千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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一章 目覚めと出会い編

第5話 学園長の戦慄

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「いえ、学園長、150kgは、舐めすぎですよ」

「……!?」

「俺、300kg出せるんで!」

「わ、わかった。すまない。復学を許可する。明日からまた来なさい」

「……! 復学させてくださってありがとうございました!!!!」

 失礼しました!

 千縁……通称ちよはそう言って帰って行った。

~~~~~

 私は大阪第4探索者高校の学園長、滝上由良たきがみゆら。10年前、超級探索者となり開校権限を手に入れてから、他校に落とされた子も取って育ててきた。

 あの子は確か、うちでも最下位だった子だ。
 魔力値0.00000302、だっけか? とにかくスライムしか倒せないとわかるような魔力値だった子だ。実際、あと一人志望者がいたら落としていただろう。

 なのに……

「グリフォン、中級探索者が狩る、躓きやすい敵……」

 空を飛ぶグリフォンに、中級探索者になったからと言って返り討ちにされるパーティは後を立たない。
 そして……

「レッサードラゴン……上級探索者が10人ほどのパーティを組んで倒す魔物の魔石……」

 最初にグリフォンの魔石を持ってきた時には、臓器でも売って違法パワーレベリングでもしたかと思っていた。
 パワーレベリングは全世界で違法となっている。最も、魔力値はダメージを多く与えたものが多くもらえるのでとどめだけ刺しても大した魔力値の増加は見込めないが。

 ただ、レッサードラゴンの魔石をほいとだしたのを見て、私は何年振りかの戦慄を覚えた。
 レッサーと言っても、れっきとした竜だ。

 こんなものをパワーレベリング対象にして倒すことなどできないだろう。そもそも臓器なんかじゃ圧倒的に足らない対価が必要だろう。

 てことは知り合いに超級以上の探索者が?
 でも、超級探索者は何かと目立つ。動向もほぼ監視状態だし、そんな交流をしていたら噂になってるはずだ。
 1ヶ月の間噂にもならずに倒すことなどできない。

 私は彼を復学させる……いや、復学してもらうことを決めた。
 どう言うわけか下手に出まくっている彼を見て、パワーレベリングしたから弱気なのか、いやしかし……ということだけが頭に浮かんでいた。
 しかし、そうしているうちに何やらメチャクチャなことを言い出したので慌てて、感じ取られないように止める。
 そして、彼を納得させるためと、彼の実力を知るために、握力測定器と称してダンジョン鉄の塊を形だけ変えたものを渡してみた。

 これは、ただの塊だから可動部はなく、引っ張れるはずもない。これができなければ、無難にカカシとシャドーをやるのを見るという入試と同じことをやろうと思っていた。

「ん……がっ学園長!? あいつは……!?」

 鈴木先生が目を覚ました。盗んだんじゃないかという鈴木先生に私は、起きたことを正直に話した。
 信じられないと言った感じだが、彼も私と同じくパワーレベリングにしては無理があると言う結論に至った。

「で……ダンジョン鉄の塊を渡したんですか?」

「そうよ」

「で、んですか?」

 私は、床に落ちているを指差した。

「──ん? ん?? んぁ」

「気をしっかりしなさい!」

 また倒れられても面倒なので頭を叩いて鈴木先生を現世に復帰させる。

「……ハッ! こ、これって……」

「ええ。彼はこともなげにわ」

 そう、彼……ちよは、握力測定器の形にしたダンジョン鉄の塊を握り潰したのだ。ダンジョン鉄を片手で砕こうと思えば、握力800はいるだろう。

「そして彼、なんと言ったと思う?」

 私は震えそうになる体をなんとか落ち着かせて、告げた。

「── 舐めすぎですよ」

「はぁ!?!?」

 彼はこれが150kgの物だと思っていたようだ。握力300kgと言っていたのには、何か理由があると思うのだが……実際には800kgの測定器を片手で破壊できると言うわけだ。
 それもあんな、こともなげに。

 彼はきっと、この学校のになりうるだろう。

 私は、なぜあんなが誕生したのか、彼の経歴を全て探ってみることに決めた。



────宝晶 千縁 魔力値……不明。


~~~~~


「はぁ……なんとかなったか。学園長、めちゃ若かったな。30過ぎって聞いてたけど全然見えんわ。」

 学園長、滝上由良が戦慄を覚えている間、ちよこと俺はそんな呑気なことを言っていた。

「しっかし、今の俺がどれだけ強くなったか測るいい方法ないかなぁ」

 俺は一応、下級探索者だ。下級ダンジョンになら入ることができる。
 だが今更下級ダンジョンに入ったとこでなんだと言うのだろうか。
 いつも入っていたゴブスラダンジョン……ゴブリン系統とスライム系統しか確認されてないダンジョンに行こうとも、瞬殺して終わりだろう。
 ……だよな? ダンジョンのモンスターにも俺の力って通じるよな?

