上 下
45 / 81
第二章

兄さんからの贈り物

しおりを挟む
<兄さんからの贈り物>

 帰宅すると、珍しく海姉さんが俺より早く帰ってきている。
「ただいま、あれ、今日早かったね。」と声をかけると、
「あ、おかえり~、そ、今日は荷物が届くから受取を商工房に取り入ったからなの、母さんでもよかったんだろうけどね。」
「へ~、荷物って誰から?」
「蒼空兄さんから送ってきたようなのよ。中身は母さんが帰ってきてから開けるけどね。」
そうなのだ、蒼空兄さんはサニー共和国の中等部に行ってから、一度も家には帰ってきていない代わりに、定期的に手紙を送ってくれているのだ、向こうはやはりこちらとやり方が違っていたりとかこちらにない物を見ることが出来たとか、また、お世話になっているニナさんと仲良くやっているとかが書かれている。今日届いた荷物は前に来た時に書いてあった物だろうとは思うが、ちょっと楽しみなのだ、手紙にも面白い物見つけたって書いてあった。
「そうだね、勝手に開けたりしておくと、怖いからね。」と返事すると、うんうんと頷いてくる。
「じゃ、俺は着替えて、道場で訓練してくるよ。」そう言って自分の部屋に移動する。
「はいはい~、じゃ、がんばってね~」どうやら、エレナ母さんが帰ってくるまでゆっくりしておくようだ。
以前、知り合いに料理を任せる事の出来る年齢なのに、夕食の準備を姉さんはしないのか?といった事を聞かれ、俺が答えたのは姉さんが作った料理を食べたら、ドラゴンさえも逃げていくと答える。つまりは、そういったレベルクラスなのだ、だから、絶対に作らせないようにしているから、ゆっくりしておきなさいと、母さんからの防御方法である。姉さんを除いてだが、これには家族全員賛同をしている。

