日日是好日

葉月よる

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扉の外側

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「坊ちゃん、朝食のご用意が整いましたので着替えましょうか」

「え…?なんできがえ…?」

「とても天気がよろしいので朝食はバラ園の方で召し上がりましょう♪」

「!?」


物心がつく頃にはもうこの部屋にいた。およそ10年は部屋から出ていない。
僕の世界はこの一室だけで完成されていて、外は手が届かない場所というイメージだったのに……

こんなあっさり出れる…?

パジャマから白いシャツへと着替えさせられ、髪を整えられる。
ゆっくり扉へ近づくたび鼓動が高鳴る。


もうちょっと

もう少しで……


「坊ちゃん!?」


僕は扉の前で足がすくんでペタンと座り込んでしまった。動機と息切れで汗が止まらない。
外に出たらきっとお母様にバレて叱られると思うと怖くて仕方ないんだ。


「ハッ、ハァ…ッハ!」

「…坊ちゃん、私の鼓動に合わせてゆっくり息をして……大丈夫、大丈夫」


東雲は自分の胸に僕の耳を押し当てるように抱きしめた。トクントクンとゆっくり流れる心臓の音を聞いてると、自然と落ち着いてきて震えも止まった。
不思議だ。東雲の声は何だか安心する…
昨日初めて会った人なのに、昔から知ってるみたいな安心感がある。


「あ…あ、あいがと……えと、ぼく」

「恐縮ですが、もしかして外が怖いのですか?」

「えっ」


東雲の腕の中で小さくなっていると、どストレートな質問をされた。
多分東雲は僕がずっと部屋で過ごしていた事を知らないのだろう。10年間外へ出してもらえてないなんて、普通は思わない。

なんて答えたら良いか分からず黙ってしまう。そんな僕に東雲は優しく頭を撫でながら続けた。


「外は確かに敵も多く怖いところですが、もう坊ちゃんには私がついているでしょう?」

「…しおおめは、つよいの?」

「そうですねぇ…少なくとも坊ちゃんの事を命を懸けて守る覚悟はございますよ」

「いのち!?」


サラッとと笑顔のまま言う東雲を見てたら何だか平気な気がしてきた。
ぎゅっと目を閉じて頭の中にある怖いものを消し、覚悟を決める。
 

「も、だいじょうぶそう…そとへいこう」

「何があっても守ります♪」


僕は東雲の手を取り、未知の外へ足を踏み出した。








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