上 下
4 / 61
一章 目覚めと出会い編

第4話 帰還

しおりを挟む

 で1ヶ月後。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 俺は、7つの扉クリアし、7体の怪物と契約を結ぶことに成功した。

「やっと、だ」

 扉の中と現実には、時間の差が生じている。中にいたによると、時空間の風向きが違うとかなんとか……

 俺は実に4年間、門の中で“試練”を受けていた。

 最初に入ったのは「地獄の門」の言葉がお似合いの、黒炎渦巻く門だった。そこの試練を突破するのに、実に1年と3ヶ月の時を要した。

 他の試練に比べて比較的シンプルなこの試練に時間がかかったのは、ひとえに最初の試練であったからだ。
 後の試練では、前の試練で得た肉体や武具、力を使うことができるが、この時はまだ何もなかったからな。

 地獄の門をクリアして出てきた後、急いで部屋に戻ってスマホを見た時に1週間しか経ってなかった時は、夢かとも思った。

 次に入ったのは、7色で彩られた、目がチカチカする虹の門。

 ここでは、“鬼ごっこ”をやったわけだが……もう2度とやりたくない。

 ついで凶器の門、水の如く静寂の門、ハートの門と続き、最後は木の門と黄金の門をクリアして、俺は帰ってきた。

「肉体は……やっぱ4年で、4週間分しか経ってないな」

 俺は、自分の体を確認する。門の中では成長しなかったが、こっちでも同じようだ。やはり1年が1週間となっている。

「じゃあ、今日から2学期か? なんとか間に合ったっぽいな……」

 俺はコツ、コツと階段を上がっていく。

 目の前の出口の光。何年待ち望んだだろうか。
 俺は振り返って、閉ざされた7つの門に向かって頭を下げた。

「──ありがとう」

 中の様子はわからないが、心の通じた7人が、それぞれ反応を返してくれたように感じて、俺は実に体感4年ぶり(実際には1ヶ月)に、地上へ出た。

 カ────ッッ!!!!

 再びあの時のような光が部屋に満ち……ダンジョンに通ずる階段は、完全に消滅していた。


 本来ダンジョンは、攻略を禁じられている。ダンジョンは国の資源そのものだからだ。
 最も、攻略されたダンジョンなどほとんどなく、そもそも最下層までいける探索者がほぼいない。

 俺の家に発生したダンジョンは跡形もなく消えた。これで報告しなかっただのなんだのっていう厄介ごとには巻き込まれないようになるはずだ。

「えっと……!?」

 俺は安堵の息を吐いて、時計を見て──固まった。

  9/1、朝10時15分。

 始業式は終わっているだろう。

「まっず!?」

 俺は急いで支度して、学校に向かう。
 卒業できなければ探索者にはなれない。まあ、下級探索者にならなれるが、それでは

 俺が目指すのは当然、極級探索者……いや、“王級”探索者だ。

 だから、学校を退学になるわけにはいかない。

 俺は全速力で学校へと走る。

「うおっ!」

 ギュウンッ! と体が押し出される。常人では目に負えないほどのスピードだ。ちゃんと修行して培った身体能力はそのままのようだ。

 ……あの地獄も生ぬるい地獄が無駄だったらと思うと、死にたくなるわ。

 本来自転車で30分の学校にも、たった1分でたどり着けた。
 ほんとにバケモンみたいになってるな、俺。

「はぁ、はあ」

 俺は急いで学長室に向かう。

 門の中で、出た時用にもらった魔石を用意する。
 まだ体育館で始業式はやってるらしい。
 もう終わりのようだが。

 急いで向かうと、学長室の前に大きな袋を持った、一人の先生を見つけた。

 担任の鈴木だ。
 生徒達から集めた8月分の魔石を持っているのだろう。

「学園長、失礼しま──」

「ちょっと待ったアアアアア!!」

「なっ!?」

 俺は、なんとか鈴木が学園長室の扉を開ける瞬間、鈴木を止めることに成功した。
 だが、勢い余ってそのまま……

 ガシャアアアン!!

