3 / 13
扉の外側
しおりを挟む「坊ちゃん、朝食のご用意が整いましたので着替えましょうか」
「え…?なんできがえ…?」
「とても天気がよろしいので朝食はバラ園の方で召し上がりましょう♪」
「!?」
物心がつく頃にはもうこの部屋にいた。およそ10年は部屋から出ていない。
僕の世界はこの一室だけで完成されていて、外は手が届かない場所というイメージだったのに……
こんなあっさり出れる…?
パジャマから白いシャツへと着替えさせられ、髪を整えられる。
ゆっくり扉へ近づくたび鼓動が高鳴る。
もうちょっと
もう少しで……
「坊ちゃん!?」
僕は扉の前で足がすくんでペタンと座り込んでしまった。動機と息切れで汗が止まらない。
外に出たらきっとお母様にバレて叱られると思うと怖くて仕方ないんだ。
「ハッ、ハァ…ッハ!」
「…坊ちゃん、私の鼓動に合わせてゆっくり息をして……大丈夫、大丈夫」
東雲は自分の胸に僕の耳を押し当てるように抱きしめた。トクントクンとゆっくり流れる心臓の音を聞いてると、自然と落ち着いてきて震えも止まった。
不思議だ。東雲の声は何だか安心する…
昨日初めて会った人なのに、昔から知ってるみたいな安心感がある。
「あ…あ、あいがと……えと、ぼく」
「恐縮ですが、もしかして外が怖いのですか?」
「えっ」
東雲の腕の中で小さくなっていると、どストレートな質問をされた。
多分東雲は僕がずっと部屋で過ごしていた事を知らないのだろう。10年間外へ出してもらえてないなんて、普通は思わない。
なんて答えたら良いか分からず黙ってしまう。そんな僕に東雲は優しく頭を撫でながら続けた。
「外は確かに敵も多く怖いところですが、もう坊ちゃんには私がついているでしょう?」
「…しおおめは、つよいの?」
「そうですねぇ…少なくとも坊ちゃんの事を命を懸けて守る覚悟はございますよ」
「いのち!?」
サラッとと笑顔のまま言う東雲を見てたら何だか平気な気がしてきた。
ぎゅっと目を閉じて頭の中にある怖いものを消し、覚悟を決める。
「も、だいじょうぶそう…そとへいこう」
「何があっても守ります♪」
僕は東雲の手を取り、未知の外へ足を踏み出した。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
溺愛執事と誓いのキスを
水無瀬雨音
BL
日本有数の大企業の社長の息子である周防。大学進学を機に、一般人の生活を勉強するため一人暮らしを始めるがそれは建前で、実際は惹かれていることに気づいた世話係の流伽から距離をおくためだった。それなのに一人暮らしのアパートに流伽が押し掛けてきたことで二人での生活が始まり……。
ふじょっしーのコンテストに参加しています。
悪役令息の兄には全てが視えている
翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」
駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。
大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。
そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?!
絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。
僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。
けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?!
これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる