜二……苗字森山っていうのか? と訓練をする姿が他のクラスメートに好かれたらしい。
 曲がりなりにも、この学校の生徒は探索者だからな。訓練する姿に惹かれるのは、俺も同じだ。

「その森山も選抜されている! 前へ!」

「うおっ! まじか! やったぜ……遂に俺があの4校交流戦に……!」

 次いで竜二も呼ばれ、喜びを隠しきれず三郎とハイタッチをしている。

「そして、加藤俊介! 中級探索者のお前に、学校うちは期待してるぞ!」

「……ッ、はい」

 お? 久々に来てたらしいな。まぁ、自分が呼ばれるであろうメンバー発表を欠席とかしないわな普通。

「そして最後……宝晶千縁! 前へ」

 鈴木は俺の方をチラッと見ると、ブルッ、とした……ように見えた。

 あの後学園長から話を聞いたのか?
 魔石が本物って分かってくれたなら、俺が上級探索者レベルの力を持っていることも分かるはずだ。だからどう扱うか手をこまねいてるのか?
 猛獣じゃあるまいし……

「はい」

「1年2組からはこの4人が出場する! この学校が始まって以来、1年から4人も出るのは初めてだ! 代表となった彼らに拍手!」

「うおおおおお! 千縁達なら今年こそ勝てるって信じてるぞ!」

「私たちの分まで頑張って勝ってきてね!」

「来年はその座は俺のもんだ! 首洗って待っとけ!!」

 ワーワー、と俺たちに拍手が送られる。
 加藤を除いて、俺たちの表情が無意識に緩んでいく。

 あと、3人目の君。来年もこの座は俺のもんよ。譲らんぞ??

 俺は残りの時間をどのように活用するかを考えながら、悠大達との特訓へ戻った。



    
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