「ゴブスラダンジョン行っとこうかな?」

 ゴブスラダンジョンすら懐かしい。……ん? なんか忘れてる気が……あ!!

「やべっ! 夏休み悠大とダンジョン行くって約束したじゃん!」

 謝りに行かないと……どうやって事情を説明する? 家がダンジョンになって閉じ込められたとか?

 ってか俺、悠大の家知らんな。とりあえずはL○NEで連絡しとくか。

「夏休み、今までダンジョンに閉じ込められてた。っと」

 俺が送った瞬間既読がついた。

『お前っ! 何してんだよ!! どこのだよ!』

「うわっ! こっわ!!」

 俺は誤魔化しながら説明する。

『家がダンジョンになって、巻き込まれたんだよ。更に閉じ込められたと来た。』
『はあ!?!? 信じられるか!!』

 ですよねー。俺でも信じられんわ。

『マジなんだよな、それが。迷宮型ダンジョンだったよ。崩落したのはリビングだけだったんだがな』
『はー!? てかお前アパートじゃね? どう説明すんの?』
『クリアしたから、元に戻ったよ。』
『クリアしたぁ!?!? お前が!?』

 画面越しに絶叫が聞こえてきそうだ。

『彷徨ってたら出口が見つかったんだよ。モンスターにバレないように移動すんの大変だったんだぞ。テーブルに缶詰置いてなかったら死んでたわ』
『いや出来すぎだろ! それだけで1ヶ月!?』
『まあ宝箱も生かしてな。落ちた時は俺の運ってクソだと思ったが、入ってみると豪運だったみたいだ。魔力値もかなり高くなったと思うぞ。』
『マジかよ……』
『……約束守れなくて悪い。俺にできることならいつでも、なんでも言ってくれ。絶対に命をかけて遂行するよ』
『遂行……? とにかく、せっかく助かったのにすぐ命かけるな!! はぁ……わかったよ、俺の方は大丈夫だから。また明日学校でな』
『ああ……ありがとう』

 悠大……本当にいいやつだな。いいやつすぎて心配になるレベルだ。
 やべ、外なのに涙止まらねぇ……

「……っ!」

「~~!」

「……あ?」

 連絡を終えてゴブスラダンジョンに向かっている途中、何やら不穏な気配がしたのに気がつく。

 あの地獄のような“ゲーム”で気配をものすごく感じられるようになった。そうでもしなきゃ、のだ。

「なして! 離してって!」

「いけません、時間ですよ。早く行きましょう」」

 気配のした方へ1キロほど行くと、黒の高級車に、嫌がる少女が乗せられそうになっていたのが見えた。

「っ!」

 なんだ!? 誘拐か!?

 人々が力を得てから、犯罪はとても増えた。力を得たもの探索者は、力を得たもの探索者しか捕まえられないし、裁けない。

 特殊警察が設立されたとはいえ、30年前に比べれば俄然犯罪率は高くなったと言える。

「うらああああああ!!」

「さあ! 早く──!?」

 ドギャッ!!!!

 俺は、無理やり乗せられそうになっている少女の瞳を見て……地を蹴り飛び蹴りを繰り出した!
 200mも先から飛んだ俺の飛び蹴りは、一切威力を損なうことなくスーツの男に直撃し……明らかに人体が鳴らす音ではない音を立てて吹き飛んだ。

 俺は、男が吹き飛んだ方を向いて、臨戦体制を整える。
 そして、の発動も視野に入れ、男が起き上がるのを待つ。

 だが、待てども待てども男は起き上がらなかった。

「……大丈夫か?」

「っ! ……は、い。大丈夫、です」

 涙を浮かべていた少女の瞳が、驚愕の色に変わっている。そりゃ人が数百mぶっ飛んだんだからな。探索者でないだろうこの子からしたらびっくりだろう。

 俺は、様子を見ようと席を降りてきた運転手に向けて“殺気”を放って言った。

「テメェら……どう言うつもりだ? ア゛ァ゛!?」

「ふっ……」

 運転手の男は気絶し、後ろに倒れた。



 ……え? 威圧しただけなんだが……頭打ったぞ、大丈夫か?
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