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一章 目覚めと出会い編
第1話 探索者学園の劣等生
しおりを挟む「はあ……」
俺は宝晶千縁。
今日もノルマ分のスライムを踏み潰して魔石を拾っている。
腰痛くなってきた。普通の高校1年生なら、まず腰痛なんてありえないはず。
俺は、普通の高校生じゃない。
……悪い意味で。
と言うのも、30年前、地球中に突如、ダンジョンが現れた。
は? と思うだろうか。あるいは厨二病かこいつwwみたいに思うだろう。
信じられないことに、事実である。
もちろん当初は大騒ぎ。さらに、ダンジョンの中にいる生物……魔物と呼ばれた生物を倒すと、力が強くなったり、特殊な力──それこそ魔法などが使えるようになると分かった時には、規制も虚しく世界中の民間人がダンジョンに押し入ったという。
その結果は……数億人が死んだことから想像は難くない。
だが、こう言ったものは当然、悪い話ばかりではなく。
魔石がエネルギー源として活用できることがわかったのだ。
なんか、どう活かしてるのかがとても気になるが。
まあ、そんなことは置いといて、その後すぐにダンジョン協会なるものが立ち上げられた。
……数年前の小説家達は予言能力でも持っていたのだろうか?
そして、探索者を目指すものの学校──探索者高校なるものもできた。俺が通ってるのはそこである。
数年後。
政府は探索者関連の会社に、一つの課題を出した。
魔石を特定量納品すること。
税金のようなもので、従来の税金は全て免除になる。それほど魔石のエネルギーは効率的なんだろうな。
つまり、会社はより魔石を……それを集める探索者を欲している。
強い探索者になれば、現実的でない桁の富も手に入る。
いつしか探索者は国民皆の憧れとなり、なりたい職業トップワンとなった。
だから俺も、なんとか試験に合格して探索者学校に入学したのだが……
探索者学校は一部を除き、ほとんどが私学となる。
つまり、学校も探索者関連の個人事業だ。そのため政府に送る税金とする魔石が沢山いる。
なので学生は、毎月決まった量の魔石を納めなければ退学となる。
そして俺は、本当にギリギリで入れた落ちこぼれ。
一般人でも倒せるスライムやゴブリン程度しか狩れない。
手から火が噴き出る能力を持つ人とかもいるけど、そんなん人間辞めてるからな……。俺にはそんな能力はない。
「やっと1000個……」
スライムの魔石じゃ、ノルマには1000個もの量が必要となる。
スライムは踏めば死ぬので簡単なのだが、そんなにわきまくってるわけでもないし、かといってゴブリンと戦うと、1本しかない剣の耐久値が減るし、怪我をしたら大変だ。
本当に足りない時にしか狩らないと決めている。
そりゃ、魔物倒せば経験値っていうかな? 魔力が少し得られるよ。
ゴブリンはスライムの10倍貰えるよ。魔力ないとスキルや魔法は覚えられないよ。
でもね、スライムの魔力量って、0.000000001よ。
アホみたいでしょ?
こんな奴らでは上がらないって考えたほうがいい。
だから学校を卒業して、探索者費用としてもらえる資金で魔道具……ダンジョンで産出された強力な武器を買う必要があるのだ。
魔道具がないと探索者はできないって言われてるくらいだしな。
命をかけりゃ、そりゃ、強くなれる確率はある。魔道具もアイテムもない初期にダンジョンに突入した英雄達が証明してる。
でも、俺は絶対に探索者になれなきゃ駄目なんだ。
だから焦って命を賭けるなんてできない。
まだ、強くなって、有名になって、会いたい人がいるから。
~~~~~
「よお、ちよ! まーたスライムでも狩ってたのか??」
「なあ、ちよって全く、女みたいな名前だよなぁ、ギャハハハ!!」
「怪我しなくてよかったなぁ! ギャハハハ!!」
で、問題がこいつら。クラスメート。
俺は言った通り、成績最下位の劣等生だ。
だからまあ、簡単にいうと蔑視されてる。
探索者として成功すれば、莫大な地位と名誉、金に、異性。全てが手に入る。
逆に言えば、成功する見込みがない奴は、余程顔が良くない限り蔑視されるのだ。
「ああ……心配してくれてありがとう、加藤。」
「加藤様だろーが! 敬語使えやこのクズが!」
「そうだぞ劣等生! 加藤さんは中級探索者様だぞ!!」
「クズが話せる相手じゃねーんだよ!」
だったら絡んでくるなよ! 無視したら無視したで殴りかかってくるくせに!
だが、加藤の実力は本物で、手首だけでもあしらわれるだろう。
入試1位だったらしいしな。
俺は、バコンッ! と頭を叩かれた。
「いって!」
「ギャハハ! こいつ痛いんだってよ! 弱すぎ!?」
「ギャハハハ!! 探索者なんて無理だろ、諦めろよ!」
いや、お前ついさっき中級探索者とか自分で自慢してたじゃねーか! そんな奴に叩かれたらシャレになんねーんだよ!!
「……すみませんでした」
「ギャハハハ! 言い返してみろよ! なあ!?」
「そんな度胸あったらもっと強くなってるて!! 無茶言うなよ!」
くっそ……今のビンタ頭に響くな……。
取り巻きのアホどもが騒いでるけど……加藤達のいう通り、俺は弱い。
反抗する力もなければ、俺の言い分を聞いてくれる人もいない。
学校という小さな社会の中でも、実力主義の風潮が浸透しているからだ。
俺はその場を惨めに去ることしかできなかった。
……いや、一人だけ友達がいるか。
「ちよ……大丈夫だったか?」
席が隣の男子……岩田悠大が、俺に気を使って声をかけてくれる。
「ああ……ちょっと頭に響いたわ、サンキュ」
「……本当に、すまない。俺にはどうしようもなくて……」
「いいよ、わーってる」
悠大は、俺の唯一の友達にして親友。成績は下から2番目だ。
席は成績順で決まるって……いつの時代だよ。
閑話休題。
皆が加藤と一緒になって嗤って来る中、悠大はこっそりと気遣うような言葉を投げかけてくれる。
勿論最初は俺も、「ああ……俺が気に病んで居なくなったら次は2番目のお前だもんな……」とか嫌味を言ってやったが、そんな最低ことを言った俺に、ずっと優しくしてくれた悠大は今では唯一にして最高の友達だ。
「おらお前ら席に着け~HRだぞ~」
そんなことをしてると、教師が教室に入ってくる。
教師は、俺をちらっとみると、魔石を回収する。
今日は1学期最後の日。7/31日。
今月もなんとかギリギリ集めれたか……
俺の心の中は、それだけで1杯だった。
「よし……全員ちゃんと集めて来たな。さて、明日から夏休みが始まる」
担任の教師、鈴木悠真がそう言うと同時に、クラスメートが色めき立つ。
「まぁ宿題はいつも通りの魔石1000スライムだけだが、その分しっかりと修練しとくように。成績不振者は特にな。」
鈴木は俺たちをチラッとみると、そう言って退出する。
「はぁ……二学期大丈夫かな」
「まぁ、そういうなって。夏休みだし、一緒に魔石集めに行こうぜ。ちよと2人ならすぐ2000個集まるっしょ」
「……そうだな。さっさと集めて遊ぶぞ!」
俺はつい憂鬱になる自分を誤魔化すように、悠大と拳を合わせた。
─────────────────
新連載です。𝕏にあとがきや最新情報を載せてるので是非ご覧ください!
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