千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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一章 目覚めと出会い編

第2話 家にダンジョンが現れた

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「……ちよ」

 下校中、俺達がカースト上位勢に目をつけられないようヒソヒソと話していると、幼馴染の金城玲奈かなしろれなに声を掛けられる。

「なに?」

 俺は珍しいな、と思いながら、嫌々返事をする。

「……邪魔に決まってんじゃん。どいてくれる?」

 玲奈はそういって、俺たちを蔑むような目で見ながら後ろを通る。

「全く昔っから鈍臭くて馬鹿なんだから。救いようがないくらい弱い癖に探索者なんて。こんなのと幼馴染だとか……」

 玲奈はこうやって、偶に会ったかと思えば俺の悪口を呟いて行く。まぁ偶発的バッドイベントみたいな存在だ。これでも昔はよく遊んだんだがな……。

「……んだよあいつ。久しぶりに会ったかと思えばまた文句かよ」

「ちよ……気にするな。あんな言葉、無視して早く帰ろう」

「ああ……そうだな」

 そんな俺に、悠大は優しく促してくれる。本当に良い奴だ。
 ……てかほんと、なんだったんだ? いちいち呼び止める必要あったか?

「はぁ……」

 俺はボロアパートに帰って、開口一番大きなため息をつく。


 幼馴染でありたいと、願ったことなどない。弱くてもいい等と思ったこともない。

 だが、世の中は理不尽だ。そんなことは“言い訳”に過ぎない。

 全てのものに公平に、不公平がある。

 自慢じゃないが、人一倍スライムを倒した。特訓した。休みの日は一日中ダンジョンに潜った。

 でも俺には、才能が無かった。

 スキルは未覚醒、身体能力も低い。
 頭がいい訳でもなく、顔も下の上くらい。

 俺は、心のどこかで諦めていたんだと思う。
 いつからかそれを、考えないようにしながら、我武者羅に魔物を倒した。

「でももう、無理なのかもな……」

 小さなテレビを点けると、日本の極級探索者が出ていた。

『えー昨日、遂に鯨ダンジョン37階層に到達したということでしたが、どうすればそこまで強くなれるのかを教えて下さい』

『うーん、そうですね……無理して強い魔物を倒して強くなろうとする探索者も多いのですが、私からすれば無理をするのは本末転倒と言えるでしょう。多少の無茶は必要ですが、必要以上に無理をしすぎると、死んでしまいます。死んでは元も子もないですからね』

『なるほど……しかし多少の無茶は必要、と』

『そうですね。自分より格下の魔物じゃ魔力が全然上がらないので、無理もせずに強くなろうなんてのは土台無理な話ですよね。多少の無理でいけるかどうか、それを見極める“眼”というものが必要でしょう。また、それを可能にするのがパーティという訳です。』

「……」

 パーティ。こんな弱くてキモイ俺が入ることなんて一生ないだろう。

 俺は下級探索者だ。
 探索者ランクは下級、中級、上級、超級、極級とあって、極にもなると日本に1人しかいないレベルの化け物だ。
 一応、その上に王級といった、世界に5人の最強の存在が居るわけだが……

 俺がこのまま卒業しても、一生下級探索者のままだろう。

「多少の無茶、か……」

 このままじゃ、いられない。
 今度、今度と言ってはいられない。
 無茶しないままではいつまで経っても強くなれない。

 俺は、ふと、呟いた。

「強く、なりてぇなぁ」

 その時だった。

 カッ────!!!!

「な──」

 俺の住むボロアパート、101号室が光に埋め尽くされたのは。

 俺は慌てて、手探りで玄関まで行き、外に避難する。

「これって……」

 光が収まった部屋のリビングには、1つの階段があった。

 先の見えない暗黒の階段が。

「ダンジョンだよ、な?」

 俺は部屋の中に突如として出現した、地下への階段を見て気づく。

 この独特な気配……ダンジョンだ。

 いつもゴブスラダンジョンに潜っているときに感じる雰囲気と似ている、ダンジョン特有の気配だ。

「……ん? あれ、ダンジョンまだ入ってないのに、なんでだ?」

 ダンジョンは不思議な空間で、入口からは中の様子が全く見えない。例えば洞窟に見えても、一歩踏み出せば大森林ということもある訳だ。
 入口の真ん前であろうと全く気配を感じることはないのだが……

「って、もしかしてこれ、俺の部屋全部ダンジョンになったのか??」

 隣の部屋にもダンジョン領域が広がってるだろうか。なら、こっちが先に通報するしかない。

 新ダンジョンを見つけたら警察に報告するのが最優先だ。日本にダンジョンは確か100数個……決して多い訳では無い。

 恐らく通報したらそれなりの報奨金が貰える……はずだ。

「……待てよ」

 今ここで俺が通報したらどうなるんだ? 俺の家ってどうなんだろ。

 そう冷静に考えて見ると、不可解な点が浮き彫りとなって来た。

「そもそも、ダンジョン領域に元々あった人工物は、ダンジョン生成時に消滅するって聞いた。ってことは、ここはダンジョンじゃない、階段を降りてからがダンジョンのはずだ。」

 ということは外にまで気配が出てくるタイプのダンジョン?
 んなアホな話は無いわな。
 ……とすると考えられるのは、外にいても感じるほどの気配、か。

「あれ俺死んだ?」

 ダンジョンは極低確率で氾濫を起こし、地上に魔物を吐き出してくることがある。
 魔物を倒さずに放っておくと、これが起きやすくなるのだ。

 流石に、俺の一存でそんな危険を犯すことは出来ない。

「やっぱ通報するしかないか……?」

 だが、またしても先程の言葉が思い出される。

『多少の無茶もなく強くなるなんて到底不可能』

 ……ちょっとだけ。
 ちょっとだけ、どんなところか見てみるか?
 ダンジョンに入ったら出れなくなったというのは、ボス部屋以外に聞いたことがない。
 トラップ等ではあるかもしれないが、顔だけ入れてみれば絶対に引っかかりはしない。はず。

 俺は数分間葛藤して……

「おーけい、頭だけ潜らせてみよう。階段下に頭を下ろせば、中も見えるはず、うん」

 入ることに決めた。

 階段の横に寝転がるように伏せる。そして、俺は頭を階段の2段目に置いた。

「……は????」

 そして俺が見たのは……

 それぞれ特徴を持った、輝きを放つ7つの門と、真ん中にいる1人のだった。

「──やっと会えたな」

「ヒエッ」

 俺はバッと頭を戻した。

「はぁ、はぁ、はぁ……なんだ、あれ……なんで人が?」

 今生まれたダンジョンに人がいるわけが無い。ということはあれも魔物か?
 人型の魔物とか……強いのが定番だよな。人語喋ってたし。

「って、そうだ! “やっと会えたな”って……どういうことだ?」

 そう、何故俺の事を知っていたのか。
 意味がわからん。

 あんな王冠被った野郎とあった覚えないぞ。
 あと、イケメンにも程があるわ。アニメか出身地。ざけんな。

「……入る、しかないよな?」

 俺はやっぱ通報しようかとも思ったが、不思議と確信を得ていた。

 このダンジョンに入れば、強くなれると。

 ……ゴクリ。

 俺はダンジョンに行く時の装備、ダンジョン鉄の剣と胸当てを装備して、恐る恐るダンジョンへと入っていった。
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