 道場に移動するが、ここ最近は道場の訓練もなくなっている、教える側と習う側双方とも忙しくなってしまったので、俺一人訓練できるのだ、なので、いつものように精神集中を行い、素振りなどを一通り終わらせ、術の練習をする、と言っても、武器に術を纏わせる訓練をするが、なかなかならない、何かコツがあるのかと思うが、勇者の技を行える人がいないので、仕方ないと思いつつ、やるだけやっている。そうこうしているうちに、夕食の時間となったので、先に風呂に入り食堂へ移動をする。
「ふぅ~、いい風呂だった。運動の後の風呂はさっぱりするな~。」を言いながら入ると、俺の方を向き
「利久、おっさんか!?」と海姉さんのつっこみが来る。
「体は子供、しかし、中身はおっさん、それが俺、上渕利久だ。」とポーズを決めるが、
「はいはい、そんなんじゃ、嫁の来てもないわよ。」と、元のむきになり言われる。
「ま、それはそれでいいんじゃない。」と言って、自分の席に座ると、エレナ母さんが料理を持ってきつつ、
「それはだめよ~、かっこいいお父さんの血を引いてるんだから~、モテモテにならなくちゃ~。」
それを聞いた、海姉さんは、
「え~、父さんてモテモテだったの~、信じられないな~?」と、いる時はダメダメな姿を見ているから疑問を呈す、俺も言葉にはしないが、同意する。
「分かる人には分かるものよ~。じゃ~、夕食を食べましょうね~。」
食卓には、サラダにかぼちゃの煮物が大皿に置かれて、ご飯を一人ずつ貰って、食べ始めるが、必ず、「いただきます。」と言わないといけないので、そろって
「「「いただいます」」」
と発して、食べ始める、食べる間は三人共黙々と食べ、終ると各自で、「ごちそうさま」を言った後、お皿などを洗い場に持っていくまでが、我が家のルールとなっている。
食卓の上が片付いたのを見計らって、
「ね、母さん、蒼空兄さんから荷物が届いたんだけどさ、開けようよ。父さん達を待ってたらいつになったら開けれるか分かんないしさ。それに、悪くなるものだったら、なおさらだめだから。ね?」
と、開けたくて仕方ないのか、荷物を持ってきてテーブルに置く。
「そうね~、海ちゃんの言う通りかもしれないし~、琢磨さんにゆうなはもうすぐ討伐から帰ってくるとは思うけど~、悪くなるものだといけないから開けましょ~。」
「さすが、母さん話が分かる。」そう言うと同時に、包みを開ける。中には手紙と袋しか入ってなかった。それを見た海姉さんは、
「え~、なにこれ~、もう、期待してたのに。」と、切れている。ゆうな母さんもアレ~?のような顔をするので、俺は兄さんの手紙を開けて読むことにする。
中に書いてあったのが、元気にしているといった内容だったが、一緒に入って来た袋について書いてある、魔力の大きさで袋の中に色々入れることの出来る収納袋で、その中に品物を入れているので、魔力を通して開けて取り出してくれと書いてある。魔力と書いているが術力の事だとも、国によって言い方書き方が違うから魔力と書いているとのことだった。俺はそれを説明し、早速術力を通して口を開けてみる。中にはお酒、香水が二つ、杖が入っている。それをテーブルの上に置く、物によって対象者が分かったが、俺の分がなさげだ、もう一度手紙の入っていた封筒を見ると、手紙あと一枚入っており読むと、収納袋は俺にと書いてある、その袋は勇者が考え出した物だから今後役にたつだろうとも書いてあった。
今回の荷物について説明をすると、海姉さんが
「なんか、利久の品物が一番よさげに感じるんだけど、ま、いいわ、この杖もよさげな感じだし。」
ちょっと不満だけども見たいな感じで言うが、嬉しそうだ。エレナ母さんも文句はない様だ。香水はゆうな母さんとどちら使うかを話し合わないとねと言っている。俺としては、
「収納袋か、今度野外訓練があるから丁度良かった、作った薬品関係を入れて持っていけるし、腰にぶら下げても邪魔にならなそうだし。」そう言うと、
「あら、野外訓練があるのね、あれは共同作業や協力を主にするやつだから、そこまではしなくてもいいんじゃないかしら。」
「そうだとは思いたいんだけど、ちょっとメンバーがね、、、」と言葉を濁す。
「メンバーがどうしたの、もしかして、攻撃ばっかなの?」
「いや、前が二に中が一、後ろが二のチームなんだけどね。」
「あら、結構理想的な構成じゃない。それなのに何か問題でも?」
「ああ、留学生のクリスがいるんだ、聞いているかとは思うけど、俺が毛嫌いされてるからね。うまくやれるかが心配なのさ。」
「ああ、あの方ね、初日にスパッとやられたって言ってたわね。ま、なるようにしかならないんじゃない?くじで決まったんだし、逆にそのことを解消するチャンスかもしれないし。」
「そうだね、とりあえず、頑張ってみるさ。」そう言って、宿題が残っていたのを思い出し、部屋で宿題してから寝るねと言って、兄から貰った収納袋を持って部屋に移動する。

 俺は宿題を終わらせ、もう一度蒼空兄さんからの収納袋の使い方を読み直すと、ものすごい機能が備わっていることが分かる、魔力によって大きさが変わるのは分かったが、それ以上にすごかったのが、袋に入れた物は腐らないというのだった、ただ、あくまでも食材とかなだけで、生きている者はダメだと書いてあった、鳥を入れてみようとしたが、入らなかったと、そして、どれだけ入るかは未知数とも書いてある。とりあえず、作っておいた回復薬を一〇本入れてみる、問題なく入っていくので、これなら野外訓練の荷物も少なくて済むと考え、残りの必要なものをリストアップして、寝ることにする、いいもの貰ったなと兄さんに感謝し、就寝。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...