「「あ……」」

「騒がしいですよ! どうしたのです、か……」

 学園長室の扉に突っ込んだ俺と鈴木先生は持っていた魔石を盛大にぶちまける。それを見た学園長の言葉が、小さくなってゆく……


 やベェ。退学だけはなんとかして阻止せねば……!!


~~~~~




「……おもしれぇ。あいつ、まさか全部の門を攻略するとはな」

 ちよの力への渇望に、「」はフッと息をついた。



~~~~~

「何してるんですか?」

「いえ、あのですね……」

「あ! お前は! 魔石を持って来ず欠席していた宝晶千縁じゃないか!」

 学園長の言葉に、俺が弁明をしようとするが……鈴木がそれを邪魔する。

「ん? そうなのか? 魔石を持って来なければこの学校にはいられないと入学式で言ったはずだが……」

 学園長の目が据わる。

「いえ! 違いますよ! ほら、これです!」

 俺は持ってきたマジックバッグから直径が指ほどある翡翠色の魔石を5つ取り出した。

「……!?」

「グリフォンの魔石です…魔石値は235。5つで1000を超えますよね?」

 マジックバッグとは、皆の思う通りダンジョンで稀に算出される、見た目の何倍も物が入る鞄だ。

 まあこれはだが、それはどうでもいい。

「退学は勘弁してください! 遅刻してしまったことは謝ります! なんでもしますのでどうか……」

「がっ学園長……」

「……」

 学園長は言葉を発さない。よほど怒ってるのだろう。だが、まだ退学とは言われていない。まだチャンスはある……!

「これもつけますから! 退学だけは!!」

 俺は懐から拳大の赤い魔石を取り出した。

「……は?????」

 なんか鈴木がガクッと気を失った。
 学園長から発される怒気のオーラにでも当てられたのだろうか。
 俺に感じられないのは、俺が未熟すぎるからか……強すぎて感じないかだな。まあを乗り越えたんだし、前者ってことないと思うけど……驕りは最もやってはいけないことだ。

「えっと……千縁君だっけ? これ、どこで……」

 学園長が指をプルプルさせながら赤の魔石を指差した。

 まさか、盗んできたと疑われてる!?
 いやでも確かにそうか。このサイズの魔石を手に入れれる生徒がいたら覚えてるはずだもんな。てか、この学校に入ってないかもしれない。

 どうやって俺が夏休みに修行したことを伝えるか……

「えっと、夏休み一日中ダンジョンで修行をしまして。その時になんとかして倒したんですよね。おかげでかなり強くなれた気がします。どうか退学だけは!」

「わ、わかった……君が倒したんだな?」

「はい!」

 学園長は胸に手を当て、ふぅと息を吐くとキリッとした顔をした……気がする。
 俺今土下座してるから学園長の顔わからんし。てか顔知らんわ。始業式でも1番後ろの席だったから見えなかったもんな。

「わかった……なら試験を受けてもらう。それに合格できたら、2学期から学校に戻ることを許そう」

「……!! ぜひ! ぜひやらせてください!!」

 あぶねええええええ!! どうやら、試験に受かれば復学できるようだ。
 探索者学校の試験といえば、身体能力試験。スキルを持つ場合はそっちも見られるわけだが……はあんまし見せたくないんだよな……。

「……どんなスキルを持ってるのかな?」

 これには明確な、用意した答えがある。俺の上がった身体能力も誤魔化せるし一石二鳥よ!

「身体強化系です!」

 身体強化系。魔物を倒し魔力を吸えば勝手に肉体が強化されるため不遇とも言われるスキルだ。だが、一般的に魔力を吸って強くなった状態から更に、身体強化を発動できるということは汎用性が恐ろしく高いことを表している。

「……じゃあ、これを握ってくれるかな?」

 そう言って学園長が取り出したのは、握力測定器だった。
 握力か!!

「……これは、150kgある。これを最大まで片手で握れたら復学を許可しよう」

 おお、思ったよりも簡単だ!! まあ、ちゃんと魔石も出したし、ちょっと遅刻しただけだもんな、うん。これくらいが落とし所だろう。
 私学っちゃ私学だからワンチャン退学食らうかもと思ったがなんとかなったかな。

「ありがとうございます! でも、先生……」

「ん? 150kgくらいはいけるはずだができないとでも……」

 俺は焦って身体能力を全開にし、握力測定機を
 だがそんな焦ってる様子を見せないように、ゆっくりと言った。

「いえ、学園長、150kgは、舐めすぎですよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...